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第1章 Encounter
願い
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「水瀬」
「なに?」
呼び掛けに応じた水瀬の瞳を見つめた。
目が煌めいていて、希望に満ちている。きっとその希望は、これからのピアノを弾けるようになった自分へのそれだろう。
どうか、お願いだから。
ピアノを好きなままでいてくれ。
どうか、お願いだから。
音楽に愛されるような人間でいてくれ。
それが僕の、音楽に愛されていないであろう僕の、水瀬に対する願いだった。
「ピアノは楽しい?」
口下手な僕が聞けるのは、たったそれだけだった。
水瀬は、目を見開いた。
けれど、水瀬は当たり前のように笑って、胸に抱きしめている本を更に抱きしめて。
こう言ったのだった。
「楽しいに決まってるでしょ!」
その言葉を当たり前のように言えて、胸を張ってピアノを弾けるような、そんな人に僕は戻れるだろうか。
…いや、今は目の前のことに集中しよう。
水瀬が、ピアノを好きなままでいられるように。
水瀬が、胸を張ってピアノを弾けるように。
水瀬の音楽人生が、壊れないように。
僕は自分の心に念じた。
「そっか」
きっと、そう言った僕の顔は微かに緩んでいたと思う。他の人からみたら微妙な変化でしかないとおもうけれど。目の前の彼女は、更に頬を緩ませてくれた。
その唯一無二の笑顔で、僕の胸には確かなる目標と。
ピアノへの微かな希望が湧いてきた。
「なに?」
呼び掛けに応じた水瀬の瞳を見つめた。
目が煌めいていて、希望に満ちている。きっとその希望は、これからのピアノを弾けるようになった自分へのそれだろう。
どうか、お願いだから。
ピアノを好きなままでいてくれ。
どうか、お願いだから。
音楽に愛されるような人間でいてくれ。
それが僕の、音楽に愛されていないであろう僕の、水瀬に対する願いだった。
「ピアノは楽しい?」
口下手な僕が聞けるのは、たったそれだけだった。
水瀬は、目を見開いた。
けれど、水瀬は当たり前のように笑って、胸に抱きしめている本を更に抱きしめて。
こう言ったのだった。
「楽しいに決まってるでしょ!」
その言葉を当たり前のように言えて、胸を張ってピアノを弾けるような、そんな人に僕は戻れるだろうか。
…いや、今は目の前のことに集中しよう。
水瀬が、ピアノを好きなままでいられるように。
水瀬が、胸を張ってピアノを弾けるように。
水瀬の音楽人生が、壊れないように。
僕は自分の心に念じた。
「そっか」
きっと、そう言った僕の顔は微かに緩んでいたと思う。他の人からみたら微妙な変化でしかないとおもうけれど。目の前の彼女は、更に頬を緩ませてくれた。
その唯一無二の笑顔で、僕の胸には確かなる目標と。
ピアノへの微かな希望が湧いてきた。
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