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「……」
 
 好きを、外に出せ。
 浜松君に言われたことを僕はぼんやりと反芻していました。今日も残業で、帰った時点で20時過ぎ。連日の訪問のお陰か浜松君のサポートのお陰か、例の取引先は契約に対して前向きな姿勢を見せているので、もしかしたら本当に週明けには片がつくかもしれません。そうすれば、僕はまたあの子会社に戻ることが出来る。真野君と毎日会って、話して、キスをして、肌で触れ合うことが出来る……。
 
「──。」
 
 僕は抱き枕を抱えると、スマートフォンを点灯させます。時計を見ると、既に21時を回っていました。迷惑かな。少しだけそう考えて、けれど彼にとっては僕の存在なんてはじめから迷惑か、と開き直りました。僕はいつだって口煩くて当たりの強い、疎ましさのある相手です。自分でもその程度は、きちんと自覚しています。どうせ僕は最初から嫌われている。ならば今更、後ろめたさを感じても仕方ないでしょう。どこか諦観のような気持ちで僕は彼の連絡先を開き、受話器のマークをタップしてスマートフォンを耳に当てます。繰り返し鳴るコール音。もう開き直っていると自分では思っている筈なのに、何故か膝に乗せた指先は震えていて。僕はそれを隠すように、片手を握り締めました。
 
『……まっ。』
「? ま?」
『い、いやっ。──多野?』
 
 長めのコール音の後、突然電話は繋がります。最初は何を言っているのかよく分かりませんでしたが、すぐに耳元から僕を呼ぶ聞き慣れた声が響き渡り、僕は何故かそれだけで、ひどく満たされたような気持ちになりました。まるでからからに乾いた身体に水分が染み込んでいくように、僕の内部を潤していく声。久しぶり。とても久しぶりです。
 真野君。真野くん。
 
「まのくん……っ♡」
『っ……?な、なんだよ。おい、多野?』
 
 思わず噛みしめるように彼──真野君の名前を呟くと、不審がられてしまいました。僕は慌てて、とりなすように会話を続けます。
 
「あっ……いえっ!や、夜分遅くにすみません……今、大丈夫ですか?」
『ああ……大丈夫だ。な……なんだよお前。いきなり、電話なんて』
「いえ、その、僕が居ない間、どうしていたのかなと思って……迷惑なら、切りますけど……」
『や。それはっ。……だ、大丈夫だ』
「そ、そうですか。……良かった」
 
 真野君の返事に、僕はほっと息をつきました。真野君は平気で嘘をつき、自尊心も高く、強がりな割に臆病な、どうにも褒められない人間性の人物ですが、同時に自分の感情をとても大切にする人でもあります。自分が嫌だと感じたことは、遠慮なく正直にNOを突きつけてくる。つまり大丈夫というのは、本当に大丈夫だと言うことでしょう。……確かにそう考えると、真野君は「好き」を大切にしていると言えるのかもしれません。
 
『っ……お前こそ、仕事のほうは問題ないのかよ。まさかまだ会社に居たりしねぇだろうな』
「えっ?いえ、もう家です。えっ……まさか真野君、まだ会社に居るんですか?」
『なっ。い、居るわけねぇだろ。週末だぞ?悠々定時上がりだっての』
「そ、そうですよね。もう21時ですし。それなら家ですか?もう食事は取りました?お風呂は?」
『いや、だからお母さんかよ。俺のことは良いって』
「で、でも……来週末はもう書類提出の締切ですし。体調を崩したら大変ですから」
『……。俺が丈夫なのは知ってんだろ。用、それだけか?』
「え。あ。いえ。そ、その……」
 
 用、と言われ、僕は言い淀んでしまいます。正直、どう説明したらいいのか不明瞭でした。理屈ではなかったのです。電話をしたのはしたかったから。真野君のことを少しでも感じたかったから。それを適切な言葉でうまく言語化出来ず、口ごもりますが……ふと、真野君の声を感じて湧き上がったこの気持ちを、理由にしてしまってもいいのかもしれない、と考えました。
 
「そ、その。真野君の、声が。聞きたかったん、です。ええと……だから……それで……で、電話。したんですが……」
『……。俺の、声?』
「は、はい……す、すみません。その……」
 
