レッドストーン - 魔王から頂いた加護が最強過ぎるので、冒険者になって無双してもいいだろうか -

花京院 光

文字の大きさ
26 / 64
第一章「王国編」

第二十六話「宴」

しおりを挟む
 国王陛下が乾杯の音頭を取ると、盛大な宴が始まった。アンドレア王妃毒殺事件の真犯人が判明したからか、城の兵士の表情も明るい。陛下は第二王女が市民を殺める犯罪を行った事について、心を痛めている様だが、それ以上にフローラを国民の前で紹介出来た事を喜んでいる。

 盲目の第三王女、フローラは世間に隠すように育てられ、フローラ自身も内気だったからか、国民の前に出る事は無かった。冒険者ギルド・レッドストーンを設立するまで、城の中で幽閉される様に育てられ、町への外出も許可されなかった。あまりにも過保護な教育方法だとは思うが、考えてみれば俺の父と殆ど変わらない。

 第六代魔王、ヴォルフガング・イェーガーは、大陸の支配から一週間後、勇者と剣を交えた際に大怪我を負い、ハース大陸の最南部に位置する森林に逃げ込んだ。その後、自力で魔王城を建て、細々と暮らしていた時に母と出会った。俺が生まれてすぐに母は病で命を落とし、俺は父と共に魔王城で暮らし始めた。

 父も俺を魔王城の外に出す事はなかった。狭い魔王城の中で父の昔話を聞いたり、剣の稽古をして過ごしていた。俺とフローラの大きく異る点は、父は俺を魔王にするために戦い方を教えてくれたが、陛下はフローラを気遣うあまり、本人が希望する魔法の練習さえも許可しなかった。

「フローラがエレオノーレを魔法で吹き飛ばしたというのは本当か? イェーガー殿」
「はい、陛下。それは見事な攻撃魔法でした。一撃でエレオノーレさんを吹き飛ばしたのですから」
「フローラが魔法を学び始めたと聞いた時、私は腰を抜かしたよ。目が見えないフローラは魔法を相手に当てる事は出来ないと思っていた。しかし、回復魔法と攻撃魔法に適正を持っていたとは……」
「陛下。フローラの魔法能力は非常に高いです。たとえ目が見えないとしても、確実に相手を捉える事が出来ます」
「どうだろうか、フローラ。一度私に魔法を見せてくれないか?」
「え? 今この場で魔法を披露するのですか?」
「うむ。イェーガー殿、フローラの魔法を受けてみてくれるかな?」

 陛下はシュルスクの果実酒を飲みながら微笑むと、ユグドラシルのメンバーがフローラを励ました。城を出るまで魔法の使用を許可されなかったフローラが実力を披露する機会が来たのだ、きっと緊張しているのだろう。俺は立ち上がって大広間の隅まで移動し、魔剣を抜いた。流石に武器も持たずにフローラの強烈な攻撃魔法を受け止める事は出来ない。

 フローラはゆっくりと大広間の隅に移動すると、城の兵士達が集まってきた。彼女は右手に魔力を込めると、強い雷が発生した。目も見えないのに魔法を当てられるのかと、フローラを疑う声も聞こえる。だが俺はフローラの強さを知っている。フローラが魔法を外す事はない。誰よりも早く魔物を見つけ出し、的確に雷撃を放つ圧倒的な魔法のセンスを持っている。

 魔剣に魔力を込めて構える、フローラの攻撃を受けるのは初めてかもしれないな。フローラは優しく微笑むと、右手に爆発的な雷の魔力を溜めた。もしかして本気で魔法を撃つつもりなのだろうか? きっと国王陛下に自分の力を知って貰いたいのだろう。

 フローラが右手を俺に向けると、右手からは雷撃が放たれた。瞬間、俺は魔剣での水平切りを放ち、フローラの雷撃を切り裂いた。魔剣に強い衝撃を感じ、手には痺れが残る。まるで父の剣を受けた様だ。これがフローラの魔法か……。実際に受けてみると、改めてフローラの強さを実感する。

 それからフローラは左手に聖属性の魔力を込めた。金色の光が手を包むと、フローラは左手を頭上高く掲げた。空中には球状の魔力の球が浮いている。闇属性に対して絶大な効果がある聖属性の攻撃魔法、ホーリーだ。

 フローラが聖属性の球を放つと、俺は魔剣を垂直に振り下ろして魔力の球を切り裂いた。球は空中で破裂すると、辺りに金色の光を放って消滅した。幻想的な魔法だ。闇属性を持たない者にとっては全く効果が無い。タウロスが拍手をすると、大広間からは熱狂的な歓声が上がった。

