召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光

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第二章「王国を目指して」

第八十九話「幻魔獣の素材」

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 魔王を手こずらせた幻魔獣、デス。魔王城で召喚されて、魔王以外の者を全て殺してしまったという事か。強力な力を持つ幻魔獣なのは間違い無いだろうか、見境の無い殺戮を行う残忍さ。きっと、デスを召喚した召喚士達の負の部分を糧に生まれたのだろう……。

 召喚獣は召喚した者の魔力で作り出される。召喚士が日常的に殺戮を行う魔王の手下だったという事が、残忍な殺戮を行うデスを生み出したのだろう。デスを召喚するのは暫く待った方が良さそうだ。戦力的にパーティーが危なくなった時の最後の切り札として取っておこう。アルベルトさんはデスの頭骨が入った箱を持ってきた。

「さぁ、ボリンガー様。どうぞお持ちになって下さい」
「ありがとうございます。それでは頂戴します」

 デスの頭骨は一見、スケルトンの頭骨と同じ様に見えるが、頭骨が発している魔力はルナやキングと同等、もしくはそれ以上だ。俺はデスの入った小箱をマジックバッグに仕舞った。幻魔獣の素材を頂いたからには、何かお礼をしなければならないだろう。

「アルベルトさん。是非、お礼をさせて頂きたいのですが、何か俺がお手伝い出来る事はありませんか?
「ボリンガー様が力を貸してくれるとは……」
「アルベルト、ボリンガー様にギルドの守り神を召喚して貰ったらどうかな?」
「幻獣・ヘルハウンドの素材があったか! ボリンガー様、幻獣のヘルハウンドはこのギルドの創設者のパートナーだったのですよ。創設者が亡くなってからも、ヘルハウンドはギルドのために一所懸命に働いてくれました。しかし、ヘルハウンドは三年前に寿命を迎えて死んでしまったのです」

 アルベルトさんは悲しそうに言った。召喚士ギルドは、ヘルハウンドという幻獣に守られていたのか。ギルドメンバーでは寿命を迎えたヘルハウンドを召喚し直す力が無かったのだろう。

「アルベルトさん。俺がヘルハウンドを召喚しますよ。素材を持って来て下さい」
「本当ですか? それはありがとうございます! シャルロッテ、素材をボリンガー様に渡してくれるかな」
「ええ、分かったわ」

 栗色の髪の女性はシャルロッテという名前なのか。シャルロッテさんはヘルハウンドの素材を倉庫から持ってくると、テーブルの上に置いた。素材は丁寧に保管されていたようだ。木箱の中に大きな犬が横たわっている。状態もかなり良い。ヘルハウンドの死体からは温かい魔力を感じる。きっと神聖な魔物なのだろう。

 ヘルハウンドを新しく召喚しても、勿論生前の記憶はない。全く新しい性格を持って生まれて来るだろう。だが、俺が召喚すれば、民を守る魔物が生まれるに違いない。俺は自分に授けられた力を、他人を助けるために使うと心に決めているからだ。

 召喚魔法で生まれる魔物の強さ、性格は基本的に召喚士の性質よって決まる。クーデルカの様に魂を用いて召喚すれば、生前の知識や記憶を持ったまま生まれる事が出来るが、召喚魔法は基本的に新たな生命を生む魔法である。

「それでは……これからヘルハウンドを召喚します」

 と言って俺はヘルハウンドの亡骸に両手を向けた。召喚のイメージは、人を助ける守り神。召喚士ギルドの人達と共に、人間を守れる様な強さ、心の優しさを持つ幻獣。俺は魔力を使い果たすつもりで、全力で魔力を注いだ。

『ヘルハウンド・召喚!』

 俺の魔力に反応したヘルハウンドの亡骸は、辺りに強い光を放った。穏やかな光の中からは、強い炎の魔力が流れ始めた。これがヘルハウンドの力か。暫くすると、光の中からヘルハウンドが姿を現した……。
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