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第二章「魔法都市編」
第五十六話「模擬戦開始」
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バシリウス様の登場と共に試合開始の鐘が鳴ると、アポロニウス達は愕然とした表情を浮かべながらも、武器を構えた。アポロニウスはロングソードに火の魔力を注いで待機し、クレメンスは全身に風の魔力を発生させ、二本のダガーを構えてアポロニウスの後方に飛んだ。
ニコラスは百八十センチ程の巨大なハンマーを抱えると、地属性の魔力を纏わせながら、高速で俺達との距離を詰めた。ニコラスのハンマーが地面を叩くと、砂が舞い上がり、一瞬で視界が奪われた。砂を操って視界を奪う方法があったのか……。
すぐ隣に居たはずのナイトの姿は見えず、俺は砂の中から出るために羽根付きグリーヴに力を込めて飛び上がると、俺よりも遥か上空にアポロニウスが居た。アポロニウスは火炎を纏わせたロングソードで水平斬りを放つと、俺は咄嗟に武器を交差させ、ロングソードの一撃を受けた。
アポロニウスの剣の威力に押されて俺は高速で地面に落下を始めると、武器を仕舞ってガーゴイルの羽衣を纏った。それから地上で砂を操っているニコラスの背後に回ると、近距離から全力で鉄の玉を投げた。
球はニコラスの頭部を捉えたが、頑丈な鎧には多少傷が出来ただけで、ニコラスは倒れもしなかった。一体どういう耐久力なのだろうか。人間なら即死するレベルの攻撃だったのだが。やはりファントムナイトを倒すには鎧を破壊し、魔力の体に直接攻撃を当てるしか無い。
クレメンスは高速で地面を駆け、ナイトに対してダガーの連撃を放った。攻撃速度は非常に早く、全身に風の魔力を纏っているからか、ナイトの剣に掛かっている氷のエンチャントの威力が落ちている。レベル的には然程変わらないが、やはり幼い頃からアポロニウス達に恐怖心を抱いて育ったからだろう、ナイトは怯えながらクレメンスの攻撃を受けている。
アポロニウスは地面に着地すると、バシリウス様を見もせずに剣に強烈な炎を纏わせながら俺に向かって一直線に駆けてきた。移動速度も驚異的な速さで、アポロニウスは一瞬で距離を詰めると、鋭い水平斬りを放ってきた。俺は羽衣の効果を解除して瞬時にブロードソードを抜くと、アポロニウスの剣を受け止めた。
アポロニウスの攻撃はエリカよりも格段に鋭く、両手で武器を握り締めても体ごと吹き飛ばされそうな力を感じる。やはり相手は人間ではないのだな。常識では考えられない力と魔力を強さを実感すると、俺は背後に大きく跳躍し、左手でグラディウスを抜いて切りかかった。
アポロニウスを殺す勢いで、グラディウスとブロードソードを撃ち込むが、アポロニウスは全ての攻撃を完璧に防御してみせた。俺は全ての魔力を使い果たすつもりで二本の剣を同時に振り下ろすと、アポロニウスは狼狽した表情を浮かべて俺の剣を受けた。
瞬間、闘技場に爆発的な雷が落ちた。バシリウス様がニコラスの頭部に雷を落としたのか、ニコラスは突然の強烈な攻撃魔法に身動きが取れなくなった様だ。ニコラスの鎧は大きく変形しているが、彼はハンマーを抱えてバシリウス様に攻撃を仕掛けた。
バシリウス様はニコラスの攻撃をラウンドシールドで受けると、右手に持ったランスを振り下ろし、ニコラスの体を叩き潰した。鎧は一枚の鉄の板の様に潰れ、ニコラスの叫び声が鎧の中から聞こえる。まるでゴーストの様な、半透明の体をしたニコラスが鎧から出てくると、バシリウス様はニコラスを捻り上げた。
ニコラスは鎧を失って敗北を確信したのか、自らの負けを宣言した。そんなニコラスの様子を見たアポロニウスは怒り狂って俺に攻撃を仕掛けてきた。やはりダンジョンでひたすら敵と戦い続けたからか、俺はアポロニウスを前にしても恐怖を感じる事もない。冷静にアポロニウスの剣を受け、瞬時に蹴りを放ってアポロニウスを吹き飛ばす。
鎧に汚い足跡が付いた事が癇に障ったのか、アポロニウスは再びロングソードで怒涛の攻めを始めると、俺は何とかアポロニウスの剣を受け続けた。剣の技術は同等、魔力はアポロニウスの方が上だ。この状況を覆すには、バシリウス様かナイトが加勢するしかない。
