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第三章「魔王討伐編」
第百三十二話「勇者の誕生」
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タイタンが突進してくると、一番最初に敵に飛びかかったのはアイリーンだった。アイリーンはタイタンの頭上付近まで一気に飛び上がり、タイタンの頭に「神風の槍」を突き立てた。流石だな。敵が幻獣だとしても、全く怯むことなく攻撃を仕掛けられるのは、普段から幻獣よりも遥かに強力な幻魔獣の仲間と共に行動しているからだろうか。
アイリーンが放った攻撃は致命傷には至らなかった様だ。アイリーンはタイタンの頭から槍を抜いて地面に着地した。アイリーンの攻撃を受けたタイタンはすぐに反撃に出た。タイタンは拳を頭上高く振り上げ、地面に向けて思い切り叩き下ろした。
俺達の足元に落とされたタイタンの拳は、強い衝撃を生み出して地面を大きく揺らした。俺はすぐに防御の構えを取った。強烈な地震のような攻撃は、地面から俺の体に伝わって、俺の体を宙に浮かせた。しまった……。敵の攻撃の目的は、目の前を相手を宙に浮かせるのが事だったのか。
咄嗟に攻撃を回避したユニコーン、クリスタル、クラウディア、アイリーンは無事だった。ガーゴイルはタイタンが攻撃を仕掛けた瞬間にサイクロプスの肩の上から飛び上がった。敵の攻撃に対して咄嗟に武器を構えて防御した俺とサイクロプスは、地面からの強力な振動をもろに喰らってしまった。
まさか地面を叩く拳の衝撃で体が浮くとは……。俺は幻獣を見くびっていた様だ。攻撃を防げると思っていた。だが、このままやられる訳にはいかない! 体が空中に浮いた状態のまま、俺はタイタンに向かってロングソードの突きを放った。
不安定な状態から放たれた俺の剣は、虚しく空を裂いた。タイタンは俺の攻撃を軽々と回避すると、空中に浮く俺の体を両手で掴んだ。まずい……。タイタンが俺の体を両手で掴んだ瞬間、キングがサンダーボルトを放とうとした。
「駄目よキング! 今撃てばゲルストナーにも当たる!」
タイタンに体を掴まれた俺は、タイタンの巨大な手の中で必死に抵抗したが、力強く握られた両手はビクともしなかった。このままではまずい。握りつぶされそうだ。俺が捕まえられてすぐに、サイクロプスはタイタンの胴体に目がけてこん棒で強力な一撃を放った。
サイクロプスの放った一撃はタイタンの巨体を軽々と吹き飛ばした。攻撃をもろに喰らったタイタンは、掴んでいた俺の体を放した。助かったのか……? サイクロプスの攻撃を無防備の状態で受けたタイタンに対して、キングは間髪容れずにサンダーボルトを放った。キングのサンダーボルトは、爆音を立ててタイタンの頭上に落ちた。サンダーボルトを喰らったタイタンの体は一瞬で粉々に吹き飛んだ。
タイタンの体は一瞬で破壊され、血は蒸発し、骨が辺り一面に散乱している。幻獣の肉体を一撃で破壊する程の破壊力。これが幻魔獣の中でも上位に位置するスケルトンキングと幻獣の力の差。しかし恐ろしい威力だな……。以前より威力が上がっている気がする。これがキングの本当の魔力か。
キングの強力な魔法は、タイタンの手下の魔物の注意を引いた様だ。サンダーボルトの爆発音が居住区で鳴り響いた。これは「魔王軍に敵対する者がここに居る」と宣言するようなものだ。居住区で俺達が戦っている事を魔王軍に知られるのはまずい。可能ならば、物音を立てずに幻獣を仕留めたかったが、魔王軍の幻獣は手を抜いて勝てる相手ではない。俺達は一旦アルテミシア区に避難する事にした。
先程の戦闘で分かった事は、キングの攻撃は、当たれば魔王軍の幻獣程度の敵は即死させられる事。それから、サイクロプスの攻撃は幻獣相手でも通用する事だ。召喚されたばかりのサイクロプスでも攻撃力は十分高い。
きっと攻撃力は俺よりも遥かに高いだろう。召喚されたばかりの幻獣よりも弱いのは悔しいが、俺は防御力の低い仲間を守る盾として動いた方が良いだろう。俺達はその後、再び居住区に巣食う魔物を狩った。幸い、タイタン以上に強力な幻獣とは遭遇する事は無かった。
「今日はこの辺にしておきましょう」
