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第二章「魔法都市編」
第四十三話「戦闘訓練」
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十五体程のスケルトンが錆びついたメイスやショートソードを持ち、一斉に襲い掛かってきた。俺は羽根付きグリーヴに力を込め、一気に上空に飛び上がると、ブロードソードをスケルトンの群れに振り下ろし、剣の先から炎を飛ばした。
フェスカの様に剣から炎の刃を飛ばす事は出来ないが、それでも武器から火炎や雷撃を放つ事は出来る。スケルトンの集団は炎に包まれたが、元々骨の体だらか攻撃の効果は薄い。
シャルロッテはムーンロッドの先端に強烈な風を纏わせ、杖を体の前に突き出して魔力を放出した。風の魔力は小さな塊となって杖の先端から飛び出し、魔力の塊はスケルトンの頭部を捉えた。スケルトンの頭骨が粉々に砕けると、シャルロッテは満足気な笑みを浮かべた。
ローラはシャルロッテの魔法を称賛しながら、パーティー全体の動きを把握するために後退した。天地創造の杖を地面に向けて魔力を込めると、スケルトンの足元から茨が伸び、スケルトンの移動を阻害した。いつの間に新たな魔法を覚えたのだろうか。驚異的な速度で自然を成長させられる天地創造の杖が持つ力だろうか。ローラは新たな移動阻害魔法の名前をソーンバインドと名付けた様だ。
スケルトンの足にはローラが作り出した茨が絡みついており、敵は何とか茨を断ち切ろうとしているが、シャルロッテが遠距離からウィンドショットの魔法で攻撃を続けるので、遠距離魔法に警戒しながら、茨を切ろうと苦戦している。
エリカはそんな隙きだらけのスケルトンに対し、力の限り丸太を振り下ろした。骨が砕ける音が森に響くと、仲間を殺されたスケルトンが怒り狂ってエリカを襲い始めた。俺は上空から地面に着地すると、エリカの隣に立ち、グラディウスとブロードソードの連撃を放ち、スケルトンにダメージを与え続けた。
騒音を聞きつけたゴブリンやスライムが瞬く間に俺達を取り囲んだ。あまりにも派手に戦いすぎたからだろうか。これは都合が良い。この際に徹底的にモンスターを狩り、魔石を集める事にしよう。
久しぶりに再開したシャルロッテの実力も確認出来るし、ナイトの戦い方を知る事も出来る。ナイトは自分よりも体の小さなローラの背後に隠れ、震えながら剣を握り締めている。ゴブリンが武器を構えてローラに斬りかかると、ナイトは勇気を振り絞ってゴブリンの攻撃を体で受けた。鎧には小さな傷が出来ただけで、全くダメージは無い様だ。それから錆びついた剣でゴブリンに攻撃を仕掛けた。
ナイトの剣はあまりにも遅く、怯えながら攻撃を仕掛けているから、ゴブリンやスケルトンはパーティー内で最もナイトが弱いと判断したようだ。執拗にナイトを狙い続けている。俺はエリカと共にナイトを守りながら反撃を続けた。
やはりバシリウス様との訓練が俺を育ててくれたのか、無数のモンスターに囲まれても冷静に立ち回れる自分が居る。遠距離から武器を投げて攻撃する敵に対しては鉄の玉で反撃をし、ゴブリンやスライムにはファイアの魔法を使用して体を焼く。スケルトンはサンダーの魔法を使用して骨の体を吹き飛ばす。
剣と魔法を使い分けながら暫く戦闘を続けていると、全てのモンスターを狩り尽くす事が出来た。辺りには魔石がいくつも散乱している。俺はローラと協力して魔石を拾い、エリカは敵が落とした武器の中から目ぼしいアイテムを探しているみたいだ。エリカの怪力に耐えられる程の武器は見つからなかったみたいなので、戦利品を全て回収してマジックバッグに仕舞った。
