魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -

花京院 光

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第十一話「廃村に潜む敵」

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 俺達のパーティーにゲオルグが加わってから三日が経った。
 彼は道中で他のゴブリンと出くわしても、躊躇なく斬り掛かる。
 ララとゲオルグには前衛を任せ、俺とリーゼロッテは後方から魔法攻撃を放つ。
 リーゼロッテの魔法は信じられない程の強力だが、一発撃つだけで魔力の大半を消費してしまう。


 早朝に起きてゲオルグと共に森の中で食料を探し、二人で料理をする。
 日が暮れるまでひたすら移動し、夕方になれば野営をする。
 俺はゲオルグと共に、毎晩剣の稽古をしている。
 俺がゲオルグのダガーの連撃を受け、魔法攻撃で反撃するという内容だ。
 ゲオルグの高速の連撃を受けるだけでも精一杯だったが、何日も訓練を重ねると、次第にゲオルグの剣を見切れる様になった。
 彼の剣速に慣れ始めてからは、他のゴブリンの攻撃があまりにも遅く感じる。

 リーゼロッテはララから魔法を教わっている。
 リーゼロッテはブリザード以外にも、アイスショットという氷の塊を飛ばす魔法の練習をしているみたいだ。
 リーゼロッテがララに対して氷の塊を飛ばし、ララがレイピアに溜めた風の魔力を放出して叩き切る。

 俺達のパーティーで一番強いのはララだろうか。
 彼女はレイピアに風のエンチャントを掛けて攻撃力を高めるだけではなく、剣から風の刃を飛ばす事も出来る。
 風の刃を飛ばす魔法はウィンドブローという魔法なのだとか。
 俺もララの真似をして、剣に炎を纏わせて飛ばす練習をしているが、一度も成功した事はない。


 グロスハイムを出発してから六日が経過した。
 俺達はついに目的地のフォルスターに辿り着いた。
 当初の予定よりも一日遅れての到着だ。
 ソロモンの指輪の返却まで一週間残っている。
 俺達はフォルスター近辺の森の中で、二日間野営をしてからグロスハイムに戻る事にした。
 まずはフォルスターに巣食うモンスターを討伐しなければならない。

 朽ち果てた村からは、まるで墓地の様な気味の悪い魔力を感じる。
 どれだけ凶悪なモンスターが巣食っているのだろうか。
 フォルスターは深い森の中にある小さな廃村だ。

 俺達は森の茂みに身を隠しながら、ゆっくりと村に近づいた。
 強力な闇の魔力を感じる……。
 スケルトンだろうか、白骨のモンスターが無数にうごめいている。
 手には錆びついた剣やメイスを持ち、防具を装備する者も居る。

 スケルトン以外にも、黒ローブを身に纏い、大鎌を持つモンスターが居る。
 見た事も無いモンスターだ。
 禍々しい闇の魔力を感じる。

「グリムリーパーだな……俺達はとんでもない敵に喧嘩を売ろうとしているのかもしれない」
「グリムリーパー?」
「そうだ。グリムリーパーの平均レベルは25。闇の魔力を具現化して作り出した大鎌で生命を刈り取る。闇属性以外の生き物を見境なく襲う悪質なモンスターだよ」
「レベル25だって? そんなのどうやって倒すんだよ……」

 現在の俺のレベルは10。
 ゲオルグが12、リーゼロッテが15、ララが17だ。
 リーゼロッテとゲオルグのレベルに関しては、俺のギルドカードに表示されている。
 どうやら自分が育てたモンスターと従魔に関しては自動的にギルドカードに追加されるみたいだ。

 俺は自分よりもレベルが15も高いモンスターを倒さなければならないのな……。
 果たしてこのメンバーでグリムリーパーとスケルトンの群れを倒せるのだろうか。
 ざっと数えてもスケルトンは四十体以上居る。
 グリムリーパーの数は三体だ。
 しかし、建物の中に更に敵が潜んでいる可能性もある。