 案の定真野君は面食らった様子ですが、言ってしまったことは取り消せません。戸惑わせてしまったのが居たたまれず謝罪しますが、少しの沈黙の後、電話越しになにやら呻くような声が聞こえ……真野君は、掠れた声で僕を呼びました。
 
『っ……、多野っ……』
「は、はいっ……」
『あー……ッ。じゃあ……そのっ……テレセクでも……すっか?』
「へ?」
『あー。テレセク、分かるか?その……テレフォンセックス、な』
「てッ。てれふぉん……っ!!」
 
 突然の真野君の提案に、僕はベッドの上で硬直してしまいます。確かに真野君はそちらの方面に特化していますが、まさか電話をしているだけでそんな展開になるなんて、僕はまったく思っていませんでしたから。思わず素っ頓狂な声を上げてしまえば、その反応に、真野君は気を良くしたようでした。
 
『ど……どうせお前のことだ、ひとりでアナってて物足りなくなったんだろ?それなら、俺が、オカズ提供してやるって』
「え、え、え、っ♡で、でもっ♡で、電話でって、ど、どうやって……っ?♡」
『どうって、俺が耳元でスケベなこと指示してやるから、その通りに動きゃいいんだよ。指でアナルほじってドスケベアクメキメろ♡とかな』
「っ!? あ♡あぅ゛♡ど、どすけべ、あくめっ♡」
 
 耳元から久しぶりに聞こえる真野君の卑猥な言い回しに、一気に身体へ熱が回ります。この1週間、どこかへ行ってしまい、このまま消えてしまうのでは、とまで思っていた筈の性欲が、その言葉だけで一気にぶり返し、じんじんと全体を支配していくのが分かります。明らかに高く跳ねた僕の声に、嬉しそうに真野君も笑います。それはいつも僕をいやらしい目で見つめる、愉しそうな、真野君の声……っ♡
 
『おいおい、今のだけでサカったのか?どんだけ欲求不満なんだよ?』
「ふ♡ふぁ゛……ッ♡」
『もうスケベ声出してんじゃねぇって……っ♡服は?着てんのか?』
「あ、あっ……♡ぅあっ♡きっ♡着て、ますっ♡」
『じゃあまずそれ全部脱げ。脱いで……そうだな。じゃあさっきのセリフ通りにケツ指で弄ってみっか。バイブは使うなよ?』
「ぇ、で、でもっ♡ぼ、僕っ、いつもすぐ、バイブで、おしり……っ♡」
『おいおい、指も使わないで即オモチャ突っ込んでんのか?マジでドスケベだなぁ♡』
「あ、ぅ゛♡ご、ごめんなさい……ッ♡♡♡」
 
 ドスケベ、と真正面から突きつけてくる鋭い指摘に、僕は自然と謝罪してしまいます。それはいつもひとりで自慰をしていた時、いやらしい妄想をして真野君に謝っていた癖……っ♡それが普段の場面でも出てきてしまったことに、僕は激しく羞恥します。
 う♡ぼく♡えっちなこと真野君にあやまるの♡ほんとに、癖に、なってるっ……♡
 
『そんなら尚更指だな。ゆっくり前立腺指の腹で擦って苛めてけ。多野の好きな焦らし責めだ♡』
「ぁ、う゛♡じ♡じらし、責めっ♡」
『こっちからは多野がナニやってんのか見えないからな。ちゃんと口で全部説明しろよ?』
「うぁ♡は、はぃ……ッ♡♡♡」
 
 僕は通話をスピーカーに切り替えると、言われた通り、服を脱いでゆきます。「いまカーディガン脱いでます……♡」「いま下着を脱ぎました……♡」「身体、すごく熱いです……♡」と1枚1枚自分から服を脱いで説明をしていると、恥ずかしくてたまりません。で、でも、それが、同じくらい気持ちよくて……ッ♡僕は完全な興奮状態で、裸になりました……っ♡
 