 国王陛下は涙を流しながらフローラを抱きしめた。フローラに対して魔法の練習を許可しなかった事を何度も謝罪し、フローラの実力を褒めちぎった。それから城の兵士が、新たに騎士になった俺と剣を交えてみたいと呟くと、陛下は悪ノリをして兵士と俺の模擬戦を提案した。

「どうだろうか、イェーガー殿。自身の実力をこの場で兵士に示してみては」
「そうですね。私がフローラを守れる事を証明してみせます」

 五人の兵士が名乗り出た。フローラが幼い頃から護衛を担当していた熟練の剣士なのだとか。レベルは40以上。兵士達の中には、魔王の家系に生まれた俺を信用していない者も居るのだろう。幼い頃からフローラを守りながら生きてきた兵士にとっては、俺はフローラを任せられる人物なのか、実際に剣を交えて確認したいと思っているのだろう。

「我々はフローラ様が幼い頃から、命を賭けてフローラ様をお守りしていました。今回の暗殺者襲撃事件でフローラ様が誘拐されたと聞き、私達はイェーガー様の実力に疑問を抱きました。果たして暗殺者に仲間を誘拐される様な男が、騎士の称号を受ける程の人間なのかと」

 確かにフローラを誘拐されたのは俺の失態ではあるが、そもそも、王国を防衛する兵士や衛兵が暗殺者の侵入を防げなかったから、今回の襲撃事件が起きたのだ。一般の市民である俺に責任を負わせるつもりなのだろうか。

 背の高い四十代程の熟練の剣士達が木剣を持つと、俺の足元に木剣を投げた。レベルが離れた兵士相手に、魔装を装備した状態で木剣まで使えば勝負にならないだろう。

「武器は必要ありませんよ」
「なんだと? 素手で我々に勝てると思っているのか!」
「馬鹿な……! 陛下、これは我々を愚弄する行為です!」
「たとえ騎士の称号を持つ者でも、レベル40以上の剣士を五人相手にして、素手で戦える訳が無いだろう!」

 兵士達が吼えると、国王陛下は笑みを浮かべて俺を見つめた。『自分の力で兵士の信頼を勝ち取ってみろ』という事だろう。俺は陛下に跪いて勝利を誓うと、兵士達が襲い掛かってきた。

 身長が二メートル近い大男が、二本の木剣で高速の連撃を放ってきた。剣速はかなり早いが、剣に魔力を感じない。やはり幻獣のタウロスや魔王、ヴォルフガングと訓練をしてきたからか、格下の人間の攻撃では脅威すら感じない。本当に強い者を前にした時は、自分の生命の危機を感じる。全ての力を出し切らなければ命が尽きると感じるのだ。

 次々と放たれる攻撃を回避し、右手に魔力を込めて突きを放つ。大男は二本の木剣を交差させて俺の突きを防いだが、木製の武器で俺の拳を防ぐ事は不可能。俺の拳は木剣を粉々に砕き、大男の腹部を捉えると、大男は大広間の端まで吹き飛んだ。大男は壁に激突すると、力なく地面に倒れた。

 四人の兵士は俺の攻撃に警戒して距離を取り、木剣での突きを放ってきたが、俺は兵士の剣を左手で受け、右足に魔力を込めて兵士の頭部を蹴り飛ばした。兵士は一撃で気を失って倒れると、残る三人の兵士は恐れおののいた表情を浮かべ、ゆっくりと後退を始めた。自分から喧嘩を仕掛けておきながら後退するとは……。

 俺は一瞬で兵士の懐に飛び込むと、魔力を込めた手刀で木剣を砕き、兵士の腹部に突きを放って吹き飛ばした。この程度で実力で兵士としての仕事が成り立つのだろうか? 日常的に魔物と戦闘を行っている、町の衛兵の方が遥かに強いのではないだろうか。残る二人の兵士を蹴りで仕留めると、ユグドラシルのメンバーは嵐の様な歓声を上げた。

「見事! ブラッドソードの暗殺者を追い詰め、我が娘を救ってくれた救世主! 皆の者、ラインハルト・フォン・イェーガーは魔王ではない。アイゼンシュタインの騎士だ! 私が全幅の信頼を置くイェーガー殿を疑う行為は、私自身を疑う行為である! 報酬すら受け取らず、五ヶ月もの間夜警を続け、ついにはアンドレア毒殺事件の真犯人までも追い詰めた、偉大なる冒険者だ! 皆の者、アイゼンシュタインの騎士に盛大な拍手を!」

 兵士達はやっと俺を認めてくれたのか、力なく立ち上がると、俺に握手を求めた。兵士達と固い握手をすると、大広間からは熱狂的な拍手が沸き起こった……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。 王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。 だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。 行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。 冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。 無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――! 王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。 これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。

追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される

希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。 ​すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。 ​その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます

黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。 だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ! 捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……? 無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!

処理中です...