レッドストーン - 魔王から頂いた加護が最強過ぎるので、冒険者になって無双してもいいだろうか -

花京院 光

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第二章「魔石編」

第五十八話「騎士と勇者」

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 十階層は魔物の気配も無く、俺はついにダンジョン内で休憩出来る空間に到達した事に深い満足感を覚えた。やっと十階層まで辿りつけたのだ。殆ど休む暇もなく敵を狩り続け、驚異的な速度で十階層まで降りてきた。

 ファルケンハインに付いてからまだ一睡もしていない事を思い出し、俺は猛烈な睡魔に襲われた。十階層で六時間ほど休憩をしてから、ローゼマリー王女のパーティーを追い抜く。あと十階ほど下層に降りれば、ついにレッドドラゴンと戦えるのだ。早くフローラのためにレッドストーンを手に入れたい。

「ラインハルト。私達は起きているから、ラインハルトは少し眠ったら? 最近、一睡もしていなかったでしょう?」
「そうだね……そろそろ眠らないと倒れてしまいそうだよ。少し眠らせて貰うからね」
「ええ。ご苦労様。いつも私達を守ってくれてありがとう……」

 俺は魔装を脱いで魔剣を抱きしめ、フローラの膝の上に頭を乗せた。魔物が生息していない場所だとしても、魔剣を手放せるほど俺はダンジョンを信じてはいない。それに、ダンジョン内の敵は魔物だけではない。魔物を残しながら下層を目指す勇者や大魔術師が俺達を襲う可能性もあるだろう。

 フローラは俺の頭を何度も撫でてくれた。目を瞑りながら、彼女との将来を想像する。レッドストーンと聖剣を入手したらすぐにアイゼンシュタインに戻り、結婚式を挙げる。陛下の前でフローラとの愛を誓い、アイゼンシュタインで小さな家を建てて、レッドストーンの活動を続けながら暮らすのだ。

 魔物達に囲まれながら、地域に住む冒険者を育て、アイゼンシュタインの騎士として国を守りながら過ごす。フローラとの新たな生活のためにも、俺は今すぐに起き上がり、二十階層を目指して進みたい衝動に駆られた。俺は自分が思っているよりもフローラの事を愛しているのだな……。

 毎日彼女の優しさに触れて生きている事が当然の事の様に感じるが、魔王の息子として生まれた俺が、一国の王女と交際出来ている事は奇跡に誓い。俺は自分の正体がバレた時、エレオノーレさんは俺の全身を突き刺した。それが当たり前の反応なのだ。だが、フローラだけはありのままの俺を受け入れてくれた。

 俺を信じてくれるフローラのためにも、何が何でもレッドドラゴンを討ち、レッドストーンを手に入れて見せる。目を瞑りながらフローラとの将来を考えていると、俺はいつの間にか眠りに落ちていた。

 暫くして柔らかい肉球が頬に触れる感触で目を覚ました。ベラが俺の胸の上に顔を乗せ、楽しそうに俺の顔に触れているのだ。モフモフした小さな手がとても可愛らしく、フローラは微笑みながら俺とベラを抱きしめた。

「さて! ついにローゼマリー王女を追い抜く時が来た!」
「随分気合が入っているのね。ラインハルト」
「六時間も休ませて貰ったのだからね。ここから俺達の反撃を始めよう。大量の魔物を残されて、俺達ばかり辛い思いをしてきたらかね」
「そうね! ローゼマリーに負けたままというのは気に入らないし」
「二人共、あまり無理はしないでね」
「勿論だよ。フローラ、早速出発しようか」

 俺は魔装を身に着けて、魔剣を背負うと、鞄から乾燥肉とパンを取り出し、満腹を感じるまで栄養を詰め込んだ。それから水をたっぷり飲んで、栄養を飽和状態まで体に溜め込む。ローゼマリー王女を抜くまでは休憩をする暇も無いだろう。

 それから十階層を探索し、十一階層に続く階段を見つけてすぐに降りた。体力を温存するために、魔物の気配を感じない小部屋などは全て飛ばして進んでいる。十一階層にも魔物の姿が無かったので、俺達は遂にローゼマリー王女達が居るであろう、十二階層に続く階段を降りた。

 十二階層は強烈な闇の魔力が蔓延しており、レベルの低い冒険者ならこの場の魔力を受けるだけで命を落とすだろう。ベラは少し気分が悪くなったのか、俺にもたれ掛かると、俺はベラを抱き上げて歩き始めた。