「は、はふ♡ぬ、ぬぎました♡今は、全裸で……っ♡お、おちんちんは……っ♡スキン、つけて……っ♡んぁ♡す、すごい♡勃起、して、ます……っ♡」
『ッ……♡よし。じゃあ指挿れてじっくり前立腺弄ってけ?』
「ん♡ん゛……ッ、っお゛!♡」
『っすげぇ声ッ……♡ぁーっ、久しぶりの多野のスケベ声……っ♡くそっ、やばい、クる……ッ♡おい、ナカ、どうなってる?♡』
「ぉ゛♡ん、ぉ゛♡ゆび♡挿れただけ、で♡ナカ♡ちゅうちゅう吸って、ますっ♡ほっ♡ぉ゛♡ぁ゛♡ぜんりつ、せんっ♡ある♡こっ♡こりこり、してる゛ぅッ♡」
『っ……♡多野の前立腺、バカみたいに触りやすい位置にあっからな……っ♡自分の指でもすぐ分かるだろッ?♡』
「は♡はひッ♡これ♡すぐ♡わかっちゃい、まひゅっ♡」
 
 ま、真野君の言う通りです。
 真野君には何度もアナルを弄られて「手マン」をされてきましたが、こうして自分でアナルに指を挿れるのは、実は僕、初めてで……ッ♡自身の前立腺がこんな分かりやすい場所にあるのだと改めて自分で触って知り、驚いてしまいました。指を挿れるだけですぐに触れてしまう距離……ッ♡粘膜越しでも大きいと分かるサイズ……ッ♡こ、この前立腺っ♡すっごくいやらしい……ッ♡僕は何度も硬くなった前立腺を指の腹で撫でながら、そのたびに身体を跳ねさせてしまいます。
 ぉ゛♡前立腺♡すごいっ♡すごいわかりやすい場所で♡コリッコリにかたくなってるっ♡こ♡こんな触られたがってる前立腺っ♡こんなどすけべな前立腺っ♡ぼく♡ずっとアナルで♡まのくんに見せつけてたのっ?♡は♡はずかしい♡はずかしいっ♡こんなの♡アクメ待ちしてるようにしか見えないっ♡まのくんに♡媚びてるようにしか見えないっ♡はずかしいっ♡はずかしいのにっ♡ひさしぶりのアナニーすぎて、コリコリいじるのとめられないっ♡まのくんに聞かれてると思うととめられないっ♡きもちい♡きもちいぃっ♡まのくん♡ぼく♡きもちいい、よぉっ♡♡♡
 
「ぁ、お゛ッ♡ま♡まのくん♡これ♡ぼく♡すぐ♡イっちゃ、ぅ゛ッ♡」
『なんだよ。まだほじり始めたばっかだろ?全然焦らせてねぇぞ?♡』
「で、でもっ♡ひ♡ひさしぶり、だからぁ♡おしり♡びんかん、で♡ぼく♡す、ぐぅ゛♡あくめ♡しちゃ、ぅ゛ッ♡」
『久しぶり?……なんだよ。多野、アナってなかったのか?』
「して♡んぉ゛♡して、なかった♡まのくん♡まのくんと♡えっちなこと♡して、なかった、からぁ♡ぼく♡えっちな気分に、ならなく、てっ♡して♡なかったっ♡」
『な、なんだそれ。じゃあ、会社戻ってから、1回も……っ?』
「そ♡そうっ♡で、でも♡でも、まのくんが♡さっき♡電話ごしにえっちなこと、言ったらっ♡ぼく♡すぐ♡からだ♡ずくずく、して♡えっちな気分に、なって♡だ、だから♡これ♡ぼく♡すぐっ♡イっちゃう、よぉ゛ッ♡」
『ッ……♡なんだよ、それ……ッ♡つまり、それ、俺で、ってこと、かよ……ッ♡くそ……っ♡くっそ……ッ♡♡♡』
「ふぁ♡ぁ♡ま♡まの、くん……ッ?♡」
『じゃあッ♡久しぶりの、ケツほじ。俺に触られてると思って、イってみろよッ?♡ほら、俺がしつこくメススイッチ2本指で擦る、いつもの手マン……ッ♡多野、やってみっ?♡』
「ぁ♡ぅあ゛♡まのくん、の♡て♡てま、ん♡ぁう゛♡ふっ♡んッ、ぉ゛!♡ぁ♡あ♡まのくん♡まのくんの、てまんっ♡ぉ゛♡お゛ッ♡まのくん♡まのくんっ♡まの、くん゛ッ♡♡♡」
『多野ッ♡俺♡俺のこと考えてるか?♡俺のこと想像してッ♡指、動かしてるかっ?♡』
「ぉ゛♡あッ♡して♡して、るっ♡まのく♡まのくんの、ことッ♡だ♡だって♡ぼく♡ずっとっ♡ずっとそうぞう、してた、からッ♡これ、までもっ♡おしり♡ばいぶっ♡ぜんぶっ♡まのくんでっ♡あなにぃ♡してた、からぁっ♡ん、ぉ゛ッ♡ほぉ゛♡ぉお゛ッ♡」
『うぁ♡た、多野……ッ♡ずっと、俺で……ッ♡♡♡く、クソッ♡ならっ、最後♡最後まで俺のこと考えろッ♡おれ♡俺のこと想像してッ♡ぜったいっ、アクメしろッ♡おれ♡俺もッ♡おまえのこと想像してっ♡シコってっ♡射精するからッ♡なぁッ♡まゆッ♡♡♡』
「ッ、お゛ッ!?♡♡♡」
 
