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第三章「魔王討伐編」
第百三十一話「アルテミシア奪還作戦」
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〈アルテミシア奪還作戦〉
作戦が始まると、暗殺ギルドの連中は一瞬で戦場に飛び出した。物音一つ立てずに暗殺ギルドのメンバーが出発すると、魔術師ギルドのメンバーは冒険者達と王国軍の兵士とパーティーを組んで城を出た。
俺達騎士団には、クラウディアとサイクロプスが加わったが、作戦では普段通り騎士団のメンバーだけで行動する。今回の作戦で一番危険なのは、敵との戦闘回数が必然的に増える俺達騎士団メンバーに違いない。戦いに慣れてない冒険者や王国軍を幻獣討伐に加える事は危険すぎるため、クラウディアとサイクロプス以外はメンバーを増やさない事にした。
「今回の作戦は魔術師ギルドと暗殺ギルドの連中が敵を引きつけている間、離れた場所に居る小隊を見つけ出して叩く事だ。くれぐれも全面的に魔王軍と戦わない事! はぐれている小隊を見つけ出して末端から潰せ! クリスタルはサイクロプスとガーゴイルに指示を! 俺とアイリーンとクラウディアはユニコーンとキングの護衛。キングは敵を見つけ次第、幻獣から先に攻撃してくれ!」
俺達はすぐに城を出た。城がある『アルテミシア区』にはまだ魔王軍が侵入していない唯一の地域だ。アルテミシア区を進むと魔王軍が占拠している『商業区』『居住区』『ギルド区』が広がっている。魔術師ギルドと暗殺ギルドのメンバーは一番激しい戦闘が行われている商業区に向かった様だ。最後に商業区を見た時は、戦闘が出来る商人達と王国軍の兵士が魔王軍と戦いを繰り広げていた。魔王軍は戦力の大半を商業区の占領に費やしているに違いない。
ギルド区の住民は魔王軍の奇襲が始まってからすぐに逃げ出す者と、王国軍に加わって戦う者に分かれた。居住区は主に、アルテミシアに滞在する冒険者や、一般の市民しか住んでおらず、今回の奇襲で一番被害が大きい地域だ。魔王軍の奇襲に対抗できる戦力がギルド区と商業区、それにアルテミシア区に集中してしまったため、基本的には市民しか住んでいない居住区が魔王軍の恰好の的となった。
俺達は居住区に残っている市民や冒険者を救出しながら敵を探す事にした。居住区に入ると建物の半数城は魔王軍に破壊され、道の至る所には死体が放置されている。
「気をつけるの。死体の匂いで敵の匂いを感じ取れないの……」
「ああ、分かった。気をつけるとしよう」
俺達パーティーは、アイリーンと俺とクラウディアが防御力の低い仲間を守るような陣形を取っている。キングとクリスタル、それにユニコーンは陣形の中心で守られており、最後尾はサイクロプスとガーゴイルが守っている。
ちなみに、クリスタルはユニコーンの上に乗っている。戦闘経験が少ないクリスタルはユニコーンに守られていた方が安全だからだ。ユニコーンは攻撃が得意な幻獣ではないが、回復魔法において騎士団のメンバーで右に出る者は居ない。クリスタルが使うマジックシールドやアースウォール等の防御魔法と、回復を得意とするユニコーンは相性が良い。
サイクロプスとガーゴイルの戦力は今だ未知数だが、ガーゴイルは何故かサイクロプスの肩の上に乗ってくつろいでいる。サイクロプスの右手には、クリスタルが作り出した巨大な土のこん棒が握られている。土を極限までに硬質化させて武器を作り出す人間など、サシャ以外に存在しないと思っていたが、クリスタルはやはりサシャの弟子なのだろう。土を応用して武器を作り出す発想は、サシャがアースランサーを作り出した時と全く同じだ。
警戒しながら居住区を進む。魔王軍によって破壊しつくされた居住区の建物の中で、息をひそめて隠れている人達を何人か見つけ出した。救出した人達には城までの安全なルートを伝えて戻らせた。しばらく探索を続けていると、巨大な魔物の足音が聞こえた。サイクロプス以上に体の大きな魔物が歩く音……。幻獣クラスの魔物だろうか。
「ゲルストナー、敵が近いの……」