何時間狩りを続けたか分からないが、今日一日で幻獣のタイタン、幻獣のオーガ、それから低級の魔獣を四十体以上倒す事が出来た。だが、これだけ倒しても戦いは終わらない。あまりにも数が多すぎる魔王軍の魔物は、とても一日で倒し切る事は出来ない。
「城に戻って休もう……」
この日から騎士団と王国軍、魔術師ギルドと暗殺ギルドの連合軍対魔王軍との本格的な戦いが始まった。基本的に昼夜を問わず戦い続けて、体力と魔力が限界になったら城に戻る。魔王軍との戦いが始まってすぐにヘルハウンドと再会する事が出来た。ヘルハウンドは召喚士ギルドの生き残りを守りながら、崩壊した建物の中で身を潜めて隠れていた様だ。ヘルハウンドには魔王軍との戦いに参加してもらう事にした。
現在、一番戦闘が激しい地域は、商業区にある正門前だ。正門を既に突破した魔王軍の軍勢は、一匹残らず倒す事が出来た。ヘルハウンドが加わってからの我が騎士団は負けなしだった。魔王軍との戦闘において、後退する事も逃げ出す事も無くなった。
俺達の戦い方は、ヘルハウンドとサイクロプス、それに俺とアイリーン、クラウディアがキングを守りながら戦い、キングは後方からサンダーボルトとヘルファイアを駆使して敵を倒す。完璧なコンビネーションだった。怪我人が出れば、すぐにユニコーンに乗ったクリスタルが回復に向かった。俺達は順調に魔王軍の手下を駆逐した。
魔王軍の奇襲が始まってから約四カ月程が経った。ある日の夕方、城内で体力を回復させていた時、突然ギルドカードが光り輝いた。今までに見た事ない程の激しい光りを放って輝いたギルドカードを確認すると、そこには目を疑う内容が表示されていた。
『ボリンガー騎士団』
団長:『勇者 LV120 サシャ・ボリンガー』
「クラウディア! アイリーン! ちょっと来てくれ!」
俺はギルドカードを確認するとすぐに仲間を呼んだ。
「サシャが魔王を倒したの……?」
「ええ、そうに違いないわ! ボリンガー様が魔王を倒したのよ!」
クラウディアがギルドカードを確認すると、城内に残っていた者は急いで俺のギルドカードを確認しに来た。
「本当だ……ボリンガー騎士団の団長が魔王を倒したぞ!」
「召喚士のボリンガー様が魔王を倒した!」
ありえない形で魔王の討伐の事実を知ってから数時間後、魔王軍の軍勢が一斉に撤退した。ついにサシャがやってくれた……。俺達の勝利だ。長かった……。サシャが魔王討伐に向かってから四カ月ほど経過しただろうか。忙しすぎて正確に日にちを数える事すら出来なかった。魔王軍との闘いで、多くの市民、冒険者が無残に殺された。だが、ボリンガー騎士団のメンバーが誰一人殺されなかったのは不幸中の幸いだ。
「ブラック殿、勇者ボリンガーがアルテミシアに戻るまでの間も、我々と共に町を立て直してくれないだろうか……」
「無論です。我々は団長のボリンガーからアルテミシアの防衛を命じられました。私達にできる事なら何でも協力するつもりです」
「そうか……その言葉を聞いて安心したぞ! 私も早く勇者殿に会ってみたいものだな。アルテミス大陸の救世主、勇者、サシャ・ボリンガー」
サシャが勇者になった日、長きに渡る魔王軍との戦が終結した。やはりサシャに付いて来たのは正解だったのだな。俺の判断は正しかった……。幻魔獣に認められた冒険者。彼がどう生きるか、俺は傍で見ていたかった。初めてサシャと会った時から、俺は彼の強さを感じていた。やはりサシャは偉大な男だった。まさか十五歳で魔王を討伐し、大陸を救って勇者になるとは……。
「ゲルストナー、あなたも良くやったわ。私達は何度もあなたの判断力に救われた……あなた無しでは今のアルテミシアは存在しないわ」
クラウディアは俺の右腕に両腕を絡ませた。俺は魔王軍との戦闘でクラウディアに何度も命を救われた。恥ずかしい話だが、戦闘に関してはクラウディアやキングに任せ切りだった。俺は魔王軍との戦闘においては指揮官として動き、仲間を守る盾として行動し続けた。
敵の攻撃を率先して受け、大きなダメージを負えば、ユニコーンに回復して貰った。ユニコーンが居たから、俺は無謀な戦い方が出来た。サシャにユニコーンの素材を渡した事が、俺の命や市民の命を救う事に繋がったのだ。
