ヤンキー・モンキー・ベイビー!

卯月うさぎ

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39.困ると○まる

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「ト・・ト、トーカ様がいらっしゃいません!!」


俺達がトーカの隣部屋で待機していると、メイドがノックもせずに慌てて入って来た。
狼狽えてるらしく、俺達の回りでウロウロする。そんなメイドにすぐ指示を出す。

「今すぐ、ラムス殿に報告をしにいけ!俺達は、もう一度トーカの部屋の中を確かめる」
「は、は・・はい!!」

そう言って俺達は、トーカの部屋に入った。廊下にいた警備人もいち早く入っていたようで、俺達に置手紙を見せた。それを読んで俺が舌打ちすると、横でガントも怒りを込めた声で一言吐いた。

「あいつっ!!」
「困ったことになったな・・・。ディオ、すぐにザルビアに行け。トーカが居なくなったこと、俺達がローレリアに向かうと言うことを知らせろ」
「了解!」
「ガント達は辺りを探せ。まだ遠くには行ってない可能性もある」
「了解だ!」

そう指示を出した後、ラムス殿たちが部屋に入って来た。置手紙を見せる。

「お前たちは何をしていたのだ!!」

ラムス殿の怒鳴り声で、項垂れる警備人たち・・・。昨日の今日だ、確かに役にたってねぇな。

「メアリー、ジョアンナ。トーカ様が持ち出された物が何か分かるか?!」
「い、いますぐ、確認します!」


執事のフレドリックが指示をだすと、さっきまで狼狽えていたメイドがしゃきっとした。
洋服ダンスや何やらをチェックして、執事に報告する。

「下着数枚と、トーカ様が最初に着ていらっしゃった黒い服がございません。それと・・・」
「そ、そ・・それと何だ。は、早く言えメアリー!!」

今度はラムス殿が狼狽えていた。

「本が1冊ないと思われます・・・」
「本?」
「はい。トーカ様がザルビアに赴く時に私に頼まれた本がないのです」
「どういった本なのだメアリー」

執事のフレドリックが聞きなおすと、言いにくそうにこう言った。


「世界の食べ歩きマップ・・・です・・・」


一同無言になる。
あって間もない俺だがトーカらしいと感じた。決して、自慢できる所ではないが…
ラムス殿が気を取り直して皆に指示を出す。

「フレドリック、王宮にすぐ連絡を入れてくれ!警備人は、街に出てトーカ殿を探せ!!まだそんなに遠くには行っていないはずだ」
「「御意!」」

そう言って、部屋を出て行ったラムス邸の面々。
ラムス殿に声を掛ける。

「俺達もあんたの警備人の報告を暫く待つが、状況が状況だ。暫くして何の情報もなかったら、俺達はローレリアに行く。あいつが命を狙われてる以上1分1秒が勿体ない!」
「そうしていただけると・・有り難い・・・」

今だ喋らない銀魔に目をやったら、何かを考えているようだった。
ラムス殿に置手紙と一緒にあった包み紙を渡す。

「これは?」
「置手紙とそれが一緒に置いてあったらしい」
「///なんと!」

そう言うと銀魔も考えるのを止めて、じっと包み紙を見る。皆の注目を浴びながら、いそいそと包みを開る半笑いのラムス殿。開けた瞬間、また一同無言になる。

「・・・・・」


見間違いでなければ、あー・・、これはあれだよな・・・


"子供用のおまる"※



──────大事に使ってや。

その言葉で迷い人のトーカが、これをティーカップと思って買っただろうと予測がついた。形が似ているからな。
2m以上のこの男に普通のティーカップは、小さくままごとの玩具に見える。
これをティーカップと誤解したトーカが、この男にぴったりな大きさのこれ・・をザルビアで見つけて買ったのだろう・・・。実際それを持つ目の前の男の手には、通常の大きさのティーカップに見えた。紅茶の入れる量は半端ねぇけどな。

それをさっきと違って、居た堪れなさそうに包みに戻す大男。何故かその姿が小さく見えるのは気のせいか?


そんな時、外に行っていたガント達が戻って来る。

「どうだった」

俺がそう聞くと、首を横に振り怒りが収まらないのか、側にあった机に八つ当たりした。

「あいつ、いきなり約束違えやがって!!お互い隠し事はなしだと自分からも言っときながらバカにしてやがる!!」

怒るガントにトーカの気持ちを伝える。

「ガントよ。トーカは俺達の為に此処から離れたんだ。1つは保護国ターベルの危機。もう1つは、俺等が話してた国の内情・・・第一、第二皇太子の揉め事だ。自分が此処からいなくなれば、それが無くなると考えたんだろう」
「だから、そこがバカにしてやがるんだ。俺等に子分になれって言っときながら、切り離すな!親が子を捨てるな!!」

その言葉にそうだなとしか言えなかった。
暫くして1人の警備人が戻ってきた。報告を聞く。
東行きの乗り合わせ馬車には乗っていなく、またそういう人物も来ていないと言われたらしい…。

これで決まった。時間が勿体ない。


「俺等は、今からトーカの後を追う。すぐ準備しろお前等!」
「了解だ、隊長!」

銀魔たちに目をやると、苦い顔をしていた。国というリード付の人間とザルビアから特別騎士団として切り離された俺等。自分達のジリ貧に悩むって顔だな…。しかたねぇな、喝入れるか……。


「必ず引っ張って連れて帰って来る。あんた達は、今できることをやっておいてくれ。連れて帰って来て、結局、ローレリアに引き渡すってことのねぇようにな!」


そう言うと、気合いが入ったのか、はっきりと承知したと言った銀魔たち。



準備もでき、俺達は早々に出立する。
玄関前で、全員に見送られる。

「グラン様、どうかどうかトーカ様をお願いいたします」

執事が真直ぐ俺等を見て、言葉をいうと他の召使たちも頭を下げた。皆に好かれているなと思った。
ラムス殿たちに目を向ける。

「では、行ってくる」
「頼み申したぞ、グラン殿、ガント殿、ビリー殿!」

「はっ!」と、馬に掛け声をかけ、邸をでる。

例の物・・・をメイドに用意してもらって、東に馬を走らせた。例の物・・・とは、"世界食べ歩きマップ"のことだ・・・。


大の男がこんな本を持って街中を探すとは・・・。
だが、この手掛かりは有力だ。単純な行動の持ち主でここに来て、初めて良かったと思う。馬を走らせ隣り街で捕まえられると確信した、グランだった。


しかし、グランの読みははずれる。
親分がそんな単純な人間でないことを後で思い知るのだった・・・・。



※中世のおまるを知りたい方は、"中世ヨーロッパの知りたくなかった実態"っていう所にイラストが載っています。想像より見てもらった方が、笑えるかと。。

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