ナイトはクレメンスのダガーを受けながらも、氷の魔力を纏わせたレイピアでクレメンスの体を貫いた。抜群の反応速度で、相手の防御の隙きを突いてダメージを与えたのだ。ナイトのレイピアがクエメンスの腹部を穿くと、アポロニウスが狼狽した。
俺は攻撃の最大のチャンスを見逃さずにアポロニウスの頭部に向けてブロードソードを振り下ろすと、バシリウス様も背後からアポロニウスに対してランスで突きを放った。アポロニウスの胴体には巨大な穴が空き、頭部はブロードソードを受けて大きく凹んだ。
一瞬の判断ミスがアポロニウスに敗北をもたらしたのだ。リーダーの敗北を知ったクレメンスは動揺しながらもナイトの攻撃を防いだが、もはや勝利は不可能だと悟ったのか、彼はダガーを収めて地面に手を付いた。
「俺達の負けだ!」
クレメンスが叫んだ瞬間、アポロニウスの鎧からは力なく半透明の体をしたアポロニウスが出てきた。それからニコラスとアポロニウスは深々と俺達に頭を下げると、会場には熱狂的な歓声が上がった。
アポロニウスは少し寂しそうに、今までの行いをナイトに詫びると、俺の前に立った。
「誠に素晴らしい冒険者だな。まさか出来損ないのチビをここまで強くするとは。どうやら我々の育て方が間違っていたらしい。これからもチビを育ててくれるか?」
「勿論。ナイトの事は俺に任せてくれ」
「ありがとう。そして次は必ず俺がお前を仕留める! それまでは誰にも負けずに待っていろよ。ギルベルト・カーティス!」
「望むところだ。アポロニウス!」
アポロニウスが握手を求めたので、俺は手を差し出すと、俺の手には火の魔力が流れた。それから司会が予備の鎧を持ってくると、二人は新たな体に入り、俺達の勝利を称賛してから退場した。
観客席ではローラが涙を流しながら俺に手を振っている。シャルロッテは白い尻尾を振りながら微笑み、エリカは観客共に拍手をしている。ヴェロニカとアンネさんは満面の笑みう浮かべて上品に拍手をして俺達を見下ろしている。仲間達に祝福されながら、俺達は人生で初めての模擬戦に勝利を収めた。
控室に戻ると、俺は全身の疲労を感じて床に倒れた。ナイトも全ての力を使い果たしたのか、俺の隣に倒れた。
「僕達、ついにアポロニウス様に勝ったんですね! 本当にお兄ちゃんは凄いです。僕をここまで強くしてくれたのだから!」
「ナイトが頑張ったから強くなれたんだよ。俺は傍で一緒に鍛えていただけさ。むしろ俺はいつもナイトに励まされていた」
「ありがとうございます。これからもお兄ちゃんと一緒に居ます」
「ああ。これからも頼りにしているよ。ギレーヌ」
「ギレーヌ……? 僕の名前! 考えておいてくれたんですね!」
「勿論。俺の祖母の名前だよ。五年前に他界したけど、若い頃は魔術師をしていたんだ」
「お兄ちゃんの家族の名前を頂けるなんて嬉しいです! 僕は今日からギレーヌ。冒険者のギレーヌです」
彼女は美しい笑みを浮かべて俺に抱きつくと、俺の唇に唇を重ねた。闘技場からバシリウス様が俺達を覗き、愉快そうに笑い出すと、控室に仲間達が入ってきた。
「おいおい! ナイトと口づけをするとはどういう事だ?」
「まさか、ギルベルトはナイトと付き合っているの?」
「ローラのギルベルトなのに! 返して!」
ローラがギレーヌから俺を引き離すと、ギレーヌは頬を赤らめながら俺を見つめた。
『そろそろギルベルトのハーレム生活が始まるのかな?』
「話をややこしくするなって」
ガチャは指環から元の姿に戻ると、俺の体に抱きついた。それから金属の唇の様なパーツが俺の唇に触れると、彼は楽しそうに笑い出した。
「僕も女だったら良かったんだけど、ガチャは人間にはなれないからね。だけど僕はギルベルトの事が好きだよ」
「ありがとう。俺もガチャの事が好きだよ」
ローラがガチャを見つめて頬を膨らませると、俺はすっかり気が緩んでローラの胸に顔を埋めた。やっとアポロニウスを倒す事が出来た。一ヶ月間、睡眠時間を削り、人生で経験した事も無い程の努力を重ねた。何度も死を意識する程の強敵と戦い、徹底的に自分自身を追い込んだ。やはり努力は裏切らないのだ。努力すればするほど、冒険者としてより強い存在になれるのだ。
