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一章 精霊の愛し子
14.バズとアクアさま-1
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結局、三回出したあと、アミルはくたりとルルティアに身体を預け意識を失った。
ケガが治りきってない状態では身体に負担が大きかったのかもしれない。
月明かりの下でわかりづらいけれど、アミルの顔色はだいぶ良くなっているように見えた。
ルルティアが汚れてしまった手や身体をザッと洗っていると、アミルの髪はいつの間にか銀色に戻り猫耳や尻尾も消えていた。
祠の近くまで行けば小さな小屋もあるのだが、ルルティアは陸の上では水の中のようにアクアさまの力を使えないのでアミルを小屋まで運ぶことができない。
仕方がないので小屋から毛布を持ってきて一枚をアミルの身体にかけ、もう一枚を自分の肩にかけてアミルの側に座った。
ルルティアが夜空を見上げると、月が真上で光っていた。
アミルに目をやると髪は黒髪混じりの銀髪に戻り猫耳や尻尾も消えてしまっていた。
どうなっているのか不思議に思いながら、ルルティアは寝ているアミルの髪をくりくりと指に巻いてもてあそんだ。
「ん……」
ルルティアのいたずらに反応してアミルが眉をひそめて小さく声をもらす。
それが先程までのアミルを思い出させて、ルルティアは顔を赤くしてパッと手を引っ込めた。
(うわぁ……なんてことしちゃったんだろう)
ルルティアが真っ赤な顔で下を向いていると、アミルの身体にかけた毛布の下からぴょこりと黒猫が顔を出してニャアと鳴いた。
「あなたがバズさま?」
そうだ、と言うように黒猫はもう一度ニャアと鳴いた。
ルルティアが不思議な黒猫と会話(?)していると、アミルがごろりと身体を動かし目を開けた。
「ん、んん……?」
「アミル?」
ルルティアと黒猫の姿を見た瞬間、アミルはガバリと起き上がった。
「あんた!! って、いたっ!!」
「まだ傷がふさがったばっかりなんじゃない? 無理しちゃダメだよ」
ルルティアがアミルの身体を支えようと手を伸ばすと、アミルがその手をグッとつかんだ。
「あんた、何者だ?」
アミルが黒猫をルルティアから奪うようにしながらギロリと鋭い目でにらんだ。
「なんでバズが見えるんだ? さっきも今も俺に何をした!?」
「え!? えっと、あの」
宴会の時のように鋭い目でアミルににらまれ、ルルティアは怯んでしまった。
バズがトンッとジャンプしてアミルの腕に飛び乗って、ルルティアの手をつかんだままのアミルの手に思いきり噛みついた。
「いってぇ! バズ!! 何するんだ!」
バズがタシタシとアミルの腕を叩きながらニャアニャア鳴いている。
「いや、だって、こいつ、あやしいだろ」
アミルとバズは何やら言い合いをしているようだったが、バズが再びくあっと口を開けてアミルの手に噛みつこうとした。
「わかった! わかったよ!!」
アミルはルルティアの手を放すと、真っ直ぐにルルティアに顔を向けて頭を下げた。
「にらんで悪かった。あんたのおかげで助かったよ。……バズ、これで良いか?」
バズはまだ少し不満気にしながらアミルの手をあぐあぐと噛んでいた。
ルルティアはホッと息を吐いてから、くすりと微笑んだ。
「ふふ、バズさま。ありがとうございます」
バズはアミルの手を噛むのをやめて、ルルティアに向かってニャアと鳴いた。
アミルは気まずそうにしながらも、ルルティアとバズの様子を見てフッと肩の力を抜いた。
「『さま』はいらないって」
「えっと、じゃあ、バズ?」
バズはするりとアミルの腕から抜け出して、空中に浮かんだままとてとて歩いて近づいてきた。
