レッドストーン - 魔王から頂いた加護が最強過ぎるので、冒険者になって無双してもいいだろうか -

花京院 光

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第二章「魔石編」

第五十九話「決闘」

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「私は冒険者ギルド・レッドストーンのギルドマスター、アイゼンシュタイン王国、第三王女のフローラ・フォン・アイゼンシュタインです」
「王女だと? 馬鹿な! クリステル王女が他国の王女を連れて何故ここに……?」
「それはあなたの様な偽りの勇者には関係の無い事です。ベラ、脱退するためのお金をこの愚か者に払って頂戴」

 ベラが懐からお金を取り出して勇者の足元に投げると、勇者はベラを睨みつけた。ベラは怯えて俺の背後に隠れると、勇者は静かにお金を拾い、懐に仕舞った。まさに今の雰囲気は一触即発。誰かが武器を抜けば最後、すぐに乱戦に発展するだろう。

「さぁ、勇者よ。ベラに謝罪をしなさい」
「俺は事実を言ったまでだ。ベラよ、お前はギルドを抜けてどうするつもりなんだ? まさか、ダンジョンから逃げ出すつもりなのか? ケットシーという種族はどこまでも愚かなんだな。お前の様な低レベルの冒険者が、勇者の称号を持つ俺様のギルドに入れただけでも光栄だというのに」

 勇者の背後に控える冒険者の中には、ギルドの脱退を望む者が居るのだろう、不満げな表情で勇者を見つめている。やはり仲間からも信頼されていないのだろう。大魔術師は退屈そうにやり取りを傍観している。

「さっきから黙って聞いていれば……剣を抜けばフローラを殺せるだと? やれるならやってみるが良い。仲間を盾にし、大量の魔物を残しながら下層に進む偽りの勇者よ!」
「お前もクリステル王女が雇った冒険者か? さっきから俺様を睨みつけやがって。お前は何者なんだ? ファルケンハインから勇者の称号を授かった俺様に対して随分調子に乗ってくれるじゃねぇか。この場で斬り殺してやろうか?」
「俺はアイゼンシュタイン王国の騎士、賢者ジル・ガウスの弟子。ラインハルト・フォン・イェーガーだ」
「アイゼンシュタインのイェーガーって……たった一人でブラッドソードを壊滅させた最強の冒険者じゃないか……?」
「ああ! 確か幻魔獣のフェンリルを従えているんだよな。イェーガー様がダンジョンに来てくれた……!」

 勇者のギルドに所属する冒険者は俺の正体を知るや否や、勇者を睨みつけた。ダンジョンの攻略を始めてから、勇者の命令によって多くの仲間が命を落としたからだろう。冒険者達はギルドを抜けたくて仕方がないに違いない。ベラの脱退を見て自分の財布の中身をこっそりと確認する者も居る。脱退の機会を伺っているのだろう。

「冒険者ギルド・ティルヴィングの皆さん! 私とフローラ王女はアイゼンシュタインの大使としてこのダンジョンに来ています。偽りの勇者が上層に残した魔物は全て討伐済です。皆さん、ギルドを抜けるなら今が絶好の機会です。さぁ、決断して下さい! もう仲間を死なせないで下さい! ダンジョンで命を落とさないで下さい! 私達は民を守る冒険者! 私達が命を落としては、誰が民を守るのですか!」

 俺が叫ぶと、ティルヴィングに所属している冒険者の大半は、懐からお金を取り出し、勇者の足元にお金を投げた。中には勇者の顔面に財布を叩きつける者も居る。どれだけ勇者に対する不満を抱えていたのだろうか。勇者は怒りに震えながら、地面に落ちるお金を見つめている。

 予想外の俺達の登場に戸惑っているのだろう。金ピカの鎧に身を包んだ偽りの勇者は、ついに剣を抜くと、震える手で剣を俺に向けた。俺は反射的に魔剣を引き抜くと、冒険者達が一斉に俺の背後に回った。既にこの場に勇者の肩を持つ者は居ない。

 勇者の独りよがりなダンジョンの攻略方法。仲間を盾にして下層を目指す卑劣な戦い方。冒険者達は日頃から勇者に不満を抱いていたのだろう。後方からは俺を応援する声が聴こえる。

「冒険者を死なせる偽りの勇者よ! フローラとケットシー族に対する侮辱、冒険者を死なせるお前の独りよがりな生き方は我慢ならん。掛かって来るが良い! アイゼンシュタイン王国の騎士、ラインハルト・フォン・イェーガーが相手しよう!」

 俺が勇者を挑発をすると、勇者は金色の金属で出来た飾り物の様な剣を振り上げた。瞬間、俺は勇者の頭上に飛び上がり、左手を勇者に向けて炎の矢を放った。三十本近い炎の矢が地面に降り注ぐと、勇者は瞬時に炎の矢を叩き切った。流石にレベル80だからか、ファイアボルト程度の攻撃は通用しないのだろう。