魔石は全部で十五個も手に入った。シャルロッテが久しぶりにガチャを回したいと言ったので、俺はシャルロッテとローラに魔石を渡した。二人は楽しそうに目を輝かせながらガチャを回し始めた。
ナイトは活躍出来なかった事を悩んでいるのか、寂しそうに森に座り込んでいる。エリカはそんなナイトの隣に座り、木を削って棍棒を作っている。
「僕、戦いが怖くて、いつも仲間の影に隠れてしまうんです」
「だけどナイトには物理攻撃は殆ど通用しないみたいだね」
「はい。鎧が破壊されない限り、魔力の体にダメージは通りませんから」
「それなのにどうして敵の攻撃を恐れるんだい? 生まれながらに人間よりも遥かに丈夫な体を持っているというのに」
「人間と比較すれば丈夫ですが、僕の攻撃ではなかなか敵を倒せないから、いつも仲間の足を引っ張ってしまうんです。さっきだってどうにかゴブリンを倒す事が出来ましたが、随分時間が掛かってしまいました」
ナイトは肩を落として地面を見つめると、俺は彼の肩に手を置いた。俺も初めて廃村で狩りをした時は、スライムやスケルトンの強さに驚いたものだ。しかし、戦闘を重ねるごとに、敵に対する恐怖心が薄れていった。自分の得意とする戦い方さえ知る事が出来れば、ナイトは更に強くなれるに違いない。
エリカは遂に理想の棍棒を作り上げたのか、百五十センチ程の途方もない大きさの棍棒を担ぐと、満足気に笑みを浮かべた。人間の基準で判断すればエリカの棍棒はあまりにも大きいが、エリカは元々レッサーミノタウロスだったのだから、これでも小さい方なのだろう。
シャルロッテとローラは全てのガチャを回し終えたのか、ガチャで得たアイテムを見せてくれた。木刀×2、ウッドシールド×2、竹槍×2、猫耳×3、ガーゴイル人形、レザーメイル、レザーガントレット、レザーグリーヴ、スケルトンの置物、ホワイトベアの着ぐるみ。以上で十五点だ。レザーシリーズの防具を全て揃える事が出来たので、エリカの新しい防具として装備して貰う事にした。
新たな防具を得たエリカは上機嫌でパーティーを先導し、廃村に向かって歩き出した。既に廃村外周の敵は駆逐しているので、廃村内でバシリウス様を召喚する事にしたのだ。新たなアイテムを一気に得る事が出来たから、ヘルゲンに戻ったら店に出す事にしよう。
廃村内に入り、バシリウス様を召喚するための魔法陣を書く。書き上げた魔法陣に魔力を込めると、魔法陣は穏やかな光を放ち始めた。暫くすると光の中から巨体のミノタウロスが姿を現した。
身長は五メートル程。右手には六メートル程の巨大なランスを持っており、左手には壁の様なラウンドシールドを持っている。バシリウス様は廃村を見渡すと、俺を見下ろして微笑んだ。
「私の出番という訳か? ギルベルト」
「はい、実は……」
シャルロッテとナイトは愕然とした表情でバシリウス様を見つめている。俺はバシリウス様にアポロニウスとのやり取りを話すと、彼は二つ返事で模擬戦の参加を了承した。それからバシリウス様はファントムナイトを相手にするなら訓練が必要だと言い、これから一ヶ月間の過ごし方に付いて話し合う事になった。
「しかし、ナイトがレベル10というのが不思議なのだが。属性を持たないのにも拘らず、体内に秘める魔力があまりにも強い。属性さえ習得出来れば一気に強くなれるのではないだろうか」
「そうですね。魔法を使用出来ない現段階でレベルが10もあるとは」
「属性を覚えてしまえばエンチャントを掛けて攻撃力を上げる事も出来る。鎧を纏う魔力の体だから、筋肉を鍛える必要もない。戦闘技術と魔力の強化を続ければ、すぐに戦力を上げる事が出来るだろう」
「何か良い訓練はありませんか?」
「まずは実戦だろうな。腕を見てやろう」
