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第四章「騎士団編」
第百六十八話「勇者の弟子」
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ついに俺とフランシスの勝負は決着がついた。フランシスは大粒の涙を流しながら体を震わせている。『好きにしてくれ』か。それなら俺の好きにさせて貰おう。俺がフランシスの根性を叩き直してやる。俺の弟子にしよう。
戦い方を教えてクリスタルを守る従者にしよう。フランシスもクリスタルを守れるならそれが本望なのではないだろうか。勿論、すぐにクリスタルの従者にするつもりはない。剣術を教えて、彼が精神的に充実した時、初めてクリスタルの従者として生きる事になる。
「顔をあげるんだ。今からお前の命は俺の物だ」
俺がそう言うとフランシスは顔をあげて虚ろな表情で俺を見た。
「お前を今日から俺の弟子にする。お前にはクリスタルの従者として新しい人生を歩ませてやる!」
俺がそう言うとフランシスの表情は一気に明るくなり、すぐに泣き止んだ。
「従者ですか! よろしくお願いします……勇者様!」
今度は喜びながら俺の顔を見て泣き出した。まだまだ子供だな……。家族を殺されて生きる術もなく、人生の目的も無かったのだろう。目的が無いなら与えればいい。フランシスには従者としてクリスタルを守って貰う。これがフランシスの新しい人生だ。
「フランシス、従者になればクリスタルとは結婚は出来ない。いいな?」
「はい! クリスタルと居られるならそれで良いです!」
「クリスタル様。だからな」
「はい! 勇者様!」
案外素直なんだな……。エイブラハムがフランシスを認めた理由が少しだけ分かったような気がした。この少年は手段は選ばないところはあるが、目的のためなら何だってする。まだ精神は幼いが性格は真っ直ぐだ。きっと良い剣士に育つに違いない……。
「師匠。面倒をおかけしました……」
クリスタルが申し訳なさそうに俺に謝った。
「気にするなよ。クリスタルを守るのは団長としての役割でもあるからね」
フランシスは騎士団の団員としては迎え入れない。あくまでの俺個人の弟子、フランシスの従者見習いとしてこれから行動を共にして貰う。彼はまだ騎士団に入る資格はない。俺達騎士団のメンバーの中には、私利私欲のために力づくで相手から何かを奪おうとするような者は居ないからな。
「サシャはやっぱり強いのね……! それからフランシスと言ったわね。勇者様から剣術を教えて貰えるなんて光栄な事なのよ。サシャの寛大な対処に感謝しなさい!」
「はい。こんなに強い方から剣術を教えて貰えるなんて……ありがとうございます!」
「さて……これで一件落着ね。さぁ、早速授業に行きましょう!」
エミリアは楽しそうに俺の手を取った。
「フランシス! 立っていいぞ。これからエミリアに魔法を教えに行く! そこでお前にも徹底的に剣術を教える!」
俺がそう言うとフランシスは目を輝かせて立ち上がった。案外物分かりが良いのだな。
「はい! 勇者様! よろしくお願いします!」
真っ直ぐな性格なんだな。鍛え甲斐がありそうだ。
「師匠。私は復興の手伝いに行ってきます!」
「うん、今日も頑張ろうか!」
「はい!」
クリスタルは復興を手伝いに商業区に向かった。
「さて、俺達も授業に行こうか」
ワイバーンの背中には既にシャーロットとシルフが乗っていた。二人は何事も無かったかのように、エミリアの魔法授業を楽しみにしている。
「シャーロット! 昨日植えたシュルスク! 育ってるかな?」
シルフはシャーロットの膝の上に座り、俺から貰ったリボンを触りながら楽しそうに会話をしている。フランシスが俺に対して決闘を挑んだにも関わらず、シルフもシャーロットも全く俺の事を心配していなかったのは、相手が俺に傷一つ負わせる事の出来ない人間だという事が分かっていたからだろうか……。
さて、今日も本拠地に向かうか……。朝から思いかげない出来事があったが、今日も一日頑張ろう。エミリアはワイバーンの背中に飛び乗ると、ワイバーンは嬉しそうにエミリアの顔を舐めた。しかし、ワイバーンはフランシスを乗せる事を許可するのだろうか?
