わたしの終末

あおい

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ついてについて

夢中夢

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夢中夢(むちゅうむ)
夢の中で夢を見ること。多中夢。






ぱちっ。


目が覚めた。

がばっと勢いよく起き上がる。心臓が早鐘のように鳴っている。冷や汗が皮膚の表面を伝って落ちていく。ハッと気付いて隣を見やる。眠る君の横顔を見てひどく安堵した。

厭な夢を見た。君が死ぬ夢だ。どうして君が死んでしまったのかはわからない。ただ、君を亡くした喪失感だけが胸に残っている。心にぽっかりと穴が空いたような痛みが、未だに続いている。なんとも気味が悪いなと思う。

夢見が悪かったので一向に睡魔は訪れないが、現在時刻はとうに丑三つ時を過ぎたところである。さすがに寝なければならないだろう。明日も変わらず仕事があるし、泣けど喚けど朝は来る。ため息をついて布団を被り直す。あんな夢を見たあとだからか、なんとなく君の顔を見たくなくて、君に背を向けて目を瞑る。まぶたの裏に若干の不快感が残る微睡みの最中、ふと感じた違和感に目を開いた。

君の細くて白い指が僕の首にかかっている。擽るように僕の首周りを滑る細い指は、そのまま僕の顎の裏あたりにまできて、そして動くことの一切をやめた。困惑と少しの期待で固まる僕のことを嘲笑うように、君はくすくすと笑う。先程静止した指を少し動かした君は、その直後、僕の首をあらん限りの力で締めた。ヒュッ、という掠れた音が喉から出ていった。ギリギリと耳障りな音を立てて首が締まっていく。意識が途切れる直前、耳元で、鈴を転がしたような君の声が何かを囁いた気がした。


ぱちっ。


目が覚めた。

がばっと勢いよく起き上がる。心臓が早鐘のように鳴っている。冷や汗が皮膚の表面を伝って落ちていく。君の顔は見なかった。君の方を向けなかった。

布団から這い出、君から離れようと立ち上がった刹那、後頭部に刺激が走る。
刺激は瞬く間に暴力的な熱へと変わり、そのあとジンジンとした痛みへと変わった。衝撃により身体を反転させて床へ倒れ込んだので、君の顔がよく見えた。君はおぞましいほど美しい顔に微かな笑みをたたえていた。不気味なくらいに穏やかで凪いでいるその顔を、直視したくなくて、僅かに目線を下へと遣った。僕の身体を循環していた血液がどんどんと溢れ出ていき、酸化してドス黒くなっていく。じわじわと赤黒い色に侵食されていくシーツを、ただただ見ていることしかできなかった。


ぱちっ。


目が覚めた。

がばっと勢いよく起き上がる。心臓が早鐘のように鳴っている。冷や汗が皮膚の表面を伝って落ちていく。視界の端に君の気持ちよさそうな寝顔が目に入った。ふと怒りが湧いてきた。何故僕がこんな思いをしなければいけない。一体何故だ。答えは単純明快だ。君が生きているからだ。

君に馬乗りになって君の首をあらん限りの力で締めた。ヒュッ、という掠れた音が君の細い喉から鳴る。ギリギリという音を立てて首が締まっていく。微かに目を開けた君は何故か、酸素が奪われていく苦しみに悶えながらも微笑んでいて、僕は焦燥感と不安感に襲われる。早くこの悪魔みたいな女を殺さなければ!更に腕の力を強める。ふいに君が何か言葉を発した。次の瞬間には死んでいた。薄気味悪い笑みを浮かべながら死んでいた。

耳元で鈴を転がしたような声が聞こえた。握り潰したはずの喉から息を漏らして、笑っていた。

「残念ね、これ、夢なのよ」




ぱちっ。




目が覚めた。
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