レッドストーン - 魔王から頂いた加護が最強過ぎるので、冒険者になって無双してもいいだろうか -

花京院 光

文字の大きさ
17 / 64
第一章「王国編」

第十七話「王族」

しおりを挟む
 俺は懸賞金が掛かっている暗殺者の身柄を拘束するつもりはない。殺さずに相手の戦意を喪失させられ程、俺は強くないからだ。俺が父から教わったのは、相手を確実に仕留める魔王としての戦い方。今度暗殺者と戦闘になれば、相手も本気で俺を殺しに来るだろう。命のやり取りをする覚悟で挑まなければ勝利は無さそうだ。

「ラインハルト。あまり深刻に考えないでね。私ももっと魔法を学んで強くなるから」
「そうだね。フローラ、無理せずにゆっくり魔法を学ぶんだよ」
「うんん。私は無理をしてでも強くなりたい。十七歳まで家族に守られて、迷惑を掛けながら生きてきたから。今度は私がアイゼンシュタインの民を、愛する人を守れるようになりたいの」
「俺も同じ考えだよ。敵がどれだけ強くても、無理をしてでも暗殺者を倒す」
「全くラインハルトは頼もしいわね。フローラ、これから私も魔法の訓練を再開するから、一緒に魔法を学びましょう」
「はい、ヘンリエッテさん! よろしくお願いします」

 フローラはすっかりヘンリエッテさんと仲良くなったのか、二人は楽しそうに葡萄酒を飲みながら語り合っている。そろそろ夜警に出るか……。ロビンとダリウスに二人を頼むと伝え、露天商から頂いた食料を渡した。今日は二人がフローラとヘンリエッテさんを守りながら、ギルドで待機していてくれるらしい。

「ヴォルフ。今日も力を貸してくれるかい?」

 ヴォルフは静かに頷き、ゆっくりとギルドを出た。夜の町でブラッドソードを見つける事が出来れば、俺はすぐに攻撃を仕掛けるつもりだ。一人でも多くの暗殺者を仕留めなければ、安心してこの町で暮らせないからな。

 俺はタウロスの召喚石を魔装の内側に隠し、少しの食料と魔剣を持ってギルドを出た。まずは町の衛兵からブラッドソードに関する情報を教えて貰おうか。衛兵の詰所に行き、レッドストーンが夜警をする事を伝えよう。魔物を連れて深夜の町を徘徊していたら、衛兵達を戸惑わせてしまうからな。

 夜の町は人も少なく、冒険者区には市民も殆ど居ない。冒険者達は所属するギルドで楽しそうにお酒を飲んでいる。夜の間も冒険者が起きているという事は、冒険者区は比較的防衛力が高いという事だろう。ブラッドソードの暗殺者は、冒険者の様な戦闘技術がある者を狙う事は少ないのだとか。

 行商人や露天商、辺境の村や町など、戦う力を持たない者を襲う事が多い。これは重要な共通点だ。商人が多い商業区を重点的に見回るべきだろう。

 アイゼンシュタインには『中央区』という最も警備が厳重なエリアがある。アイゼンシュタイン城や、国の機関、教育施設等が密集するエリアだ。ヘンリエッテさんの説明によると、中央区には平均レベル40の王国軍の兵士が常時巡回しているらしい。流石の暗殺者達も、王国の兵士に手を出す事はないのだとか。

 暫く町を町を歩くと詰所に到着した。金属製のメイルに身を包んだ衛兵達が退屈そうに立番をしている。まずはブラッドソード討伐のために夜警をする事を伝えよう。

「すみません、今お時間よろしいでしょうか」
「どうしましたか?」
「俺は冒険者ギルド・レッドストーンのラインハルト・カーフェンと申します。ブラッドソード討伐のために、今日から町を巡回しようと思うのですが、よろしいでしょうか」
「レッドストーンというと……ユグドラシルからブラッドソード討伐の依頼を受けたギルドですね。冒険者様が自主的に町を巡回するのは勿論構いませんが、市民を巻き込む戦闘は行わないようにお願いします」
「分かりました。それから、町中で体の大きな魔物を召喚しても大丈夫でしょうか?」
「召喚ですか……? 市民を襲う可能性が無い魔物なら勿論構いませんが……」

 俺と衛兵が話をしていると、冒険者区とギルド区の防衛の指揮を執る人物が現れた。金色の豪華な鎧を身に纏い、宝石を散りばめた盾を持っている。腰にはロングソードを差しており、いかにも裕福な貴族といった感じだ。装備が戦闘用に見えないのはどうしてだろうか。

「俺はアイゼンシュタイン王国騎士爵、衛兵長のグレゴリウス・フォン・ビスマルクだ。名を名乗れ! 冒険者よ」
「俺は冒険者ギルド・レッドストーンのラインハルト・カーフェンです」
「冒険者がブラッドソードを討伐するって? こんなに幼い子供が? 俺達でも捕らえられない暗殺者を、お前みたいな弱小ギルドの冒険者が捕まえられる訳が無いだろう」
「それはやってみなければ分かりません。俺は冒険者ですから、民を守るために戦うまでです」
「ほう、そんな古ぼけた魔装で何が出来るのかね? それに、レッドストーンの情報を調べてみたが、メンバーが二人しか居ないというのは本当か? 目も見えない頭の悪い小娘と、偶然暗殺者の手を切り裂いた小僧がブラッドソードに勝てるって? お前は自殺願望でもあるのか?」