バシリウス様はランスを地面に突き立て、左手にラウンドシールドを構えると、ナイトを挑発した。ナイトは震えながら錆びついた剣で斬りかかると、バシリウス様は瞬時に後退してナイトの剣を回避した。それからラウンドシールドでナイトを殴りつけると、ナイトの体が宙を舞った。
人間なら即死するレベルの攻撃だが、鎧の体をしたナイトにはダメージすら無い様だ。ファントムナイトにダメージを与えるには、鎧を破壊するか、魔法攻撃で鎧の中の本体を直接ダメージを与えるしかない。アポロニウスが火属性の使い手だから、火属性魔法ではダメージは与えられないだろう。
「水属性を習得するのはどうかしら。アポロニウスの火を弱める事が出来るでしょう」
「うむ。それは良い考えだな。この近くに水と氷属性を得意とするスノウウルフが住むダンジョンがある。二週間もダンジョンに潜っていれば体で属性の特徴を学ぶ事も出来るだろう。今のナイトは度胸も無い、他人を守る強さも無い、意思も弱い。アポロニウスとやらに勝てる確率は極めて低いだろう。それにギルベルトもまだまだ弱い。二人でダンジョンに潜り、暫く自分自身と向き合ってこい」
俺とナイトが二人でダンジョン攻略? とてつもない無茶振りだが、バシリウス様の無茶振りは今に始まった事ではない。スライムが巣食う洞窟に投げ込まれたり、ゴブリンの軍団を一人で殲滅してこいと命令されたり。バシリウス様の訓練は死ぬ気で挑まなければ到底乗り越える事が出来ないのだ。
「ローラもギルベルトと行く!」
「それは駄目だ。ローラは強力な回復魔法が使えるから、ギルベルトは戦闘の際にローラの回復魔法に頼りすぎている。二人で乗り越えて来い。ダンジョン内の全てのモンスターを狩り、最下層を目指して進め。二週間以内にダンジョンを攻略して戻ってこい」
「そんな……。僕がダンジョンの攻略なんて。お兄ちゃんに迷惑を掛けてしまいますよ」
「迷惑? お前達はパーティーなのだろう? 迷惑など掛けて当たり前だ。アポロニウスに勝ちたいのか? それとも強くなる機会を捨て、一ヶ月後に模擬戦で敗北する事を選ぶのか?」
「そうだよ、ナイト。君が望むなら俺は君の訓練に付き合う。一緒にダンジョンを攻略して更なる強さを手に入れよう」
「わかりました……。それでは宜しくお願いします。僕は強くなりたいんです」
「うむ。それでこそ男だ」
バシリウス様はナイトの頭を撫で、柔和な笑みを浮かべた。多少発言が厳しかったり、殺すつもりで試練を与える事はあるが、バシリウス様は基本的に相手のためにならない事は言わない。常に若い者が成長する機会を与えてくれるのだ。
それから俺達はバシリウス様の命令に従って、スノウウルフが巣食うダンジョンの攻略に出発する事になった……。
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ローラはシャルロッテの魔法を称賛しながら、パーティー全体の動きを把握するために後退した。天地創造の杖を地面に向けて魔力を込めると、スケルトンの足元から茨が伸び、スケルトンの移動を阻害した。いつの間に新たな魔法を覚えたのだろうか。驚異的な速度で自然を成長させられる天地創造の杖が持つ力だろうか。ローラは新たな移動阻害魔法の名前をソーンバインドと名付けた様だ。
スケルトンの足にはローラが作り出した茨が絡みついており、敵は何とか茨を断ち切ろうとしているが、シャルロッテが遠距離からウィンドショットの魔法で攻撃を続けるので、遠距離魔法に警戒しながら、茨を切ろうと苦戦している。
エリカはそんな隙きだらけのスケルトンに対し、力の限り丸太を振り下ろした。骨が砕ける音が森に響くと、仲間を殺されたスケルトンが怒り狂ってエリカを襲い始めた。俺は上空から地面に着地すると、エリカの隣に立ち、グラディウスとブロードソードの連撃を放ち、スケルトンにダメージを与え続けた。