「ブラック殿、あなたの活躍のお陰で、我々は最後まで希望を失わずに戦い続ける事が出来た……勇者殿が帰還したら、今回の戦いの報酬として王国内での地位を与えよう」
「ありがとうございます、陛下」
サシャよ……。やっと努力が報われたなのだな。魔王討伐に向かった仲間達。無事に帰ってきてくれよ……。俺達は終戦の日から、すぐにアルテミシアの再建に取り掛かった。
アイリーンが放った攻撃は致命傷には至らなかった様だ。アイリーンはタイタンの頭から槍を抜いて地面に着地した。アイリーンの攻撃を受けたタイタンはすぐに反撃に出た。タイタンは拳を頭上高く振り上げ、地面に向けて思い切り叩き下ろした。
俺達の足元に落とされたタイタンの拳は、強い衝撃を生み出して地面を大きく揺らした。俺はすぐに防御の構えを取った。強烈な地震のような攻撃は、地面から俺の体に伝わって、俺の体を宙に浮かせた。しまった……。敵の攻撃の目的は、目の前を相手を宙に浮かせるのが事だったのか。
咄嗟に攻撃を回避したユニコーン、クリスタル、クラウディア、アイリーンは無事だった。ガーゴイルはタイタンが攻撃を仕掛けた瞬間にサイクロプスの肩の上から飛び上がった。敵の攻撃に対して咄嗟に武器を構えて防御した俺とサイクロプスは、地面からの強力な振動をもろに喰らってしまった。
まさか地面を叩く拳の衝撃で体が浮くとは……。俺は幻獣を見くびっていた様だ。攻撃を防げると思っていた。だが、このままやられる訳にはいかない! 体が空中に浮いた状態のまま、俺はタイタンに向かってロングソードの突きを放った。
不安定な状態から放たれた俺の剣は、虚しく空を裂いた。タイタンは俺の攻撃を軽々と回避すると、空中に浮く俺の体を両手で掴んだ。まずい……。タイタンが俺の体を両手で掴んだ瞬間、キングがサンダーボルトを放とうとした。
「駄目よキング! 今撃てばゲルストナーにも当たる!」
タイタンに体を掴まれた俺は、タイタンの巨大な手の中で必死に抵抗したが、力強く握られた両手はビクともしなかった。このままではまずい。握りつぶされそうだ。俺が捕まえられてすぐに、サイクロプスはタイタンの胴体に目がけてこん棒で強力な一撃を放った。
サイクロプスの放った一撃はタイタンの巨体を軽々と吹き飛ばした。攻撃をもろに喰らったタイタンは、掴んでいた俺の体を放した。助かったのか……? サイクロプスの攻撃を無防備の状態で受けたタイタンに対して、キングは間髪容れずにサンダーボルトを放った。キングのサンダーボルトは、爆音を立ててタイタンの頭上に落ちた。サンダーボルトを喰らったタイタンの体は一瞬で粉々に吹き飛んだ。
タイタンの体は一瞬で破壊され、血は蒸発し、骨が辺り一面に散乱している。幻獣の肉体を一撃で破壊する程の破壊力。これが幻魔獣の中でも上位に位置するスケルトンキングと幻獣の力の差。しかし恐ろしい威力だな……。以前より威力が上がっている気がする。これがキングの本当の魔力か。
キングの強力な魔法は、タイタンの手下の魔物の注意を引いた様だ。サンダーボルトの爆発音が居住区で鳴り響いた。これは「魔王軍に敵対する者がここに居る」と宣言するようなものだ。居住区で俺達が戦っている事を魔王軍に知られるのはまずい。可能ならば、物音を立てずに幻獣を仕留めたかったが、魔王軍の幻獣は手を抜いて勝てる相手ではない。俺達は一旦アルテミシア区に避難する事にした。
先程の戦闘で分かった事は、キングの攻撃は、当たれば魔王軍の幻獣程度の敵は即死させられる事。それから、サイクロプスの攻撃は幻獣相手でも通用する事だ。召喚されたばかりのサイクロプスでも攻撃力は十分高い。
きっと攻撃力は俺よりも遥かに高いだろう。召喚されたばかりの幻獣よりも弱いのは悔しいが、俺は防御力の低い仲間を守る盾として動いた方が良いだろう。俺達はその後、再び居住区に巣食う魔物を狩った。幸い、タイタン以上に強力な幻獣とは遭遇する事は無かった。
「今日はこの辺にしておきましょう」
何時間狩りを続けたか分からないが、今日一日で幻獣のタイタン、幻獣のオーガ、それから低級の魔獣を四十体以上倒す事が出来た。だが、これだけ倒しても戦いは終わらない。あまりにも数が多すぎる魔王軍の魔物は、とても一日で倒し切る事は出来ない。
