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第三章「魔王討伐編」
第百四十二話「勇者と王女の約束」
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陛下との有意義な会話を終えて、俺はすぐにエミリアを探しに向かった。俺は城の兵士からエミリアの場所を聞く事にした。
「すみません。私は勇者ボリンガーですが、エミリア王女の居場所を教えて頂いても良いですか?」
「勇者様! エミリア様は中庭でユニコーン様のブラッシングをされていますよ! 中庭まで案内します!」
「ありがとうございます。それではお願いします」
兵士は俺の事を知っている様だ。昨日の宴で知名度が上がったのだろうか。俺は兵士に案内されて中庭に着いた。
「それでは勇者様! 良い一日を!」
兵士は俺に一礼をすると、引き続き城内の警備に戻ったようだ。俺は中庭で楽しそうにユニコーンにブラシをかけるエミリアを見つけた。ユニコーンが嬉しそうエミリアを見つめている。知能の高い幻獣が召喚士以外に気を許すとは、珍しい事もあるのだな。基本的に、俺の召喚獣は俺の仲間以外には懐かない。知能が高い幻獣や幻魔獣は、自分が力を認めた者以外と関わる事は無い。
「エミリア。ユニコーンと一緒だったんだね」
中庭ではヘルハウンドが眠たそうに横になっていた。サイクロプスは巨体を活かして町の復興を手伝っている様だ。ワイバーンは城と町の付近を自主的に警備している。きっと警備という名の獲物探しに違いない……。
「サシャ! お父様と話してくれた? 任命式の後、サシャはお父様と一緒だったわね」
エミリアはユニコーンにブラシを掛けながら嬉しそうに俺の顔を見上げた。背中にはなぜか雷撃の盾を背負っている。
「ああ。陛下に呼ばれて話をしていたんだけど、エミリアの魔法の使用を許可して貰えたよ」
「本当? それは嬉しいわ! やっぱりサシャは出来る男ね。お父様を説得して下さるなんて!」
「だけどエミリア、陛下はエミリアの魔法の使用に関して条件を付けられたんだよ」
「条件? 魔法が使えるなら何でもするわ!」
「それは……魔法は必ず俺から教わる事。俺から教わった魔法以外は使わない事だよ」
「条件ってそんなに簡単な事? サシャが私に魔法を教えてくれるの? やった!」
エミリアは喜んで俺の頬に口づけをした。なんだか恥ずかしいな。俺はエミリアの頭を撫でると、彼女は俺を手を握って笑みを浮かべた。
「だけど、魔法を教えるのは俺が時間に余裕がある時だけだよ。陛下の条件は絶対に守る事! 俺が許可した魔法以外は使わない事。この条件を守れるなら、アルテミスの勇者、サシャ・ボリンガーがエミリア姫殿下の魔法の先生になりましょう!」
「勿論守るわ! 私はサシャとお父様を裏切ったりはしないわ。よろしくね! 私の勇者様……」
エミリアは小さな手を俺に差し出した。俺はエミリアの手を握ると、エミリアの優しい魔力が俺の体に伝わった。この子は偉大な魔術師になるに違いない。この子の魔力の総量はクーデルカやシャーロットと同等だろう。力強くも優しい魔力を感じる。鍛え甲斐がありそうだ。
しかし、問題が一つあるな。俺には既に弟子が一人居る。クリスタルには弟子を卒業して貰った方がいいだろうか? 既に彼女は幻獣の召喚に成功し、大召喚士の称号も得た。もう俺が教えられる事は無いだろう。クリスタルにはこれからは自分の頭で考えて、自分で判断して強くなって貰おう。今日の夜にでも卒業の件を伝えようか……。
それから、エミリアに魔法を教えるなら強力な杖があった方が良いだろう。せっかくだから、彼女の初めての杖は俺が作ってあげる事にしよう。
「エミリア、俺は少し用事があるから町に出てくるよ。魔法の授業の事については、これから時間を掛けて考えるからね」
「わかったわ! 楽しみに待ってる!」
俺はユニコーンに乗って町に出る事にした。まずは町の様子でも見に行くか。剣の作り直しを頼んだ相手に挨拶もしておいた方が良いだろう。兵士から話を聞くと、陛下が勇者の剣の作り直しを頼んだのはエドガーの兄、エイブラハムらしい。以前、魔王討伐に向かう前に仲間の装備を選んで貰った店の店長だ。
俺は商業区に位置するエイブラハムの店に向かう事にした。アルテミシア区を抜けて商業区に入ると、市民や冒険者が復興のために力を合わせて作業をしていた。破壊された店や建物を修復する者、城壁を修理する者が居る。人間や獣人、魔族や魔物が力を合わせて作業している姿は何とも感動的だ。
