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1.白の王子と薔薇の姫
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「ようこそ、我が国パレットへ」
色素の薄い白皙の美青年が透けるような白い髪をサラリとなびかせながら優雅な微笑みを浮かべて馬車から降りる彼女を出迎える。
周りでまるで星がまたたいているように見えるほど煌びやかなこの青年は、大国パレットの王太子ブラン王子だ。
ブラン王子が差し伸べた白く美しい手の上には、小さく可憐な手が乗せられる。
丸く整えられた爪先を淡い薔薇色に染めた手の持ち主は、毛先に向けて濃くなる豊かな薔薇色の髪をふんわりと揺らしながら馬車から降りてきた。
出迎える人々の口からホゥという感嘆のため息が聞こえる。
「これからよろしくお願いします」
小国プランタンに咲きほこる大輪の薔薇と称されたローズ姫は出迎える人々に向けてにっこりと微笑んだ。
ローズ姫が身体を少し動かすと、周りにかぐわしい香りが広がった。
それは『プリンセスローズ』の香りだった。
『プリンセスローズ』はその芳醇な薔薇の香りで大国パレットにまで名を馳せている香水だった。
ローズ姫をイメージして作られたという『プリンセスローズ』が有名になり、そのモデルとなった姫に興味を持ったブラン王子がローズ姫を見初めてこの婚約が成立したと言われている。
薔薇の香りをまとう美しい姫に人々は一瞬で魅了された。
ローズ姫はこれから王宮でこの大国パレットについて学びながら妃教育を受け、半年後にはブラン王子と結婚式を挙げることになっている。
「お似合いですわ」
「まるでおとぎ話から抜け出てきたみたい」
「これは宮廷画家も喜びますな」
白の王子ブランと薔薇の姫ローズが並び立ち優雅に微笑むと、周りを囲む人々からは称賛の言葉が次々とかけられた。
*****
とある日の夜、パレット王国の王宮の厨房の片隅ではゴソゴソと何やら二つの影が動いている。
「姫さま、本当にやるんですか?」
「アネモネ。止めないで」
そこでは薔薇の姫ローズとその侍女アネモネがこそこそと何かを作っていた。
「やめた方が良いと思いますよ。バレたらどうするんですか」
「だっておかしいじゃない! いくら私の顔が良いからってこんな大国の王子が小国の姫を嫁に迎えるメリットないでしょ」
「姫さま、顔だけは良いんですからそれで納得しません?」
「それで納得できたらこんな事しないわよ。私よりよっぽど綺麗な顔してる男に顔で惚れられたって言われても納得できるわけないでしょ! あのうさん臭い笑顔の下をなんとしても暴いてやるんだから……!」
ザッシュザッシュと小脇に抱えたボウルの中身をかき混ぜながら、薔薇色の髪の美しい姫は物騒な笑顔を浮かべていた。
色素の薄い白皙の美青年が透けるような白い髪をサラリとなびかせながら優雅な微笑みを浮かべて馬車から降りる彼女を出迎える。
周りでまるで星がまたたいているように見えるほど煌びやかなこの青年は、大国パレットの王太子ブラン王子だ。
ブラン王子が差し伸べた白く美しい手の上には、小さく可憐な手が乗せられる。
丸く整えられた爪先を淡い薔薇色に染めた手の持ち主は、毛先に向けて濃くなる豊かな薔薇色の髪をふんわりと揺らしながら馬車から降りてきた。
出迎える人々の口からホゥという感嘆のため息が聞こえる。
「これからよろしくお願いします」
小国プランタンに咲きほこる大輪の薔薇と称されたローズ姫は出迎える人々に向けてにっこりと微笑んだ。
ローズ姫が身体を少し動かすと、周りにかぐわしい香りが広がった。
それは『プリンセスローズ』の香りだった。
『プリンセスローズ』はその芳醇な薔薇の香りで大国パレットにまで名を馳せている香水だった。
ローズ姫をイメージして作られたという『プリンセスローズ』が有名になり、そのモデルとなった姫に興味を持ったブラン王子がローズ姫を見初めてこの婚約が成立したと言われている。
薔薇の香りをまとう美しい姫に人々は一瞬で魅了された。
ローズ姫はこれから王宮でこの大国パレットについて学びながら妃教育を受け、半年後にはブラン王子と結婚式を挙げることになっている。
「お似合いですわ」
「まるでおとぎ話から抜け出てきたみたい」
「これは宮廷画家も喜びますな」
白の王子ブランと薔薇の姫ローズが並び立ち優雅に微笑むと、周りを囲む人々からは称賛の言葉が次々とかけられた。
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とある日の夜、パレット王国の王宮の厨房の片隅ではゴソゴソと何やら二つの影が動いている。
「姫さま、本当にやるんですか?」
「アネモネ。止めないで」
そこでは薔薇の姫ローズとその侍女アネモネがこそこそと何かを作っていた。
「やめた方が良いと思いますよ。バレたらどうするんですか」
「だっておかしいじゃない! いくら私の顔が良いからってこんな大国の王子が小国の姫を嫁に迎えるメリットないでしょ」
「姫さま、顔だけは良いんですからそれで納得しません?」
「それで納得できたらこんな事しないわよ。私よりよっぽど綺麗な顔してる男に顔で惚れられたって言われても納得できるわけないでしょ! あのうさん臭い笑顔の下をなんとしても暴いてやるんだから……!」
ザッシュザッシュと小脇に抱えたボウルの中身をかき混ぜながら、薔薇色の髪の美しい姫は物騒な笑顔を浮かべていた。
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