【R18/完結】オネエの騎士に溺愛されています〜家の階段から落ちた先は美女の騎士団の頭の上で!?〜

河津ミネ

文字の大きさ
43 / 112
三章 街角の襲撃

43.大怪我-3

しおりを挟む
 時間の感覚も全てが曖昧になる暗闇の中で、次に浮上したらそこは王宮の門のすぐ近くだった。

「カイラ様、おかえりなさい」

 カイラがそこに現れるのがわかっていたように、門の前には人が待機していた。
 星見の塔の魔術士のローブを身にまとっている人の他に、真子が普段あまり見ない制服を身につけている人も何人かいた。

「マリーベルを早く星見の塔の医務室へ」

 カイラの指示の通りに、マリーベルは用意されていた担架に乗せられて素早く運ばれていった。

「マコも早く着替えた方が良いわ」

 真子の方に向き直ったカイラはひどい顔色をしていた。
 カイラはふらっとよろけて壁にドンと手をつくと、真っ青な顔で額にいくつもの大粒の汗を浮かべたまま苦しそうに顔を歪ませた。

「カイラさん!?」

「ハァ……大丈夫、ただの魔力切れよ……」

 そのまま壁に肩をつけて寄りかかると、目をつぶってズルズルと身体を床まで沈み込ませた。

「あ、じゃあ、私の魔力を」

 真子が慌ててカイラに触れようとしたが、カイラが険しい顔でにらみながら真子の手をふり払う。

「いらないわ」

「でも」

「私のは休めば治るから……。ふぅ……。マコ。もし、あなたが、魔力切れを起こしたら、どうなるか……ハァ……それは、誰にも、わからないの……」

 カイラが眉間に深い皺を寄せ、苦しげな呼吸の合間に少しずつ声をはき出す。
 真子はカイラの身体を支えようとして脇に手を差し入れた。

「簡単に、魔力付与をしては、いけない……。あなたを、この世界に、繋ぎ止めているのが、その魔力……なら……魔力切れを、起こしたら、この世界から……はじき出されてしまうかも……」

 カイラはそのまま意識を失うと真子の方に倒れ込んだ。

「カイラさん!!」

 真子が必死にカイラの大きな身体を支えていると、先ほどマリーベルを運んでくれた見慣れぬ制服の人たちが数人戻ってきてくれた。

「カイラ様!」

「あ、あの、魔力切れになったみたいで……」

「そうなるだろうとの報告は受けております。我々がお部屋まで運びますのでご安心ください」

 制服を着たうちの一人の男性が指示を出し、テキパキとカイラを担架に乗せて運ぶ準備をしていく。

「あなたにお怪我はありませんか?」

 男性は真子の様子を心配そうに見た。
 真子は自分の手と服にマリーベルの血が赤黒くなってベッタリとはり付いていることに気づいた。

「あ、これ、私の怪我じゃないので大丈夫です」

「そうですか」

 男性の指示でカイラが担架で運ばれていったのを見送って、真子はどこかで手を洗ったり着替えたりしようとした。
 アレクサンドラの執務室になら真子の着替えがあるはずだ。
 執務室の続き部屋にある仮眠室にはシャワーもある。
 でもアレクサンドラがいつ戻ってくるかわからず、今はまだアレクサンドラと顔を合わせたくなくて真子は執務室に向かうのをやめた。

(マリーベルちゃんを星見の塔の医務室に運ぶって言っていたし、近くまで行けば何か様子がわかるかもしれない)

 真子は星見の塔に足を向けたが、自分の血まみれの服を見て医務室に向かう格好では無いと思い直す。
 誰かに会って何かを説明するのも面倒で、こっそりと階段を昇り「祈りの部屋」に向かった。
 部屋の扉を開けると中には誰もおらず、カーテンも閉められていて薄暗かった。
 真子は祭壇の前で足を抱えて座り込み、マリーベルの無事を祈った。

 真子をかばってマリーベルが怪我をして、真子はそれをなんとか助けたくて魔力付与をしようとしたのにアレクサンドラには止められてしまった。

(私はマリーベルちゃんを助けたかっただけなのに。じゃあどうすれば良かったの……?)

