精霊物語 - 精霊の最強パーティーで成り上がり -

花京院 光

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第七話「廃城の精霊」

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 俺の顔に何か柔らかい物が当たる。なんだ……これは? 信じられない程柔らかくて気持ちが良い。目を開けるとそこには頬を赤らめたフィリアが居た。

「ユリウスは本当にいやらしいわね……」
「え!? どうしてここに居るの!?」

 いつの間フィリアは俺のソファに来ていたのだろう。熟睡していたから気が付かなかったな。それにしても、フィリアの胸ってかなり大きんだな。初めて女性の胸に触れた気がする。

「馬鹿……」

 フィリアは俺の頬を強く叩くと、直ぐに支度を始めた。俺の夢のような時間は終わった。今日は創造の精霊を探しに行かなければならない。最悪、精霊を殺す事になるかもしれない。いや、もしかしたら既に他の冒険者が精霊を討伐しているのかもしれない。

「すぐに出発しようか」

 支配者の魔装を装備し、魔剣を背負った。魔装の背中の部分には、魔剣がピッタリと嵌まるような形状になっている。セットで作られた装備なのだろうか。激しく動いても魔剣が揺れ動く事はない。

 支度を終えた俺達は、酒場で朝食を購入してから町を出た。創造の精霊・イリスが住む廃城は、北口から馬で三時間程の場所に在るらしい。

「ユニコーンを召喚しようか」
「そうね」

 俺は懐からユニコーンの魔石を取り出すと、地面に置いて魔力を込めた。俺の魔力に反応するように魔石が光り輝くと、次の瞬間、ユニコーンが出現していた。地面には空の魔石が落ちている。使い道はないかもしれないが、一応空の魔石も持っておこう。

 ユニコーンは体の大きい白馬だった。普通の馬と違う所は、頭部から白い角が生えている所だろうか。つぶらな瞳で俺達を見つめている。聖属性の魔法の使い手なのだろうか、近くに居るだけで心地の良い魔力を感じる。

「やぁユニコーン。俺はユリウス、この子はフィリアだよ」

 返事は無いだろうが自己紹介をしてみると、ユニコーンは小さく頷いた。まさか、俺の言葉を理解しているのだろうか? それから俺とフィリアの臭いを嗅ぐと、満足そうに俺達を見つめた。俺はユニコーンの頭をゆっくりと撫でると、彼は気持ち良さそうに目を瞑った。良い仲間になれそうだ。

 俺はフィリアをユニコーンに載せてから、彼女を後ろから抱きしめる要領で手綱を握った。ユニコーンに指示を出すと、彼はゆっくりと走り始めた。

「この子は随分知能が高いみたい。私達の会話を理解しているんじゃないかな?」
「そうかもしれないね。確かユニコーンって回復魔法が使えるんだよね」
「リジェネレーションね。持続的に対象を癒やし続ける、聖属性魔法の中でもかなり高度の魔法。パーティーに回復魔法の使い手が二人も居れば、これからかなり安全に狩りが出来るね」
「フィリアって魔法の事もよく知っているんだね」
「ええ。家の中で魔法関連の書物を読み漁っていたからね。以前魔術師の女性に召喚された事があって、その時は三年間、外の世界で暮らす事が出来たんだ」
「三年間も一人の契約者と暮らしていたのかい?」
「そう。彼女は私に優しくしてくれていた。毎日美味しい食事を用意してくれた。だけど決して私を外に出そうとはしなかった」
「精霊の存在を世間から隠すため……」
「そう。彼女の優しさは偽りだった。だけど居心地が良かったから、私は様々な魔法関連の書物や、魔物の特性について書かれた書物を読んだの。本だけは沢山あったからね」

 フィリアは少し寂しそうに俺を見つめた。これからは自由に外の世界で生きられるように俺が手助けをしよう。フィリアの加護欲しさに近づいてくる者も居るだろう。そんな輩からフィリアを守るのが、契約者としての役目だ。