「城に戻って休もう……」
この日から騎士団と王国軍、魔術師ギルドと暗殺ギルドの連合軍対魔王軍との本格的な戦いが始まった。基本的に昼夜を問わず戦い続けて、体力と魔力が限界になったら城に戻る。魔王軍との戦いが始まってすぐにヘルハウンドと再会する事が出来た。ヘルハウンドは召喚士ギルドの生き残りを守りながら、崩壊した建物の中で身を潜めて隠れていた様だ。ヘルハウンドには魔王軍との戦いに参加してもらう事にした。
現在、一番戦闘が激しい地域は、商業区にある正門前だ。正門を既に突破した魔王軍の軍勢は、一匹残らず倒す事が出来た。ヘルハウンドが加わってからの我が騎士団は負けなしだった。魔王軍との戦闘において、後退する事も逃げ出す事も無くなった。
俺達の戦い方は、ヘルハウンドとサイクロプス、それに俺とアイリーン、クラウディアがキングを守りながら戦い、キングは後方からサンダーボルトとヘルファイアを駆使して敵を倒す。完璧なコンビネーションだった。怪我人が出れば、すぐにユニコーンに乗ったクリスタルが回復に向かった。俺達は順調に魔王軍の手下を駆逐した。
魔王軍の奇襲が始まってから約四カ月程が経った。ある日の夕方、城内で体力を回復させていた時、突然ギルドカードが光り輝いた。今までに見た事ない程の激しい光りを放って輝いたギルドカードを確認すると、そこには目を疑う内容が表示されていた。
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俺はギルドカードを確認するとすぐに仲間を呼んだ。
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クラウディアがギルドカードを確認すると、城内に残っていた者は急いで俺のギルドカードを確認しに来た。
「本当だ……ボリンガー騎士団の団長が魔王を倒したぞ!」
「召喚士のボリンガー様が魔王を倒した!」
ありえない形で魔王の討伐の事実を知ってから数時間後、魔王軍の軍勢が一斉に撤退した。ついにサシャがやってくれた……。俺達の勝利だ。長かった……。サシャが魔王討伐に向かってから四カ月ほど経過しただろうか。忙しすぎて正確に日にちを数える事すら出来なかった。魔王軍との闘いで、多くの市民、冒険者が無残に殺された。だが、ボリンガー騎士団のメンバーが誰一人殺されなかったのは不幸中の幸いだ。
「ブラック殿、勇者ボリンガーがアルテミシアに戻るまでの間も、我々と共に町を立て直してくれないだろうか……」
「無論です。我々は団長のボリンガーからアルテミシアの防衛を命じられました。私達にできる事なら何でも協力するつもりです」
「そうか……その言葉を聞いて安心したぞ! 私も早く勇者殿に会ってみたいものだな。アルテミス大陸の救世主、勇者、サシャ・ボリンガー」
サシャが勇者になった日、長きに渡る魔王軍との戦が終結した。やはりサシャに付いて来たのは正解だったのだな。俺の判断は正しかった……。幻魔獣に認められた冒険者。彼がどう生きるか、俺は傍で見ていたかった。初めてサシャと会った時から、俺は彼の強さを感じていた。やはりサシャは偉大な男だった。まさか十五歳で魔王を討伐し、大陸を救って勇者になるとは……。
「ゲルストナー、あなたも良くやったわ。私達は何度もあなたの判断力に救われた……あなた無しでは今のアルテミシアは存在しないわ」
クラウディアは俺の右腕に両腕を絡ませた。俺は魔王軍との戦闘でクラウディアに何度も命を救われた。恥ずかしい話だが、戦闘に関してはクラウディアやキングに任せ切りだった。俺は魔王軍との戦闘においては指揮官として動き、仲間を守る盾として行動し続けた。
敵の攻撃を率先して受け、大きなダメージを負えば、ユニコーンに回復して貰った。ユニコーンが居たから、俺は無謀な戦い方が出来た。サシャにユニコーンの素材を渡した事が、俺の命や市民の命を救う事に繋がったのだ。
「ブラック殿、あなたの活躍のお陰で、我々は最後まで希望を失わずに戦い続ける事が出来た……勇者殿が帰還したら、今回の戦いの報酬として王国内での地位を与えよう」
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