 黒いローブを身に纏うグリムリーパーは、ゆっくりと周囲を見渡しながら廃村を巡回している。
 敵の数が多すぎる……。
 レベル的に考えても圧倒的に不利だ。
 今日は戦いを挑まない方が良いだろう。
 こちらも仲間を増やし、魔法を徹底的に鍛えてから勝負を挑む。
 俺は無謀な戦いはしない主義だ。

「これから二日間、森の中で特訓しよう。特訓が終わったらグロスハイムに戻る。今の俺達ではグリムリーパーには勝てないと思う」
「それが良いよ、アルフォンス。焦ったらだめだよ」
「ああ。分かっているよ、リーゼロッテ」
「うん。慎重にね」

 リーゼロッテは俺の肩の上に座りながら俺の頭を抱きしめた。
 彼女を見ているだけで心が落ち着く。
 リーゼロッテの体からは俺よりも遥かに強い氷の魔力を感じる。
 俺はこの子の主として、もっと強い魔術師にならなければいけない。

 俺達はすぐに廃村を離れた。
 この村に巣食うモンスターを狩り、村を再生しなければ俺はベルギウスの加護を失う。
 絶対にこの力を失う訳にはいかない。
 幸い、ベルギウス氏は村の再生の期限を決めなかった。
 時間を掛けて己を鍛え、仲間を増やし、グリムリーパーを討つ。

「アルフォンス。グロスハイムに戻ったら仲間を増やしましょう。敵の数が多すぎるわ」
「それが良いだろうね。魔術師ギルドで仲間を募集するのも良いかもしれない」
「兎に角、今日から二日間特訓するのね?」
「ああ。俺は自分自身の魔法を磨き、魔力を鍛えるつもりだよ」
「私も更に強くならなきゃだめね。アルフォンスのためにも」
「ありがとう、ララ。だけどララは十分強いよ。一番弱いのは間違いなく俺だ……」

 既に習得している魔法を徹底的に鍛え、更に魔力を強化しよう。
 エンチャントを使って剣の威力を増幅させながら、状況に応じてファイアとメテオストライク、ロックストライクを使い分ける。
 この四種類の魔法をとことん鍛えるんだ。
 アースの魔法に関しては、ゲオルグが使えるから俺が練習する必要は無いだろう。

 フォルスターを離れた俺は、グロスハイム方面に向かって歩き始めた。
 この場所の近くに居てはいけない。
 今の俺ではスケルトンの群れさえも倒せないだろう。
 スケルトンの群れの中に存在する強烈な力、グリムリーパーを討つ事は到底不可能。
 徹底的に魔力を鍛え、仲間を増やして圧倒的な力でフォルスターに巣食うモンスターを駆逐する。

 しばらく移動すると、俺達は大きな湖を見つけた。
 ここで訓練をしよう。
 グロスハイムに移動を始めるまでの二日間はこの湖に滞在する事にした。

「アルフォンス。綺麗な場所ね」
「そうだね。ララ、俺と一緒に居てくれてありがとう」

 ララは俺の膝の上に飛び乗ると、嬉しそうに目を瞑った。
 俺はララの白く美しい体毛をゆっくりと撫でながら湖を見ている。
 この時間がずっと続けば良いのだが、そうもいかない。

「アルフォンス。どうか焦らないでね。グリムリーパーは小手先のテクニックで勝てる相手では無いと思うの。フォルスターに近づいただけで、私は敵との圧倒的な力の差を感じたわ」
「それは分かっているよ。確実に勝てる強さを身に着けてから戦いを挑むつもりさ」
「あなたがこのパーティーのリーダーだから私はあなたに従う。私が命を掛けてあなたを守るわ」
「ありがとう。だけど命は掛けないでくれよ。俺は皆を守れるくらい強くなるんだ。だからララは俺が守る」

