【R18/完結】私のことは忘れてください〜できそこないの魔女は俺様な侯爵令息に溺愛される〜

河津ミネ

文字の大きさ
78 / 111
三章 呪いと祝福

8.-3

「もしソフィアの呪いが解けなかったら、こうして一生抱きしめて離さないからな」

 レオルドがソフィアを抱きしめながら文句を言った。

「まぁ……。一生だなんて、おばあちゃんになってしまいます」

「あぁ、そうだ。ソフィアはばあさんになっても、じいさんになった俺に一生こうして抱かれていろ」

「それなら少しだけ楽しみです」

 レオルドの腕の中でソフィアがふっと笑ったような気配がして、レオルドがあわてて顔をのぞきこむ。
 しかし顔を上げたソフィアはもう笑っていなかった。
 ソフィアはリベルとオーブリーのすぐそばにしゃがみ込み、手を伸ばしてふたりの呪いをその身に移していく。
 ふたりから剥がした呪いが、ソフィアの身体の内を這い回る。
 それは身体の芯から焼き尽くすようであり、また全身を凍りつかせるようでもあった。
 そしてさらに目を覚ましたふたりがこれ以上呪いにかからないよう、周囲に充満している呪いもその身に移していった。
 服を着ているため確認はできないけれど、いまや呪いはソフィアの身体の大半を黒く染めているはずだ。
 手足の先から冷えていった身体は芯まで凍りつき、全身が石のように重くなっている。
 身体がうまく支えられなくなってきたソフィアを、レオルドが後ろからしっかりと抱きしめた。

「これでひとまず、おふたりは大丈夫だと思います」

「こうして触れていても、気を抜くとソフィアを忘れてしまいそうになるな」

 レオルドがチッと舌打ちをしながらソフィアを抱え込んだ。
 ソフィアはレオルドの熱い手に、冷え切った真っ黒な手を重ねた。

「レオルド様、次は呪いの依代をどうにかしましょう」

「あぁ」

 まだ目を覚さないリベルとオーブリーはひとまずその場に寝かせたまま、レオルドがソフィアを抱きかかえて魔女の柩の前まで戻る。
 柩の横には呪いの依代のネックレスが落ちていた。

「さて、コイツをどうにか壊さないとな」

 レオルドはソフィアを片手に抱いたまま、器用に腰の剣を抜いた。

「これを壊せるのは古の魔女本人か、呪いをかけられた王家の者だけらしい」

 そう言いながら剣の切先を依代に向ける。
 するとゆらりと呪いの気配が濃厚になった。

「ダメッ!!」

 ソフィアは急いでレオルドの腕を取り剣を下げさせる。

「私に、私にあれを触らせてください」

「ソフィア?」

「あれをどうにかしないと、レオルド様は一生呪われたままです。私がなんとかします」

 ソフィアを抱きしめるレオルドの腕に力が入る。
 しかしソフィアはレオルドの腕をはずし、そのまま依代に手を伸ばした。

「ソフィア!」

「これをこのまま壊してしまったら、きっと一生王家の呪いは解けません」

 依代から呪いが吹き出しそうになった瞬間、ソフィアはその呪いごとすべてを包み込むように依代を手に握り込み胸に抱いた。
 あふれ出す激しい呪いの奔流に流されて、すぐに意識を飛ばしそうになる。
 しかし傷だらけの手のひらで掴んだおかげで、痛みがかろうじて正気でいさせてくれた。

「ソフィア!!」

 先ほど浴びた呪いとは比べものにならないほどの忘却の呪いが、ソフィアのすべてを忘れさせようとしてくる。
 しかしソフィアはそれを力任せに引き剥がし、そのままあふれる呪いをすべてその身に移していった。

「大丈夫……呪いにかけられるのではなく、私が自分の身に移すのであれば……」

 依代からあふれる呪いをその身のうちにすべて収め、ソフィアはふぅと息を吐いた。
 頭の中がぼうっとして、身体の感覚をすべて失ったような心地で、地面がぐらりと揺れて世界が回る。
 それらをなんとか落ち着けてレオルドに話しかけようとしたその瞬間、ドクンッと心臓が大きく跳ねた。

「あ!」

 ソフィアは身体を支える力を失い、そのまま地面に向かって倒れ込んだ。

「ソフィア! ソフィア!!」

 ソフィアの名を呼ぶレオルドの悲痛な叫び声をどこか遠いところで聞きながら、ソフィアの意識は深く闇に沈んでいった。
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。 どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。 2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。 ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。 あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて… あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?