ヤンキー・モンキー・ベイビー!

卯月うさぎ

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23.複雑と簡単

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「お前は何故そう問題を起こす…」


私はゲルのおっさんに理不尽なお叱りを受けている。

『私じゃない!ラムスのおっさんが問題を起こしたんや!!私は被害者や!』
「もういい…だいぶ遅刻だ。いいか、停戦協議以外の話になったら、お前は一言も話すな」
『?』
「お前に興味を持たれた。嫌な予感がするからだ!」


そう怒りながら私を伴って協議が行われる部屋に向かう。肩が疼くせいと、怒られたせいでテンションが低い私・・・。扉を開けると全員揃っていてこっちに視線が注がれた。何や転校生を紹介するみたいな雰囲気だ。すぐにゲルのおっさんが時間の遅刻を謝罪するのを見て、慌てて私も頭を下げた。


「では、全員揃ったと言うことで協議に入る。その前に、トーカ殿も初めての吾人もいるだろう…簡単な紹介をしようと思うが皆さんよろしいか?」

そう言ってターベル国の人から始まった。宰相閣下、ゲル外務大臣、何故か経済産業大臣と法務大臣もいた。それぞれに補佐官もついていてターベルは国王を入れて8人。ザルビアの方もクロード皇太子を入れて8人。外務大臣、経済大臣、法務大臣…それぞれの補佐官。そして何でか知らんが、ベルナールと交戦してた卑怯なおっさんがおった。そのおっさんの微妙な名前を聞いて思わず吹き出しそうになる。
ババ・モレノ………。こいつの名が、ババチビリ(うんこちびり)に決定した瞬間であった。

それぞれの自己紹介が終って早速停戦の協議に入った。
人の生き死にがあった戦争は、どうしても遺恨を深く残す。
ゲルのおっさんが論点は補償の話になるだろうと言っていたが、いきなしその通りとなった。
どちらともが被害者的な立場を主張し、補償額を提示している。

延々と続く妥協点のない話し合いに、頬杖えをついて黙って私はそれを聞いていると、それに気づいたクロード皇太子が私に話を振って来た。


「トーカ殿はどう思われますか」


突然の事に、思わずゲルのおっさんを見た。喋っていいぞと目で合図される。

それじゃ遠慮なく。

『私にしたら、生き死にがあったのはお互いさまや。戦争を起こしたんはあんた等や。上の命令で兵士は戦うだけ。現に兵士は、停戦だといって戦場に出なくて済むようになったし。相手の国に補償しろではなく、国のトップとしてあんた等が自国民に詫び(補償)するべきとちゃうんかなと思う。ついでに言わせてもらうけど、あんた等はこの協議に昔の遺恨云々を出してるけど、あんた等は今後の未来について話すべきやと思う。あんた等の国民は、補償額がこんだけ出たとか、こういう補償をさせたっていう事より、今後どうなるのかが知りたいと思ってると思うで』

「・・・」

そこにいた全員が黙る。
遠慮なく言いすぎたか?そう思っていたら、クロード皇太子が笑い出した。ターベルのフェルナンド国王も続いて笑い出した。

「参りました」
「全くだ」
『?』

「クロード皇太子、あなたも同意見と捉えてよろしいか?」
「勿論」
「では、今後の私たち両国の未来について協議に入る」

フェルナンド国王がそう言って、補償の問題をスル―して議題が変わった。
慌てるババチビリがフェルナンド国王に詰め寄った。

「補償も解決せずに未来ですと?!」
「ババ将軍、この協議は未来に繋げなければいけないとトーカは言った。我々は自国民にその未来を持ち帰らなければならない」

すぐにクロード皇太子が諌めるも納得できないババチビリ。

「し、しかし・・遺恨が消えませぬ!!」

私は五月蠅いババを処理する。

『はっきり言うたるわ。あんた、遺恨が消えへんと言うけど、そうやって遺恨をどんどんこの3年間で増やしたんはあんた等やで。その問題を解決できんかったんもな!ええか?うっ憤を溜めると相手の一つ一つの行動自体が嫌なものになっていくねん。他の人が同じことしてても、その人やったら許せんみたいなそう言う気持ちが出てくる。国といっても動かすのはそういう心を持った人や。ただ個人と違って国となると毛嫌いのやり方が顕著に出てくる。それが3年も続いたこの戦争や』