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やはりバシリウス様との訓練が俺を育ててくれたのか、無数のモンスターに囲まれても冷静に立ち回れる自分が居る。遠距離から武器を投げて攻撃する敵に対しては鉄の玉で反撃をし、ゴブリンやスライムにはファイアの魔法を使用して体を焼く。スケルトンはサンダーの魔法を使用して骨の体を吹き飛ばす。
剣と魔法を使い分けながら暫く戦闘を続けていると、全てのモンスターを狩り尽くす事が出来た。辺りには魔石がいくつも散乱している。俺はローラと協力して魔石を拾い、エリカは敵が落とした武器の中から目ぼしいアイテムを探しているみたいだ。エリカの怪力に耐えられる程の武器は見つからなかったみたいなので、戦利品を全て回収してマジックバッグに仕舞った。
魔石は全部で十五個も手に入った。シャルロッテが久しぶりにガチャを回したいと言ったので、俺はシャルロッテとローラに魔石を渡した。二人は楽しそうに目を輝かせながらガチャを回し始めた。
ナイトは活躍出来なかった事を悩んでいるのか、寂しそうに森に座り込んでいる。エリカはそんなナイトの隣に座り、木を削って棍棒を作っている。
「僕、戦いが怖くて、いつも仲間の影に隠れてしまうんです」
「だけどナイトには物理攻撃は殆ど通用しないみたいだね」
「はい。鎧が破壊されない限り、魔力の体にダメージは通りませんから」
「それなのにどうして敵の攻撃を恐れるんだい? 生まれながらに人間よりも遥かに丈夫な体を持っているというのに」
「人間と比較すれば丈夫ですが、僕の攻撃ではなかなか敵を倒せないから、いつも仲間の足を引っ張ってしまうんです。さっきだってどうにかゴブリンを倒す事が出来ましたが、随分時間が掛かってしまいました」
ナイトは肩を落として地面を見つめると、俺は彼の肩に手を置いた。俺も初めて廃村で狩りをした時は、スライムやスケルトンの強さに驚いたものだ。しかし、戦闘を重ねるごとに、敵に対する恐怖心が薄れていった。自分の得意とする戦い方さえ知る事が出来れば、ナイトは更に強くなれるに違いない。
エリカは遂に理想の棍棒を作り上げたのか、百五十センチ程の途方もない大きさの棍棒を担ぐと、満足気に笑みを浮かべた。人間の基準で判断すればエリカの棍棒はあまりにも大きいが、エリカは元々レッサーミノタウロスだったのだから、これでも小さい方なのだろう。
シャルロッテとローラは全てのガチャを回し終えたのか、ガチャで得たアイテムを見せてくれた。木刀×2、ウッドシールド×2、竹槍×2、猫耳×3、ガーゴイル人形、レザーメイル、レザーガントレット、レザーグリーヴ、スケルトンの置物、ホワイトベアの着ぐるみ。以上で十五点だ。レザーシリーズの防具を全て揃える事が出来たので、エリカの新しい防具として装備して貰う事にした。
新たな防具を得たエリカは上機嫌でパーティーを先導し、廃村に向かって歩き出した。既に廃村外周の敵は駆逐しているので、廃村内でバシリウス様を召喚する事にしたのだ。新たなアイテムを一気に得る事が出来たから、ヘルゲンに戻ったら店に出す事にしよう。
廃村内に入り、バシリウス様を召喚するための魔法陣を書く。書き上げた魔法陣に魔力を込めると、魔法陣は穏やかな光を放ち始めた。暫くすると光の中から巨体のミノタウロスが姿を現した。
身長は五メートル程。右手には六メートル程の巨大なランスを持っており、左手には壁の様なラウンドシールドを持っている。バシリウス様は廃村を見渡すと、俺を見下ろして微笑んだ。
「私の出番という訳か? ギルベルト」
「はい、実は……」