 俺はララの小さな体を抱きしめながら、しばらく故郷のフリッツ村を思い出していた。
 フリッツ村では、モンスターと戦う力を持つ村人が、モンスターの脅威に怯える農民を守っていた。
 俺は力を持たぬ者として、十五歳までずっと守られ続けてきた。
 だが、これからは変わる。
 徹底的に己を鍛え、ベルギウスの加護とソロモンの指輪の力を使い、フォルスターを再生させる。

「すぐに訓練を始めよう」
「そうしましょうか」

 俺達は野営の準備をしてから訓練を始めた。
 魔力は魔法を使えば使うほど強くなる。
 筋肉と同じだ。
 限界まで筋力を鍛え、栄養と休憩を与える事によって、回復時には以前よりも高い筋力を身につける事が出来る。

 一日にどれだけ魔力を消費出来るかが肝心だ。
 俺はのんびりと魔力の自然回復を待つつもりはない。
 魔法を使って魔力を使い果たしたら、すぐにマナポーションを飲んで魔力を回復させる。
 それを繰り返せば、魔力の自然回復を待つよりも、短期間で魔力を強化出来る。
 幸い俺は魔力の消費が激しいメテオストライクという素晴らしい魔法を習得している。

 俺は湖の近くで、何度もメテオストライクの魔法を放った。
 メテオを落とし、魔力が枯渇したらマナポーションを一口飲む。
 俺の様に魔力の総量が少ない者には、少量のマナポーションでも完全に魔力を回復させる事が出来る。
 アンジェラさんから頂いたマナポーションを全て使い果たす勢いで、俺は魔法を唱え続けた。

 ゲオルグとララは二人で剣の稽古をしている。
 ララが風のエンチャントを掛けたレイピアの一撃を放つと、ゲオルグは器用に回避し、目にも留まらぬ速度でダガーの連撃を放った。
 だが、ゲオルグの攻撃がララの体に触れる事はない。
 ケットシーは身体能力が高い。
 人間とは比較にならない程の回避速度、反応速度だ。
 圧倒的な剣さばきで、いとも簡単にゲオルグの攻撃を受け流し、間髪容れずに反撃をする。

 リーゼロッテは地道に魔法を練習しているみたいだ。
 彼女は空を飛びながら、湖に対してアイスショットの魔法を飛ばしている。
 俺はリーゼロッテを呼んで二人で訓練をする事にした。
 訓練の内容は、リーゼロッテが俺にアイスショットの魔法を使い、俺がファイアの魔法で溶かすという内容だ。

 リーゼロッテは驚異的な速度で成長しつつある。
 魔力の強さも桁違いだ。
 これが才能の違いか……。
 生まれて数日のモンスターにすら、俺の魔力は劣る。
 いくらベルギウスの加護によって強力な魔法を習得したとしても、自分自身の魔力が低ければ、魔法の本当の力を引き出す事は出来ない。

 メテオストライクは、鍛え続ければいつか必ず化ける。
 ある瞬間から、どんなモンスターも敵わない程の攻撃力を持つ偉大な魔法へと進化する。
 間違いない。
 俺はメテオストライクが最強の一手に化けるまで、ひたすら鍛え続ける事にした。

 激しすぎる訓練を終えると、俺達は夜の食事を摂ってから、寝るまでの間も魔力を使い続けた。
 マナポーションは既に一日で使い切ってしまったので、代わりにゲオルグがシュルスクという果実を森の中から見つけて来てくれた。
 この果実がマナポーションの原料になるらしい。
 赤く、水々しい球状の果実を頬張ると、俺の消耗しきった魔力は徐々に回復を始めた。 
 これは良い……。

 俺はゲオルグに頼み、なるべく多くのシュルスクの果実を集めて貰った。
 果実を潰し、液体状にしてから一気に飲み込む。
 魔力が回復すると、眠気に耐えられなくなるまでエンチャントの魔法を使い続ける。
 右手に持った剣にエンチャントを掛け、左手にはファイアの魔法を灯す。
 一度に二種類の魔法を使う事で、魔力の消費量は更に高くなる。
 深夜まで魔法の訓練を続けると、俺はついに体力的な限界を迎え、泥のように眠った……。
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