19 / 33
嘘か誠か
しおりを挟む
そこから先は、二人による激戦となった。刃を向けて斬り合い、ところどころで金属が触れあい、火花が散る。
ラムールはその光景を見て絶句した。しかし、すぐに正気を取り戻して、マシェリ―を縛っている縄を解き、そして早く逃げるように言う。
「早くここから離れてくれ。このままでは、いつ君が傷ついてしまうのか分からない」
「あ、貴方は…」
「僕は大丈夫さ! 君が逃げ切るまでの時間は稼いでみせるよ」
ラムールはいつもの笑顔を向けた。
服の袖から、赤黒く染みた包帯が覗く。
「本当に…? 貴方も逃げた方がいいわ。このままじゃ、貴方も死んでしまうかもしれない!」
「いいんだよ。…言っただろう? 僕はもう後悔したくないんだ。ほら、こっちに来て」
彼女はまだ何か言いたげだったが、ラムールはマシェリーの手を取って、屋敷の扉の前まで導いた。
「いいかい。屋敷のなかに入って真っすぐ歩いていけば、僕の仲間がいるはずだから。その人に事情を話して、隠し通路に案内してもらうんだ。そうすれば、狼にも出くわさずに逃げられるはずだからね」
そう言い聞かせ、まだ不安そうな表情でいる彼女の頭を撫でる。
「僕は大丈夫。ほら、行って。きっとすぐに僕も追いつくから」
扉を開けて、進むように促す。彼女は躊躇いながらも、その一歩を屋敷の中に踏み入れた。
しかし、一瞬、ゾワリという感覚が、彼女の胸をつかえさせる。
かすかな違和感とでも言おうか、嫌な予感とでも言おうか。だがそれは、何故かとても気になって仕方がなく、彼女は振り返らずにはいられなかった。
しかし。
「ラムール! その女をどうするつもりだ!」
その怒鳴り声が聞こえた途端に、バタン、と勢いよく扉が閉まった。
ラムールはその光景を見て絶句した。しかし、すぐに正気を取り戻して、マシェリ―を縛っている縄を解き、そして早く逃げるように言う。
「早くここから離れてくれ。このままでは、いつ君が傷ついてしまうのか分からない」
「あ、貴方は…」
「僕は大丈夫さ! 君が逃げ切るまでの時間は稼いでみせるよ」
ラムールはいつもの笑顔を向けた。
服の袖から、赤黒く染みた包帯が覗く。
「本当に…? 貴方も逃げた方がいいわ。このままじゃ、貴方も死んでしまうかもしれない!」
「いいんだよ。…言っただろう? 僕はもう後悔したくないんだ。ほら、こっちに来て」
彼女はまだ何か言いたげだったが、ラムールはマシェリーの手を取って、屋敷の扉の前まで導いた。
「いいかい。屋敷のなかに入って真っすぐ歩いていけば、僕の仲間がいるはずだから。その人に事情を話して、隠し通路に案内してもらうんだ。そうすれば、狼にも出くわさずに逃げられるはずだからね」
そう言い聞かせ、まだ不安そうな表情でいる彼女の頭を撫でる。
「僕は大丈夫。ほら、行って。きっとすぐに僕も追いつくから」
扉を開けて、進むように促す。彼女は躊躇いながらも、その一歩を屋敷の中に踏み入れた。
しかし、一瞬、ゾワリという感覚が、彼女の胸をつかえさせる。
かすかな違和感とでも言おうか、嫌な予感とでも言おうか。だがそれは、何故かとても気になって仕方がなく、彼女は振り返らずにはいられなかった。
しかし。
「ラムール! その女をどうするつもりだ!」
その怒鳴り声が聞こえた途端に、バタン、と勢いよく扉が閉まった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる