召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光

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第三章「魔王討伐編」

第百十話「訓練の生活」

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 アルテミシアから魔王城までは海賊船で移動して約四ヶ月。俺達の激しすぎる訓練が始まった。海や空からの奇襲に警戒しながら、甲板の上で稽古をする。魔物が襲い掛かってくれば、甲板の上で待機しているワイバーンが敵を駆逐した。

 俺はヘルフリートから剣術の基礎を徹底的に教え込まれた。今まで俺は誰からも剣術を習った事が無かった。完璧に自己流でやってきた俺の剣術は、ヘルフリート曰く「素人そのもの」らしい。ちなみに、何度かヘルフリートと本気で打ち合いをしたが、全く歯が立たなかった。今の俺にはヘルファイア以外でヘルフリートにダメージを与えられる攻撃は存在しない。

 ルナはひたすらヘルフリートと打ち合っている。ルナの新装備である「デーモンのレイピア」と「疾風の魔装」はルナの潜在能力を大幅に引き上げているのだろう。ヘルフリート以上の攻撃速度で、次々と強烈な突きを繰り出す。二人とも動きが早すぎて、目で追う事も難しい。

 クーデルカはルナと連携して訓練を行っている。彼女はヘルフリートの提案で、氷のエンチャントを習得する事になり、旅に出てすぐに、パーティーメンバー全員の武器の氷を纏わせる事に成功した。氷を纏う剣の攻撃は、対象を切り裂いた後、対象の体を凍らせる効果がある。

 海賊船での移動は、午前はヘルフリートから剣の指導を受け、午後はパーティーで訓練を行う。剣や魔法の訓練以外にも、筋肉を付けるために、俺はエドガーと共にトレーニングを行い、筋肉の成長を促進させるために、大量の食事を摂り続けた。細かった腕は太くなり、胸板もかなり厚くなった。毎日剣を振り続けているからか、肩の筋肉も大きく成長した。体脂肪を増やさずに筋肉だけで十五キロ以上も増やす事に成功した。これもエドガーと大量のタンパク質を摂取し続けたからだ。

 パーティーの陣形にもこだわり、前衛は俺とヘルフリート、エドガーの三人が務める事になっている。最も防御力が高い俺が敵の攻撃を防ぎ、ヘルフリートが瞬時に攻撃を繰り出す。エドガーは俺とヘルフリートのサポートをしながら、魔法職を守る。アルベルトさんとシャルロッテさんは後方から魔法での援護を。クーデルカはルナと共に、仲間をサポートして戦う。

 パーティーの後衛はワイバーンだ。陣形の中でも特に危険な最後尾を任せられるのはワイバーンしか居ない。一体、魔王がどの様な攻撃を仕掛けてくるか分からないが、これだけ強力なメンバーが居れば、どんな相手にも勝てるような気がする。

 俺はシャルロッテさんとも何度か手合わせをしたが、彼女は意外と強い。魔力で作り上げた強力なガーディアンを召喚して戦うスタイルだ。シャルロッテさんが作り出す召喚獣は『光りの守護者ガーディアン』という名前の召喚獣らしい。ガーディアンは巨大な人形で、「マジックソード」という魔力の剣と「マジックシールド」を持って戦う。

 アルベルトさんは武器を召喚した戦い方が得意の様だ。特に強いのは、マジックランスという魔法。空中に無数の槍を召喚し、敵の頭上に落とす。クーデルカのアイシクルレインと同様の魔法だが、一撃の威力はマジックランスの方が高い。

 船での生活は毎日が忙しい。俺は人生で初めて釣りをした。海賊船から小さな船を降ろし、エドガーと共に食料の調達をする。船での生活は想像以上に充実しており、毎日早朝に起床し、十三時間以上は剣と魔法の訓練に費やしている。

 シルフも戦闘の訓練に参加し、普段は俺の肩の上に乗っている事が多い。シルフの使う「スピリットシールド」はかなり強力だ。俺のアースランサーやスラッシュなどの攻撃を簡単に防御する。

 俺達は四ヶ月間の移動を終え、魔王城が建つ魔大陸に到着した……。


〈ゲルストナー視点〉

 サシャが魔王討伐に向かってから二週間後、アルテミシアを取り囲む様に大量の魔物が現れた。まるで大陸中から強力な魔物が押し寄せている様だ。今のアルテミシアの状態を一言で表現するなら「壊滅」という言葉が適切だろうか。町はもう人が住める状態ではない。町の至る所で魔物が暴れている。

 無数の魔物が一気にアルテミシアの防衛を破り、町中で暴れ回っている。町の周辺に大量の魔物が沸いた時点で、町に滞在していた冒険者達は一斉に逃げ出した。アルテミス国王、国王軍の兵士は魔物と戦い続けているが、全滅するのは時間の問題だ。

 俺達はサシャと約束した通り、アルテミシアを守り続けている。毎日の魔物からの襲撃で、精神は疲れ果て、体は鉛の様に重い。俺達は都市を防衛している最中に、聖戦士のクラウディア・ファッシュという女性と出会った。

 魔王軍は知能の高い幻獣を指揮官とした小隊で構成されている。幻獣が魔獣クラスの魔物を率いて、計画的に町を襲撃しているのだ。このまま王国軍と魔王軍が戦い続ければ、王国軍は確実に負けるだろう。

 多くの住人が魔物に殺害され、町の至る所に人間の死体が散乱している。豊かだったアルテミシアが、今では朽ち果てた町と化している。

 魔王軍はサイクロプスにタイタン、トロールにオーガなど。育成関係の書物でしか見た事ない様な、邪悪で凶暴な幻獣で構成されている。サハギンの数も多く、港からは毎日の様に大量のサハギンが押し寄せてくる。

 俺達は命からがら、召喚士ギルドの地下室へと逃げ込んだ。絶望的だ。アルテミシアの町には多くの戦闘系ギルドが存在したが、魔王軍の奇襲が始まるや否や、すぐに町から逃げ出した。冒険者ギルドのメンバーは、町を守るために命を賭けて戦ったが、幻獣の相手をする事すら出来ず、魔獣クラスの魔物に殺害された。

 日の入らない地下室に潜伏しながら、アルテミシアを奪還する作戦を練っているが、この場所を嗅ぎ付けられるのは時間の問題だろう。一体どうすれば良いのだ。こんな状況を変えられるのはサシャしか居ない……。俺達の団長が居てくれれば、味方が少数だったとしても、剣一本で状況を好転させてくれるはずだ。サシャが居てくれれば……。

 俺達は絶望しながらも、生き延びる方法を模索し始めた……。
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