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一章 精霊の愛し子
4.歓迎の宴-2
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連絡船が到着した日の夜は、アイラナの国長であるルルティアたちの父親がこうして歓迎の宴を開く。
長旅に疲れた船員や商人たちをもてなすための宴だが、もしかしたらあの青年もいるかもしれない。
ルルティアはレナの部屋を出ると、階段を降りて一階の大広間をひょいとのぞいた。
(いるかな?)
仕切りを取り払われた大広間ではすでに宴が盛り上がっていた。
床を埋め尽くす様に敷かれた幾何学模様の敷物の上では人々が思い思いに座りこんでいる。
そこかしこでいくつもの円陣が組まれ、真ん中に置かれた料理をつつきながら酒を酌み交わし楽しんでいた。
広間の一角では楽団が音楽を奏で、音に合わせて踊り子たちが歌って踊って人々を楽しませている。
見ている者の中には音楽に合わせて大声で歌っている者もいた。
(うーん、あんなキレイな人なら目立つと思うんだけど)
ルルティアが大広間の奥に目をやると父アリイが座っていた。
少し他と毛色の違うその円陣には、連絡船の船長や積荷を積んできた商人の代表者たちが集まっている。
商人たちは帰りの連絡船にアイラナの特産品である染料だったり鉱石だったりを積んで戻るので、それらの取引についてアリイと交渉をしているのだろう。
ルルティアはアリイの視界に入らないように少し身体をずらした。
アリイは普段は優しい父親だったが、大事な商談の邪魔をしたら後で怒られるだけではすまない。
ルルティアは改めてキョロキョロと周りを見わたすが青年の姿は見つからなかった。
船に乗っていた人全員が招かれているわけではないのでここにはいないのだろうか。
フゥと息を吐いた瞬間、ポンと肩を叩かれた。
ビクリと肩を跳ねさせながらふり返ると、母ウラウが立っていた。
「ルルティア、ちゃんと課題終わらせたの? お客さまの邪魔にならないように、適当に料理を取って部屋で食べちゃいなさい」
「母さま! えっと、はい!」
ウラウはそれだけ言うと、焦ってうろたえるルルティアを置いてすぐにアリイの元へと向かった。
国長であるアリイの妻として、ウラウも商人たちをもてなすのに忙しいのだろう。
ルルティアは仕方なく料理を皿にとって部屋に戻ろうとしたら、目の端にチラと銀色の光を感じた。
急いでそちらに顔を向けると、広間の隅で柱の陰になるように一人座っている青年を見つけた。
(いた!!)
猫の姿は見えないが、褐色の肌に銀の髪と整った顔立ちはあの青年で間違いない。
胸元の開いたシャツに細かな刺繍がほどこされた上着を羽織り、頭には薄く長い布を巻きつける西の方の国の服装をしていた。
すぐそばには大きな楽器が置いてあった。
どうやら青年は商人の一人に雇われた吟遊詩人のようだ。
宴ではアリイの雇った楽団が演奏しているので、青年は仕事を忘れて宴を楽しんでいるのだろうか。
ルルティアは、つつ、と青年のすぐそばまで行って腰を下ろす。
すると青年の方からふわりと甘く官能的な匂いが香ってきて頭の芯が痺れるような気がした。
(なにこれ……良い匂い……)
なにか特別な香料でもつけているのだろうか。夢中になってくんくんと嗅いでから、そうじゃない! と頭をふった。
長旅に疲れた船員や商人たちをもてなすための宴だが、もしかしたらあの青年もいるかもしれない。
ルルティアはレナの部屋を出ると、階段を降りて一階の大広間をひょいとのぞいた。
(いるかな?)
仕切りを取り払われた大広間ではすでに宴が盛り上がっていた。
床を埋め尽くす様に敷かれた幾何学模様の敷物の上では人々が思い思いに座りこんでいる。
そこかしこでいくつもの円陣が組まれ、真ん中に置かれた料理をつつきながら酒を酌み交わし楽しんでいた。
広間の一角では楽団が音楽を奏で、音に合わせて踊り子たちが歌って踊って人々を楽しませている。
見ている者の中には音楽に合わせて大声で歌っている者もいた。
(うーん、あんなキレイな人なら目立つと思うんだけど)
ルルティアが大広間の奥に目をやると父アリイが座っていた。
少し他と毛色の違うその円陣には、連絡船の船長や積荷を積んできた商人の代表者たちが集まっている。
商人たちは帰りの連絡船にアイラナの特産品である染料だったり鉱石だったりを積んで戻るので、それらの取引についてアリイと交渉をしているのだろう。
ルルティアはアリイの視界に入らないように少し身体をずらした。
アリイは普段は優しい父親だったが、大事な商談の邪魔をしたら後で怒られるだけではすまない。
ルルティアは改めてキョロキョロと周りを見わたすが青年の姿は見つからなかった。
船に乗っていた人全員が招かれているわけではないのでここにはいないのだろうか。
フゥと息を吐いた瞬間、ポンと肩を叩かれた。
ビクリと肩を跳ねさせながらふり返ると、母ウラウが立っていた。
「ルルティア、ちゃんと課題終わらせたの? お客さまの邪魔にならないように、適当に料理を取って部屋で食べちゃいなさい」
「母さま! えっと、はい!」
ウラウはそれだけ言うと、焦ってうろたえるルルティアを置いてすぐにアリイの元へと向かった。
国長であるアリイの妻として、ウラウも商人たちをもてなすのに忙しいのだろう。
ルルティアは仕方なく料理を皿にとって部屋に戻ろうとしたら、目の端にチラと銀色の光を感じた。
急いでそちらに顔を向けると、広間の隅で柱の陰になるように一人座っている青年を見つけた。
(いた!!)
猫の姿は見えないが、褐色の肌に銀の髪と整った顔立ちはあの青年で間違いない。
胸元の開いたシャツに細かな刺繍がほどこされた上着を羽織り、頭には薄く長い布を巻きつける西の方の国の服装をしていた。
すぐそばには大きな楽器が置いてあった。
どうやら青年は商人の一人に雇われた吟遊詩人のようだ。
宴ではアリイの雇った楽団が演奏しているので、青年は仕事を忘れて宴を楽しんでいるのだろうか。
ルルティアは、つつ、と青年のすぐそばまで行って腰を下ろす。
すると青年の方からふわりと甘く官能的な匂いが香ってきて頭の芯が痺れるような気がした。
(なにこれ……良い匂い……)
なにか特別な香料でもつけているのだろうか。夢中になってくんくんと嗅いでから、そうじゃない! と頭をふった。
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