精霊物語 - 精霊の最強パーティーで成り上がり -

花京院 光

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第八話「精霊の姉妹」

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 廃城からドラゴンが出現した瞬間、フィリアが魔法を放った。フィリアのファイアストームがドラゴンの体を覆い尽くしたが、ドラゴンには効果が無いのか、ドラゴンは廃城を取り囲む冒険者の群れにブレスを吐きかけた。

 フィリアは今の魔法で魔力の大半を消費してしまったのか、疲れた表情でユニコーンにもたれ掛かった。フィリアのファイアストームが効かないドラゴンを、どうやって倒せば良いんだ?

 ドラゴンは上空を旋回しながらブレスを吐き、冒険者達を襲っている。この状況を変えるにはどうすれば良いんだ……。ドラゴンの背中には一人の魔術師が乗っていた。黒いローブに身を包み、金色の杖を振りかざして上空に魔力を集めている。

 雷の魔法だろうか、空には雷雲が発生している。ドラゴンを操る魔術師が杖を振りかざした瞬間、冒険者の集団には雷が落ちた。今の攻撃で冒険者の半数は命を落としただろう……。

「ユニコーン! 冒険者達に回復魔法を掛けてくれるかい? フィリアは俺と一緒に来てくれ」
「どうするつもり?」
「廃城に入るよ。精霊を探し出して仲間にする。ゴーレムを操る精霊が居れば、きっとあの魔術師にも勝てると思うんだ」

 ユニコーンは傷ついた冒険者達に魔法を掛けて癒やし始めた。彼が居れば生存率が上がるだろう。突然のユニコーンの出現に冒険者達は驚きながらも、すぐに陣形を組んでドラゴンのブレスに備えている。

 常時回復を続けるリジェネレーションがあれば、ブレスを喰らって即死する事は無いだろう。冒険者の中で火の魔法に心得がある者が、ドラゴンのブレスとタイミングを合わせて炎を放っている。

 ブレスと冒険者の炎が空中で激突すると、辺りに強い炎を撒き散らして魔法が消えた。炎の威力は同等なのだろうか。ドラゴンの炎からは攻撃を受ける事はないだろう。しかし、魔力が底を尽きれば、冒険者達はたちまち炎に焼かれてしまう。

 急いで廃城に向かうと、半透明の魔力の壁によって俺の体は吹き飛ばされた。結界か……。どうすればこの結界を破れるのだろうか。

「何をしているの? ユリウス」

 フィリアは平然とした表情を浮かべて魔法陣の中に進んだ。なぜフィリアは入れるのだろう。精霊だけが入れる仕組みになっているのだろうか? フィリアは俺の元に戻ってくると、俺の手を握った。

「多分、精霊は通れる仕組みになっていると思う。急いで精霊達を探しましょう」

 フィリアに手を引かれながら魔法陣に入ると、冷たい魔力が体に流れた。これが廃城に住む精霊の魔力か……闇属性の魔力はドラゴンを操る人間のもので間違いないだろう。

 朽ち果てた城の中を進む。肖像我だろうか、二人の少女と髭を蓄えた男性の絵が掛かっている。精霊とその父親だろうか? 今は先を急がなければ……。

 薄暗い廃城の中を進むと、俺達は鍵が掛けられた扉を見つけた。部屋の中からは二種類の魔力を感じる。暖かい大地の様な魔力と、体を冷やす氷の魔力だろうか……。戦闘になった時にすぐに反応出来るように、俺は予め魔剣を構えた。

「開けるよ……」
「ええ」

 魔剣を振り下ろし、鍵を破壊すると、部屋の奥から無数の茨が伸びた。薔薇だろうか、瞬く間に俺の体を包み込み、体の自由が奪われた。不思議な事にフィリアに対しては一切攻撃が行われていない。

 体中に刺さる棘の痛みに耐えながら、風の魔力を爆発させて茨を切り裂いた。すると、部屋の奥からは二人の少女が現れた。身長は百六十センチ程だろうか、銀色に青色の目、手には短い銀製の杖を握っている。

 もう一人の少女はウェーブが掛かった緑色の髪に茶色の目。身長は百五十センチ程で、足元には不思議な生き物が居る。石のゴーレムだろうか? もしかすると彼女が創造の精霊・イリスではないだろうか。

「動かないで! あなた達は何者!? どうして結界に入れたの?」
「私は破壊の精霊・フィリア。杖を降ろしなさい。敵では無いわ」
「俺はフィリアの契約者のユリウス・ファッシュだ。攻撃を止めて貰えると助かるんだけど……」

 銀髪の少女は杖を降ろした。俺の体には薔薇の棘で無数の傷が出来ている。すぐに回復魔法を掛けなければ。聖属性の魔力を放出して体を包む。傷は一瞬で塞がったが、魔力を消費してしまった。本当の敵と戦う前に、魔力と体力を蓄えておきたかったのだが……。

「破壊の精霊・フィリア。以前契約者から話を聞いた事がある。全てを燃やし尽くす魔法の使い手だとか」
「それより、外に居るドラゴンはあなた達が召喚したの? ハーフェンを襲った理由は何?」
「それは私の契約者がエルフリーデを封印したから……エルフリーデを開放して欲しければ、ハーフェンを襲ってドラゴンの魔石を手に入れて来いと……」

