召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光

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第二章「王国を目指して」

第百五話「仲間との別れ」

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 昨日は緊張してあまり眠れなかった。今日から魔王討伐のために海賊船で移動を始める。シルフは俺と共に目を覚ますと、俺はシルフの髪にブラシを掛け、服を着替えさせた。それからルナを起こすと、彼女は朝から部屋に備え付けてある食料を大量に食べた。海賊船ではまともに食事が出来ないと思っているのだろうか。

 気持ち良さそうに眠っているクーデルカの頭を撫でると、彼女は俺の手を握り、俺の体を抱き寄せた。俺の顔がクーデルカの豊かな胸に当たっている、驚くほど柔らかくて暖かい、幸せな感触だ。クーデルカは俺の唇に唇を重ねると、頬を赤らめながら俺の頭を撫でた。

 アイリーンはクーデルカから俺を奪うと、心地良さそうに何度も頬ずりをした。アイリーンとも今日で別れる事になるんだ、俺はアイリーンを強く抱きしめると、アイリーンは静かに涙を流した。

「大丈夫。必ず帰って来るよ」
「絶対に帰ってくるの……」
「ああ、約束だよ。そろそろ支度をしようか」
「わかったの」

 ルナの着替えを手伝いながら荷物を纏め、デュラハンの魔装を身につける。それから魔族のクリスを腰に差し、クーデルカのカメオを胸元に留める。父の力を持つ首飾りを身に着け、指環を嵌めてから、デュラハンの大剣を背負う。ついに準備は整った。

 仲間達を連れて一階に降りると、アルベルトさんとシャルロッテさんが待っていた。

「おはようございます、ボリンガー様!」
「おはようございます。アルベルトさん、シャルロッテさん」

 アルベルトさんは銀色のメイルの上に黒いローブを羽織っている。手には木製の長い杖を持っているが、メイルを着こんでいるところを見ると、接近戦闘にも心得があるのかもしれない。シャルロッテさんは今日も深緑色のローブを着ている。手にはルビーのロッドを持ち、頭には白い帽子を被っている。彼女は優しく微笑むと、俺の手を握った。

「サシャ。私達の命をあなたに預けます。どうか魔王を倒して下さい。私は皆さんを支えるために同行します」
「はい。任せて下さい。俺が必ず魔王を倒します」

 それから暫くすると、ゲルストナー達が降りてきた。俺はゲルストナーと無言で抱擁し、仲間を頼むと伝えた。ゲルストナーは静かに頷き、俺を強く抱きしめた。

「皆。暫く別れる事になるけど、俺達は必ず魔王を倒して戻ってくる」
「師匠……絶対に帰って来て下さいね! これからも一緒に居たいです!」
「勿論だよ。クリスタル」
「師匠……」

 クリスタルは大粒の涙を流しながら、俺を見上げた。俺はクリスタルを抱きしめると、彼女は俺の頬に雨のような接吻を降らせた。戻ってきたらクリスタルと過ごす時間も作ろう。俺は「守護のアイアンリング」を指から抜くと、クリスタルの指に嵌めた。クリスタルは俺を見つめると、何度も指環のお礼を言った。

 それからゲルストナーにお金を渡しておこう。海賊船の上ではお金は必要ないからな。手持ちの大半をゲルストナーに渡すと、彼は大切そうに懐に仕舞った。

「キング、アイリーン。仲間を頼むよ」
「任せるの」
「ワカッタ……」

 俺はキングのツヤツヤした頭を撫で、アイリーンの頬に口づけをした。アイリーンは俯いて涙を流し始めた。やはり仲間との別れは辛い。もしかすると、仲間達はもう二度と再会出来ないと思っているのではないだろうか。

 ガーゴイルはヨチヨチと近づいてくると、クリスタルは俺が守ると言わんばかりの表情を浮かべた。まだ武器も持っていないというのに、随分余裕のある態度をしているな。そうだ、使う事が無くなったグラディウスを渡そうか。俺は鞄からグラディウスを取り出してガーゴイルに渡すと、彼は満足そうに剣を腰に差した。

「さて。ボリンガー様、そろそろ参りますぞ……」
「そうだね。それじゃ皆。また会おう。アルテミシアを頼んだよ」

 宿の入り口に停めてあった馬車に乗り込み、俺達は仲間に見送られて宿を後にした……。

 魔王討伐パーティー:サシャ、シルフ、クーデルカ、ルナ、ワイバーン、シャルロッテ、エドガー、アルベルト。
 アルテミシア防衛パーティー:ゲルストナー、アイリーン、キング、ユニコーン、クリスタル、ガーゴイル。
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