シャルロッテとナイトは愕然とした表情でバシリウス様を見つめている。俺はバシリウス様にアポロニウスとのやり取りを話すと、彼は二つ返事で模擬戦の参加を了承した。それからバシリウス様はファントムナイトを相手にするなら訓練が必要だと言い、これから一ヶ月間の過ごし方に付いて話し合う事になった。
「しかし、ナイトがレベル10というのが不思議なのだが。属性を持たないのにも拘らず、体内に秘める魔力があまりにも強い。属性さえ習得出来れば一気に強くなれるのではないだろうか」
「そうですね。魔法を使用出来ない現段階でレベルが10もあるとは」
「属性を覚えてしまえばエンチャントを掛けて攻撃力を上げる事も出来る。鎧を纏う魔力の体だから、筋肉を鍛える必要もない。戦闘技術と魔力の強化を続ければ、すぐに戦力を上げる事が出来るだろう」
「何か良い訓練はありませんか?」
「まずは実戦だろうな。腕を見てやろう」
バシリウス様はランスを地面に突き立て、左手にラウンドシールドを構えると、ナイトを挑発した。ナイトは震えながら錆びついた剣で斬りかかると、バシリウス様は瞬時に後退してナイトの剣を回避した。それからラウンドシールドでナイトを殴りつけると、ナイトの体が宙を舞った。
人間なら即死するレベルの攻撃だが、鎧の体をしたナイトにはダメージすら無い様だ。ファントムナイトにダメージを与えるには、鎧を破壊するか、魔法攻撃で鎧の中の本体を直接ダメージを与えるしかない。アポロニウスが火属性の使い手だから、火属性魔法ではダメージは与えられないだろう。
「水属性を習得するのはどうかしら。アポロニウスの火を弱める事が出来るでしょう」
「うむ。それは良い考えだな。この近くに水と氷属性を得意とするスノウウルフが住むダンジョンがある。二週間もダンジョンに潜っていれば体で属性の特徴を学ぶ事も出来るだろう。今のナイトは度胸も無い、他人を守る強さも無い、意思も弱い。アポロニウスとやらに勝てる確率は極めて低いだろう。それにギルベルトもまだまだ弱い。二人でダンジョンに潜り、暫く自分自身と向き合ってこい」
俺とナイトが二人でダンジョン攻略? とてつもない無茶振りだが、バシリウス様の無茶振りは今に始まった事ではない。スライムが巣食う洞窟に投げ込まれたり、ゴブリンの軍団を一人で殲滅してこいと命令されたり。バシリウス様の訓練は死ぬ気で挑まなければ到底乗り越える事が出来ないのだ。
「ローラもギルベルトと行く!」
「それは駄目だ。ローラは強力な回復魔法が使えるから、ギルベルトは戦闘の際にローラの回復魔法に頼りすぎている。二人で乗り越えて来い。ダンジョン内の全てのモンスターを狩り、最下層を目指して進め。二週間以内にダンジョンを攻略して戻ってこい」
「そんな……。僕がダンジョンの攻略なんて。お兄ちゃんに迷惑を掛けてしまいますよ」
「迷惑? お前達はパーティーなのだろう? 迷惑など掛けて当たり前だ。アポロニウスに勝ちたいのか? それとも強くなる機会を捨て、一ヶ月後に模擬戦で敗北する事を選ぶのか?」
「そうだよ、ナイト。君が望むなら俺は君の訓練に付き合う。一緒にダンジョンを攻略して更なる強さを手に入れよう」
「わかりました……。それでは宜しくお願いします。僕は強くなりたいんです」
「うむ。それでこそ男だ」
バシリウス様はナイトの頭を撫で、柔和な笑みを浮かべた。多少発言が厳しかったり、殺すつもりで試練を与える事はあるが、バシリウス様は基本的に相手のためにならない事は言わない。常に若い者が成長する機会を与えてくれるのだ。
それから俺達はバシリウス様の命令に従って、スノウウルフが巣食うダンジョンの攻略に出発する事になった……。
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