レッドストーン - 魔王から頂いた加護が最強過ぎるので、冒険者になって無双してもいいだろうか -

花京院 光

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第一章「王国編」

第二十五話「王の祝福」

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 目を覚ますと、俺の隣には幸せそうに眠るフローラが居た。フローラの頬に口づけをし、美しい銀色の髪を撫でる。近くで見ると普段よりも随分美しく見える。レッドストーンを手に入れて目が見える様になったら、フローラは更に前向きに生きられるだろう。これからレッドドラゴンに関する情報を集め、レッドストーンを探しに行こうか。

 暫くフローラの頭を撫でていると、彼女は口元に笑みを浮かべて俺の手を握った。透き通るような声で朝の挨拶をし、何度も口づけをしてから、フローラは服を着て部屋を出た。今日は国王陛下から勲章を頂く事になっている。

 魔装を身に付けて魔剣を背負い、髪を整えてから部屋を出た。それから俺は兵士に案内され、朝食会場で朝食を頂いた。城の食事だからといって、特別高級な物が並んでいる訳ではなく、見慣れた料理が抜群の味で作られていた。

 フローラは既に着替えを済ませたのか、今日は銀色のドレスに身を包んでいる。やはりフローラは王女だからか、ドレスも随分着慣れている様だ。

「お待たせ、似合うかしら? 王女らしい服装なんて久しぶりだわ」
「とても良く似合うよ。本当に美しい……」
「何だか照れるわね。ラインハルト。昨日の事、夢じゃないよね。私はずっとラインハルトと一緒に居ても良いんだよね」
「ああ。勿論だよ。俺はフローラを守りながら生きる」

 フローラの頬に口づけをすると、城の若い兵士が頬を赤らめた。それから国王陛下が民の前に出て、暗殺者襲撃事件の真相を語り、アンドレア王妃毒殺事件の真犯人を公表した。次に俺の名が呼ばれると、俺は城に集まった群衆の前で、騎士に与えられるアイゼンシュタイン騎士団勲章を頂き、そしてアイゼンシュタイン十字章という、王国防衛の功績を称える勲章を頂いた。どちらも白金で出来ている豪華な勲章で、陛下は俺の左の胸に二つの勲章を付けてくれた。

 勲章の授与の際、陛下がイェーガーの名を口にした時は場が静まり返ったが、陛下が第一王女と第三王女が生きているのは俺のお陰だと力説すると、群衆からは熱狂的な歓声が沸き起こった。陛下がアンドレア王妃毒殺事件の真犯人を追い詰めたのは俺だと説明すると、市民達は心から喜んだ。どうやら王妃様は国民から随分愛されていたみたいだ。

 そして式の最後に、今までアイゼンシュタインの民に隠すように育てられたフローラが、国王陛下によって紹介された。第一王女のエレオノーレさんや、第二王女のヘルガは、幼い頃から群衆の前に立ってきたが、第三王女の存在は隠されていたのだとか。

 フローラは冒険者ギルド・レッドストーンのマスターとして、町で暮らしていた訳だから、フローラの姿を見て、レッドストーンのマスターだと気が付く者も多かった。フローラは恥ずかしそうに民に対して頭を下げると、群衆からは爆発的は拍手が上がった。第二王女のヘルガの犯行に心を痛める人も多いみたいだが、新たな王女を見られて喜ぶ人も多い。

 俺は魔王の息子として生まれ、魔王の加護を受けて第七代魔王になった訳だが、そんな俺が身分を明かせば、人々からは石を投げられ、暴動が起こるのではないかと思ったが、俺が想像していた反応とは大違いだった。実際に自分の足でアイゼンシュタインを隅々まで回り、来る日も来る日も夜警を続け、多くの人々と言葉を交わし、魔物から市民を守り続けたからだろう。誰も俺を魔王だと罵る者は居なかった。

 俺は魔王の家系に生まれたが、魔王として生きるつもりはなかった。冒険者になるために、フローラやギルドを守るために命を賭けた甲斐があった。陛下も昨日言っておられた通り、俺は生まれ変わったのだ。この世界に第七代魔王は存在しない。俺はアイゼンシュタインの騎士、ラインハルト・フォン・イェーガーだ。

 式が幕を閉じると、陛下はヘルガと暗殺者に対する処遇を決定した。二人はアイゼンシュタインの地下にある監獄で終身刑を科される事になった。フローラはヘルガが投獄されると聞いて涙を流したが、エレオノーレさんは『いい気味だわ』と呟いた。同じ姉妹でもかなり性格が違うのだな。それからエレオノーレさんは俺に近づいてくると、跪いて頭を垂れた。

「ラインハルト……昨日は魔王だと罵り、攻撃してすまなかった。私を守るために全身に矢を浴びたのにも拘らず、私はラインハルトを一瞬でも疑ってしまった……」

 攻撃とは随分軽い表現ではないだろうか。ロングソードで太ももを何度も貫かれ、俺は自分の死を意識した。気が飛びそうになる程の激痛に悶え、執拗に下半身を刺された。怒り狂ったエレオノーレさんが何度も俺の足を刺し、フローラが雷の魔法でエレオノーレさんを吹き飛ばしてくれたのだ。

 フローラがあの時魔法を使用していなかったら、俺は確実に命を落としていただろう。そして、エレオノーレさんの判断の誤りにより、暗殺者とビスマルク、ヘルガによってフローラとヘンリエッテさん、エレオノーレさんは命を落としていただろう。俺は昨日の痛みを思い出すと、全身から汗が吹き出て、気分が悪くなった。

