【R18/完結】私のことは忘れてください〜できそこないの魔女は俺様な侯爵令息に溺愛される〜

河津ミネ

文字の大きさ
42 / 111
二章 出会いと別れ

4.出会いと別れ-1

 ――十二年前。

 それはレオルドが九歳の時のことだった。

 母はすでに亡く、その出自から存在を周囲に秘されていた少年は、祖父であるイムソリア辺境伯の屋敷にひっそりと隠れ住んでいた。

 イムソリア地方は魔女と関係が深く、領地内のヴィザ村は魔女の村と呼ばれているほどだ。
 イムソリア辺境伯は魔女に手厚いことで有名で、例え魔女の力があるものでも本人が希望しない限りは王宮に引き渡すことをせず、またそれを王宮から特別に許されている。
 そのため辺境伯の周りでは、王宮の手から守る意味もあって魔女やかつて魔女であった者、魔女の目を持つ者など魔女の血筋の者が多く仕えていた。
 王家の血を引くレオルドはわずかながらも忘却の呪いをその身に受けていたため、身の回りには呪いに耐性のある魔女の血筋の者が選んで置かれていた。

「レオルド様、今日は魔女と聖女について学びましょう」

「マリア!」

 レオルドが淡い金髪の美しい女性に駆け寄る。
 マリアと呼ばれた女性はレオルドの家庭教師で、かつて魔女であり、魔女の力を失った人であった。
 愛する人と様々な事情があって結婚はできなかったらしいが、子どものレオルドには詳しい話は教えてもらえていない。
 厳しくも優しい女性で、レオルドはマリアを母のように慕っていた。

「魔女や聖女は国に届け出る義務がありますが、世の貴族の中には極秘で魔女や聖女を囲う者がおります」

「ここにも魔女はたくさんいるが、それとは違うのか?」

「イムソリア辺境伯は、領地内の魔女の引き渡しを拒否することが特別に許されております。それに魔女の婚姻を推奨されていますし、お金に困った親が謝礼金目当てで娘を王宮に売り渡すことがないようにと援助体制もしっかり整えています。魔女や聖女を囲う貴族の中には彼女らに自由を与えず半ば監禁する者もいるようです」

 マリアが痛ましいことです、と眉をひそめた。

「魔女であることや魔女の目を持つことを、領地外では口にしないようにという教えもそのためか?」

「そうです。特に魔女や聖女はその力を狙って拐われることもあるので、基本的にその力のことは他人に話さない方が良いでしょう。レオルド様の魔女の目についても同じですよ」

 このように、マリアはレオルドに辺境伯領地外でのふるまい方についても丁寧に教えてくれた。
 マリアから聞く外の世界はいつもレオルドの好奇心をおおいに刺激した。
 辺境伯の屋敷から自由に外に出られないレオルドにとって、外の世界は危なくもとても魅力的に見えた。

 ある時、イムソリア辺境伯が領地内の見廻りのため数日屋敷を留守にすることになる。
 そしてちょうどその頃、レオルドはウィザ村の長老と呼ばれる魔女に呪いを診てもらうため屋敷を離れる必要があった。
 マリアと護衛を連れてウィザ村に向かうレオルドは、護衛の隙をついて脱け出してしまう。
 レオルドは年齢の割に賢い子であったが、同時に冒険心にあふれる好奇心旺盛な子でもあったのだ。

「俺だって一人で外出ぐらいできるさ!」

 ウィザ村近くの森に入ったレオルドは、学んだ知識を駆使して森の奥へ奥へと進んでいく。
 書物でしか知らなかったあれやこれやが興味深くて楽しくて、レオルドはどんどん歩みを進めていった。
 すると突然、目の前の森が開けて一面にスミレの花畑が広がる。

「わぁ、すごいキレイだな」

 よく晴れて澄んだ青空と地面に広がる緑と紫の絨毯は、陽の光をたっぷり浴びてきらめいていてとても美しかった。

「マリアに摘んでいってやろう」

 特別に綺麗なスミレはどれかと選んでいると、ふと身体に違和感があった。
 目を凝らすと身体の周りに黒いもやがまとわりついてきて、それらが蛇のように手足に絡みつく。

「っ!! なんだ、これは!」

 蛇のような黒いもやは、すぐにレオルドの全身をおおった。
感想 2

あなたにおすすめの小説

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました

まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました 第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます! 結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。