 ──まゆ。
 まるでその言葉だけが浮かび上がってきたように、僕の中へ鮮明に響いてきた呼び名にズクン、と全身が反応します。まゆ。……まゆ。聞き間違い。幻聴。ぼくに都合のいい、妄想。でも、それを聞いたと、必ず聞いたと、身体のほうが先に主張して、勝手に快感を引き上げます。絶対に聞いた真野君のその言葉で、絶対にアクメしたいと、僕をどんどん昇らせます。
 
「ぉ゛♡お゛ッ♡ぉお゛ッ♡」
 
 ま♡まのくん♡まのくんっ♡まのくんが♡ぼ、ぼくのこと♡ま♡まゆ♡まゆって♡うぁ♡まのくん♡まのく……ッ、……たっ♡たぁくんっ♡たぁ、くんッ♡まゆ♡まゆイきます♡たぁくんでイきますっ♡たぁくんのこと想像して♡たぁくんの指想像して♡たぁくんにぜんぶされてると思って♡たぁくんで、まゆ、アクメしますっ♡ぉ゛♡クる♡クる♡イグ♡イグ♡まゆ♡まゆ♡まゆ♡たぁくん、でッ♡♡♡
 
「ん゛ぉ♡んッぉ゛♡んほおぉぉ゛……ッ!♡♡♡」
 
 夢中で指を掻き回して、僕は、無我夢中でアクメしました。全力脚ピンの仰け反り舌出しメスイキアクメ……ッ♡♡♡1週間ぶりのドスケベアクメに、言葉にならない快感が身体中を駆け巡ります……ッ♡♡♡
 
『ぉ゛ッ♡ん、おぉ゛……ッ!♡♡♡』
 
 そして耳元で聴こえる野太い嬌声。真野君が電話越しに射精したのだと、否応なく伝わってきます。うぁ♡ぃ♡いっしょに、アクメ♡まゆ♡たぁくんといっしょにアクメ、したぁ♡テレフォンセックス♡でんわ、えっち♡まゆ♡ちゃんと♡たぁくんといっしょに♡でき、たぁ……ッ♡♡♡
 
「んへッ♡ぉへッ♡へぇ……ッ♡」
『っうぁ♡まゆ♡まゆ……ッ♡したなっ?♡ちゃんと俺でアクメっ♡したよなっ?♡』
「ぁッ♡ふぁッ♡ああぁ……ッ♡♡♡」
 
 余韻に浸る僕の耳に、もう一度僕を「まゆ」、と呼ぶ声が鮮明に響きます。本当に。本当に。本当に、真野君が、僕を、まゆと呼んだ。呼んで、くれた。その現実に、僕は、追いアクメを我慢出来ません。全身にぞわぞわと走る、言いようのない気持ちよさに、なにもかもが溶け出していくのが分かります。僕の身体は、「まゆ」は、ずっと真野君に心底そう呼ばれたがっていたのだと実感する快感に、ひくひくと全身を震わせながら、僕はうわ言のように返事をします。
 