アイリーンが猫耳を立てて槍を構えている。クラウディアは聖騎士の印が入ったシールドとブロードソードを構えている。どちらの武器もかなりの魔力を感じる。話を聞いてみると、聖騎士に任命された時、国王陛下から直々に授かった武器らしい。キングは右手にメイスを構え、左手には強力な雷を発生させている。いつでもサンダーボルトが撃てるように準備しているのだろう。
「クリスタル! すぐに防御の魔法が使えるように!」
「わかりました!」
俺はクリスタルに指示を出した。戦闘経験が豊富なアイリーンとキング、クラウディアは、俺が指示しなくても勝手に動いてくれるが、クリスタルに関してはまだまだ戦闘に関しての知識が少ない。防御の魔法しか覚えていないクリスタルの役目は、敵の攻撃を少しでも防ぐ事。クリスタルの強力なマジックシールドは、魔獣程度の敵の攻撃なら軽々と防ぐ事が出来る。
俺達が居住区の路地で敵の出現を待ち構えていると、崩壊した建物の影からは黒い肌の巨体の魔物が姿を現した。幻獣のタイタンだ。魔王軍の小隊の大部分がタイタンが指揮している。俺が確認しただけで、幻獣はオーガ、サイクロプス、タイタン、トロールの四種類。
全て育成関係の書物でしか目にした事の無い邪悪な魔物だ。破壊行為を楽しむように行い、殺した人間を喰らう。幻獣の中でも特に凶悪なタイプの魔物だ。ユニコーンの様に、基本的には害のない魔物も数多く存在するが、生まれた瞬間から破壊行為のみを行い続ける悪質な魔物も存在する。
幻獣は自らの意思で魔王の配下に入ったのか、それとも魔王に命令されてアルテミシアを奇襲しているのか。後者なら、サシャ達が魔王を殺せばアルテミシアの襲撃を止めるに違いない。今はそんな事を考えている暇はない……。目の前に現れた、忌々しい幻獣を殺倒し、市民を救出しなければならないのだからな。
「ゲルストナー。大丈夫よ……私があなたを守るわ」
俺の隣でクラウディアは優しい笑みを浮かべて話しかけた。こんな時でも余裕があるのはどうしてだろうか。俺はまだ聖戦士の実力を知らない……。俺がロングソードを構えると、タイタンはこちらに向かって突進してきた。戦いの始まりだ……。
作戦が始まると、暗殺ギルドの連中は一瞬で戦場に飛び出した。物音一つ立てずに暗殺ギルドのメンバーが出発すると、魔術師ギルドのメンバーは冒険者達と王国軍の兵士とパーティーを組んで城を出た。
俺達騎士団には、クラウディアとサイクロプスが加わったが、作戦では普段通り騎士団のメンバーだけで行動する。今回の作戦で一番危険なのは、敵との戦闘回数が必然的に増える俺達騎士団メンバーに違いない。戦いに慣れてない冒険者や王国軍を幻獣討伐に加える事は危険すぎるため、クラウディアとサイクロプス以外はメンバーを増やさない事にした。
「今回の作戦は魔術師ギルドと暗殺ギルドの連中が敵を引きつけている間、離れた場所に居る小隊を見つけ出して叩く事だ。くれぐれも全面的に魔王軍と戦わない事! はぐれている小隊を見つけ出して末端から潰せ! クリスタルはサイクロプスとガーゴイルに指示を! 俺とアイリーンとクラウディアはユニコーンとキングの護衛。キングは敵を見つけ次第、幻獣から先に攻撃してくれ!」
俺達はすぐに城を出た。城がある『アルテミシア区』にはまだ魔王軍が侵入していない唯一の地域だ。アルテミシア区を進むと魔王軍が占拠している『商業区』『居住区』『ギルド区』が広がっている。魔術師ギルドと暗殺ギルドのメンバーは一番激しい戦闘が行われている商業区に向かった様だ。最後に商業区を見た時は、戦闘が出来る商人達と王国軍の兵士が魔王軍と戦いを繰り広げていた。魔王軍は戦力の大半を商業区の占領に費やしているに違いない。
ギルド区の住民は魔王軍の奇襲が始まってからすぐに逃げ出す者と、王国軍に加わって戦う者に分かれた。居住区は主に、アルテミシアに滞在する冒険者や、一般の市民しか住んでおらず、今回の奇襲で一番被害が大きい地域だ。魔王軍の奇襲に対抗できる戦力がギルド区と商業区、それにアルテミシア区に集中してしまったため、基本的には市民しか住んでいない居住区が魔王軍の恰好の的となった。
