召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光

文字の大きさ
160 / 188
第四章「騎士団編」

第百五十九話「魔法授業」

しおりを挟む
 ついにエミリアの魔法授業が始まった。

「サシャ! 最初にどんな魔法を教えてくれるの?」

 エミリアは朝食を片付けて嬉しそうな顔で俺を見上げた。授業の前に杖を渡しておこう。

「エミリア、実は授業の前に渡したい物があるんだよ」
「えっ! サシャが私に……?」

 エミリアは顔を赤らめて驚いた。俺はマジックバッグの中から「業火の杖」を取り出した。俺が杖を取り出した瞬間、エミリアは今までに見た事ない程の笑顔で飛び上がった。

「もしかして杖を準備してくれたの? 嬉しい!」
「ただの杖じゃないよ。これは俺が作った杖で、名前は業火の杖。ミスリル製で先端にはスケルトンキングの魔法、ヘルファイアを封じ込めたブルーサファイアを嵌めた。この杖はエミリアの炎の魔法とそれ以外の魔法の威力を大幅に引き上げてくれる杖だよ」
「本当? サシャが作ってくれたんだ……嬉しいな……」

 エミリアは小さな手で俺から杖を受け取ると、何故か急に泣き出した。

「サシャはいつも私の事を想ってくれる……こんな人には出会った事ないよ。私に近づいて来る男はみんな私を利用するために近づいてくるの。だけどサシャは純粋な気持ちで私の事を想ってくれているよね……私、人に触れたらどんな気持ちなのか、どんな考えなのか、ある程度分かるんだよね」

 杖を受け取った事がそんなに嬉しかったのだろうか? よく分からないが、エミリアはきっとこれまで多くの男性から贈り物を受け取った事があるのだろう。だが、エミリアに近づく男達は決してエミリアの事を想って近づいている訳ではなく、エミリアの王女としての地位を利用しようとして近づいて来る人間が多かったのではないだろうか。

 近付くというよりは取り入るという表現の方が正しいだろう。幼いエミリアの心を射止めて王族になろうとする者は多いに違いない。幼い頃からそういった汚い大人を見続けたため、エミリアは自分の心を閉ざしてしまったのだろう。何となく理解出来る気がする……。

 俺はエミリアの地位など興味はないし、仲間とのんびり暮らしていければそれでいい。金持ちである必要もなく、毎日の食事と寝床があればそれで良い。俺は村人の頃からもずっとそうして暮らしてきた。

 俺は泣きじゃくるエミリアを抱き寄せた。シャーロットとシルフもエミリアの頭を撫でて慰めている。まさか杖を渡すだけでこんな反応が返ってくるとは思わなかった。彼女は普段は王女らしく振る舞っているが、心はかなり脆いようだ。何か小さな不幸でも起これば、今にでも精神が崩れてしまうような危うさを感じる。しばらくは俺が守ってやらなければならないな……。

 だが、強くなれよ、エミリア。力があれば自分に不利な状況を覆す事が出来る。自分で道を切り開くんだ。俺はエミリアを応援する事しか出来ないけど、俺が近くに居る時には守ってあげよう。

「サシャ、私から離れないでね……」
「勿論だとも。俺はいつでもエミリアの傍に居るよ」

 しばらく俺達はエミリアを慰めていると、エミリアは泣き止んで立ち上がった。

「早速始めましょう! 何から覚えたらいいのかな?」

 やっとやる気になったか。今から魔法を覚えようとする者は強気でなければならない。

「今日はマジックシールドとファイアを教えるよ。俺が許可するまで他の魔法は使わない事、勉強もしない事。ただ俺を信じて同じ魔法の鍛錬を続ける事。分かったね?」
「わかっているわ! 私はサシャを信用しているんだもん。勝手に他の魔法を覚えたりしないわ」
「よし。それならまずは手本を見せるから技の性質を見極めてくれ」

『マジックシールド!』

 俺は説明もせずに魔法を見せた。最初に見せた魔法はマジックシールドだ。なぜ何も説明しなかったかと言うと、自分で魔法について使い道を考えて欲しかったからだ。

「エミリア、この魔法はマジックシールドだよ。どんな魔法だと思う?」

 俺は左手に持った魔法の盾をエミリアに見せた。

「普通に考えるなら盾かな? だけど盾を作る必要ってあるのかな? 私は既に雷撃の盾を持ってるし……」
「もう少し考えてごらん」

 と言って俺は左手から盾を離して宙に浮かせた。宙に浮かせた盾をシャーロットの前に移動させた。

「あ! わかった! その盾は自分以外も守る盾なのね! きっとそうに違いないわ!」

 マジックシールドは任意の場所に作り出したり、移動させたりする事が出来る。自分の体から離れれば離れる程、盾の制御は難しくなり防御力は落ちる。反対に自分に近ければ近いほど、盾は防御力を増す。盾の形状は好きに作る事が出来るが、俺の場合は片手でも持ちやすい小さなバックラーとして作る事が多い。

「正解だよエミリア。この盾は自分と仲間を守る盾。盾の強さは魔力の強さ。盾を作り出す時は、まず頭の中に作りたい盾の形をはっきり想像する事が大事だよ。これは召喚の基礎でもあるんだけど、どんな物を作りたいかはっきり想像する事が一番大切なんだ。頭の中で盾を思い浮かべた後、魔力を体から放出させて実際に盾を作るのさ」

 エミリアは持っていた雷撃の盾を邪魔にならないように背中に背負い、業火の杖をベルトに挟んだ。

「わかったわ! やってみる!」

 エミリアは俺の説明を理解したようだ。精神を集中させて左手を体の前に突き出している。左手で盾を持つつもりなのだろう。エミリアがしばらく精神を集中させていると、左手からは微かに光が輝き始めた。魔力が外に出たか。あとは盾の形を作れば良い。マジックシールドを練習するエミリアを見ていると、以前クリスタルに同じ魔法を教えた事を思い出す。

「エミリア! もっと強い気持ちで盾を想像してごらん!」

 俺がアドバイスをすると、エミリアは更に魔力を強めた。

『マジックシールド!』

 エミリアが魔法を叫ぶと、左手には光輝く小さな盾が握られていた。マジックシールドの完成だ。盾は小さくて弱弱しくて、どう考えても敵の攻撃を防げるような代物ではないが、間違いなく魔法は成功した。

「サシャ! 出来たわ! 私の盾よ!」
「よく出来たね。作り出した盾にもっと魔力を込めてごらん」

 エミリアは盾を見て大喜びをしている。

「エミリア! 凄いわよ!」

 シャーロットもシルフもエミリアの初めての魔法の成功を祝福している。だが、この魔法が難しいのはこれからだ。作り出して完成ではない。実際に相手の攻撃を防げるくらい丈夫に作る事が出来て初めて完成だ。それから、ただ盾が丈夫であれば良いという訳でもない。 盾が強くても相手の攻撃に対して瞬時に反応出来なければ、どれだけ盾が丈夫でも意味はない。

 マジックシールドは常に作り出したまま生活して貰おう。確かクリスタルもマジックシールドを覚えてからは、朝起きてから寝るまでずっと魔法の盾を制御しながら生活していた。ひとまずマジックシールドは後で復習するとして、早速ファイアを教えよう。攻撃と防御の魔法を同時に覚えさせて実戦形式で使わせる授業にしよう。俺は早速ファイアの魔法を教える準備を始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

処理中です...