 勇者は俺の着地の瞬間を狙い、魔力を込めた突きを放ってきたが、攻撃があまりにも軽い。魔剣で勇者の突きを受け流すと同時に、左手で拳を握り締め、勇者の顔面を殴りぬいた。勇者は無様に地面に倒れると、俺は勇者の剣に対して魔剣を全力で振り下ろした。勇者の剣は俺の魔剣を受けて木っ端微塵に砕けると、勇者は恐怖の余り顔をひきつらせた。

「立て! 仲間を魔物の囮にする卑怯者が!」

 俺が怒鳴りつけると、大魔術師は楽しそうに勇者に対してロングソードを投げた。勇者は新たな剣を手にすると、一瞬で距離を詰め、鋭い水平切りを放ってきた。俺は敵の攻撃を魔剣で防がず、そのまま胴体で受けると、腹部に強烈な衝撃を感じた。レベル115の俺が纏う魔装は極限までに防御力が上がっている。魔装には小さな傷すら付いていない。魔装とは魔力の強さによって防御力が上がる特殊な防具。中でも父の魔装は非常に高い性能を持つ一級品の魔装だ。

「ひ……卑怯だぞ! 魔装を使うとは!」
「そうか。確かにこれは卑怯かもしれないな。お前の様な偽りの勇者相手に、俺が魔装を着ていては勝負にすらならないだろう」

 俺は魔剣を地面に突き刺し、魔装を脱ぐと、地面に落ちていた木の棒を拾った。偽りの勇者程度の男なら木の棒で十分だろう。素手でも余裕を持って殺める事が出来るが、俺は勇者を殺すつもりはない。

 勇者の盾となり、生きたままブラックウルフに噛み殺された者。体中にレッサーデーモンの槍を受けて命を落とした者。ドラゴニュートの炎を浴びて焼死した人間の痛みも想像出来ない様な愚かな勇者に、鉄拳制裁したくなったのだ。

 俺の愛するフローラを『殺せる』などと言う暴挙。心から崇拝するケットシー族を愚弄する行為を許すつもりはない。俺は民を守る冒険者である。力の無い冒険者が、勇者の命令によって命を落とすのを見過ごす訳にはいかない。ついに勇者の腐りきった性根を叩き直す時が来た。

「剣も魔装も使わずに俺に勝てると思っているのか? アイゼンシュタインの騎士だって? 騎士程度の男が勇者である俺様に敵う筈がないだろうが!」

 勇者はロングソードを両手で構えると、剣に炎の魔力を灯した。勇者は爆発的な炎を纏わせた剣で次々と攻撃を仕掛けて来るが、無数のレッサーデーモンの突きを毎日受け続けた俺には、勇者の攻撃は初めて武器を持った子供が遊んでいる様なものだ。攻撃の速度は非常に早く、魔力も高いが、攻撃があまりにも単純過ぎる。

 今まで仲間を盾にして生きてきたからだろう。レベルの割には戦闘の経験が少ない様だ。俺は勇者が攻撃の際に見せる一瞬の隙きを突き、木の棒で勇者の腹部に強烈な水平斬りを放った。勇者の金の鎧は大きく形を変えたが、流石に木の棒では鎧を破壊する事は出来ない。俺は素早く木の棒を勇者の頭部に叩き込むと、勇者は涙を流して痛みに耐えた。

「ブラックウルフに食い殺された冒険者は、これよりも遥かに強い痛みを感じていた筈だぞ……偽りの勇者よ!」

 勇者は怒りに震えながら剣を握り、恐れおののいた表情で次々と攻撃を仕掛けて来たが、やはり戦闘の経験が少ないのだろう。俺は勇者の単純な剣技を交わしながら、勇者の足に蹴りを放つと、静かな墓地には骨が砕ける音が響いた。勇者は激痛に耐えながら立ち上がると、虚ろな表情を浮かべて俺を見た。

 瞬間、大魔術師が杖を振り上げて勇者の頭部を強打すると、勇者は頭部から血を流して倒れた。

「無様だな……俺はお前の強さを信じて付いてきたが、お前には失望した。ローゼマリー王女。私は今回のクエストをリタイアさせて頂きます」
「そんな……! ブローベル様!」
「勇者の独りよがりなダンジョンの攻略! 新米に荷物を持たせ、仲間を死なせながら下層を目指し続ける暴挙。もうこりごりなんですよ。私はこれから貴方と勇者の悪行をファルケンハインの市民に伝えるとしましょう」
「待ちなさい! ブローベル!」

 大魔術師はローゼマリー王女に頭を下げると、彼は静かに立ち去った。それから大魔術師の後を追う様に、冒険者達が次々と上層に向かう階段を上がり始めた……。
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