魔石物語 - 魔石ガチャとモンスター娘のハーレムパーティーで成り上がり -

花京院 光

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第一章「冒険者編」

第二十九話「新居を目指して」

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 虹色に輝く小さなカプセルを開けると、中からは黒い角笛が出てきた。モンスターの角から作られた笛だろうか。一見何の変哲も無い角笛に見えるが、手に取った瞬間、強い魔力が体に流れてきた。

「それは狂戦士の角笛といって、一度吹けば五体の狂戦士を呼び出す事が出来るんだ」
「狂戦士の角笛?」
「そうだよ。試してみると良い」

 俺はガチャに促されて角笛を吹くと、高い音色が森に響いた。瞬間、地面には金色の光を放つ魔法陣が浮かび上がり、魔法陣の中からは背の高いスケルトンの集団が現れた。スケルトンのリーダーだろうか、立派なヘルムを被り、チェインメイルを着込んだスケルトンが俺の前に跪いた。

 残る四体のスケルトンは革製の防具を身に着けており、手にはショートソードをバックラーを持っている。リーダー格のスケルトンは一際身長が高く、ロングソードを背負っている。

「立派な戦士達だな。これがギルベルトの配下の者という訳か」
「このスケルトン達はギルベルトの命令に従う狂戦士なんだ。命令を与えれば死ぬまで戦い、戦いの最中に命を落としても、再び角笛を吹けば復活して戦闘に加わる。ただし、一日に二回以上角笛を吹けば、たちまちギルベルトを襲い出すから気をつけるんだよ」
「一日一度しか使用出来ないんだね」
「そういう事。用が済んだら『戻れ』と命令するんだよ。そうすれば再び魔法陣が現れ、狂戦士達は姿を消す。もし命令をせずに放置しておけば、その時は怒り狂ってギルベルトを襲い出すからね」
「用事済んだらすぐに戻ってもらわなければならないんだね」
「そうだよ。最後に、戻れと命令する前に必ず食料を差し出す事。そうすれば狂戦士達は機嫌を良くして魔法陣の中に戻るからね」

 俺は聖者の袋からパンを取り出し、狂戦士達に分けると、彼等はパンを受け取って微笑んだ。それから戻れと命令すると、狂戦士達はパンを持ったまま魔法陣の中に戻り、俺に手を振って消えていった。

「通常のスケルトンよりもかなり強そうだったけど、彼等は何者なんだい?」
「戦闘の最中に命を落としたモンスターが蘇ったものだよ。人間と敵対する種族ではなく、人間に力を貸す神聖なモンスターだと思う。死して尚、戦いに身を置きたい者達なんだろうね。僕には理解出来ないけど」
「私には彼等の気持ちが分かるかもしれんな。戦いで命を落とすとは、さぞ無念だったであろう」

 角笛をマジックバッグに仕舞うと、全ての魔石を消費したので、俺達は移動の前に仮眠をとる事にした。ローラを抱いて三時間ほど眠ると、バシリウス様が俺達を起こしてくれたので、フロイデンベルグ公爵様の領地に向かって移動を始めた……。


 本格的な旅を始めてから、バシリウス様はすぐに戦い方の稽古を付けてくれた。早朝に起床してバシリウス様と共に森を走り、体力を付ける。戦いの基本は体力だと彼が力説したので、俺は毎日バシリウス様と共に森を走る事にしたのだ。

 一時間ほど足場の悪い森を走り、それから剣の手ほどきを受ける。自己流で学んだ剣だからか、バシリウス様から何度もダメ出しされ、俺はミノタウロスの戦い方を学んだ。ミノタウロスは人間よりも筋力が遥かに多いので、どうも力ずくで敵をねじ伏せる戦い方が多いみたいだ。

 騎士のガントレットのお陰で力は上昇しており、羽根つきグリーヴのお陰で移動速度は大幅に強化されている。二つのマジックアイテムを身に付けた状態でバシリウス様と打ち合っても、俺の剣が彼の体に触れる事は一度も無かった。

 バシリウス様は木を削って作った槍を持ち、俺はブロードソードを用いて彼に全力で撃ち込むのだが、バシリウス様は巨大な見た目とは裏腹に、非常に機敏に動くのだ。彼は攻撃を防御すると同時に鋭い突きを放ってくるので、俺は旅に間にバシリウス様の殺人的な突きを何度も体に受けた。

 体に傷が出来ればローラが瞬時にリジェネレーションを掛けてくれる。ローラの回復魔法の効果は日増しに強くなり、天地創造の杖を使って土や石を作り出す練習をしながら、俺とバシリウス様の稽古を眺めるのが彼女の日課だ。

 エリカは俺がバシリウス様との稽古を終えると、消耗した体を癒やすために、栄養満点の食事を用意してくれる。森でモンスターを狩り、モンスターの肉から料理を作ってくれるのだ。彼女は恥ずかしがり屋だからか、なかなか口を利いてくれる事はないが、それでも毎日俺のために食事を用意してくれる。

 朝の訓練を終えるとすぐに移動を始め、ひたすら深い森を歩く。森を歩いている間にも、バシリウス様から戦い方の技術や、戦士としての心構えを教わる。勿論俺はミノタウロスの戦士になる訳ではないが、冒険者としての心構えにも応用出来る部分が多くあるので、彼の話しは非常に面白いのだ。