「さぁ、屋敷に帰って宴を始めようではないか!」
ヴェロニカが俺の頭に手を置いて微笑むと、彼女も俺の頬に口づけをした……。
ニコラスは百八十センチ程の巨大なハンマーを抱えると、地属性の魔力を纏わせながら、高速で俺達との距離を詰めた。ニコラスのハンマーが地面を叩くと、砂が舞い上がり、一瞬で視界が奪われた。砂を操って視界を奪う方法があったのか……。
すぐ隣に居たはずのナイトの姿は見えず、俺は砂の中から出るために羽根付きグリーヴに力を込めて飛び上がると、俺よりも遥か上空にアポロニウスが居た。アポロニウスは火炎を纏わせたロングソードで水平斬りを放つと、俺は咄嗟に武器を交差させ、ロングソードの一撃を受けた。
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球はニコラスの頭部を捉えたが、頑丈な鎧には多少傷が出来ただけで、ニコラスは倒れもしなかった。一体どういう耐久力なのだろうか。人間なら即死するレベルの攻撃だったのだが。やはりファントムナイトを倒すには鎧を破壊し、魔力の体に直接攻撃を当てるしか無い。
クレメンスは高速で地面を駆け、ナイトに対してダガーの連撃を放った。攻撃速度は非常に早く、全身に風の魔力を纏っているからか、ナイトの剣に掛かっている氷のエンチャントの威力が落ちている。レベル的には然程変わらないが、やはり幼い頃からアポロニウス達に恐怖心を抱いて育ったからだろう、ナイトは怯えながらクレメンスの攻撃を受けている。
アポロニウスは地面に着地すると、バシリウス様を見もせずに剣に強烈な炎を纏わせながら俺に向かって一直線に駆けてきた。移動速度も驚異的な速さで、アポロニウスは一瞬で距離を詰めると、鋭い水平斬りを放ってきた。俺は羽衣の効果を解除して瞬時にブロードソードを抜くと、アポロニウスの剣を受け止めた。
アポロニウスの攻撃はエリカよりも格段に鋭く、両手で武器を握り締めても体ごと吹き飛ばされそうな力を感じる。やはり相手は人間ではないのだな。常識では考えられない力と魔力を強さを実感すると、俺は背後に大きく跳躍し、左手でグラディウスを抜いて切りかかった。
アポロニウスを殺す勢いで、グラディウスとブロードソードを撃ち込むが、アポロニウスは全ての攻撃を完璧に防御してみせた。俺は全ての魔力を使い果たすつもりで二本の剣を同時に振り下ろすと、アポロニウスは狼狽した表情を浮かべて俺の剣を受けた。
瞬間、闘技場に爆発的な雷が落ちた。バシリウス様がニコラスの頭部に雷を落としたのか、ニコラスは突然の強烈な攻撃魔法に身動きが取れなくなった様だ。ニコラスの鎧は大きく変形しているが、彼はハンマーを抱えてバシリウス様に攻撃を仕掛けた。
バシリウス様はニコラスの攻撃をラウンドシールドで受けると、右手に持ったランスを振り下ろし、ニコラスの体を叩き潰した。鎧は一枚の鉄の板の様に潰れ、ニコラスの叫び声が鎧の中から聞こえる。まるでゴーストの様な、半透明の体をしたニコラスが鎧から出てくると、バシリウス様はニコラスを捻り上げた。
ニコラスは鎧を失って敗北を確信したのか、自らの負けを宣言した。そんなニコラスの様子を見たアポロニウスは怒り狂って俺に攻撃を仕掛けてきた。やはりダンジョンでひたすら敵と戦い続けたからか、俺はアポロニウスを前にしても恐怖を感じる事もない。冷静にアポロニウスの剣を受け、瞬時に蹴りを放ってアポロニウスを吹き飛ばす。
鎧に汚い足跡が付いた事が癇に障ったのか、アポロニウスは再びロングソードで怒涛の攻めを始めると、俺は何とかアポロニウスの剣を受け続けた。剣の技術は同等、魔力はアポロニウスの方が上だ。この状況を覆すには、バシリウス様かナイトが加勢するしかない。
ナイトはクレメンスのダガーを受けながらも、氷の魔力を纏わせたレイピアでクレメンスの体を貫いた。抜群の反応速度で、相手の防御の隙きを突いてダメージを与えたのだ。ナイトのレイピアがクエメンスの腹部を穿くと、アポロニウスが狼狽した。
