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三章 呪いと祝福
8.-3
「もしソフィアの呪いが解けなかったら、こうして一生抱きしめて離さないからな」
レオルドがソフィアを抱きしめながら文句を言った。
「まぁ……。一生だなんて、おばあちゃんになってしまいます」
「あぁ、そうだ。ソフィアはばあさんになっても、じいさんになった俺に一生こうして抱かれていろ」
「それなら少しだけ楽しみです」
レオルドの腕の中でソフィアがふっと笑ったような気配がして、レオルドがあわてて顔をのぞきこむ。
しかし顔を上げたソフィアはもう笑っていなかった。
ソフィアはリベルとオーブリーのすぐそばにしゃがみ込み、手を伸ばしてふたりの呪いをその身に移していく。
ふたりから剥がした呪いが、ソフィアの身体の内を這い回る。
それは身体の芯から焼き尽くすようであり、また全身を凍りつかせるようでもあった。
そしてさらに目を覚ましたふたりがこれ以上呪いにかからないよう、周囲に充満している呪いもその身に移していった。
服を着ているため確認はできないけれど、いまや呪いはソフィアの身体の大半を黒く染めているはずだ。
手足の先から冷えていった身体は芯まで凍りつき、全身が石のように重くなっている。
身体がうまく支えられなくなってきたソフィアを、レオルドが後ろからしっかりと抱きしめた。
「これでひとまず、おふたりは大丈夫だと思います」
「こうして触れていても、気を抜くとソフィアを忘れてしまいそうになるな」
レオルドがチッと舌打ちをしながらソフィアを抱え込んだ。
ソフィアはレオルドの熱い手に、冷え切った真っ黒な手を重ねた。
「レオルド様、次は呪いの依代をどうにかしましょう」
「あぁ」
まだ目を覚さないリベルとオーブリーはひとまずその場に寝かせたまま、レオルドがソフィアを抱きかかえて魔女の柩の前まで戻る。
柩の横には呪いの依代のネックレスが落ちていた。
「さて、コイツをどうにか壊さないとな」
レオルドはソフィアを片手に抱いたまま、器用に腰の剣を抜いた。
「これを壊せるのは古の魔女本人か、呪いをかけられた王家の者だけらしい」
そう言いながら剣の切先を依代に向ける。
するとゆらりと呪いの気配が濃厚になった。
「ダメッ!!」
ソフィアは急いでレオルドの腕を取り剣を下げさせる。
「私に、私にあれを触らせてください」
「ソフィア?」
「あれをどうにかしないと、レオルド様は一生呪われたままです。私がなんとかします」
ソフィアを抱きしめるレオルドの腕に力が入る。
しかしソフィアはレオルドの腕をはずし、そのまま依代に手を伸ばした。
「ソフィア!」
「これをこのまま壊してしまったら、きっと一生王家の呪いは解けません」
依代から呪いが吹き出しそうになった瞬間、ソフィアはその呪いごとすべてを包み込むように依代を手に握り込み胸に抱いた。
あふれ出す激しい呪いの奔流に流されて、すぐに意識を飛ばしそうになる。
しかし傷だらけの手のひらで掴んだおかげで、痛みがかろうじて正気でいさせてくれた。
「ソフィア!!」
先ほど浴びた呪いとは比べものにならないほどの忘却の呪いが、ソフィアのすべてを忘れさせようとしてくる。
しかしソフィアはそれを力任せに引き剥がし、そのままあふれる呪いをすべてその身に移していった。
「大丈夫……呪いにかけられるのではなく、私が自分の身に移すのであれば私は忘れない……」
依代からあふれる呪いをその身のうちにすべて収め、ソフィアはふぅと息を吐いた。
頭の中がぼうっとして、身体の感覚をすべて失ったような心地で、地面がぐらりと揺れて世界が回る。
それらをなんとか落ち着けてレオルドに話しかけようとしたその瞬間、ドクンッと心臓が大きく跳ねた。
「あ!」
ソフィアは身体を支える力を失い、そのまま地面に向かって倒れ込んだ。
「ソフィア! ソフィア!!」
ソフィアの名を呼ぶレオルドの悲痛な叫び声をどこか遠いところで聞きながら、ソフィアの意識は深く闇に沈んでいった。