「気にしないで下さい。フローラが助かったのですから、俺はそれだけで満足です」
「本当に申し訳ないと思っている……ラインハルト。どんな罰でも受けよう! 剣で私を突き殺しても良い!」
「エレオノーレさん。身分を偽っていた俺が間違っていたんです。エレオノーレさんの反応は当たり前だと思います」
「そんな……! ラインハルトはどこまで寛大なのだ? 自分の足を何度も剣で刺され、大量の血を流しても、怒りもしないのか……」
「エレオノーレさんが居たから暗殺者に殺されずに済んだと、フローラとヘンリエッテさんを取り返す事が出来たと思っています。私に協力して下さった事を心より感謝致します」

 俺はエレオノーレさんの手をとって立たせると、深々と頭を下げてお礼を述べた。エレオノーレさんは大粒の涙を流し、国王陛下を抱きしめると、陛下はエレオノーレさんの頭を撫でた。

「まぁ……私も初めてイェーガー殿の正体を知った時はかなり同様したよ。エレオレノーレ、相手をレベルや身分だけで判断する悪い癖はまだ直っていないようだね。その分、フローラはイェーガー殿の正体を知っても、彼を守るために立ち上がったと聞いた」

 俺はフローラが陛下から褒められると、自分の事の様に喜びを感じた。俺の初めて恋人が陛下から賞賛されているのだ。俺はフローラの手を握り、交際を始めた事を陛下に報告した。陛下は何度も俺の肩を叩き、満面の笑みを浮かべて『フローラを頼む』と言ってくれた。立派な勲章を頂いた瞬間よりも、比較にならない程の幸福を感じる。

「昨日も言ったが、私はイェーガー殿の事を自分の息子の様に想っている。実際に会ったのは昨日が初めてだったが、最近では兵士からイェーガー殿に関する報告を聞く事が何よりの楽しみだった。また私の代わりに民を救ってくれたと、何度思った事か。イェーガー殿、これからもフローラを頼む……」
「はい! お任せ下さい。陛下」

 それから俺達は陛下に案内されて大広間に入ると、大広間には大きなテーブルがいくつも並んでおり、テーブルの上には豪華な料理が所狭しと並んでいた。ロビンとダリウス、ヘンリエッテさんも招待されていたのか、彼等は俺の姿を見ると嬉しそうに近づいてきた。小さなダリウスを肩の上に乗せ、ロビンの頭を撫でた。二人は俺がアイゼンシュタインを離れた時、衛兵と共に市民を誘導して避難させてくれた。

「ラインハルト、僕達が弱かったから、フローラとヘンリエッテさんを守れなかった。僕はもっと強くなりたいよ……!」
「うん。俺達が付いていたのに、暗殺者から二人を守れなかった」

 二人は後悔する様に語ると、陛下は柔和な笑みを浮かべ、二人の頭を撫でた。陛下が直々に感謝の言葉を送ると、二人は涙を流して陛下を抱きしめた。国王陛下は魔物からも好かれる不思議なお方だ。本当にアイゼンシュタインに来て良かった……。

 それから魔術師ギルド・ユグドラシルのメンバーが大広間に姿を表し、今回、市民を守るために行動した各ギルドのメンバー達が集まった。俺はユグドラシルのフリートさんに、ダリウスとロビンを治療し、タウロスを援護してくれた事に対する感謝の言葉を述べた。

「無事で何よりですよ。まさか、ラインハルト様が魔王の家系の生まれだとは思いませんでした。しかし、私はラインハルト様の『ソニックブロー』を見て確信しました。この方は必ず偉大な冒険者になると。遥か昔の時代の勇者にしか使用出来なかった、最高の攻撃魔法の使い手なのですから。これからもラインハルト様の活躍に期待していますよ」
「ありがとうございます! フリートさん、まだユグドラシルに遊びに行きますね」
「はい! いつでもいらして下さい。いつかレッドストーンと共同でクエストを行うのも良いかもしれませんね。そして、ブラッドソード・被害者の会、会長のとしてお礼を申し上げます。ブラッドソードを討伐して下さり、誠にありがとうございます。これはクエストの報酬です」
「フリートさん、お金は今回の襲撃事件で命を落とした方の遺族に配ってくれませんか。私はブラッドソードを壊滅させると誓っておきながら、市民を守る事が出来ませんでした。そんな私にクエストの報酬を受ける権利はありません」

 フリートさんは金貨が詰まった袋を床に落とすと、呆然とした表情で俺を見つめた。

「七十万ゴールドですよ? ラインハルト様。これ程までの大金を受け取らないというのですか……?」
「はい。私はお金以上に大切な存在を手に入れる事が出来ました。それに、今お金が必要なのは私ではなく、暗殺者に家族を殺された遺族です。どうかそのお金は遺族の方達に配って下さい」
「そうですか……やはりラインハルト様は私が見込んだお方です。それでは、明日にでも遺族の家を回り、お金を配る事にしましょう。私がもう少し早くラインハルト様と出会っていたら……あなたの隣には私が立っていたかもしれなかったのに……」

 彼女は小声で呟き、俺の手を握るフローラに微笑むと、宴の席に付いた。俺は宴の前にタウロスを召喚した。彼はユグドラシルのメンバーから好かれているのか、若い魔術師達は、タウロスを抱きしめて喜んでいる。巨大な従魔の登場に、城の兵士達は腰を抜かした。初めてタウロスを見れば誰でも腰を抜かす。俺もタウロスを見た時は、確実に殺されると思ったからな。

「私達も座りましょうか」
「そうだね」

 俺達はヘンリエッテさんの向かいの席に座り、俺の隣の席にはフローラが座り、肩の上にダリウスを乗せた。隣の席にロビンを座らせ、足元にはいつもの様にヴォルフが座っている。最高の仲間達に祝福されながら、大広間での宴が始まった……。
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