ヤンキー・モンキー・ベイビー!

卯月うさぎ

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16.そこは当たり前かと・・・

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遡る事、数時間前─────



ベルナールと別れたマルクスは、ある執務室に向かっていた。
重厚な扉をノックする。


「マルクスです」
「入れ」

扉を開けると諜報部の上司アランと眼光鋭い男が居た。
その男が開口一番こう言った。

「左遷されたいか」
「行き無しそれですか」
「随分と待たされた」
「じゃ、サクッと言いますね。あの迷い人は、黒ですね」
「マルクス、端折り過ぎだ!!ゲル様にちゃんと報告せぬか!」

上司のアランがマルクスを叱りつけた。
はいはいと言わんばかりに、首を振り説明する。

「結果を先に言った方が、説明しやすいんですよ。あの迷い人の場合」
「「・・・。」」

「俺の洞察力はゲル様も知っての通りです。話せば話すほどバカで単細胞っていうのがあの迷い人の第一印象…。"あの国"が召喚したとは考えられません。知識の益にはそれはそれは程遠い存在って感じです」

「……辻褄があわんな。お前は今、黒だと言ったではないか」
「黒ですよ。間違いなくね。だって、あんな鉄の馬見た事あります?」

此処王宮の厩舎に例の鉄の馬が置いてある。得体の知れない生き物を任され、厩舎の人間は困惑していると聞いた。マルクスは続けて言う。

「それに………将軍閣下を一撃で倒したんですからね」
「「!」」


そら驚くよな(笑)

「俺が到着した時、丁度将軍閣下と模擬戦をしている最中でラッキーでしたよ。あのガントを実際どのように倒したのかが分かると思いましたからね…。見てると将軍閣下の攻撃を簡単に避け、逆に将軍を押しておりました。全く相手にしていない感じで試合が続き、マジ切れした将軍は自我を無くされました。そうなった将軍に周りが焦りを覚えるも、かの者はそれをひと蹴りで倒した時は驚くやら、興奮するやらで…そりゃあもう…………」

興奮して事細かく説明しようとしたら、スパッと話を切られた。

「黙れ。先を言え」

ゲル様の眼光の鋭さが増して、仕方なく話しの先を急ぐ。

「あの迷い人は謎が多すぎるんですよ。まず言葉が何故通じる?召喚されたならなぜ此処に?まして益になり得なさそうな人間。でも召喚された者には間違いない。それで俺はこう考えたわけですよ。知識の益ではなく、別の何かの思惑があって召喚された者だとすれば……また、国として召喚したのではなく、内密で召喚したとしたら?そして、それができる人間……」

「あの王か!!」

「そう考えると、召喚で現れた場所もあの国ではなく、他国ここだった事。そして知識の益は無いという説明がつきます。言っときますが、これはあくまで推測の域ですからね。その裏付けの為にも、あの国の情報が欲しい所です」

俺の推測に、大きな溜息をついた男。

「お前の推測を信じるとすれば、あの迷い人への対応は慎重にしなければいけないことになる……。1つ確認するが、お前はベルナールの友と言う立場よりも、諜報部の人間としての立場で報告と意見をしていると認識していいんだな」

「そこは、当たり前かと」
「それなら良い…。アゼルも俺が手を出せないようにラムスの所に預けた以上、ここはベルナールと親交のあるお前が最適。先程の言葉を肝に命じて迷い人に今後も接触しろ。何か分かり次第、逐一アランの方に報告するように、以上だ。もう持ち場に戻ってよい」

そう言われて、退室した。例の進化が違う事は敢えて言わなかった。この事が吉と出るか凶と出るかは分からない。だがここは、俺の直感を信じたい。

国に忠誠を誓えるかと言われれば、そこは当たり前。
じゃ、ゲル様に忠誠を誓えるかと言えば………NO。

諜報部は王弟・・ゲル様のものではない。国、そして王の為に動く機関。それが俺の答えだ。

俺の事を結構買ってはくれているようだが、決してゲル様の為にやっているわけではない。見てる方向が今は同じだから、指示を聞いているだけだ。
そこのところゲル様も承知している節があるけどな……。

私利私欲で動く人なら報告は適当に嘘をついた。
やり方は強引だが、王を立ててサポートしているのも実状。いつもその強引さの尻拭きをしているのが、アゼル様だ…。この二人、反発しているようで意外とあっていると俺は思う。

そんな事を考えて廊下を歩いていると、その噂の人がゲル様に文句を言いに行くのだろう、こちらに向かって来た。

「マルクス……その方、左遷されたいか」
「あなた様も行き無しですね」
「正直な所を言ったまでだ。いくら幼少の時より知っているマルクスでも、余りな事をするようであれば、その可能性もあると心しておけ」

ゲル様に向ける怒りを少し俺に向けたアゼル宰相…。これって八つ当たりだよな。何故、上司のアラン(結局はゲル様だけど)の指示に従がった俺が左遷されるんだ?理不尽さに、すれ違いざまのアゼル宰相に向かって言葉を投げかける。

「我は、国の為王の為に動いておりますゆえ……そこの所は、アゼル様もゲル様も同じかと」
「当たり前だ!問題はやり方なのだ!!」


火に油を注いだ感…。

仕方なくヘニャリと笑うと、全くお前は……と言って溜息をつかれた。この人も俺を可愛がってくれている。

「ゲル殿の行き過ぎに加担してくれるな…。諜報部はあの方の私物ではない。それだけは心に留置いてくれ」

そう言ってゲル様の執務室に向かわれた。
その後ろ姿を見て、庭に隠れてどうなるか見定める事にする俺。これは面白さ、興味本位での行動だ。

暫くすると、上司のアランが青い顔をして出て来るのが見えた。中はブリザード状態のようだ。お互い激情型でない分、言葉の攻防にアランは震えたのだろう。退室のタイミングを計れず、今やっと出て来た感だな……。どんくさい上司に笑いが出た。もっと立ち回り上手くしねぇと出世できねぇぞ。と、その前に、お前左遷かもな。


中でどういう話しをしているのか聞きたい所ではあるが、盗聴する事も出来ず仕方なく、俺も仕事場に戻った。

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