俺の仲間達も任命式が終わってすぐに復興の手伝いを始めた様だ。クリスタルはサイクロプスに指示を与えて城壁の修理に使う大きな岩を運んでいる。ゲルストナーは兵士に復興の指示をしている。残りのメンバーも自主的に町の復興を手助けしている様だ。キングは魔術師ギルドのメンバーと一緒に、魔法を使って家を修復している。町の様子を見ながらエドガーの兄の店に向かっていると、市民や冒険者が俺の元に集まってきた。
「ボリンガー様! 魔王を討伐してくれてありがとうございます! 是非、今度私の店に来てください!」
「勇者様! あなたのお陰でアルテミス大陸は救われました!」
「魔王討伐の勇者、ボリンガー様万歳!」
市民や冒険者から感謝されるのも悪い気分ではないが、俺は名声が欲しくて魔王を倒した訳ではない。仲間が安心して暮らせる世の中を作るためだ。この地に住む全ての人間が平和に生きられる世の中を作るため。
しばらくユニコーンを走らせると、エイブラハムの店に到着した。なんと、店は奇跡的に傷一つない。高レベルの冒険者でもある店主が死ぬ気で店を守ったからに違いない。店の扉を開けると、店主のエイブラハムが俺の元に駆け付けてきた。
「サシャ! 久しぶりだな! 弟は元気か? 魔王を倒したんだってな! ありがとうよ! さっき大臣から勇者の剣の作り直しを依頼されたよ。実は既に完成している」
と言ってエイブラハムは俺に一振りの剣を手渡した。
「これはサシャの体の大きさに合わせて作り直したのだ。剣は自分の体に合った大きさでなければならない。鞘から抜いてみてくれ」
俺はエイブラハムから受け取った剣を鞘から抜くと、力強い光が放たれた。剣の魔力が店中に広がり、店内には神聖な魔力が充満した。剣は魔王が使っていた時よりも、かなり落ち着いた魔力を放っている。魔王が使用してい時は強力な禍々しい魔力を放っていたからな。剣の鞘を見ると、アルテミス王国の紋章と俺の名前が刻まれている事に気が付いた。「アルテミスの勇者 サシャ・ボリンガー」これで正式に俺の剣になったという訳か。
「それからサシャ、以前から気になっていたんだが、デュラハンの大剣も作り直そうか? 大剣はサシャの体の大きさには合わない。身長があと二十センチ足りないだろうな。その大剣は元々デュラハンのために作られた大剣だろう? 弟からデュラハンの話は聞いたが、かなりの大男だって言うじゃないか」
確かに、大剣は前から少し大きすぎると思っていた。持ち運ぶのも少し不便だったしな。俺はデュラハンの大剣をエイブラハムに渡すと、軽々と片手で剣を振った。力自慢のゲルストナーでも、この大剣は両手じゃなければ持ち上がらない。
「うむ、良い剣だな。前から鍛えてみたいと思っていたんだ。それからもう一つ気になるのは、その腰に差しているクリスだが、二刀流をするならクリスよりも更に良い武器の形状があるぞ。クリスは二刀流には向かない……」
確かに、クリスは敵の攻撃を防ぐための武器ではない。どちらかと言えば暗殺者などが好んで使う武器。ショートソードよりも短く、敵に接近しなければ切りつける事も出来ない。エイブラハムは俺の事をよく見ているんだな。俺は魔族のクリスをエイブラハムに渡した。
「うむ。素直で宜しい。これも誰かから貰った武器だろう? サシャのために作られた武器ではない事はすぐに分かった。これは魔族が鍛えた武器だな。どれ……早速作り直してやろう。すぐに終わるから店の中で待っていると良い」
と言ってエイブラハムは大剣とクリスを持って作業場に戻った。作り直しがすぐに終わるとは、どういう事なのだろうか。もしかしてエイブラハムは俺と同じような武器の作り方をしているのだろうか。金属を溶かして、クラフトの魔法で生成する。そうでなければ短時間で武器の作り直しは出来ないだろう。
しかし……クリスが二刀流に向かないとは知らなかったな。一体どんな武器に生まれ変わるのだろう。楽しみで仕方がない。彼は伝説の鍛冶職人の称号を持つ職人だ。装備に関しては全て彼の指示に従った方が良いに違いない。
俺は店内の武器を見て回っていると、杖が陳列されている場所で一振りの上等な杖を見つけた。青白い金属から作られた杖で、先端にはクリスタルが付いている。短めのロッドで使いやすそうだ。杖の名は「聖者のロッド」。クリスタルの卒業祝いに、このロッドをプレゼントする事にしよう。俺はエイブラハムが戻るまで、店の中の武器や防具を見ながら時間を潰した。