そしてルルティアの手にすりすりと頭をよせた。
ルルティアの頭の中に不思議な声が響いた。
『僕はバズ。よろしく、魚の愛し子』
ケガが治りきってない状態では身体に負担が大きかったのかもしれない。
月明かりの下でわかりづらいけれど、アミルの顔色はだいぶ良くなっているように見えた。
ルルティアが汚れてしまった手や身体をザッと洗っていると、アミルの髪はいつの間にか銀色に戻り猫耳や尻尾も消えていた。
祠の近くまで行けば小さな小屋もあるのだが、ルルティアは陸の上では水の中のようにアクアさまの力を使えないのでアミルを小屋まで運ぶことができない。
仕方がないので小屋から毛布を持ってきて一枚をアミルの身体にかけ、もう一枚を自分の肩にかけてアミルの側に座った。
ルルティアが夜空を見上げると、月が真上で光っていた。
アミルに目をやると髪は黒髪混じりの銀髪に戻り猫耳や尻尾も消えてしまっていた。
どうなっているのか不思議に思いながら、ルルティアは寝ているアミルの髪をくりくりと指に巻いてもてあそんだ。
「ん……」
ルルティアのいたずらに反応してアミルが眉をひそめて小さく声をもらす。
それが先程までのアミルを思い出させて、ルルティアは顔を赤くしてパッと手を引っ込めた。
(うわぁ……なんてことしちゃったんだろう)
ルルティアが真っ赤な顔で下を向いていると、アミルの身体にかけた毛布の下からぴょこりと黒猫が顔を出してニャアと鳴いた。
「あなたがバズさま?」
そうだ、と言うように黒猫はもう一度ニャアと鳴いた。
ルルティアが不思議な黒猫と会話(?)していると、アミルがごろりと身体を動かし目を開けた。
「ん、んん……?」
「アミル?」
ルルティアと黒猫の姿を見た瞬間、アミルはガバリと起き上がった。
「あんた!! って、いたっ!!」
「まだ傷がふさがったばっかりなんじゃない? 無理しちゃダメだよ」
ルルティアがアミルの身体を支えようと手を伸ばすと、アミルがその手をグッとつかんだ。
「あんた、何者だ?」
アミルが黒猫をルルティアから奪うようにしながらギロリと鋭い目でにらんだ。
「なんでバズが見えるんだ? さっきも今も俺に何をした!?」
「え!? えっと、あの」
宴会の時のように鋭い目でアミルににらまれ、ルルティアは怯んでしまった。
バズがトンッとジャンプしてアミルの腕に飛び乗って、ルルティアの手をつかんだままのアミルの手に思いきり噛みついた。
「いってぇ! バズ!! 何するんだ!」
バズがタシタシとアミルの腕を叩きながらニャアニャア鳴いている。
「いや、だって、こいつ、あやしいだろ」
アミルとバズは何やら言い合いをしているようだったが、バズが再びくあっと口を開けてアミルの手に噛みつこうとした。
「わかった! わかったよ!!」
アミルはルルティアの手を放すと、真っ直ぐにルルティアに顔を向けて頭を下げた。
「にらんで悪かった。あんたのおかげで助かったよ。……バズ、これで良いか?」
バズはまだ少し不満気にしながらアミルの手をあぐあぐと噛んでいた。
ルルティアはホッと息を吐いてから、くすりと微笑んだ。
「ふふ、バズさま。ありがとうございます」
バズはアミルの手を噛むのをやめて、ルルティアに向かってニャアと鳴いた。
アミルは気まずそうにしながらも、ルルティアとバズの様子を見てフッと肩の力を抜いた。
「『さま』はいらないって」
「えっと、じゃあ、バズ?」
バズはするりとアミルの腕から抜け出して、空中に浮かんだままとてとて歩いて近づいてきた。
そしてルルティアの手にすりすりと頭をよせた。
ルルティアの頭の中に不思議な声が響いた。
『僕はバズ。よろしく、魚の愛し子』
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