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第四章「騎士団編」
第百三十八話「王女の贈り物」
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俺は自分の席に戻ると、エミリアが雷撃の盾を大事そうに抱えている事に気が付いた。すっかり気に入ったのか、新品の盾を何度も布で拭き、楽しそうの盾を見つめては、俺を見上げて微笑んでいる。
「サシャ……本当に嬉しいわ。私、お父様以外の方から物を貰った事がないの。私のためを思ってこんなに素敵な物を作ってくれる人がこの世に居たのね」
「喜んで貰えたなら良かったよ。強い力を持つ盾だから、きっとエミリアを守ってくれる筈だよ」
「そうね。感じた事も無いほどの力を感じる。これが勇者様の力なのね」
「幻魔獣のスケルトンキングのみが使える固有魔法、サンダーボルトの力だよ」
「幻魔獣の魔法を宝石に込めてしまうなんて……こんなに美しくて強い盾が持てて嬉しいわ!」
まさかこんなに喜んでもらえるとは。俺がエミリアと談笑していると、イスの後ろにはクーデルカが立っていた。クーデルカの腕には俺が以前作った腕輪が光り輝いている。この腕輪も俺が強力なエンチャントを掛けた物だ。まさか幼いエミリアに対抗心を燃やしているのではないだろうか。
「どうしたんだい? クーデルカ。一緒に葡萄酒を頂こうか」
「そうしましょうか。私のサシャ……」
クーデルカは俺の膝の上に座ると、エミリアが顔を赤らめてクーデルカを見つめた。クーデルカは俺がエミリアに盾を作った事に嫉妬しているのだろう。王女の前でこんなに大胆な愛情表現をするとは。彼女のは俺の首に腕を回し、何度も俺の頬に接吻をすると、エミリアが寂しそうに俺を見つめた。それからエミリアは俺の胸元に付いているカメオに目をやった。
「サシャ、そのカメオって、クーデルカ様の横顔? サシャとクーデルカ様はどういう関係なの?」
この質問は今まで何度も聞いた事がある。一人で夜の酒場で酒を飲んでいる時や、食事をしている時。俺に近づいてきた女性が何度もした質問。カメオの女性は恋人ですか、と言う類の質問だ。
「違うんだよエミリア、これは一種の魔除けさ。女性はこのカメオを見ると俺に近寄らないんだよ」
「勇者殿。カメオに意中の女性の横顔を彫ったのか? 勇者殿もなかなか隅に置けないな……私も、今は亡き妻の横顔をカメオに掘った物をいつも身に着けているんだよ」
国王がまた要らない事を言う……。ノリがゲルストナーと同じだ。きっと彼らは気が合うに違いない。
「違うんだよ、エミリア。これはクーデルカの命を救った時に貰った物なんだ。クーデルカは恋人じゃないんだよ」
俺が弁解すると、エミリアは腑に落ちない表情でクーデルカを見た。
「それなら今度私もカメオを作らせようかしら。サシャに付けて貰うために……」
俺は一体カメオをいくつ装備すればいいのだろうか。適当にごまかしてカメオを受け取る事だけは避けたいところだ。
「エミリア、気持ちは嬉しいんだけど、カメオは一つあるから十分だよ。わざわざエミリアに作って貰うなんて悪いし。それに、俺が姫殿下の横顔をモチーフにしたカメオを装備していたら、他の冒険者が勘違いてしまうよ。カメオは婚約者や自分の娘の顔をモチーフに作るものだからさ」
「クーデルカはサシャの婚約者だったの!?」
エミリアは目に涙を浮かべ、俺を上目遣いで見つめた。まさか、この程度の事で涙を流すとは……。近くで話を聞いていたルナは急いで飛んできた。
「サシャ! クーデルカと婚約したの?」
「違うんだよ。俺は誰とも婚約してないんだよ。心配かけたね。ルナ」