「すみません。私は勇者ボリンガーですが、エミリア王女の居場所を教えて頂いても良いですか?」
「勇者様! エミリア様は中庭でユニコーン様のブラッシングをされていますよ! 中庭まで案内します!」
「ありがとうございます。それではお願いします」
兵士は俺の事を知っている様だ。昨日の宴で知名度が上がったのだろうか。俺は兵士に案内されて中庭に着いた。
「それでは勇者様! 良い一日を!」
兵士は俺に一礼をすると、引き続き城内の警備に戻ったようだ。俺は中庭で楽しそうにユニコーンにブラシをかけるエミリアを見つけた。ユニコーンが嬉しそうエミリアを見つめている。知能の高い幻獣が召喚士以外に気を許すとは、珍しい事もあるのだな。基本的に、俺の召喚獣は俺の仲間以外には懐かない。知能が高い幻獣や幻魔獣は、自分が力を認めた者以外と関わる事は無い。
「エミリア。ユニコーンと一緒だったんだね」
中庭ではヘルハウンドが眠たそうに横になっていた。サイクロプスは巨体を活かして町の復興を手伝っている様だ。ワイバーンは城と町の付近を自主的に警備している。きっと警備という名の獲物探しに違いない……。
「サシャ! お父様と話してくれた? 任命式の後、サシャはお父様と一緒だったわね」
エミリアはユニコーンにブラシを掛けながら嬉しそうに俺の顔を見上げた。背中にはなぜか雷撃の盾を背負っている。
「ああ。陛下に呼ばれて話をしていたんだけど、エミリアの魔法の使用を許可して貰えたよ」
「本当? それは嬉しいわ! やっぱりサシャは出来る男ね。お父様を説得して下さるなんて!」
「だけどエミリア、陛下はエミリアの魔法の使用に関して条件を付けられたんだよ」
「条件? 魔法が使えるなら何でもするわ!」
「それは……魔法は必ず俺から教わる事。俺から教わった魔法以外は使わない事だよ」
「条件ってそんなに簡単な事? サシャが私に魔法を教えてくれるの? やった!」
エミリアは喜んで俺の頬に口づけをした。なんだか恥ずかしいな。俺はエミリアの頭を撫でると、彼女は俺を手を握って笑みを浮かべた。
「だけど、魔法を教えるのは俺が時間に余裕がある時だけだよ。陛下の条件は絶対に守る事! 俺が許可した魔法以外は使わない事。この条件を守れるなら、アルテミスの勇者、サシャ・ボリンガーがエミリア姫殿下の魔法の先生になりましょう!」
「勿論守るわ! 私はサシャとお父様を裏切ったりはしないわ。よろしくね! 私の勇者様……」
エミリアは小さな手を俺に差し出した。俺はエミリアの手を握ると、エミリアの優しい魔力が俺の体に伝わった。この子は偉大な魔術師になるに違いない。この子の魔力の総量はクーデルカやシャーロットと同等だろう。力強くも優しい魔力を感じる。鍛え甲斐がありそうだ。
しかし、問題が一つあるな。俺には既に弟子が一人居る。クリスタルには弟子を卒業して貰った方がいいだろうか? 既に彼女は幻獣の召喚に成功し、大召喚士の称号も得た。もう俺が教えられる事は無いだろう。クリスタルにはこれからは自分の頭で考えて、自分で判断して強くなって貰おう。今日の夜にでも卒業の件を伝えようか……。
それから、エミリアに魔法を教えるなら強力な杖があった方が良いだろう。せっかくだから、彼女の初めての杖は俺が作ってあげる事にしよう。
「エミリア、俺は少し用事があるから町に出てくるよ。魔法の授業の事については、これから時間を掛けて考えるからね」
「わかったわ! 楽しみに待ってる!」
俺はユニコーンに乗って町に出る事にした。まずは町の様子でも見に行くか。剣の作り直しを頼んだ相手に挨拶もしておいた方が良いだろう。兵士から話を聞くと、陛下が勇者の剣の作り直しを頼んだのはエドガーの兄、エイブラハムらしい。以前、魔王討伐に向かう前に仲間の装備を選んで貰った店の店長だ。
俺は商業区に位置するエイブラハムの店に向かう事にした。アルテミシア区を抜けて商業区に入ると、市民や冒険者が復興のために力を合わせて作業をしていた。破壊された店や建物を修復する者、城壁を修理する者が居る。人間や獣人、魔族や魔物が力を合わせて作業している姿は何とも感動的だ。
俺の仲間達も任命式が終わってすぐに復興の手伝いを始めた様だ。クリスタルはサイクロプスに指示を与えて城壁の修理に使う大きな岩を運んでいる。ゲルストナーは兵士に復興の指示をしている。残りのメンバーも自主的に町の復興を手助けしている様だ。キングは魔術師ギルドのメンバーと一緒に、魔法を使って家を修復している。町の様子を見ながらエドガーの兄の店に向かっていると、市民や冒険者が俺の元に集まってきた。
