わたしの終末

あおい

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ついてについて

自殺について

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自殺(じさつ)
・故意に自らを死に至らしめる行為
・自分の生命を絶つこと。自害(じがい)、自死(じし)、自決(じけつ)、自尽(じじん)、自裁(じさい)、刀剣類を使う場合は自刃(じじん)などとも言い、状況や方法で表現が異なる場合がある。











私ね、決心したんです。


「こんな高いところから飛び降りたら、絶対に死にますよね」


靴を脱いだ君が言う。


「飛び降り自殺って、他の自殺よりも楽だと思いません?
例えば……、
首吊り自殺とかね。
すぐ死ねるって有名ですけど、縄を買ったり、準備したり、場所を探したり、解けないようにきつく結ぶのも大変だし。見つかったりしたら、いろいろと面倒くさいし。首を吊る寸前で気が変わったりとかしちゃうかもしれないし。
私なんかがやったらね、絶対に暴れて失敗しますよ。
あとね、首吊り自殺って、身体中の体液が垂れ流しになる?とかなんとか。
私、そんな汚い死に方はしたくないなぁ」


窓を開けて、縁に座った君が言う。


「入水自殺も好きじゃないですね。
咳き込むし、それで水がまた入ってくるし。苦しい死に方だと思いません?あと、泳げる人がやったりしたら、泳いじゃって失敗に終わりそうですしね」


縁を掴んで、身体を倒した君が言う。


「あと、飛び込み自殺も嫌だなぁ。
自分は死んでるから気にしなくていいけど、肉塊とか血液が周りに飛び散るから、結構グロテスクになっちゃうんですよね。それに、近くにいた人に迷惑をかけちゃうから」


君が言う。


「毒ガスとかの窒息死で死んだり、
薬物の大量摂取で死んだり、
自分で頭を撃ち抜いて死んだり、
感電死したり、
焼身自殺したり、
失血の末に死んだり、
餓死したりとか」


全部苦しいじゃないですか。


「苦しい死に方だと思いませんか?」


君が言った。


俺は答えない。


**********


それに比べれば、飛び降り自殺なんて、楽なものでしょう?


「落ちればすぐ死ねるんだから。
「準備も何もいりませんし。
「気絶して、すぐ意識がなくなるんだとか。
「ひょい、っといっちゃえば、もう終わりなんですよ?
「より高いところから落ちちゃえば、失敗せずに死ねる確率が上がりますし。
「それにね、」


今からでも、できちゃうんだよ。



俺は答えない。


**********


「ここまで聞いてて、どうでした?」
「……質問」
「はい、なんでもどうぞ」
「飛び込み自殺と飛び降り自殺は一緒なんじゃないの?
自分は死んでるから気にしなくていい、いろいろ飛び散る、グロくなる、周りに迷惑かける。飛び降りた先に人がいたらどうするの?その人も死んじゃうじゃない」
「あ~……そうですね、そういえば」
「なんだ、そこまで考えてなかったの」
「まぁ…………あっ、その人の運が悪かったんだよ!きっと」
「なにそれ最悪……最悪だなぁ……。
今から死ぬの」
「うん」
「…………そっか」
「引き止めないんだね」
「引き止めてほしいの」
「いや、べつに」
「…………引き止めたいに決まってる。でも君の人生だし、いつ終わらせるのかを決めるのも、君の自由だ」
「はい」
「やり直す気は……あるわけないよね」
「やり直すくらいなら早く死にたいんですが」
「…………わかったよ。

じゃあ、
落ちたいなら落ちていい。
死にたいなら死んでいい」


俺はもう、どっちでも構わないから。
あとは君が決めて。


「ああ、わかりました。
では……
あ、忘れてた」


窓の縁から降りる。
そういえば、ずっと持ったままだった。
危ない危ない。
靴を持ったまま死ぬのは嫌だ。

幽霊になったら、足はなくなるから。靴なんていらない。

ローファーの踵を揃えて、足もとに置いて。靴下も脱いで、中に丸めて突っ込んだ。

貴方は、私がしたことを不思議そうに見ていた。

いつか教えてあげようと思う。
でも、いつ教えてあげよう。

ああ、そうだ。



貴方が死んだら、教えてあげよう。







「じゃ、死にまーす」








ひょいっと。
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