 真子は祭壇の前でポロポロと涙をこぼした。

「何をしている?」

 扉の方から誰かの声がして、真子は顔を上げた。
 祈りの部屋の扉の所には見覚えのない美しい青年が立っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

【恋愛】目覚めたら何故か騎士団長の腕の中でした。まさかの異世界トリップのようです?

梅花
恋愛
日下美南(くさかみなみ)はある日、ひょんなことから異世界へとトリップしてしまう。 そして降り立ったのは異世界だったが、まさかの騎士団長ベルゴッドの腕の中。 何で!? しかも、何を思ったのか盛大な勘違いをされてしまって、ベルゴッドに囲われ花嫁に? 堅物騎士団長と恋愛経験皆無の喪女のラブロマンス?

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

「今とっても幸せですの。ごめんあそばせ♡」 捨てられ者同士、溺れちゃうほど愛し合ってますのでお構いなく!

若松だんご
恋愛
「キサマとはやっていけない。婚約破棄だ。俺が愛してるのは、このマリアルナだ!」 婚約者である王子が開いたパーティ会場で。妹、マリアルナを伴って現れた王子。てっきり結婚の日取りなどを発表するのかと思っていたリューリアは、突然の婚約破棄、妹への婚約変更に驚き戸惑う。 「姉から妹への婚約変更。外聞も悪い。お前も噂に晒されて辛かろう。修道院で余生を過ごせ」 リューリアを慰めたり、憤慨することもない父。マリアルナが王子妃になることを手放しで喜んだ母。 二人は、これまでのリューリアの人生を振り回しただけでなく、これからの未来も勝手に決めて命じる。 四つ違いの妹。母によく似たかわいらしい妹が生まれ、母は姉であ、リューリアの育児を放棄した。 そんなリューリアを不憫に思ったのか、ただの厄介払いだったのか。田舎で暮らしていた祖母の元に預けられて育った。 両親から離れたことは寂しかったけれど、祖母は大切にしてくれたし、祖母の家のお隣、幼なじみのシオンと仲良く遊んで、それなりに楽しい幼少期だったのだけど。 「第二王子と結婚せよ」 十年前、またも家族の都合に振り回され、故郷となった町を離れ、祖母ともシオンとも別れ、未来の王子妃として厳しい教育を受けることになった。 好きになれそうにない相手だったけれど、未来の夫となる王子のために、王子に代わって政務をこなしていた。王子が遊び呆けていても、「男の人はそういうものだ」と文句すら言わせてもらえなかった。 そして、20歳のこの日。またも周囲の都合によって振り回され、周囲の都合によって未来まで決定されてしまった。 冗談じゃないわ。どれだけ人を振り回したら気が済むのよ、この人たち。 腹が立つけれど、どうしたらいいのかわからずに、従う道しか選べなかったリューリア。 せめて。せめて修道女として生きるなら、故郷で生きたい。 自分を大事にしてくれた祖母もいない、思い出だけが残る町。けど、そこで幼なじみのシオンに再会する。 シオンは、結婚していたけれど、奥さんが「真実の愛を見つけた」とかで、行方をくらましていて、最近ようやく離婚が成立したのだという。 真実の愛って、そんなゴロゴロ転がってるものなのかしら。そして、誰かを不幸に、悲しませないと得られないものなのかしら。 というか。真実もニセモノも、愛に真贋なんてあるのかしら。 捨てられた者同士。傷ついたもの同士。 いっしょにいて、いっしょに楽しんで。昔を思い出して。 傷を舐めあってるんじゃない。今を楽しみ、愛を、想いを育んでいるの。だって、わたしも彼も、幼い頃から相手が好きだったってこと、思い出したんだもの。 だから。 わたしたちの見つけた「真実の愛(笑)」、邪魔をしないでくださいな♡

【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する

雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。 ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。  「シェイド様、大好き!!」 「〜〜〜〜っっっ!!???」 逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...