召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光

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第四章「騎士団編」

第百六十一話「本拠地のマント」

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 エミリアとの初めての魔法授業を終えた後、俺達はワイバーンに乗って城の前に降りた。

「エミリア! マジックシールドは常に練習する事! それから城の中でファイアを練習する時は広い場所で練習する事。いいね?」
「わかったわ! それじゃ夕食の時に会いましょう。今日も楽しかったわ!」

 俺はエミリアと別れてから、料理長にシュルスクを渡した。今日収穫した分の半分だ。残りのシュルスクは種を取り出して本拠地に植えてみよう。果実の栽培などに詳しい人が居れば良いのだが。兎に角、今日はこれからマントを受け取りに行かなければならない。俺達はエイブラハムの店に向かった。

 店に着くと、今日もエイブラハムは嬉しそうに俺達を迎えてくれた。エイブラハムの様な有能な鍛冶職人が本拠地で店を出してくれたら……。いや、それはさすがに分不相応か。こんなに有能な職人が俺に付いて来てくれるとは思えない。

「サシャ! マントは既に完成したぞ! 他に注文はないか?」

 エイブラハムはマントが入った箱を俺に渡してくれた。箱の中からマントを取り出すと、マントは上品な銀色で所々に刺繍が施されている。マントの胸の部分と背中の部分には、「ボリンガー騎士団」と書かれている。マントの紋章を見てみると、ワイバーンが勇者の剣を持って立ち上がっている絵が描かれている。やはりエイブラハムは凄い。鍛冶も裁縫も出来る。最高の職人だ。

「エイブラハム! 最高の出来だね。気に入ったよ!」

 俺は興奮してすぐにマントを装備した。マントは団員の分だけ用意されており、サイクロプス、ガーゴイル、ユニコーン、ワイバーンを除いた団員の体に合わせて作られている。マントは基本的には俺が認めた仲間の分だけ作って貰った。 

 ユニコーンとワイバーンは体の関係上、マントを羽織る事は出来ない。サイクロプスとガーゴイルはそもそも俺の召喚獣ではないし、一応騎士団の団員ではあるが、まだマントを着る資格はないだろう。俺はシャーロットとシルフにマントを装備させると、二人とも嬉しそうに喜んだ。

「サシャ! マント綺麗だね! 軽くて肌触りが良い!」

 シルフはマントを羽織って空中で楽しそうに飛び回っている。エイブラハムが作ったマントは想像以上に良い出来だった。俺達騎士団の装備は、今後もエイブラハムに作ってもらおう。

「エイブラハム、いつも最高の装備をありがとう! 流石伝説の職人だよ!」
「そうだろう? 俺にかかればこんなもんさ! 今日の仕事は終わりだ! サシャ、酒場に行くぞ!」

 さっきまでは真面目だったのに、急に酒飲み親父になったな……。だが、この機会に酒場で色々な人と知り合うのも良いかもしれない。今の俺に必要なのは人脈だ。しかし、その前に本拠地の下見をしなければならない。

「エイブラハム! 是非一緒に行きたいんだけど、俺達はこれから本拠地の下見をしなければならないんだよ」
「本拠地?」
「そうだよ。俺達は復興の手伝いが終わったら騎士団の本拠地を作るんだ。下見が終わった後で良いなら一緒に酒を飲もう!」

 それに今はまだ昼だ。この時間から酒場に行っても人が少ないだろうし、市民は復興で忙しい。

「そういう事か! それなら待っているぞ! 下見が終わったら迎えに来てくれよ!」
「うん、わかったよ!」

 俺はエイブラハムと約束をしてからすぐに店を出た。それから俺達は城に戻って他の仲間の分のマントを置き、国王から頂いた土地の場所を大臣から教えて貰った。大臣は俺達の土地が記されている地図を渡してくれた。

「もう本拠地作りを始めるのですか?」
「はい。そろそろ行動を始めようと思っています。勿論、本格的に本拠地作りを始めるのは、復興の手伝いを終えてからですが」
「そうですか、ボリンガー様の作る町……一体どんな町になるのか、私も今から楽しみで仕方がありません!」
「実は相談があるのですが」

 俺は本拠地でアルテミシアの市民を受け入れる事を伝えた。復興の手伝いをしている最中に気が付いたが、全ての市民がアルテミシアで家や店を建て直して生活をやり直せるほど強くはないという事だ。家族や仲間を殺された者にとっては忌まわしい土地。新しい土地で生活をやり直したいと言う声も何度か聞いた。

「それは良い考えですね。陛下と相談してみましょう! きっと冒険者や市民はボリンガー様の作る町で生活したいはずですよ」
「宜しくお願いします。それではこれから本拠地の下見に行くとします」
「はい、お気をつけて!」

 俺は大臣から地図を受け取り、シルフとシャーロットを連れて城を出た。城を出ると俺達は待たせておいたワイバーンに飛び乗った。ワイバーンの背中には、収穫したばかりのシュルスクが積んである。どんな場所なんだろう。

 大臣は『王国から馬車で三時間以内ですよ』と言っていたが。ゲルストナーが「なるべく王国の近くで緑が豊かな土地を」と大臣に頼んだ結果、俺達の土地が決まったらしい。期待できそうだ。俺達はワイバーンを飛ばして本拠地の予定地に向かった……。
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