 気味の悪い笑みを浮かべながら、値踏みする様に俺の装備を見ている。人生で初めて貴族と会話をしている訳だが、態度は高圧的で、話しているだけで気分が悪くなりそうだ。体から感じる魔力も悪質で、この男が衛兵長だという事が信じられない。

「まぁ、せいぜい暗殺者に殺されない様に、夜の間は起きている事だな。それで、お前がさっき話していた召喚獣というのはどんな魔物なんだ? どうせスケルトンやスライムの様な低級の魔獣だろう? お前なんかが召喚できる魔物はそれくらいしか居ないだろう」
「ミノタウロスです」
「なんだって……? ミノタウロスだと? 国王陛下から騎士の称号を受けた俺に対して、幻獣の召喚が出来るなどと嘘を付くとは……! 平民が騎士を欺く行為は許さんぞ!」

 衛兵長が激昂して剣の手を掛けると、一人の女性が現れた。長い銀髪にエメラルドの様な美しい瞳。立派な白金の鎧を着ており、胸元にはアイゼンシュタイン王国の紋章が入っている。王族だろうか? 衛兵長が女性の姿を見ると大急ぎで跪き、頭を垂れた。

「何事ですか? ビスマルク衛兵長。随分騒がしいようですが、また揉め事を起こしたのですか?」
「エレオノーレ姫殿下! この冒険者が幻獣の召喚を出来るなどと嘘を付くもので……」
「幻獣? それは信じられない話ですね。しかし、冒険者が幻獣を召喚出来るなら、アイゼンシュタインの防衛力が上がる。何を目くじらを立てる必要があるのですか?」
「それはそうですが、私にはこんな子供が幻獣を召喚出来るとは思えません! それに、この者はブラッドソードの暗殺者を討伐すると申しております。衛兵として命懸けで市民を守る私達を愚弄する行為ではありませんか」

 どうやらこの方はアイゼンシュタイン王国の姫なのだろう。確かアーベルさんの話によると、三人の姫が王位継承のために奮闘しているのだとか。姫殿下から感じ魔力は、フローラの魔力と近く、神聖な雰囲気をしている。近くに居るだけで気持ちが落ち着く。衛兵長の禍々しい魔力とは大違いだ。

「もしかして、貴方が酒場でブラッドソードの暗殺者を退けたという冒険者ではありませんか? 黒い魔装に銀髪。幻魔獣のフェンリルを連れ、魔術師ギルドのマスターからブラッドソード壊滅のクエストを受けたのだとか」
「はい。冒険者ギルド・レッドストーンのラインハルト・カーフェンです」
「ラインハルト……酒場では少女と店主を救い、民を苦しめる暗殺者の手を切り落としてくれたと聞きました。私は貴方と一度お会いしたいと思っていたのですよ」
「光栄です。姫殿下」
「自己紹介が遅れました、私はアイゼンシュタイン王国第一王女、冒険者ギルド・ダーインスレイヴ、ギルドマスターの、エレオノーレ・フォン・アイゼンシュタインです」

 姫殿下は微笑みながら俺に近づくと、俺に握手を求めた。平民の俺が王族と握手をしても良いのだろうか。恐る恐る姫殿下の手を握ると、体には神聖な魔力が流れた。きっと聖属性の魔法の使い手なのだろう。

「幻魔獣を従える冒険者が、幻獣を召喚出来ても不思議ではありません。衛兵長、あなたは目の前に居るフェンリルに気が付かなかったのですか?」
「まさか! こんなガキが幻魔獣のフェンリルを連れている筈がありません! この魔物は氷属性のシルバーウルフに違いありません!」
「ビスマルク衛兵長。貴方の目は節穴ですか? 騎士の称号を持ち、悪質な魔物から民を守る衛兵である貴方が、魔物の種類すら分からないとは……全く呆れました。魔獣クラスのシルバーウルフが、これ程までに強い魔力を持っている筈がありません。どう考えても幻魔獣のフェンリルです!」

 姫殿下が叫ぶと、フェンリルは嬉しそうに俺を見つめた。衛兵長が鬼の様な形相で俺を睨んでいる。この者はブラックウルフの様な悪質な魔力を体に秘めているな……。性格もかなり攻撃的だ。『イェーガーの指環』を使用して、ヴォルフの正体を証明する事は出来るが、特殊な魔法道具は使用したくはない。ヘンリエッテさんの話によると、俺の指環はかなり貴重な物らしいからな。

「それではこうしましょうか。もしラインハルトが幻獣のミノタウロスを召喚出来れば、この魔物がフェンリルだという事を認める。どうですか? ビスマルク衛兵長」
「はい! まぁ不可能だとは思いますが、もしその小僧がミノタウロスを召喚出来れば、私は納得して職務に戻ります」
「それではラインハルト。ミノタウロスを召喚して頂いても?」
「お任せ下さい、姫殿下」

 ミノタウロスを召喚すれば、ビスマルク衛兵長から開放されるのだ。もしこの場に姫殿下が居なければ、俺は執拗に衛兵長から絡まれていただろう。もしかすると剣を抜かれ、攻撃を仕掛けられていた可能性もある。

 俺を信じてくれている姫殿下のためにも、ミノタウロスを召喚しよう。懐からミノタウロスの召喚石を取り出し、召喚に取り掛かる事にした……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。 王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。 だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。 行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。 冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。 無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――! 王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。 これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。

追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される

希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。 ​すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。 ​その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます

黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。 だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ! 捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……? 無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!

処理中です...