「ボリンガー様! 魔王を討伐してくれてありがとうございます! 是非、今度私の店に来てください!」
「勇者様! あなたのお陰でアルテミス大陸は救われました!」
「魔王討伐の勇者、ボリンガー様万歳!」
市民や冒険者から感謝されるのも悪い気分ではないが、俺は名声が欲しくて魔王を倒した訳ではない。仲間が安心して暮らせる世の中を作るためだ。この地に住む全ての人間が平和に生きられる世の中を作るため。
しばらくユニコーンを走らせると、エイブラハムの店に到着した。なんと、店は奇跡的に傷一つない。高レベルの冒険者でもある店主が死ぬ気で店を守ったからに違いない。店の扉を開けると、店主のエイブラハムが俺の元に駆け付けてきた。
「サシャ! 久しぶりだな! 弟は元気か? 魔王を倒したんだってな! ありがとうよ! さっき大臣から勇者の剣の作り直しを依頼されたよ。実は既に完成している」
と言ってエイブラハムは俺に一振りの剣を手渡した。
「これはサシャの体の大きさに合わせて作り直したのだ。剣は自分の体に合った大きさでなければならない。鞘から抜いてみてくれ」
俺はエイブラハムから受け取った剣を鞘から抜くと、力強い光が放たれた。剣の魔力が店中に広がり、店内には神聖な魔力が充満した。剣は魔王が使っていた時よりも、かなり落ち着いた魔力を放っている。魔王が使用してい時は強力な禍々しい魔力を放っていたからな。剣の鞘を見ると、アルテミス王国の紋章と俺の名前が刻まれている事に気が付いた。「アルテミスの勇者 サシャ・ボリンガー」これで正式に俺の剣になったという訳か。
「それからサシャ、以前から気になっていたんだが、デュラハンの大剣も作り直そうか? 大剣はサシャの体の大きさには合わない。身長があと二十センチ足りないだろうな。その大剣は元々デュラハンのために作られた大剣だろう? 弟からデュラハンの話は聞いたが、かなりの大男だって言うじゃないか」
確かに、大剣は前から少し大きすぎると思っていた。持ち運ぶのも少し不便だったしな。俺はデュラハンの大剣をエイブラハムに渡すと、軽々と片手で剣を振った。力自慢のゲルストナーでも、この大剣は両手じゃなければ持ち上がらない。
「うむ、良い剣だな。前から鍛えてみたいと思っていたんだ。それからもう一つ気になるのは、その腰に差しているクリスだが、二刀流をするならクリスよりも更に良い武器の形状があるぞ。クリスは二刀流には向かない……」
確かに、クリスは敵の攻撃を防ぐための武器ではない。どちらかと言えば暗殺者などが好んで使う武器。ショートソードよりも短く、敵に接近しなければ切りつける事も出来ない。エイブラハムは俺の事をよく見ているんだな。俺は魔族のクリスをエイブラハムに渡した。
「うむ。素直で宜しい。これも誰かから貰った武器だろう? サシャのために作られた武器ではない事はすぐに分かった。これは魔族が鍛えた武器だな。どれ……早速作り直してやろう。すぐに終わるから店の中で待っていると良い」
と言ってエイブラハムは大剣とクリスを持って作業場に戻った。作り直しがすぐに終わるとは、どういう事なのだろうか。もしかしてエイブラハムは俺と同じような武器の作り方をしているのだろうか。金属を溶かして、クラフトの魔法で生成する。そうでなければ短時間で武器の作り直しは出来ないだろう。
しかし……クリスが二刀流に向かないとは知らなかったな。一体どんな武器に生まれ変わるのだろう。楽しみで仕方がない。彼は伝説の鍛冶職人の称号を持つ職人だ。装備に関しては全て彼の指示に従った方が良いに違いない。
俺は店内の武器を見て回っていると、杖が陳列されている場所で一振りの上等な杖を見つけた。青白い金属から作られた杖で、先端にはクリスタルが付いている。短めのロッドで使いやすそうだ。杖の名は「聖者のロッド」。クリスタルの卒業祝いに、このロッドをプレゼントする事にしよう。俺はエイブラハムが戻るまで、店の中の武器や防具を見ながら時間を潰した。
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この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
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