「は♡はい♡イきまひたっ♡ぼく♡ちゃんと♡アクメ♡たぁくんでアクメっ♡ひまし、たぁ……ッ♡♡♡」
 
 
 
 
 ・
 ・
 ・
 
 
 
 
「……た♡たぁくん♡たぁくんッ♡んッぉ゛♡お゛ぉッ!♡♡♡」
 
 あの後、お互いしばらく放心状態で余韻に浸っていましたが、なにやら真野君は用事があるようで、テレフォンセックスはそこでお開きとなりました。でも、まるで夢のような幻のような時間を過ごしてしまった僕が、そこで治まるわけはなく……ッ♡電話を切ってから、僕は、一心不乱にアナニー三昧……ッ♡♡♡真野君に「まゆ」と言われ、真野君を「たぁくん」と呼んで、その悦びと興奮で僕は完全にタガが外れてしまっていました。1週間分の性欲を吐き出すように、バイブをMAXにしてチクピンの連続……ッ♡♡♡枕元には使用済みのスキンが散乱し、終始身体を擦り付けている抱き枕ももうびしゃびしゃです……ッ♡
 
「ぉ♡おちん、ぽッ♡ぉ゛ほッ♡おちん、ぽぉ゛ッ♡」
 
 おちんぽアクメもとまりませんっ♡口にするたびにびくんびくんと跳ねながら、僕は恥ずかしい言葉を連呼し、夢中でたぁくんにすけべなまゆを報告してしまいます……ッ♡
 
「たぁくんっ♡まゆ♡またッ♡ぉ゛♡ど♡どすけべおちんぽイギッ、しまひゅッ♡ぉ゛♡お゛ッ♡おちんぽって♡ぉ゛♡いう、だけでぇ♡あくめ♡ひまひゅッ♡まゆ♡おちんぽイキするッ♡ぉ゛ッ♡ど♡どすけべでっ♡たぁくんっ♡ご♡ごめんな、ひゃい……ッ!♡♡♡」
 
 ぎゅうっと乳首を自分でつねって、もう何度目かも分からない本気アクメ……ッ♡♡♡乳首の刺激に連動して、スキンの中にぶしゅぶしゅ潮を噴いてるのが分かりますっ♡ま♡まゆ♡ごめんなさいイキ、すっごく気持ちいい、みたいですッ♡これすると♡もう♡あたま♡おかしくなっちゃうくらい♡きもちいい、ですっ♡だ♡だめ♡だめ♡ひとりすけべすると♡まゆ♡マゾなの♡ぜんぜんっ♡かくせないっ♡たぁくんにいじめられたいのっ♡ぜんぜんっ♡かくせな、いぃ゛……ッ♡♡♡
 
「ぁ゛♡あ゛ッ♡あ゛ふ……ッ♡♡♡」
 
 もう外が白み始めている中で、僕はようやく、ぐったりとベッドに倒れ込みます。びくびくと痙攣する身体に、こびりつくような快感。それはすべて、真野君から差し出されたものです。真野君が居なかったら、発露すらしなかったもの。……そうです。ようやく気付きました。真野君という存在そのものが、僕にとっての性感帯、なんだと。だからこの1週間は、なにも感じることがなかった。今までのような僕だった。
 ……でも。
 
「たぁくん♡たぁ、くん゛ッ♡まゆ♡ひとりじゃ、ぜんぜん、たりない……っ♡たぁくんと、きもちよく、なりたい……っ♡ひとりじゃ、やだ……っ♡たぁくんときす、してっ♡ぎゅうって♡したい、よぉ……ッ♡♡♡」
 
 ……でも、今日、僕もそれを自覚してしまった。真野君にまた、僕も知らなかった僕自身を引き出されてしまった。だからこそ、僕ももう、ひとりきりではだめなんだと思いました。もう、今までの僕には決して戻れないのだと悟りました。
 ──だって。
 
「まゆ♡まゆ……っ♡もぉたぁくんじゃなきゃ、やだ、よぉ……っ♡♡♡」
 
 ……もう、僕は、多野繭人であると同時に。
 真野君の手で指導された。
 真野君に見つけて貰った。
 真野君だけの知る、まゆ、なんですから……っ♡
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