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第四章「騎士団編」
第百三十五話「王女との出会い」
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国王の計らいにより、魔王討伐を祝う宴が開かれた。参加者は、国王、大臣、王女、王国軍の兵士、ボリンガー騎士団、暗殺ギルド、魔術師ギルド、その他今回の魔王との戦いに参加した冒険者と市民。
城の大広間には木製の大きなテーブルが並んでおり、テーブルの上には豪勢な料理と酒が載っている。宴も随分久しぶりだ。最後の宴は、確か海賊船で魔王城に向かう最中に開かれたものだった。もう何年も前の事の様に感じるが、実際には四カ月か五カ月しか経っていないだろう。
俺は国王に手招きされ、国王と王女の間に座る事になった。王女は頭には宝石が散りばめられた立派なティアラをのせている。髪の色は国王と同じ綺麗な金色で、目は透き通るような青色。年齢は十歳程だろうか、彼女は俺と目が合うと、微笑みながら俺の手を握った。どんな意図で俺の体を触るのだろう。
「勇者殿。娘は相手の手を握ると人柄が分かるんだよ。相手の性質と言うのか、これは生まれ持った特別な魔力らしいのだが、どうしてその様な力を授かったのかは分からない。実は私の妻は娘のエミリアを出産した時に命を落としてな。妻が娘に特別な力を与えたのかもしれない……」
俺は王女に右手を握られると、手には王女の温かい魔力が伝わってきた。向かい席に座っているクーデルカが、俺の手を握る王女を怖い目で睨み付けている。こんな幼い子にまで嫉妬しなくても良いんじゃないのか……。
「勇者様。あなたの体からは優しい魔力の流れが二つ感じます」
「王女様、それは魔族のデュラハンという者と、聖戦士のヘルフリートという者の魔力です」
俺が王女に手を握られながら話すと、エミリアは綺麗な青色の目で俺の顔を覗き込んだ。
「エミリアで良いです……魔族と聖戦士の力を継ぐ勇者様」
「そうですか……エミリア様。相手の手を握るだけで性質が分かるんですね。凄い力です」
「いいえ、これは私の母が私を生んだ時に授けてくれた力……あなたの体を流れる二人の魔力と同じような働きをしているんです……それから、エミリアで良いですよ」
「エミリア様……いえ、エミリア。名を名乗るのが遅れました。私はアルテミスの勇者、サシャ・ボリンガーです」
俺はまだ王女に挨拶すらしていなかった。これは王族に対する振る舞いとして、かなり失礼だったのではないだろうか。元々小さな村で育った俺には、王族に対する振る舞い方などは分からない。城に入ってから緊張しっぱなしだ。
「勇者殿! そんなに堅苦しく接しなくても良いぞ。先程も伝えた事だが、勇者殿とボリンガー騎士団が居なければ、我々は今頃は死んでいただろう。勇者殿、我々は王族ではあるが、地位は勇者殿と対等、いや、勇者殿の方が地位は高いのですぞ。情けない話ではあるが、今回の魔王軍との戦いで、我々は己の無力さを実感した。立派な服を身に付け、王座に座っているだけでは真の統治者とは言えない。勇者殿の様に、命を懸けて戦う人間こそ、国民のために命を捨てて戦ったヘルフリートこそが、真の統治者なのではないだろうか……」
国王は少し寂しそうな顔をしている。王国軍だけで魔王軍に勝てなかった事が悔しかったのだろうか。魔王軍の編成を仲間から聞いたが、大量の幻獣が魔獣を従えていたらしい。王国の兵士がいかに優秀だったとしても、今回の襲撃は防ぎ切れなかっただろう。むしろ、王国が占拠されなかっただけ王国軍は優秀だったと思う。
今回の戦いは、長い時間を掛けて騎士団と王国軍、魔術師ギルドに暗殺ギルド、それに冒険者達が、力を合わせて戦ったからこそ、勝利出来たのだと思う。殺された者の家族は、王国軍の力を無さを責める事も出来るだろう。だが、自分の命は自分が守って当たり前。非戦闘民だとしても、自分の命は自分で守るべきだと俺は考えている。この世の中で信用できるのは自分と仲間の力だけだ……。
「勇者様、何をそんなに考え込んでいるんですか。宴が始まりましたよ」
エミリアはまだ俺の手を握り続けている。
「エミリア、この手を放して貰っても良いですか?」
「勇者様、私に敬語は必要ありません。私の命は勇者様に救われたも同然です……」
敬語は基本的には身分の差がある場合に使わなければならないのだが……。エミリアがそう言うなら敬語は使わないでおこう。
「わかったよ。それならエミリアも敬語を使わないでくれ、気軽にサシャと呼んでくれても良い」
「わかったわ! サシャ、これから仲良くしましょう!」
「そうだね、よろしく、エミリア」
エミリアはやっと俺の手を放してくれた。