 夕方には移動を終えて再びバシリウス様と稽古を始める。午前は剣を用いた戦い方を学び、午後は魔法を学ぶ事になっているのだ。冒険者になって魔法の力のありがたみを初めて知った俺は、さらなる強さを求めてバシリウス様から魔法を教わった。彼が得意としているのは魔力を武器に込めるエンチャントだ。俺は火と雷の魔力を武器に纏わせて攻撃力を強化する練習に励んだ。

 バシリウス様は俺が何度失敗しても決して腹を立てる事もなく、丁寧に指導してくれた。俺は元々火属性の魔法の使い手だったからか、火を武器に纏わせるエンチャントは比較的簡単に覚える事が出来た。しかし、雷属性の魔法は学んだ事すら無かったので、最も基本的な攻撃魔法であるサンダーの魔法を習得する事にした。

 バシリウス様が雷の魔力を放出すると、俺は彼の魔力の波長を真似ながら、何とか弱い雷を作り出す事に成功した。通常なら考えられない速度で魔法を習得出来るのは、バシリウス様の加護のお陰に違いないだろう。以前母からファイアの魔法を教わった時は、たった一種類の魔法を覚えるのに半年も掛かってしまったのだ。

 それから俺は魔法の練習が面倒になり、ファイアの魔法を覚えただけで魔法を学ぶ事を放棄した。しかし、冒険の旅に出てみて、攻撃魔法の必要生を強く感じ始めたので、俺は必死でバシリウス様から魔法を学び続けた。

 深夜まで魔法を使用し、魔力が枯渇すればマナポーションを飲む。マナポーションを飲む度にヴェロニカ様の事を思い出し、ヴェロニカ様との再開を夢見ながら、死にものぐるいで魔法の練習を続けた。

 毎日の睡眠時間を四時間に削り、移動以外のほぼ全ての時間を剣と魔法の訓練に費やした。弱々しかった雷は次第に威力を増し、スライムやゴブリンなら一撃で仕留められる程に強くなったのだ。

 魔法を学べば学ぶ程、モンスターとの戦闘が楽になる事に気がついたので、俺は持てる全ての力を魔法の習得に費やした。どれだけバシリウス様の訓練が辛くても、戦士達やローラ、ラルフやエリカが励ましてくれたので、俺は挫折せずに訓練を続ける事が出来た。

 ある日は、スライムが巣食う森に放置され、魔法だけを使用して全てのスライムを狩る様に命じられたり、サンダーの魔法だけを使用してゴブリンの一族を殲滅する様にと命令されたり。バシリウス様の訓練は非常に過酷だが、彼の優しさがあったから、俺は地獄の様な訓練に耐える事が出来た。


 訓練をしながらゆっくりと移動をしたから、当初の到着予定日よりも三日遅れて、フロイデンベルグ公爵領に辿り着いた。ヴェロニカ様から頂いた地図を確認して歩くと、そこには一軒の朽ち果てた屋敷があった。辺りは背の低い草木が生い茂っており、朽ち果てた木造の民家が建ち並んでいる。まさか本当にこの場所が公爵様の領地なのだろうか。

 屋敷の入り口には看板が立っており、看板には『侵入者には凄惨な死がもたらされる』と書かれている。地図上では確かにこの屋敷に印が付いているのだが……。俺は地図を持ちながら屋敷の周辺を何度も歩くと、地図が光り出して屋敷の扉が開いた。特別な魔法でも掛かっていたのか、恐る恐る屋敷に入ると、俺は目の前の光景に言葉を失った。

 そこにはシュルスクの木をはじめとする様々な果実が生い茂る森が広がっていたのだ。屋敷の外と中ではまるで別の空間の様に見える。きっとヴェロニカ様が特殊な魔法を掛けたのだろう。

 屋敷の中は広大な森林地帯になっており、戦士達は新たな土地に歓喜している。人間が侵入する事はまず無さそうだな。何者かが屋敷の扉に掛かっている魔法を破って強引にこの空間に入ったとしても、バシリウス様が待機しているのだから、レッサーミノタウロス達を殺める事は不可能だろう。

 明らかに侵入者を拒む魔法が掛かった屋敷に無理やり侵入しようとする者は居ないだろう。それに、屋敷の前に立つ看板にはヴェロニカ様の名前も書かれているのだ。これからレッサーミノタウロスやバシリウス様は、この土地で新たな人生を始める事になるのだ。

 新たな土地に到着した訳だが、雨風を凌げる場所がないので、ローラが石の魔法で家を作る事になった。ローラはバシリウス様と相談して次々と石造りの家を建てた。俺は聖者の袋の中で暮らす聖者グレゴリウス様から小麦を分けて頂き、ローラが作り出した畑に小麦の種を蒔いた。

 天地創造の杖を用いて作り上げた土は農業に適した土を作り上げる事が出来るのか、小麦畑は驚異的な速度で成長を始めた。ローラは二日間で全ての住人の家を用意し、俺はその間ローラを支えながら周囲の木を切って町を拡大したりして過ごした……。
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