「勝手に婚約したら駄目なんだからね」
俺はルナを宥めるために抱き寄せた。俺がルナの頭を撫でていると、流石にクーデルカは申し訳なさそうな顔をした。
「サシャ。誰とも婚約していないなら、私がカメオを差し上げたら、勿論装備してくれるわよね……?」
やられたな……。エミリアは頭の回転が速い。もう断る事も出来ないな……。
「勿論。エミリアがくれる物なら喜んで!」
俺が返事をすると、酒が回った国王は嬉しそうに大臣を呼びつけた。
「明日の朝すぐに、町で一番腕利きの職人にカメオを作らせなさい! 素材は最高の物を使うように」
「はっ! かしこまりました。陛下」
行動が早すぎる。これで俺の胸元には、クーデルカのカメオとエミリアのカメオを付ける事が確定した……。複雑な気分だ。
だが、今日一日で陛下とも、エミリアとも随分親しくなれた様な気がする。王族というのは、もっと高圧的で近寄りがたい人間だと思っていた。俺がかつて読んだ本では、王は国民から多額の税金を徴収し、毎日贅沢な食事を摂り、女を侍らせていた。俺が以前読んだ本に登場した国王が悪質だっただけなのか。こんなに気さくな王と王女が居るとは。
俺達はその日、陛下の計らいにより城の中での宿泊が許可された。来客者用の部屋が二部屋与えらて、部屋割りを決める事になった。アイリーンは「今日は絶対サシャと寝るの、久しぶりに会ったサシャと別れたくないの」と言って駄々をこねた。クリスタルは「今日は我慢してゲルストナー達と寝ます……残念ですけど……」と寂しそうに言った。
一部屋目は、俺、ルナ、アイリーン、クーデルカ、シルフ、シャーロット。二部屋目はゲルストナー、キング、ガーゴイル、クリスタルで決まった。
ワイバーンとサイクロプス、ユニコーンとヘルハウンドは、城の中庭で寝る事になった。ヘルハウンドの所有権は俺ではなくアルベルトさんにあるが、アルベルトさんが戻るまでは俺達と行動を共にする事になっている。俺達は久しぶりに豪華な部屋でゆっくり仲間と過ごす事にした。
「サシャ……本当に嬉しいわ。私、お父様以外の方から物を貰った事がないの。私のためを思ってこんなに素敵な物を作ってくれる人がこの世に居たのね」
「喜んで貰えたなら良かったよ。強い力を持つ盾だから、きっとエミリアを守ってくれる筈だよ」
「そうね。感じた事も無いほどの力を感じる。これが勇者様の力なのね」
「幻魔獣のスケルトンキングのみが使える固有魔法、サンダーボルトの力だよ」
「幻魔獣の魔法を宝石に込めてしまうなんて……こんなに美しくて強い盾が持てて嬉しいわ!」
まさかこんなに喜んでもらえるとは。俺がエミリアと談笑していると、イスの後ろにはクーデルカが立っていた。クーデルカの腕には俺が以前作った腕輪が光り輝いている。この腕輪も俺が強力なエンチャントを掛けた物だ。まさか幼いエミリアに対抗心を燃やしているのではないだろうか。
「どうしたんだい? クーデルカ。一緒に葡萄酒を頂こうか」
「そうしましょうか。私のサシャ……」
クーデルカは俺の膝の上に座ると、エミリアが顔を赤らめてクーデルカを見つめた。クーデルカは俺がエミリアに盾を作った事に嫉妬しているのだろう。王女の前でこんなに大胆な愛情表現をするとは。彼女のは俺の首に腕を回し、何度も俺の頬に接吻をすると、エミリアが寂しそうに俺を見つめた。それからエミリアは俺の胸元に付いているカメオに目をやった。
「サシャ、そのカメオって、クーデルカ様の横顔? サシャとクーデルカ様はどういう関係なの?」
この質問は今まで何度も聞いた事がある。一人で夜の酒場で酒を飲んでいる時や、食事をしている時。俺に近づいてきた女性が何度もした質問。カメオの女性は恋人ですか、と言う類の質問だ。