「勇者殿。エミリアと打ち解けたようだな……娘が他人に心を開く事は珍しい。相手が大臣だとしても自分から微笑んで話しかける事はないのだぞ……」
国王が俺に耳打ちをしてくれた。こうして楽しい宴が始まった……。
城の大広間には木製の大きなテーブルが並んでおり、テーブルの上には豪勢な料理と酒が載っている。宴も随分久しぶりだ。最後の宴は、確か海賊船で魔王城に向かう最中に開かれたものだった。もう何年も前の事の様に感じるが、実際には四カ月か五カ月しか経っていないだろう。
俺は国王に手招きされ、国王と王女の間に座る事になった。王女は頭には宝石が散りばめられた立派なティアラをのせている。髪の色は国王と同じ綺麗な金色で、目は透き通るような青色。年齢は十歳程だろうか、彼女は俺と目が合うと、微笑みながら俺の手を握った。どんな意図で俺の体を触るのだろう。
「勇者殿。娘は相手の手を握ると人柄が分かるんだよ。相手の性質と言うのか、これは生まれ持った特別な魔力らしいのだが、どうしてその様な力を授かったのかは分からない。実は私の妻は娘のエミリアを出産した時に命を落としてな。妻が娘に特別な力を与えたのかもしれない……」
俺は王女に右手を握られると、手には王女の温かい魔力が伝わってきた。向かい席に座っているクーデルカが、俺の手を握る王女を怖い目で睨み付けている。こんな幼い子にまで嫉妬しなくても良いんじゃないのか……。
「勇者様。あなたの体からは優しい魔力の流れが二つ感じます」
「王女様、それは魔族のデュラハンという者と、聖戦士のヘルフリートという者の魔力です」
俺が王女に手を握られながら話すと、エミリアは綺麗な青色の目で俺の顔を覗き込んだ。
「エミリアで良いです……魔族と聖戦士の力を継ぐ勇者様」
「そうですか……エミリア様。相手の手を握るだけで性質が分かるんですね。凄い力です」
「いいえ、これは私の母が私を生んだ時に授けてくれた力……あなたの体を流れる二人の魔力と同じような働きをしているんです……それから、エミリアで良いですよ」
「エミリア様……いえ、エミリア。名を名乗るのが遅れました。私はアルテミスの勇者、サシャ・ボリンガーです」
俺はまだ王女に挨拶すらしていなかった。これは王族に対する振る舞いとして、かなり失礼だったのではないだろうか。元々小さな村で育った俺には、王族に対する振る舞い方などは分からない。城に入ってから緊張しっぱなしだ。
「勇者殿! そんなに堅苦しく接しなくても良いぞ。先程も伝えた事だが、勇者殿とボリンガー騎士団が居なければ、我々は今頃は死んでいただろう。勇者殿、我々は王族ではあるが、地位は勇者殿と対等、いや、勇者殿の方が地位は高いのですぞ。情けない話ではあるが、今回の魔王軍との戦いで、我々は己の無力さを実感した。立派な服を身に付け、王座に座っているだけでは真の統治者とは言えない。勇者殿の様に、命を懸けて戦う人間こそ、国民のために命を捨てて戦ったヘルフリートこそが、真の統治者なのではないだろうか……」
国王は少し寂しそうな顔をしている。王国軍だけで魔王軍に勝てなかった事が悔しかったのだろうか。魔王軍の編成を仲間から聞いたが、大量の幻獣が魔獣を従えていたらしい。王国の兵士がいかに優秀だったとしても、今回の襲撃は防ぎ切れなかっただろう。むしろ、王国が占拠されなかっただけ王国軍は優秀だったと思う。
今回の戦いは、長い時間を掛けて騎士団と王国軍、魔術師ギルドに暗殺ギルド、それに冒険者達が、力を合わせて戦ったからこそ、勝利出来たのだと思う。殺された者の家族は、王国軍の力を無さを責める事も出来るだろう。だが、自分の命は自分が守って当たり前。非戦闘民だとしても、自分の命は自分で守るべきだと俺は考えている。この世の中で信用できるのは自分と仲間の力だけだ……。
「勇者様、何をそんなに考え込んでいるんですか。宴が始まりましたよ」
エミリアはまだ俺の手を握り続けている。
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「勇者様、私に敬語は必要ありません。私の命は勇者様に救われたも同然です……」
敬語は基本的には身分の差がある場合に使わなければならないのだが……。エミリアがそう言うなら敬語は使わないでおこう。
「わかったよ。それならエミリアも敬語を使わないでくれ、気軽にサシャと呼んでくれても良い」
「わかったわ! サシャ、これから仲良くしましょう!」
「そうだね、よろしく、エミリア」
エミリアはやっと俺の手を放してくれた。
「勇者殿。エミリアと打ち解けたようだな……娘が他人に心を開く事は珍しい。相手が大臣だとしても自分から微笑んで話しかける事はないのだぞ……」
国王が俺に耳打ちをしてくれた。こうして楽しい宴が始まった……。
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