レオルドがソフィアを抱きしめながら文句を言った。
「まぁ……。一生だなんて、おばあちゃんになってしまいます」
「あぁ、そうだ。ソフィアはばあさんになっても、じいさんになった俺に一生こうして抱かれていろ」
「それなら少しだけ楽しみです」
レオルドの腕の中でソフィアがふっと笑ったような気配がして、レオルドがあわてて顔をのぞきこむ。
しかし顔を上げたソフィアはもう笑っていなかった。
ソフィアはリベルとオーブリーのすぐそばにしゃがみ込み、手を伸ばしてふたりの呪いをその身に移していく。
ふたりから剥がした呪いが、ソフィアの身体の内を這い回る。
それは身体の芯から焼き尽くすようであり、また全身を凍りつかせるようでもあった。
そしてさらに目を覚ましたふたりがこれ以上呪いにかからないよう、周囲に充満している呪いもその身に移していった。
服を着ているため確認はできないけれど、いまや呪いはソフィアの身体の大半を黒く染めているはずだ。
手足の先から冷えていった身体は芯まで凍りつき、全身が石のように重くなっている。
身体がうまく支えられなくなってきたソフィアを、レオルドが後ろからしっかりと抱きしめた。
「これでひとまず、おふたりは大丈夫だと思います」
「こうして触れていても、気を抜くとソフィアを忘れてしまいそうになるな」
レオルドがチッと舌打ちをしながらソフィアを抱え込んだ。
ソフィアはレオルドの熱い手に、冷え切った真っ黒な手を重ねた。
「レオルド様、次は呪いの依代をどうにかしましょう」
「あぁ」
まだ目を覚さないリベルとオーブリーはひとまずその場に寝かせたまま、レオルドがソフィアを抱きかかえて魔女の柩の前まで戻る。
柩の横には呪いの依代のネックレスが落ちていた。
「さて、コイツをどうにか壊さないとな」
レオルドはソフィアを片手に抱いたまま、器用に腰の剣を抜いた。
「これを壊せるのは古の魔女本人か、呪いをかけられた王家の者だけらしい」
そう言いながら剣の切先を依代に向ける。
するとゆらりと呪いの気配が濃厚になった。
「ダメッ!!」
ソフィアは急いでレオルドの腕を取り剣を下げさせる。
「私に、私にあれを触らせてください」
「ソフィア?」
「あれをどうにかしないと、レオルド様は一生呪われたままです。私がなんとかします」
ソフィアを抱きしめるレオルドの腕に力が入る。
しかしソフィアはレオルドの腕をはずし、そのまま依代に手を伸ばした。
「ソフィア!」
「これをこのまま壊してしまったら、きっと一生王家の呪いは解けません」
依代から呪いが吹き出しそうになった瞬間、ソフィアはその呪いごとすべてを包み込むように依代を手に握り込み胸に抱いた。
あふれ出す激しい呪いの奔流に流されて、すぐに意識を飛ばしそうになる。
しかし傷だらけの手のひらで掴んだおかげで、痛みがかろうじて正気でいさせてくれた。
「ソフィア!!」
先ほど浴びた呪いとは比べものにならないほどの忘却の呪いが、ソフィアのすべてを忘れさせようとしてくる。
しかしソフィアはそれを力任せに引き剥がし、そのままあふれる呪いをすべてその身に移していった。
「大丈夫……呪いにかけられるのではなく、私が自分の身に移すのであれば私は忘れない……」
依代からあふれる呪いをその身のうちにすべて収め、ソフィアはふぅと息を吐いた。
頭の中がぼうっとして、身体の感覚をすべて失ったような心地で、地面がぐらりと揺れて世界が回る。
それらをなんとか落ち着けてレオルドに話しかけようとしたその瞬間、ドクンッと心臓が大きく跳ねた。
「あ!」
ソフィアは身体を支える力を失い、そのまま地面に向かって倒れ込んだ。
「ソフィア! ソフィア!!」
ソフィアの名を呼ぶレオルドの悲痛な叫び声をどこか遠いところで聞きながら、ソフィアの意識は深く闇に沈んでいった。
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