「フランシス。ワイバーンに挨拶をしてごらん」
俺がそう言うと、フランシスはワイバーンの前に膝を着いて頭を下げた。クリスタルの従者になる予定のフランシスより、国王から『勇者ボリンガーの飛竜』の称号を貰ったワイバーンの方が遥かに地位が高いからな。知能の高いワイバーンはどう反応するだろうか……。
フランシスがワイバーンに頭を下げると、ワイバーンはフランシスの匂いを嗅いだ。ワイバーンはしばらくフランシスに鼻を近づけていると、フランシスの体を傷つけないように口に咥えた。背中には乗せないが、連れて行く事は構わないという事だろうか。ワイバーンにも何とか認められた様だ。フランシスは嬉しそうな表情をしてワイバーンを見上げている。俺はワイバーンの背中に飛び乗って、早速本拠地に向かった。
「サシャ、今日は昨日と同じ場所じゃないの?」
「今日は騎士団の本拠地の予定地で授業をするよ」
「そうなんだ! どんな場所なんだろう。楽しみだな……」
エミリアは楽しそうに上空から大地を見下ろしている。王国を出ると、すぐに俺達が本拠地を構える土地が見えてきた。ワイバーンで移動すれば王国からも近く、馬車で移動してもそれほど遠い訳でもない。土地は豊かな森林地帯で、目印は王国の旗。俺はワイバーンを旗のすぐ近くに降ろした。
「ここがボリンガー騎士団の本拠地が出来る場所ね! 町を作るんだよね? 楽しそうだな……」
エミリアはワイバーンから飛び降りると豊かな大地に寝そべった。
「そうだよ。俺も楽しみさ。早く町を作りたい……」
「勇者様! 剣術を教えて下さい!」
フランシスは俺に頭を下げて頼み込んだ。その前に……。フランシスの強引な考え方を少し訂正してやらなければならない。俺は王国の旗が立っている場所のすぐ近くに、目印になるように土の家を建てた。エミリアが魔法授業で疲れたらここで休んで貰おう。俺達は新しく作った家に入ってフランシスと話す事にした。
「フランシス。昨日も自己紹介はしたけど、俺はアルテミスの勇者、レベル120、ボリンガー騎士団、団長のサシャ・ボリンガーだ。それから、こちらはアルテミス王国王女、エミリア・ベルヴァルトだよ」
「はい……存じ上げています。私はレベル2の剣士、フランシス・アヴァロンです!」
挨拶はまともに出来る様だ。良かった……。
「それから、こちらは大精霊のシルフに大魔術師のシャーロットだよ。二人とも俺の召喚獣だ」
俺はシルフとシャーロットの事も紹介した。ガーディアンの事は……特に紹介は要らないだろう。
「大精霊様に大魔術師様……ボリンガー騎士団のメンバーは本当に凄い方ばかりですね」
フランシスは俺達の事をあまり知らなかった様だ。まずは訓練の前にフランシスの根性を叩き直す……。
「フランシス。大事な話をするから覚えておけよ。お前が力づくでクリスタルを自分の妻にしようとした行為は、盗賊の略奪行為となんら変わりは無い。俺達ボリンガー騎士団は、いや、俺は自分の力は仲間やこの地に住む民を守るためにしか使わない。お前にもそんな男になって欲しい。これから俺がお前を鍛えれば、お前は優れた剣士になるだろう。だが、力を手にしたからといって、欲に駆られて相手を打ちのめす様な男にはなるなよ」
俺がそう伝えると、フランシスは涙を流した。彼なりに罪悪感を感じているのだろうか。
「それに、お前が戦いを挑んだ相手が、もし、お前よりも弱い相手だったらどうした? お前は弱い相手から女を奪うような行為をするところだったのだぞ? それにもう一つ言っておくが、相手が悪質な冒険者だったら、お前は今頃死んでいたぞ。お前はクリスタルに助けられた命をみすみす捨てる所だったのだぞ。それは、お前を魔王軍から助け出したクリスタルに対する裏切りではないのか?」
俺が彼の取った行為の真の意味を教えると、フランシスはうなだれた。
「勇者様、私を鍛えて下さい! 私が間違っていました……」
フランシスは俺に泣きついて謝った。素直なところは認めるとしよう。これだけ言えば流石のフランシスも理解しただろう。俺達はフランシスが泣き止むまでしばらくの間、新しく作った土の家で待った……。
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俺がそう言うとフランシスは顔をあげて虚ろな表情で俺を見た。
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俺がそう言うとフランシスの表情は一気に明るくなり、すぐに泣き止んだ。
「従者ですか! よろしくお願いします……勇者様!」
今度は喜びながら俺の顔を見て泣き出した。まだまだ子供だな……。家族を殺されて生きる術もなく、人生の目的も無かったのだろう。目的が無いなら与えればいい。フランシスには従者としてクリスタルを守って貰う。これがフランシスの新しい人生だ。
「フランシス、従者になればクリスタルとは結婚は出来ない。いいな?」
「はい! クリスタルと居られるならそれで良いです!」
「クリスタル様。だからな」
「はい! 勇者様!」
案外素直なんだな……。エイブラハムがフランシスを認めた理由が少しだけ分かったような気がした。この少年は手段は選ばないところはあるが、目的のためなら何だってする。まだ精神は幼いが性格は真っ直ぐだ。きっと良い剣士に育つに違いない……。
「師匠。面倒をおかけしました……」
クリスタルが申し訳なさそうに俺に謝った。