「違うんだよエミリア、これは一種の魔除けさ。女性はこのカメオを見ると俺に近寄らないんだよ」
「勇者殿。カメオに意中の女性の横顔を彫ったのか? 勇者殿もなかなか隅に置けないな……私も、今は亡き妻の横顔をカメオに掘った物をいつも身に着けているんだよ」
国王がまた要らない事を言う……。ノリがゲルストナーと同じだ。きっと彼らは気が合うに違いない。
「違うんだよ、エミリア。これはクーデルカの命を救った時に貰った物なんだ。クーデルカは恋人じゃないんだよ」
俺が弁解すると、エミリアは腑に落ちない表情でクーデルカを見た。
「それなら今度私もカメオを作らせようかしら。サシャに付けて貰うために……」
俺は一体カメオをいくつ装備すればいいのだろうか。適当にごまかしてカメオを受け取る事だけは避けたいところだ。
「エミリア、気持ちは嬉しいんだけど、カメオは一つあるから十分だよ。わざわざエミリアに作って貰うなんて悪いし。それに、俺が姫殿下の横顔をモチーフにしたカメオを装備していたら、他の冒険者が勘違いてしまうよ。カメオは婚約者や自分の娘の顔をモチーフに作るものだからさ」
「クーデルカはサシャの婚約者だったの!?」
エミリアは目に涙を浮かべ、俺を上目遣いで見つめた。まさか、この程度の事で涙を流すとは……。近くで話を聞いていたルナは急いで飛んできた。
「サシャ! クーデルカと婚約したの?」
「違うんだよ。俺は誰とも婚約してないんだよ。心配かけたね。ルナ」
「勝手に婚約したら駄目なんだからね」
俺はルナを宥めるために抱き寄せた。俺がルナの頭を撫でていると、流石にクーデルカは申し訳なさそうな顔をした。
「サシャ。誰とも婚約していないなら、私がカメオを差し上げたら、勿論装備してくれるわよね……?」
やられたな……。エミリアは頭の回転が速い。もう断る事も出来ないな……。
「勿論。エミリアがくれる物なら喜んで!」
俺が返事をすると、酒が回った国王は嬉しそうに大臣を呼びつけた。
「明日の朝すぐに、町で一番腕利きの職人にカメオを作らせなさい! 素材は最高の物を使うように」
「はっ! かしこまりました。陛下」
行動が早すぎる。これで俺の胸元には、クーデルカのカメオとエミリアのカメオを付ける事が確定した……。複雑な気分だ。
だが、今日一日で陛下とも、エミリアとも随分親しくなれた様な気がする。王族というのは、もっと高圧的で近寄りがたい人間だと思っていた。俺がかつて読んだ本では、王は国民から多額の税金を徴収し、毎日贅沢な食事を摂り、女を侍らせていた。俺が以前読んだ本に登場した国王が悪質だっただけなのか。こんなに気さくな王と王女が居るとは。
俺達はその日、陛下の計らいにより城の中での宿泊が許可された。来客者用の部屋が二部屋与えらて、部屋割りを決める事になった。アイリーンは「今日は絶対サシャと寝るの、久しぶりに会ったサシャと別れたくないの」と言って駄々をこねた。クリスタルは「今日は我慢してゲルストナー達と寝ます……残念ですけど……」と寂しそうに言った。
一部屋目は、俺、ルナ、アイリーン、クーデルカ、シルフ、シャーロット。二部屋目はゲルストナー、キング、ガーゴイル、クリスタルで決まった。
ワイバーンとサイクロプス、ユニコーンとヘルハウンドは、城の中庭で寝る事になった。ヘルハウンドの所有権は俺ではなくアルベルトさんにあるが、アルベルトさんが戻るまでは俺達と行動を共にする事になっている。俺達は久しぶりに豪華な部屋でゆっくり仲間と過ごす事にした。
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