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一章 精霊の愛し子
3.歓迎の宴-1
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日が沈みあたりが暗くなった頃、大きな屋敷のひとつの部屋のドアがわずかに開いた。
「誰も……いない?」
ひょいと顔を出したルルティアがキョロキョロとあたりをうかがう。
誰もいないのを確認してからルルティアは静かに部屋から出た。
「はぁ、散々な目にあったわ」
あの後ルルティアが港に戻ると、母親にみつかってすぐに家に連れもどされた。
家庭教師から出された課題をサボって外に出ていたのがばれて、終わるまで部屋から出てこないようにと目の前に課題を山のように積まれてしまった。
うーん、とひとつ伸びをしてからルルティアは別の部屋の扉をノックする。
「レナ、起きてる?」
「うん、姉さま。課題は終わった?」
ベッドの上で本を読んでいたレナが顔を上げる。
レナは透きとおるような白い肌の美少女で、薄黄色の髪がふんわりと薄い肩をおおっている。
はかなげに微笑むその姿は物語の中の天使か妖精のようだった。
「あんなにたくさん終わるわけないじゃない」
「毎日、少しずつきちんとやれば終わるのに」
ルルティアのぼやきに、姉さまはサボりすぎ、とレナがクスクスと笑う。
「レナこそ起きてて大丈夫なの?」
「うん。今日は調子が良いから」
「確かに、いつもより顔色が良いみたい」
ルルティアがレナの頬をなでながら顔色を確かめる。
「アクアさま、お願い」
ルルティアが呼びかけると、何ないところからチュポンと青い魚が現れた。
薄く長いヒレをもった青い魚はルルティアの周りをふよふよと優雅にただよう。
アクアさまと呼ばれた青い魚は淡く水色に光りながらヒレでなでるようにしてゆっくりとレナの周りを泳いだ。
「あぁ、楽になりました。アクアさまありがとうございます」
レナがルルティアの方を向いて指を組みながら感謝の言葉を告げると、アクアさまが口からプクプクと音を立てて応えた。
アクアさまはルルティアが産まれたときから一緒にいる魚の精霊だ。
他の人にその姿は見えないが、ルルティアの前に姿を現す時はいつも近くをふよふよとただよっている。
ルルティアが水の中で人並外れた能力を使えるのはアクアさまの加護のおかげだった。
さらにアクアさまは癒しの力も持っており、ルルティアは小さな頃から軽いケガならすぐ治るし病気もほとんどしなかった。
ルルティア以外にはわずかな効果しかないのだが、ルルティアは身体の弱いレナにいつも癒しの力を分け与えていた。
ルルティアがレナの手の上に桃色の貝がらをのせる。
「あ。ねぇ、これお土産」
「わぁ、きれい……」
「連絡船を見にいった時に拾ったの」
レナが手のひらの上の貝がらを指でつまむと、嬉しそうにランプの光に透かした。
病気がちで寝込むことの多いレナは海もなかなか見に行けない。
ルルティアはそんなレナに外の様子を話し、レナはいつもそれを楽しそうに聞いていた。
「そういえば連絡船で珍しいモノ見たよ」
「なに?」
「ふっふっふ~。なんと、猫!」
「猫? ネズミ取り用の?」
「ううん、そういうんじゃなくて。黒猫を肩に乗せてる人がいてね。でもなんか普通の猫と違ったんだよね。う~ん、あの人にもう一度会ったらわかると思うんだけど」
「船に乗っていた人なら下にいるかもよ?」
レナが「下」と床を指差した。
床下にある一階の大広間からは、宴のにぎやかな様子が聞こえてきていた。
「誰も……いない?」
ひょいと顔を出したルルティアがキョロキョロとあたりをうかがう。
誰もいないのを確認してからルルティアは静かに部屋から出た。
「はぁ、散々な目にあったわ」
あの後ルルティアが港に戻ると、母親にみつかってすぐに家に連れもどされた。
家庭教師から出された課題をサボって外に出ていたのがばれて、終わるまで部屋から出てこないようにと目の前に課題を山のように積まれてしまった。
うーん、とひとつ伸びをしてからルルティアは別の部屋の扉をノックする。
「レナ、起きてる?」
「うん、姉さま。課題は終わった?」
ベッドの上で本を読んでいたレナが顔を上げる。
レナは透きとおるような白い肌の美少女で、薄黄色の髪がふんわりと薄い肩をおおっている。
はかなげに微笑むその姿は物語の中の天使か妖精のようだった。
「あんなにたくさん終わるわけないじゃない」
「毎日、少しずつきちんとやれば終わるのに」
ルルティアのぼやきに、姉さまはサボりすぎ、とレナがクスクスと笑う。
「レナこそ起きてて大丈夫なの?」
「うん。今日は調子が良いから」
「確かに、いつもより顔色が良いみたい」
ルルティアがレナの頬をなでながら顔色を確かめる。
「アクアさま、お願い」
ルルティアが呼びかけると、何ないところからチュポンと青い魚が現れた。
薄く長いヒレをもった青い魚はルルティアの周りをふよふよと優雅にただよう。
アクアさまと呼ばれた青い魚は淡く水色に光りながらヒレでなでるようにしてゆっくりとレナの周りを泳いだ。
「あぁ、楽になりました。アクアさまありがとうございます」
レナがルルティアの方を向いて指を組みながら感謝の言葉を告げると、アクアさまが口からプクプクと音を立てて応えた。
アクアさまはルルティアが産まれたときから一緒にいる魚の精霊だ。
他の人にその姿は見えないが、ルルティアの前に姿を現す時はいつも近くをふよふよとただよっている。
ルルティアが水の中で人並外れた能力を使えるのはアクアさまの加護のおかげだった。
さらにアクアさまは癒しの力も持っており、ルルティアは小さな頃から軽いケガならすぐ治るし病気もほとんどしなかった。
ルルティア以外にはわずかな効果しかないのだが、ルルティアは身体の弱いレナにいつも癒しの力を分け与えていた。
ルルティアがレナの手の上に桃色の貝がらをのせる。
「あ。ねぇ、これお土産」
「わぁ、きれい……」
「連絡船を見にいった時に拾ったの」
レナが手のひらの上の貝がらを指でつまむと、嬉しそうにランプの光に透かした。
病気がちで寝込むことの多いレナは海もなかなか見に行けない。
ルルティアはそんなレナに外の様子を話し、レナはいつもそれを楽しそうに聞いていた。
「そういえば連絡船で珍しいモノ見たよ」
「なに?」
「ふっふっふ~。なんと、猫!」
「猫? ネズミ取り用の?」
「ううん、そういうんじゃなくて。黒猫を肩に乗せてる人がいてね。でもなんか普通の猫と違ったんだよね。う~ん、あの人にもう一度会ったらわかると思うんだけど」
「船に乗っていた人なら下にいるかもよ?」
レナが「下」と床を指差した。
床下にある一階の大広間からは、宴のにぎやかな様子が聞こえてきていた。
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