召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光

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第三章「魔王討伐編」

第百二十五話「魔王の力」

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 魔王はルナと私に剣を向けて挑発した。随分好戦的なのね。魔王本来の性格だろうか? それとも召喚士の性格かしら。それにしても、魔王の持つロングソードは並みの武器ではない。ルナのデーモンのレイピアや、サシャのデュラハンの大剣と同等。もしくはそれ以上の魔力を感じる。

 魔王……。エドガーのウィンドブローを一発で習得する才能、魔力。どれを取っても私が敵う相手ではない。魔王の強さは何処で身につけたのかしら。召喚士達の魔力だけでここまで強い力を身につけたとは思えない。それとも、生まれてから今までの間、ひたすら戦闘を繰り返して強くなったのかしら。今はそんな事を考えている余裕はないわ……。

「クーデルカ! 私をサポートして!」

 ルナは私の前に立ってレイピアを魔王に向けた。ルナが魔王と打ち合っている間に私がアイスフューリーを叩き込む。魔王相手にはマジックドレインは通用しないはず。マジックドレインは自分より魔力が低い相手にしか通用しない。

「クーデルカ! 行くわよ!」

 ルナが私に合図すると、ルナは魔王に向かって飛び掛かった。ルナは一瞬で魔王と距離を詰めた。早すぎて動きを目で追う事も出来なかった。ルナと魔王の激しい打ち合いが始まった。剣の技術は魔王の方が勝っている。魔王の剣の実力はヘルフリートと同等、もしくはそれ以上。魔力はキングとサシャとほぼ同レベル。かなり苦しい戦いになるわね。

 魔王はルナが放つ高速の剣技を全て受け流している。大広間には武器が激しく激突する金属音が鳴り響いている。ルナが本気で魔王に打ち込んでいるのに対し、魔王は余裕の表情を浮かべている。この戦いは長引かせるとまずい……。

 ルナが魔王から離れた瞬間に、全力を込めたアイスフューリーを撃つ、それしか魔王にダメージを与えられる方法はない。しかし、私の攻撃が全くダメージの通らない可能性もある。エドガーの攻撃を一瞬でかき消した左手の魔力。どんな魔法を使ったかは分からないけど、魔王にも弱点はあるはず。

「なかなかの剣の腕前だな。だが、俺の敵ではない」

 魔王が右手に持った剣でルナの攻撃を防いだ瞬間、左手でルナの胸部を殴り抜いた。魔王の攻撃は、ルナが装備している「疾風の魔装」を軽々と貫いた。魔王の腕がルナの胸部を貫通している……。ルナが一撃でやられるなんて。私は怒りに身を任せて魔力を放出させた。

『アイスフューリー!』

 杖の先からは、魔力で出来た無数の円盤状の氷の塊が魔王に向かって発射された。魔王は右手に持っているロングソードでアイスフューリーを全て切り落とした。

「弱いな……この少女の方が遊び甲斐があった……もうすぐ死ぬだろうがな……」

 戦いの一部始終を見ていたエドガーは放心状態から元に戻ったようだ。エドガーが魔王に襲い掛かると、魔王は左手をルナの体から抜いて、ルナを投げ捨てた。許さない……。

 エドガーが魔王に対してサーベルで切りかかると、魔王は一瞬でエドガーの背後に回り込み、左手でエドガーの体を貫いた。終わりだわ。私では勝てない。殺される……。地面に投げ捨てられたルナとエドガーの体からは大量の血と魔力が流れ出ている。ここで死ぬのね。サシャ……。殺される前にもう一度あなたの顔が見たい……。

「サシャ! 助けて!」

 私は声を振り絞って叫んだ。

「ほう……それがお前の最後の言葉か。サシャとやらは俺が殺してやる。すぐにあの世で再会出来るだろう……」

 魔王が私に対してロングソードを振り上げた……。殺される……。

「サシャ……」

 私は自分の死を覚悟して目を瞑った……。瞬間。

『グランドクロス!』

 魔王の体には巨大な魔法の十字架が激突した。魔王はグランドクロスを背後から受けて、一瞬で大広間の端まで吹き飛ばされた。

「サシャ!」

 扉の奥からは、サシャとシルフ、それに見知らぬ女性が姿を現した。

「クーデルカ! ルナはどうした!」

 私がルナを指さすと、サシャは床に倒れて血を流すルナとエドガーを見下ろした。シルフはルナとエドガーに回復の魔法を掛けた。

『スピリットウィンド!』

 シルフがスピリットウィンドを唱えると、ルナとエドガーの体に開いた穴は一瞬で塞がった。傷は塞がっても意識は回復していない……。

「サシャ……二人がこれ以上攻撃されたら死んじゃうよ」
「シルフ、二人とクーデルカを守ってくれ。俺とシャーロットで魔王を殺す!」

 サシャはシルフに命令を与えると、シルフは倒れているルナとエドガー、それに私に対してスピリットシールドを掛けた。

「クーデルカ、待たせたね……」

 サシャは私の体を抱きしめた……。

「サシャ、会いたかった……早く魔王を倒して……」

 サシャの体は燃えるように熱かった。ルナに対する攻撃は、サシャにとって最大のタブー。意識がないルナを見下ろすサシャは、今までにない程の魔力を体から放出させている。サシャはシャーロットと共に魔王の前に立った。

「お前には死んでもらうぞ。魔王……」

 サシャは左手にタワーシールドを持ち、右手に持った大剣にはサンダーボルトのエンチャントを掛けた。サシャのシールド、あれはヘルフリートの物。きっと彼も殺されたのね。魔王は床にロングソードを突き立てて立ち上がった。

「お前がサシャか。小汚い人間めが……俺を殺すだと? その娘とドワーフの様に一撃で殺してやる」

 魔王はサシャとシャーロットに向けて剣を構えた……。
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