黙って聞いてる両国のおっさんたち。聞く耳はあるっちゅう事で私は続ける。

『あんた等は誰の代表や?…国民の代表で此処に立てや!国民は答えを出してるで。街道沿いの声が答えや!!そんな簡単な答えをお前等は見落とすなや!』



****


どのくらい経っただろう・・・・

啖呵を切ってから、今だシーンとする部屋の中。
もしここに健太が居たらこういうだろう。
"総長~、啖呵切るのもいいっすけど、その後を収拾する人間を確保してからにして下さいね"と・・。

頼む!誰かフォローしてくれ。
そう思ってゲルのおっさんを見る。眉間に皺を寄せて、私を見てた。いまいちおっさんの感情が読めず、仕方なく宰相閣下を見た。こちらもただ私を見てるだけ…。他は?!と思い全員の顔を見渡した。
全員が私に視線を送る。その時点で私は死んだ…。正論を言うたつもりが、こいつ等の地雷を踏んだんか?皆の視線を受けながらキョドってると、フェルナンド国王が漸く口を開いた。


「我らは間違っていたようだ。我らは国の代表ではなく、国民の代表であった…。答えは皆が見ておった、街道沿いの歓喜の声であったのだな……」

そう感慨深げに言った。
それからは、只々今後についての協議に入った。ほっと胸をなでおろし、その様子を両国の間に座った位置から観察してたら、ゲルのおっさんと目が合った。何や?って顔したら眉間に深い、深い皺を寄せて考え出した…。意味が分からん。



そして、協議も終わりそれぞれが談話していると、クロード皇太子が私に話しかけて来た。

「トーカ、一度ザルビアに観光に来ないか?」
「断る」

私が答える前にゲルのおっさんが断った。

「何故ゲル殿がお答えに?」

少しムッとしてクロード皇太子がゲルのおっさんを見た。
私もゲルのおっさんの言葉を待つ。協議以外のことは喋るなって言われてるし。

「こいつは、当国が預かる身。そうそう他国などに観光はさせられぬ。何かあれば大ごとだ」
「安心されよ。我らがお守り致す」

今度はババチビリまでが言って来た。
それに対してゲルのおっさんが返答する。

「こいつは、トラブルメーカーだ。俺の見える範疇でないと安心できない」
「ゲル殿・・・あなたは四六時中トーカに張り付いているわけではありますまい。現に今は2人の警護人のみ。何ならそのお二人も一緒に来てい・・・」

クロード皇太子の言葉が言い終わらないうちにゲルのおっさんが噛みついた。

「クロード皇太子、失礼ながら先程からこいつを呼び捨てになっているようだが、少し馴れ馴れしいのでは?!」
「はっ、ゲル殿は逆に失礼では?女子に向かってこいつ呼ばわりはいかがなものかと」

もはや誰もこの2人の会話に入れんようになってしもた。
助け船を出してもらおう思って兄王のフェルナンド国王を見ると苦笑いしてた。
おい、おい・・笑ってんと止めてくれ。宰相はあんぐり顔やし・・・。
折角まとまった和やかなムードの中、この2人だけが険悪になった。

「トーカ、私はお前にザルビアを見てほしい。そしてザルビアを知ってほしい…どうだろうか?」

優しく上目遣いで見つめるクロード皇太子。うぅ…見目麗しいその容姿でその角度…。鼻血ものである。
そして、悩む。悩む。悩む。ゲルのおっさんが私の視野に入る。間違いなく断れ光線を送っている…。