 イリスは足元のゴーレムを見つめながら涙を流した。詳しく事情を聞いてみると、創造の精霊・イリスの契約者である、魔術師マティアス・フォレストはイリスの姉の守護の精霊・エルフリーデを封印し、魔石に閉じ込めた。封印から開放する条件は、ハーフェンの魔石屋を襲い、厳重に管理されているドラゴンの魔石を奪う事。

 マティアス・フォレストは現在、イリスの加護を受けており、自在にゴーレムを作り出す力を持っているのだとか。外では冒険者達がドラゴンのブレスに耐えているというのに、そこにゴーレムまで加われば俺達の勝利は無いだろう。

「イリス。契約者の加護を消すには、他の人間に加護を与えれば良い。どうか私を信じてユリウスに加護を与えて頂戴」
「……分かった」

 イリスは俺の手を取ると、手の甲に口づけをした。瞬間、イリスの地属性の魔力が俺の体に流れ込んだ。新たな属性が増えたのだろうか、自分自身の体から地属性の魔力を感じる。

「私の加護は創造の加護。土、もしくは石のゴーレムを自在に作る事が出来る」
「それなら私も加護を与えるわ。私の加護の力でフォレストを倒して頂戴」

 エルフリーデが反対の手に口づけをした。氷属性だろうか、左右の手から別々の魔力が俺の体に流れている。人生で感じた事も無い程、魔力が体内に溢れている。今なら最高のウィンドクロスが使えそうだ。

「私の加護は守護の加護。魔法攻撃に対する防御力が大幅に上昇するの」
「二人共、ありがとう。冒険者達を襲う魔術師を討とう!」

 俺は三人の精霊を連れてすぐに廃城を後にした。外には凄惨な光景が広がっていた。廃城付近の森は焼け、石のゴーレムが冒険者達を襲っている。更に上空にはドラゴンが旋回しており、次々とブレスを放っている。

 五十人以上居た冒険者達は、既に三人にまで減っており、ユニコーンは奇跡的にも怪我一つ負っていない。ハーフェンから衛兵が駆けつけてきたのだろうか、銀色の鎧に身を包む衛兵達がゴーレムと戦っている。

「私がゴーレムを止めるから、エルフリーデはドラゴンを落として頂戴!」
「そんな……私の魔法ではドラゴンに対抗出来ないわ!」
「新しい契約者が居るでしょう?」

 イリスはそう言うと、小さなゴーレムの体に触れて魔力を込めた。地面から石が這い出てゴーレムの体に触れると、小さかったゴーレムの体は瞬く間に肥大した。作り出したゴーレムを巨大化させる事も出来るのか……。

 イリスのゴーレムは衛兵を守るように敵のゴーレムに襲いかかった。二つの巨体のゴーレムが殴り合いをしている光景は圧巻だ。俺はすぐにドラゴンを落とさなければ。

 しかし、遥か上空を飛ぶドラゴン、それに魔術師は自在に雷を落とす事も出来る。接近する事すら不可能に思えるのだが……。遠距離からウィンドクロスを放って仕留めるしか無いだろう。

 エルフリーデは冒険者達を守るように氷の魔力で盾を作り上げている。ドラゴンのブレスが盾を溶かすも、すぐに新たな盾を作り出し、なんとか敵の攻撃を防いでいる。

「フィリア、力を貸してくれ。スノウウルフと戦った時、俺達は新たな魔法を作り上げた。俺の風にフィリアの炎を掛けるんだ」
「だけど、失敗したらユリウスを燃やしてしまうわ!」
「大丈夫だよ、フィリア。君なら出来る! フィリアは既に自分の炎を制御する術を身に着けている」
「わかった……挑戦してみるわ」

 俺は魔剣にありったけの魔力を込めた。魔剣を包むように強力な風の魔力が発生すると、フィリアは俺の魔剣にファイアストームの魔法を掛けた。二種類の魔力のエンチャントが掛かった魔剣からは、炎を纏う爆風が吹いている。

 まさかファイアの魔法ではなくファイアストームを選ぶとは……。俺の手は徐々に炎に焼かれ、耐えきれない程の激痛が走った。ここで剣を投げる訳にはいかない。魔術師を仕留めなければ、ハーフェンは火の海になるだろう。フィリアに自信を持たせるためにも、俺がこの魔法を成功させてみせる……!

 体内の全ての魔力を放出して魔剣に込めた。頭上高く掲げた魔剣を振り下ろす。

「ウィンドクロス!」

 魔法を唱えた瞬間、剣の先からは巨大な十字の刃が発生した。風の刃を包み込むようにフィリアの炎が燃えている。十字の魔力の刃がドラゴンの体を捉えると、ドラゴンの体は一撃で爆発した……。

 空からはバランスを失った魔術師が落下し、地面に直撃する前にイリスのゴーレムが受け止めた。俺達の勝利だ……。全ての魔力を使い果たした俺は、力なく地面に倒れ込んだ。
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