俺は攻撃の最大のチャンスを見逃さずにアポロニウスの頭部に向けてブロードソードを振り下ろすと、バシリウス様も背後からアポロニウスに対してランスで突きを放った。アポロニウスの胴体には巨大な穴が空き、頭部はブロードソードを受けて大きく凹んだ。
一瞬の判断ミスがアポロニウスに敗北をもたらしたのだ。リーダーの敗北を知ったクレメンスは動揺しながらもナイトの攻撃を防いだが、もはや勝利は不可能だと悟ったのか、彼はダガーを収めて地面に手を付いた。
「俺達の負けだ!」
クレメンスが叫んだ瞬間、アポロニウスの鎧からは力なく半透明の体をしたアポロニウスが出てきた。それからニコラスとアポロニウスは深々と俺達に頭を下げると、会場には熱狂的な歓声が上がった。
アポロニウスは少し寂しそうに、今までの行いをナイトに詫びると、俺の前に立った。
「誠に素晴らしい冒険者だな。まさか出来損ないのチビをここまで強くするとは。どうやら我々の育て方が間違っていたらしい。これからもチビを育ててくれるか?」
「勿論。ナイトの事は俺に任せてくれ」
「ありがとう。そして次は必ず俺がお前を仕留める! それまでは誰にも負けずに待っていろよ。ギルベルト・カーティス!」
「望むところだ。アポロニウス!」
アポロニウスが握手を求めたので、俺は手を差し出すと、俺の手には火の魔力が流れた。それから司会が予備の鎧を持ってくると、二人は新たな体に入り、俺達の勝利を称賛してから退場した。
観客席ではローラが涙を流しながら俺に手を振っている。シャルロッテは白い尻尾を振りながら微笑み、エリカは観客共に拍手をしている。ヴェロニカとアンネさんは満面の笑みう浮かべて上品に拍手をして俺達を見下ろしている。仲間達に祝福されながら、俺達は人生で初めての模擬戦に勝利を収めた。
控室に戻ると、俺は全身の疲労を感じて床に倒れた。ナイトも全ての力を使い果たしたのか、俺の隣に倒れた。
「僕達、ついにアポロニウス様に勝ったんですね! 本当にお兄ちゃんは凄いです。僕をここまで強くしてくれたのだから!」
「ナイトが頑張ったから強くなれたんだよ。俺は傍で一緒に鍛えていただけさ。むしろ俺はいつもナイトに励まされていた」
「ありがとうございます。これからもお兄ちゃんと一緒に居ます」
「ああ。これからも頼りにしているよ。ギレーヌ」
「ギレーヌ……? 僕の名前! 考えておいてくれたんですね!」
「勿論。俺の祖母の名前だよ。五年前に他界したけど、若い頃は魔術師をしていたんだ」
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彼女は美しい笑みを浮かべて俺に抱きつくと、俺の唇に唇を重ねた。闘技場からバシリウス様が俺達を覗き、愉快そうに笑い出すと、控室に仲間達が入ってきた。
「おいおい! ナイトと口づけをするとはどういう事だ?」
「まさか、ギルベルトはナイトと付き合っているの?」
「ローラのギルベルトなのに! 返して!」
ローラがギレーヌから俺を引き離すと、ギレーヌは頬を赤らめながら俺を見つめた。
『そろそろギルベルトのハーレム生活が始まるのかな?』
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ガチャは指環から元の姿に戻ると、俺の体に抱きついた。それから金属の唇の様なパーツが俺の唇に触れると、彼は楽しそうに笑い出した。
「僕も女だったら良かったんだけど、ガチャは人間にはなれないからね。だけど僕はギルベルトの事が好きだよ」
「ありがとう。俺もガチャの事が好きだよ」
ローラがガチャを見つめて頬を膨らませると、俺はすっかり気が緩んでローラの胸に顔を埋めた。やっとアポロニウスを倒す事が出来た。一ヶ月間、睡眠時間を削り、人生で経験した事も無い程の努力を重ねた。何度も死を意識する程の強敵と戦い、徹底的に自分自身を追い込んだ。やはり努力は裏切らないのだ。努力すればするほど、冒険者としてより強い存在になれるのだ。
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