召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光

文字の大きさ
176 / 188
第四章「騎士団編」

第百七十五話「冒険者の街」

しおりを挟む
「町が完成しても仕事が無ければ市民は暮らしていけないよね。俺達の本拠地でどんな仕事を提供できるだろうか?」

 俺がそう質問すると、エイブラハムは素敵な返事をしてくれた。

「移住者は職人を優先にしたらどうだろうか? 職人が一人居れば店員を雇う事も出来る。それに、町に優秀な職人が居れば、将来は冒険者で溢れる町になるだろう。酒場や宿などを建てて市民を働かせるのも良いかもしれないな。町に来た冒険者には市民達が働く店で金を使ってもらおう」
「冒険者を呼び込んでお金を落として貰う。そのお金で市民に生活して貰うスタイルを俺達が作り上げればいい訳だ」
「冒険者を呼び込む……ゲスルトナー。冒険者時代に訪れた町でどんな施設を利用した?」

 俺はゲスルトナーから知恵を借りる事にした。

「まずは冒険者ギルドだな、新しい町に訪れて最初に利用する施設だ。冒険者ギルドでクエストを受けてから宿を決める。この流れはどの町でも同じだった。それから、その町でしか買えないような素材や武器、防具などがあれば積極的に店を覗いたな」

 実は冒険者ギルドに関しては俺は秘策がある。

「冒険者ギルドに関しては考えがあるんだけど。俺達騎士団の団員に直接クエストを要請出来るシステムにしようと思う。勿論、命に危険があるようなクエストは受けないけど……それなら俺達目当てに町を訪れる人が増えるのではないだろうか? 無論、俺達以外の冒険者もクエストを受けられるようなシステムを考えている」
「それは画期的な考えだな。勇者に直接依頼を出来る冒険者ギルドか。良い考えだ!」

 エイブラハムは俺の考えに賛同してくれた。

「それから町には宿が必要だな、あとは食料が買える店。アルテミシアからの移住希望者の中で食料品店を経営する者が居たら真っ先に受け入れよう!」
「町に住む市民の仕事先に関してだが、領地を買い取らせて、好きに農業や林業営んで貰うのも良いかもしれない。まぁ、市民が金を稼ぐ手段まで全てサシャが考える必要はないぞ」

 ゲスルトナーは領地が書かれた地図を見ながら言った。

「そうだね。だけど魔王軍の奇襲で仕事を失った人に関しては、早急に仕事を作ってあげる必要があると思う」
「確かにな。王国の復興を手伝っている最中に仕事を失った者を数多く見たからな。王国内で仕事が無いならこの町で働いてもらおう。町づくりのためには人手も大量に必要だからな」

 考えなければならない事が多いな……。アルテミシアで仕事を失った人達とレイリス町で買い取った奴隷を開放して町作りを手伝ってもらおう。人員は多ければ多い程良い。

 勿論、任せる仕事は単純な力仕事や農作業だ。シュルスクの種を大量に植えて果樹園を作るのも面白いかもしれないな。シュルスクが有ればポーション作りにもパイ作りにも、様々な可能性が広がる。

「シルフ、シャーロット。シュルスクのパイを作る方法を覚えてみないかい? 町でシュルスクのパイを売ったら面白いと思うんだ」
「本当? 絶対にやるわ!」
「うん! 楽しそう! 私は体が小さいから町作りは手伝えないと思ってたんだ!」

 シャーロットもシルフも嬉しそうに返事をした。今日、城に戻ったら料理長に頭を下げてパイの作り方を教えて貰おう。

「俺は早速、明日レイリス町に赴いて奴隷を買おうと思う。奴隷の健康状態を調べるためにも、ゲスルトナーには付いて来て欲しい」
「そうか、勿論俺も一緒に行こう。買い取った奴隷はドラゴンで運ぶという事だな?」
「あぁ、そうだよ。ドラゴンの背中に乗れる人数分の奴隷を買う」
「アニキ! 俺は明日何をしたら良いですか!?」

 すっかりフランシスの事を忘れていた。

「フランシスはエイブラハムの手伝いをして貰おう。それから、木は切った分だけ報酬を払うからね。いつでも好きな時に切って良いぞ」

 フランシスはオーガと共にエイブラハムの手伝いをして貰う事にした。

「サシャ。ドラゴンの背中に乗るなら良い物を作ってやろう。ちょっと待っておれ」

 エイブラハムは店から持ってきた巨大な箱の中からインゴットを取り出して家の外に出た。エイブラハムに付いて行くと、彼はドラゴンの背中に取り付ける座席を作り始めた。

「これなら安全にドラゴンに乗れるだろう」

 エイブラハムはブラックドラゴンとレッドドラゴンの背中に、金属製の丈夫な座席を取り付けた。十人以上は乗れそうな巨大な座席だ。やはり、エイブラハムの金属の加工方法は、俺が想像していた通りの金属の加工方法だった。エイブラハムは俺とほぼ同じ要領で金属を溶かし、一瞬で形を変形させる作り方をしていた。

 ドラゴン達は背中に取り付けられた座席を嬉しそうに眺めている。そんな様子を見ていたワイバーンは少しだけ寂しそうに地面の土を穿った。

「エイブラハム、ワイバーンにも作ってあげてくれないかな?」
「ああ、良いぞ」

 俺はワイバーンのためには自分の手持ちの素材から鞍を作って貰う事にした。

 オリハルコンのインゴットと金のインゴットを使って豪華な鞍を作って貰おう。勿論、ドラゴン達の座席のように大量に人が乗れる座席ではなく、数名だけが乗れる小さい鞍だ。俺が素材を渡すと、エイブラハムは一瞬で立派な鞍を作り上げた。

 オリハルコン製の鞍には、金の装飾で騎士団の紋章が描かれている。ワイバーンはエイブラハムが作り上げた鞍を見ると、早く背中に取り付けろと言わんばかりに鼻息を荒くした。エイブラハムが鞍を取り付けると、ワイバーンは翼を広げて喜んだ。

「ありがとう! エイブラハム!」
「なぁに、気にするな。これくらい朝飯前さ」
「良かったな! ワイバーン!」

 ワイバーンは俺の顔を見て嬉しそうに頷いた。ワイバーンにだけ鞍を作ってあげたらユニコーンが嫉妬しないだろうか……。奴はクーデルカ並みに嫉妬が激しいからな。俺はエイブラハムにもう一度素材を渡してユニコーンのための鞍を作って貰った。

「作って欲しい物が有ればいつでも言うんだぞ! サシャはエドガーの命の恩人だからな!」
「ああ。そうするよ。いつもありがとう!」

 俺達はそれからすぐに会議を終えて城に戻った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...