俺達は居住区に残っている市民や冒険者を救出しながら敵を探す事にした。居住区に入ると建物の半数城は魔王軍に破壊され、道の至る所には死体が放置されている。
「気をつけるの。死体の匂いで敵の匂いを感じ取れないの……」
「ああ、分かった。気をつけるとしよう」
俺達パーティーは、アイリーンと俺とクラウディアが防御力の低い仲間を守るような陣形を取っている。キングとクリスタル、それにユニコーンは陣形の中心で守られており、最後尾はサイクロプスとガーゴイルが守っている。
ちなみに、クリスタルはユニコーンの上に乗っている。戦闘経験が少ないクリスタルはユニコーンに守られていた方が安全だからだ。ユニコーンは攻撃が得意な幻獣ではないが、回復魔法において騎士団のメンバーで右に出る者は居ない。クリスタルが使うマジックシールドやアースウォール等の防御魔法と、回復を得意とするユニコーンは相性が良い。
サイクロプスとガーゴイルの戦力は今だ未知数だが、ガーゴイルは何故かサイクロプスの肩の上に乗ってくつろいでいる。サイクロプスの右手には、クリスタルが作り出した巨大な土のこん棒が握られている。土を極限までに硬質化させて武器を作り出す人間など、サシャ以外に存在しないと思っていたが、クリスタルはやはりサシャの弟子なのだろう。土を応用して武器を作り出す発想は、サシャがアースランサーを作り出した時と全く同じだ。
警戒しながら居住区を進む。魔王軍によって破壊しつくされた居住区の建物の中で、息をひそめて隠れている人達を何人か見つけ出した。救出した人達には城までの安全なルートを伝えて戻らせた。しばらく探索を続けていると、巨大な魔物の足音が聞こえた。サイクロプス以上に体の大きな魔物が歩く音……。幻獣クラスの魔物だろうか。
「ゲルストナー、敵が近いの……」
アイリーンが猫耳を立てて槍を構えている。クラウディアは聖騎士の印が入ったシールドとブロードソードを構えている。どちらの武器もかなりの魔力を感じる。話を聞いてみると、聖騎士に任命された時、国王陛下から直々に授かった武器らしい。キングは右手にメイスを構え、左手には強力な雷を発生させている。いつでもサンダーボルトが撃てるように準備しているのだろう。
「クリスタル! すぐに防御の魔法が使えるように!」
「わかりました!」
俺はクリスタルに指示を出した。戦闘経験が豊富なアイリーンとキング、クラウディアは、俺が指示しなくても勝手に動いてくれるが、クリスタルに関してはまだまだ戦闘に関しての知識が少ない。防御の魔法しか覚えていないクリスタルの役目は、敵の攻撃を少しでも防ぐ事。クリスタルの強力なマジックシールドは、魔獣程度の敵の攻撃なら軽々と防ぐ事が出来る。
俺達が居住区の路地で敵の出現を待ち構えていると、崩壊した建物の影からは黒い肌の巨体の魔物が姿を現した。幻獣のタイタンだ。魔王軍の小隊の大部分がタイタンが指揮している。俺が確認しただけで、幻獣はオーガ、サイクロプス、タイタン、トロールの四種類。
全て育成関係の書物でしか目にした事の無い邪悪な魔物だ。破壊行為を楽しむように行い、殺した人間を喰らう。幻獣の中でも特に凶悪なタイプの魔物だ。ユニコーンの様に、基本的には害のない魔物も数多く存在するが、生まれた瞬間から破壊行為のみを行い続ける悪質な魔物も存在する。
幻獣は自らの意思で魔王の配下に入ったのか、それとも魔王に命令されてアルテミシアを奇襲しているのか。後者なら、サシャ達が魔王を殺せばアルテミシアの襲撃を止めるに違いない。今はそんな事を考えている暇はない……。目の前に現れた、忌々しい幻獣を殺倒し、市民を救出しなければならないのだからな。
「ゲルストナー。大丈夫よ……私があなたを守るわ」
俺の隣でクラウディアは優しい笑みを浮かべて話しかけた。こんな時でも余裕があるのはどうしてだろうか。俺はまだ聖戦士の実力を知らない……。俺がロングソードを構えると、タイタンはこちらに向かって突進してきた。戦いの始まりだ……。
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