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56.決着-1
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クラリスたちがかけ寄るとジークベルトの身体には肉が抉れるほどの深い傷がいくつも刻まれていた。
大量の血だまりの上でジークベルトの巨体はピクリとも動かない。
「ジーク! ジーク!! しっかりして! 嫌だ! 目を開けて!!」
「クラリス、どいて!」
ぐいと後ろから手を引かれてクラリスはジークベルトから引き剥がされた。
どこからか駆けつけたヴェルディがすぐにジークベルトに覆いかぶさり、ヴェルディ率いる魔法騎士たちが医療魔法をジークベルトにかけていく。
「団長は任せます」
ザッツはジークベルトをヴェルディたちに任せると、すぐに第三騎士団に命令して周囲の被害を調べさせに向かう。
クラリスはミルトに抱えられながら、ヴェルディの後ろ姿を見つめて何もできずただ泣きながら震えていた。
「クラリス、お願いだから落ち着いて」
「うん……うん……」
ミルトの声を聞きながら、クラリスは動揺して魔力があふれそうになるのを必死に抑える。
しかしわずかに漏れでた魔力が周囲の空気を揺らした。
「この魔力はなに!?」
ヴェルディがクラリスの魔力に気づいて顔を上げる。
「クラリスの封じられていた魔力が解放されたのよ」
「クラリスの魔力が……」
ヴェルディは血塗れの手を伸ばしてクラリスに向かって叫んだ。
「クラリス来て! その魔力を貸して!!」
「えっ」
クラリスは急いで立ち上がり、転げそうになりながらヴェルディの側まで駆けつける。
ヴェルディはクラリスの手を取り、その魔力を体内に取り込むとジークベルトに向かって医療魔法をかけていく。
ヴェルディが医療魔法をジークベルトの身体に巡らせると、少しずつその傷がふさがっていった。
「ヴェルディ……ヴェルディ……ジークは助かる……?」
「わからない。だけど全力を尽くす」
ジークベルトの傷が少しずつ塞がるにつれて、ヴェルディの額には大粒の汗が浮かび顔色がどんどん悪くなっていった。
「う……」
ヴェルディがジークベルトの身体の上から飛び降り、その場で激しく嘔吐した。
「ヴェルディ!?」
「ヴェルディ、クラリスの魔力を使うなんて無理よ! クラリスはユスティーツの血筋じゃないのよ!」
ミルトがヴェルディの背中をさすっている。
おそらくクラリスの魔力がヴェルディには合わないのだ。
「でも、やらないと助からない!」
ヴェルディが再びクラリスの手を取って、クラリスの魔力を取り込んで使おうとする。
「待って、ヴェルディ! 私に、医療魔法を私に見せて!」
「何を……」
「わかったわ!」
戸惑うヴェルディを押し除けて、ミルトがクラリスによく見えるようにジークベルトに医療魔法をかけていく。
クラリスがすかさずミルトの医療魔法を『解析』する。
クラリスとミルトが目を見合わせ、クラリスは大きくひとつうなずいた。
「できそう?」
「やってみる」
クラリスはいま『解析』した魔法を真似して医療魔法をジークベルトにかけていく。
失敗したらどうしようと手が震えるが、ミルトが手を重ねてすぐ横で指示してくれた。
「いいわ……そう……元の状態をイメージして……魔力を巡らせて……」
「うん」
ヴェルディは呆然としてクラリスとミルトを眺めていたが、すぐにミルトの肩に手をかける。
「おい! 医療魔法の素人に何をさせているんだ!」
「大丈夫よ。クラリスの固有魔法は『解析』なの。さっき確認したわ」
「……なんだって!」
ヴェルディはしばらくクラリスとジークベルトを交互に眺めたあと、すぐにクラリスの隣に座った。
「ミルト! 君の方が医療魔法が得意だからグロウス団長に医療魔法をかけ続けて。僕がクラリスの補助をする」
「わかったわ」
ミルトの代わりにヴェルディの手がクラリスの手に重ねられる。
クラリスの手もヴェルディの手もジークベルトの血で汚れている。
「ヴェルディ……」
「クラリス、集中しろ。ミルトの魔法を見て真似するんだ」
「うん」
「ここは僕たちがやる。みんなは他の怪我人を頼む」
ヴェルディはクラリスの不安定な魔力の流れを整えながら、魔法騎士たちに他の人を助けるように指示を出した。
クラリスとヴェルディとミルトの三人でジークベルトを治療していると、ジークベルトの見た目の傷はほぼ塞がったように見えた。
「あとはどれくらい血が流れたかと、どこまで元に戻るかだけど」
「ジーク……」
「もう少し医療魔法をかけたら王城に連れて行く」
「うん……」
「ミルトは王城に連絡して移動する準備をして。クラリスはギリギリまで医療魔法をかけ続けて」
「わかった。ヴェルディ、あとは頼むわね」
ミルトは立ち上がると、魔法騎士たちに指示を出してジークベルトを王城まで運ぶ手筈を整えていく。
ジークベルトはいまだ血の気のない真っ白な顔色をしたまま動かない。
このまま目を覚まさなかったらどうしようとクラリスの目から涙がこぼれ落ちる。
