ベイビー!マイプリンス

GARAM

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意識

気付き

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 最近の学校生活は、何だか楽しい。
 放課後、ひょんなことから図書室に足を運ぶようになった俺はこの状況を楽しんでいた。思った通り園崎は俺に何らかの好意を抱いているようで、話す度にコロコロと変わる表情に胸を打たれる。憧れられているのか何なのか、未だにそれはハッキリとわかっていないがそれでもやっぱり彼と話すと気分が良くなった。それに、思っていたよりずっと話しやすい。昨日も園崎と……南雲もいて、いつも連まないような初めての友人と話をして。

 俺はそれが嬉しかったのと同時に。

 あぁ、今日は2人きりじゃないんだな。

 って、柄にもなく落ち込んだ。

「なんでかな……」

 南雲は愛想もよくて、別クラスでも友人が多いと有名な男だった。確かに噂で聞いた通り取っ付きやすく親しみが深い。

 それにアレは多分……

「モテそ……」

 朝の通学路。ふと、考えていたことがぽつり口に出てしまい咄嗟に口を噤む。別に、モテそうだからといって何がどうという訳じゃない。それなのに。何となく、南雲と園崎が仲良くしているのが。

 堪らなく、気に食わなかった。

 そもそも何故あの2人が仲良いのか。それすら見当がつかない。こう言ってはなんだが、彼らは至極対極的な印象である。言葉数も少なくて大人しい園崎が、あんなに懐くなんて。

 南雲 雪……恐るべし……

「御影ー!」
「おう、おはよ。秋乃」

 通学路の曲がり角。正面から片手を上げて呼び掛けてくるのは俺の仲のいい友人である秋乃 光留(アキノ ヒカル)だった。重そうなスポーツバッグを肩にかけた彼はサッカー部。下校時いつも一緒に帰っている友人だ。秋乃はひょこひょこと寝癖を跳ねさせながら駆け寄ってきた。

「うぅ、春先だってのにまだ寒いな」

 伸ばした袖を擦り合わせて秋乃は身震いする。暖かくなってきた方ではあるが、風はまだ少し冷たい。

「秋乃、寒がりだもんなぁ」
「桜は綺麗だけどやっぱ夏がいいや」

 苦笑する秋乃に俺も軽く笑みを返す。通学途中声を掛けてくるのは秋乃だけではなくて、歩いているとクラスの連中が通りすがりに肩を叩いてきたり、おはようと声を掛けてきたり。今日も俺にとっては当たり前の朝だった。そんな時、秋乃に言われた問いかけに俺は少し戸惑った。

「御影ってさ、園崎と仲良かったっけ?」
「えっ……なんで?」
「だって最近放課後ずっと図書室いんじゃん。迎えに行くのちょっと面倒」
「あー、ごめん。今度から終わる頃になったら俺がグラウンドまで下りるよ」
「……別に、待ってもらってるの俺だからいいけどさ」

 そう言いながらもどこか不服そうな秋乃に俺は再度、ごめんって、と軽く謝る。
 秋乃はそんな俺を見て、

「ばーか」

 と。げしげしと膝で腿の辺りを軽く小突いた。そんな大して中身のない会話を交わしながら俺たちはいつものように学校へとたどり着く。

「大体あんな根暗っぽい奴のどこがいい訳?」
「園崎は根暗なんかじゃない」
「いやぁ俺も話したことないから良く知らないけどさぁ……なんか雰囲気暗いじゃん。いっつも1人だし」
「……南雲くんと仲がいいみたいですよ」
「えっまじ?南雲って……あの南雲か。知らなかった。って、ふは!何その顔、まさか御影がヤキモチ?」
「んなわけないだろ!」

 教室へ向かう途中、秋乃にそう言われてしまい思わずムキになった。俺らしくない。気を取り直して、何だか騒がしいような朝の風景に少し違和感を覚えながらもクラスの扉を開いた。

「おはよ~……」

 って、あれ……

 いつもならみんな、俺が入ると口々に挨拶を返してくれるはずだった。だけど今日はそんなことはなくて。後ろの席な人だかりか出来ているのを遠目に一瞥した後、自分の席に荷物を下ろして腰を描ける。すると、俺の真隣に荷物を下ろした秋乃は、はっとした声を上げた。

「みっ、御影!根暗が根暗じゃなくなってる!!」
「え?」

 秋乃の慌てた様子に俺は後ろを振り返る。人だかりは園崎の席を中心に出来ていて、ここからじゃ少し見えにくい。

「園崎くん変わったね~!」
「すごくいいと思う!」
「ねえねえ連絡先交換しよ?」
「あ、俺も俺も!」
「今度カラオケ行こうぜ!」

 人だかりから聞こえてくる声から、園崎がクラスメイトに絡まれてるんだ、と察した。

 助けてあげた方が、いいか……

 気付けば俺の足は自然と園崎の席へ向いていた。人だかりに割って入り、すっかり顔馴染みのクラスメイト達に注意を促そうと口を開く。

 が。

「ぁ…………」

 声が……出ない……

「あっ、お、おはよう……御影くん……」
「お……はよ……」

 生まれ変わったような園崎の姿に思考が停止した俺はそう返すので精一杯で。

「ははっ、御影もビックリじゃん」

 俺の反応を見てどっ、と楽しそうに盛り上がるクラスメイトの声で我に返る。

「っ、るさいな。ほらほら、あんまり絡むと園崎が困るだろ。散った散った!」

  そう声を張ると仕方なさそうにみんな散り散りになった。薄れていく人だかりの中、もう一度この目に彼の姿を焼き付ける。

やばい……
 綺麗だ……

 素直にそう思った。今まで長い前髪に隠れていた顔が顕になって、彼の美しさが晒されている。みんなもきっと、予想外に顔立ちが良かった園崎に驚いて絡んでいたんだろう。
 線の薄い、透明感のある肌によく映える長い睫毛。すっと伸びた鼻筋に、星屑を浮かべたような煌びやかな黒の瞳。艶のある薄い唇は彼が話す度にそのガラスのような声音を奏でる。

 彼は俺が思っていたよりも、ずっとずっと綺麗だった。

「あの……御影くん?」

 不思議そうに小首を傾ける仕草が愛らしい。俺は思わず生唾を飲み込む。
 そうして平常を装って一言、

「……よく似合ってるよ、園崎」

 そう言った。
 以前からよく彼にしてやるみたいに、手を頭に置いて。それからよしよしと柔く撫で付ける。

「あ、ありがとう」

 照れくさそうに双眸を細める園崎につられて俺も頬を緩めた。

 可愛い。

 波打つ唇を何とか堪えながら手を下ろす。そろそろチャイムが鳴るから、また後で。そう言って俺は席に戻った。
 席に戻ってからも、今までと同じくやっぱり後ろからの視線は感じるもので。俺は何だか、優越感にも似たような感覚で彼の視線を受け入れていた。どうしてそんな感覚に陥るのか、まだ答えはわからないけれど。

 たぶん。

 俺は自分が思っているよりも、もっと。
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