「気にするなよ。クリスタルを守るのは団長としての役割でもあるからね」
フランシスは騎士団の団員としては迎え入れない。あくまでの俺個人の弟子、フランシスの従者見習いとしてこれから行動を共にして貰う。彼はまだ騎士団に入る資格はない。俺達騎士団のメンバーの中には、私利私欲のために力づくで相手から何かを奪おうとするような者は居ないからな。
「サシャはやっぱり強いのね……! それからフランシスと言ったわね。勇者様から剣術を教えて貰えるなんて光栄な事なのよ。サシャの寛大な対処に感謝しなさい!」
「はい。こんなに強い方から剣術を教えて貰えるなんて……ありがとうございます!」
「さて……これで一件落着ね。さぁ、早速授業に行きましょう!」
エミリアは楽しそうに俺の手を取った。
「フランシス! 立っていいぞ。これからエミリアに魔法を教えに行く! そこでお前にも徹底的に剣術を教える!」
俺がそう言うとフランシスは目を輝かせて立ち上がった。案外物分かりが良いのだな。
「はい! 勇者様! よろしくお願いします!」
真っ直ぐな性格なんだな。鍛え甲斐がありそうだ。
「師匠。私は復興の手伝いに行ってきます!」
「うん、今日も頑張ろうか!」
「はい!」
クリスタルは復興を手伝いに商業区に向かった。
「さて、俺達も授業に行こうか」
ワイバーンの背中には既にシャーロットとシルフが乗っていた。二人は何事も無かったかのように、エミリアの魔法授業を楽しみにしている。
「シャーロット! 昨日植えたシュルスク! 育ってるかな?」
シルフはシャーロットの膝の上に座り、俺から貰ったリボンを触りながら楽しそうに会話をしている。フランシスが俺に対して決闘を挑んだにも関わらず、シルフもシャーロットも全く俺の事を心配していなかったのは、相手が俺に傷一つ負わせる事の出来ない人間だという事が分かっていたからだろうか……。
さて、今日も本拠地に向かうか……。朝から思いかげない出来事があったが、今日も一日頑張ろう。エミリアはワイバーンの背中に飛び乗ると、ワイバーンは嬉しそうにエミリアの顔を舐めた。しかし、ワイバーンはフランシスを乗せる事を許可するのだろうか?
「フランシス。ワイバーンに挨拶をしてごらん」
俺がそう言うと、フランシスはワイバーンの前に膝を着いて頭を下げた。クリスタルの従者になる予定のフランシスより、国王から『勇者ボリンガーの飛竜』の称号を貰ったワイバーンの方が遥かに地位が高いからな。知能の高いワイバーンはどう反応するだろうか……。
フランシスがワイバーンに頭を下げると、ワイバーンはフランシスの匂いを嗅いだ。ワイバーンはしばらくフランシスに鼻を近づけていると、フランシスの体を傷つけないように口に咥えた。背中には乗せないが、連れて行く事は構わないという事だろうか。ワイバーンにも何とか認められた様だ。フランシスは嬉しそうな表情をしてワイバーンを見上げている。俺はワイバーンの背中に飛び乗って、早速本拠地に向かった。
「サシャ、今日は昨日と同じ場所じゃないの?」
「今日は騎士団の本拠地の予定地で授業をするよ」
「そうなんだ! どんな場所なんだろう。楽しみだな……」
エミリアは楽しそうに上空から大地を見下ろしている。王国を出ると、すぐに俺達が本拠地を構える土地が見えてきた。ワイバーンで移動すれば王国からも近く、馬車で移動してもそれほど遠い訳でもない。土地は豊かな森林地帯で、目印は王国の旗。俺はワイバーンを旗のすぐ近くに降ろした。
「ここがボリンガー騎士団の本拠地が出来る場所ね! 町を作るんだよね? 楽しそうだな……」
エミリアはワイバーンから飛び降りると豊かな大地に寝そべった。
「そうだよ。俺も楽しみさ。早く町を作りたい……」
「勇者様! 剣術を教えて下さい!」
フランシスは俺に頭を下げて頼み込んだ。その前に……。フランシスの強引な考え方を少し訂正してやらなければならない。俺は王国の旗が立っている場所のすぐ近くに、目印になるように土の家を建てた。エミリアが魔法授業で疲れたらここで休んで貰おう。俺達は新しく作った家に入ってフランシスと話す事にした。
「フランシス。昨日も自己紹介はしたけど、俺はアルテミスの勇者、レベル120、ボリンガー騎士団、団長のサシャ・ボリンガーだ。それから、こちらはアルテミス王国王女、エミリア・ベルヴァルトだよ」
「はい……存じ上げています。私はレベル2の剣士、フランシス・アヴァロンです!」
挨拶はまともに出来る様だ。良かった……。
「それから、こちらは大精霊のシルフに大魔術師のシャーロットだよ。二人とも俺の召喚獣だ」
俺はシルフとシャーロットの事も紹介した。ガーディアンの事は……特に紹介は要らないだろう。
「大精霊様に大魔術師様……ボリンガー騎士団のメンバーは本当に凄い方ばかりですね」
フランシスは俺達の事をあまり知らなかった様だ。まずは訓練の前にフランシスの根性を叩き直す……。
「フランシス。大事な話をするから覚えておけよ。お前が力づくでクリスタルを自分の妻にしようとした行為は、盗賊の略奪行為となんら変わりは無い。俺達ボリンガー騎士団は、いや、俺は自分の力は仲間やこの地に住む民を守るためにしか使わない。お前にもそんな男になって欲しい。これから俺がお前を鍛えれば、お前は優れた剣士になるだろう。だが、力を手にしたからといって、欲に駆られて相手を打ちのめす様な男にはなるなよ」
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