『・・・行きたい』
「お前は!!」
「ゲル!」

ゲルの怒りの言葉をフェルナンド国王が抑える。

『私は見たい。卓上で得た知識と自分で見た知識にはやっぱり違いがある。現に、ゲル様から聞いたターベルの国と街に観光に行って感じたものは違った。文字や言葉の伝わり方と体感は違うねん。こうやって、関わった以上、私は自分の目で見てみたい!ちゃんとここに帰ってくる。ゲル様たちの授業も受けなあかんし…。帰ってきたら見て感じた事をあんた等に聞いてほしいし…』

何や最後尻つぼみみたいになってしもたけど、黙ったまま何も言わんゲルの代わりに、宰相閣下が少し笑いながら爆弾を落とす。

「この際、外務大臣のゲル殿も行かれては?ザルビアと国交が再開されるのだ。
外交担当のあなたが付き添いで行ってもおかしくはないだろう。それであれば、
ゲル殿がいう見える範疇では?」
「!」

宰相閣下の予想外の言葉に、ちっ、と舌打ちしたクロード皇太子。
逆にその言葉に黙っていたゲルが声をあげた。

「ふむ、確かに。王よ今後の予定を詰めてこやつと一緒にザルビアに赴きたく…」
「ぶっふふふ…。クロード皇太子、当国はトーカ殿と一緒にゲルも行くのでよろしく頼む。ぶふふふ…」

何故に所々噴きだす?他の面子も笑いを堪えてる。私等3人は何もおもろない…。
溜息交じりにゲルのおっさんに同行宜しくと、クロード皇太子には楽しみにしてると言っておいた。

その夕刻、ザルビアとの停戦協定を祝う晩餐会が開かれ、私と2人の警護人も招待された。本来ラムスのおっさんも来ることになっていたが、自宅謹慎処分になっていた。まぁ、当たり前である。
時間が無いため、私の晩餐のドレスは、王が用意してくれた。なるべく地味なものっていうといたのに、持ってこられたのは、真逆なものやった。絶句である。仕方なく鎖骨のもの・・を隠すため、ショールを用意してもらいそれをつけて、晩餐に出ることにした。

ゲルのおっさんがエスコートしに私の部屋にやって来る。元々警護人2人がエスコートする気満々だったため、解せない顔をして私を見てる。

知らんし!私も意味分からんわ!

身分はゲルのおっさんが上の為渋々警護人2人が身を引こうとした瞬間、クロード皇太子とギルスさんがやって来た。

「トーカ、エスコートしに来たぞ」
「要らぬ世話だ。エスコートは、私がする」

ゲルのおっさんがそう言って無理やり自分の腕に私の手を巻きつかせるが、クロード皇太子も負けていなかった。余ったもう片方の私の手を取って自分の腕に巻きつかせた。私の頭上で睨み合う2人。鬱陶しい…。

『エスコートなんていらん。そや、2人で会場に並んで行けば?この停戦がうまくいった感が演出できてええやん』

そう言って、2人に無理やり巻きつかされてた両手を離して後ろに下がろうとした時、2人が慌てて私の肩を掴んだ。正確にはショールを掴まれた。その途端巻いてたショールが2人の手に残り私は後ろにずさった形になった。

その途端、全員が固まった。全員の視線が一点を見つめている。

そうわたしの鎖骨にはラムスのおっさんの歯形がくっきり付いていたからだ。
噛まれた瞬間は血で見えなかったが、治療してもらって鏡を見た私もあまり綺麗な歯形にびっくりした。


『・・・』
「・・・」


そそくさとショールを奪い取り、巻いてその場を去る私。
慌ててマルクスが付いて来たが、その他はついて来ず。

私が居なくなって、全員が揃って一言「コロス!!」とハモっていたのは桃花自身は知らない。
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