 朽ち果てた無数の墓が建ち並んでおり、視界はほぼ無い。小さな炎の球を飛ばして辺りを照らしているが、闇があまりにも深い。弱い炎の球では闇を晴らす事は出来ない様だ。炎の威力を高めて闇を晴らす事は出来るが、それではこの暗闇であまりにも目立ちすぎてしまうだろう。

 最小の威力で炎の球を飛ばしながら進むと、無数の骨が擦れ合う音が聞こえてきた。フローラは賢者の杖を掲げて雷の魔力を飛ばすと、一筋の雷が闇を晴らした。一瞬だが、俺達の目の前には虚ろの目をしたスケルトンの大群の姿が見えた。

 クリステルは暗闇に潜むスケルトンの群れを見てその場にしゃがみ込み、ベラは目を瞑り、俺の体を強く抱きしめた。敵の群れを見ても平然を保てるのは、俺とフローラしか居ない。俺はスケルトンよりも遥かに悪質なレッサーデーモンの群れを見続けてきたからか、スケルトン程度の魔物では動揺する事もない。

 フローラはスケルトンの群れに対して、容赦ない雷撃を次々と放ち、スケルトンの群れを蹴散らした。俺はフローラの援護を受けながら、魔剣を握り締めて敵の群れに切り込んだ。

 フローラの雷撃が闇を裂いて辺りを照らした瞬間に敵の位置を記憶し、脳裏に記憶した敵の位置に向かって魔剣の水平斬りを放つ。骨が砕ける音が辺りに轟くと、再びフローラが雷撃を放った。錆びついた剣や斧を持ったスケルトン群れが攻撃を仕掛けてくるが、俺とフローラの連携の前では敵が武器を振り上げる間もなく命を落とす。

 全てのスケルトンを狩ると、遠くの方から巨大な炎の球が上がった。炎が空間全体を照らすと、勇者だろうか、立派な金色の鎧を身に付けた男がこちらに向かって歩いてきた。勇者の後方からは赤髪を長く延した幼い少女が付いて来ている。

「ローゼマリー!」
「クリステルお姉様……? まさか、私達に追い付いたというの?」

 金色の豪華な鎧を身に纏う二十代後半程の男は、俺の魔装を舐めるように見た。それから俺の背後で怯えるベラを睨みつけると、勇者の背後からは冒険者が七十人ほど集まり、冒険者の群れをかき分けて、いかにも高級そうなローブを身に纏う三十代程の男が姿を現した。

「ローゼマリー様。この者達は?」
「さぁ、私にも分からないわ。お姉様が雇った冒険者でしょう」
「見覚えのある薄汚ねぇケットシーがクリステル王女のパーティーに加入している気がするんだが、気のせいか?」

 勇者はふんぞり返ってベラを睨みつけると、腰に差している剣に手を置いた。勇者の称号は不当に手に入れた物だろうが、体から感じる魔力の強さは一流だ。金の鎧は自分の地位を他人に知らしめる物だろうか。あまりにも悪趣味な鎧に俺は思わず顔を背けてしまった。

 ベラは震えながら俺の手を握っている。フローラは無言で俺の隣に立つと、勇者の頬を強く叩いた。クリステルが慌てて制止すると、勇者は鬼の様な形相を浮かべてフローラを見た。勇者が右手で剣を握り締めると、ローゼマリー王女が勇者の前に立った。

「私の仲間を薄汚いケットシーと言う事は許しませんよ」
「ほう……クリステル王女に雇われた冒険者風情が俺に喧嘩を売るつもりなのか? 俺が剣を抜けばお前の様な女、一撃で殺す事も出来るんだぞ」
「勇者様。相手は一応お姉様が雇った冒険者だから、手を出してはいけませんよ」
「ベラに対して薄汚いと言った事を謝罪しなさい!」
「なんだって? お前、クリステル王女に守られてるからって強気になりやがって。どこのギルドの者だ?」

 俺は勇者が『お前の様な女は一撃で殺せる』と言った瞬間、魔剣を抜きそうになったが、何とか怒りを鎮めて勇者を睨みつけた。勇者は俺と視線を合わせると、暫く俺を睨みつけ、再び腰に差した剣に手を掛けた……。
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