クラリスの涙がポタポタと落ちて、ジークベルトの顔を濡らしていった。
ピクリ、と手の先で何かが動いた気がした。
大量の血だまりの上でジークベルトの巨体はピクリとも動かない。
「ジーク! ジーク!! しっかりして! 嫌だ! 目を開けて!!」
「クラリス、どいて!」
ぐいと後ろから手を引かれてクラリスはジークベルトから引き剥がされた。
どこからか駆けつけたヴェルディがすぐにジークベルトに覆いかぶさり、ヴェルディ率いる魔法騎士たちが医療魔法をジークベルトにかけていく。
「団長は任せます」
ザッツはジークベルトをヴェルディたちに任せると、すぐに第三騎士団に命令して周囲の被害を調べさせに向かう。
クラリスはミルトに抱えられながら、ヴェルディの後ろ姿を見つめて何もできずただ泣きながら震えていた。
「クラリス、お願いだから落ち着いて」
「うん……うん……」
ミルトの声を聞きながら、クラリスは動揺して魔力があふれそうになるのを必死に抑える。
しかしわずかに漏れでた魔力が周囲の空気を揺らした。
「この魔力はなに!?」
ヴェルディがクラリスの魔力に気づいて顔を上げる。
「クラリスの封じられていた魔力が解放されたのよ」
「クラリスの魔力が……」
ヴェルディは血塗れの手を伸ばしてクラリスに向かって叫んだ。
「クラリス来て! その魔力を貸して!!」
「えっ」
クラリスは急いで立ち上がり、転げそうになりながらヴェルディの側まで駆けつける。
ヴェルディはクラリスの手を取り、その魔力を体内に取り込むとジークベルトに向かって医療魔法をかけていく。
ヴェルディが医療魔法をジークベルトの身体に巡らせると、少しずつその傷がふさがっていった。
「ヴェルディ……ヴェルディ……ジークは助かる……?」
「わからない。だけど全力を尽くす」
ジークベルトの傷が少しずつ塞がるにつれて、ヴェルディの額には大粒の汗が浮かび顔色がどんどん悪くなっていった。
「う……」
ヴェルディがジークベルトの身体の上から飛び降り、その場で激しく嘔吐した。
「ヴェルディ!?」
「ヴェルディ、クラリスの魔力を使うなんて無理よ! クラリスはユスティーツの血筋じゃないのよ!」
ミルトがヴェルディの背中をさすっている。
おそらくクラリスの魔力がヴェルディには合わないのだ。
「でも、やらないと助からない!」
ヴェルディが再びクラリスの手を取って、クラリスの魔力を取り込んで使おうとする。
「待って、ヴェルディ! 私に、医療魔法を私に見せて!」
「何を……」
「わかったわ!」
戸惑うヴェルディを押し除けて、ミルトがクラリスによく見えるようにジークベルトに医療魔法をかけていく。
クラリスがすかさずミルトの医療魔法を『解析』する。
クラリスとミルトが目を見合わせ、クラリスは大きくひとつうなずいた。
「できそう?」
「やってみる」
クラリスはいま『解析』した魔法を真似して医療魔法をジークベルトにかけていく。
失敗したらどうしようと手が震えるが、ミルトが手を重ねてすぐ横で指示してくれた。
「いいわ……そう……元の状態をイメージして……魔力を巡らせて……」
「うん」
ヴェルディは呆然としてクラリスとミルトを眺めていたが、すぐにミルトの肩に手をかける。
「おい! 医療魔法の素人に何をさせているんだ!」
「大丈夫よ。クラリスの固有魔法は『解析』なの。さっき確認したわ」
「……なんだって!」
ヴェルディはしばらくクラリスとジークベルトを交互に眺めたあと、すぐにクラリスの隣に座った。
「ミルト! 君の方が医療魔法が得意だからグロウス団長に医療魔法をかけ続けて。僕がクラリスの補助をする」
「わかったわ」
ミルトの代わりにヴェルディの手がクラリスの手に重ねられる。
クラリスの手もヴェルディの手もジークベルトの血で汚れている。
「ヴェルディ……」
「クラリス、集中しろ。ミルトの魔法を見て真似するんだ」
「うん」
「ここは僕たちがやる。みんなは他の怪我人を頼む」
ヴェルディはクラリスの不安定な魔力の流れを整えながら、魔法騎士たちに他の人を助けるように指示を出した。
クラリスとヴェルディとミルトの三人でジークベルトを治療していると、ジークベルトの見た目の傷はほぼ塞がったように見えた。
「あとはどれくらい血が流れたかと、どこまで元に戻るかだけど」
「ジーク……」
「もう少し医療魔法をかけたら王城に連れて行く」
「うん……」
「ミルトは王城に連絡して移動する準備をして。クラリスはギリギリまで医療魔法をかけ続けて」
「わかった。ヴェルディ、あとは頼むわね」
ミルトは立ち上がると、魔法騎士たちに指示を出してジークベルトを王城まで運ぶ手筈を整えていく。
ジークベルトはいまだ血の気のない真っ白な顔色をしたまま動かない。
このまま目を覚まさなかったらどうしようとクラリスの目から涙がこぼれ落ちる。
クラリスの涙がポタポタと落ちて、ジークベルトの顔を濡らしていった。
ピクリ、と手の先で何かが動いた気がした。
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