「彼女はどうしてか私を魔石に封印しなかった。ある日、一度だけ家の外に出たことがあったの」
「その時は何をしたんだい?」
「クエストの遂行。彼女は冒険者ギルドのメンバーだった。報酬の高い討伐クエストを受けて、私のファイアストームで魔物を討伐するつもりだったのでしょう……」
「それでどうなったんだい?」
「討伐対象は闇属性、レベル35のデュラハンだった。鎧の体で大剣を自在に使う悪質な魔物。デュラハンとの戦闘が始まると、デュラハンはどうしてか私を狙わなかった。彼女はデュラハンの剣に貫かれて命を落としたわ。私はそれからギルドに討伐失敗を報告しに行った」
「そんな事があったんだね。デュラハンがフィリアに攻撃を仕掛けなかったのは、自分よりも遥かに強い魔力を持つ精霊だと気が付いたからだと思う。知能が高い魔物は、自分よりも強い生き物を前にすると逃げ出す事もあるから」
「ええ。それから私は冒険者ギルドのメンバーに封印された……」

 今の話を聞いて、フィリアを道具の様に使うなんて許せないと思ったが、俺がフィリアにクエストを手伝って貰っているのも、やっている事はあまり変わらないような気がする。フィリアの意思を尊重して、彼女が自由に生きられる手助けをしなければらないのだが……。

「フィリア。今回のクエスト、俺一人で行こうか? フィリアは宿で待っていてくれよ」
「馬鹿……ユリウスは私が選んだ契約者なんだから私が守るの」
「ありがとう……」

 俺はフィリアの小さな体を強く抱きしめた。彼女は心地良さそうに目を瞑っている。少しずつだが、俺と彼女の信頼は深まっている。この関係を大切にしなければならない。

 それから俺達は何度か休憩を挟みながら進み続けた。深い森の中を進んでいると、ユニコーンが急に立ち止まった。道の先には人間の死体と、魔物の死体が転がっていた。ここで戦闘があったのだろうか。黒い毛の狼が息絶えており、人間は体を引き裂かれていた。

 服装から察するに冒険者では無いだろう。どこかこの辺りの地域に住む住民に違いなさそうだ。これも創造の精霊・イリスに関係あるのだろうか? 魔物は闇属性のブラックウルフ。スノウウルフよりも体が大きく、獰猛で人間を襲う。

「先を急ごう!」

 俺の指示を聞いたユニコーンは急いで駆け出した。廃城に向けて進むにつれ、闇属性の魔力が少しずつ強くなってきた。これが創造の精霊の魔力だろうか? 肌を刺すような強烈な魔力が森に蔓延している。

 しばらく進むと俺達はついに廃城に辿り着いた。廃城の周辺には冒険者が待機しており、城を囲う様に巨大な魔法陣が描かれている。結界の魔法陣だろうか?

「結界の魔法陣……きっとこの中には創造の精霊に犯罪を行わせた人間が居るはず」
「どの冒険者も結界の前で止まっているのはどうしてだろう」
「きっと入れないのね。廃城から感じる強烈な闇属性の魔力、廃城を守る様に描かれた魔法陣。並の冒険者では破れないはず。これ程高度な魔法陣が掛けるのは、エルフリーデしか居ないと思う……」
「エルフリーデ?」
「守護の精霊・エルフリーデ。防御系の魔法陣に特化した精霊よ」

 廃城の中には少なくとも二人の精霊が居る。一人はハーフェンの魔石屋を襲撃した犯人。もう一人は防御に特化した魔法陣の使い手。これでは冒険者達も手が出せないだろう。

 魔石屋を襲撃した意図を、交戦せずに掴めれば良いのだが、今の段階では情報が少なすぎる。何者かが二人の精霊に指示を与えてハーフェンの魔石屋を襲撃したと考えられる。

 強力な魔物を召喚するための召喚石。魔物が死の際に落とす魔法石。数々の魔石を奪い、金庫に保管されていたドラゴンの魔石までも奪うとは……。

 その時、廃城から一体の魔物が飛び上がった。爆発的な咆哮を上げながら、冒険者達に向けて強烈な炎を履いている。まさか……ドラゴンか!?

「フィリア! ここは危ない! ハーフェンに戻るんだ!」
「馬鹿な事を言わないで! 私もユリウスと一緒に戦う!」

 フィリアはベルトに挟んでいた杖を抜くと、宙を舞う巨体のドラゴンに杖を向けた。

「ファイアストーム!」

 フィリアが魔法を唱えた瞬間、ドラゴンの体は一瞬で炎の嵐に包まれた……。
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