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第六条(下):――――己が信ずる信条と正義に従い、確実に遂行せよ。
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「さあ、始めましょぉっ!!」
走り出し、先に仕掛けたのはジェーン・ブラントの方だった。横に大きく、ハリーを中心とした円を描くように大回りで動きながらグロック18Cの二挺拳銃を、フルオートで容赦無くブッ放してくる。
「チッ!」
ハリーもまた逆方向に走りながら、M4カービンをセミオートでタンタンタン、とリズム良く撃ち放って応戦する。だがジェーンの動きが恐ろしく俊敏なせいで中々当たらず、上手くいって掠める程度のことしか出来ない。
一方、ハリーの方は苦戦を強いられていた。的確な未来位置の予測を加えた狙いで降り注ぐ9mmパラベラム弾の豪雨に、時に飛び、時に身を屈めて対応するしかない。逃げるのに精一杯で、中々撃っている暇が無いというのが現状だ。
「くっ……!」
肩口の近くを、一発の9mmパラベラム弾が掠めていく。ハリーは歯噛みしつつ一気に後方へと走り抜け、そして一気に後ろへ振り返る。横っ飛びに飛び退きながらM4カービンを構え、一気にブッ放した。
セミオートながらかなりの速度で連射された5.56mm弾が、ジェーンを屠らんと超音速で飛翔する。しかしジェーンの走る速度の方がハリーの未来予測よりも格段に速く、撃ち放たれた弾はジェーンに追いつけぬままで空を切った。
「きゃぁっ!?」
「むっ……!」
空振ったハリーの弾がリムジンの防弾装甲で跳ねると、その向こう側から和葉の短い悲鳴、そしてヴァレンタインの低く唸る声が聞こえてくる。ジェーン曰くかなり頑丈な装甲らしいから万が一にも貫通する心配はないのだが、それでもハリーは一瞬だけ青ざめてしまう。
「よそ見しないでよぉっ!!」
と、そんなハリーに出来た一瞬の隙を突き、一気にジェーンが距離を詰めて来た。ほんの一瞬だけハリーがリムジンの方に気を取られた隙を突き、弾切れの弾倉を棄てて三三連発の長い弾倉へと交換も終えている。
「ッ!?」
すぐに意識を向け直したハリーが咄嗟にフルオートでM4カービンを撃って迎撃するが、しかしジェーンの動きの方が断然に速い。しかも運が悪いことに、殆ど弾倉に弾を残していなかったM4カービンはすぐに弾を切らしてしまった。
「畜生ッ!!」
破れかぶれに弾切れのM4カービンを向かい来るジェーンに向かって投げつけながら、ハリーは踵を返して走り出しながら背中のSPAS-12自動ショットガンを手繰り寄せようとした。
「逃げるだなんて、許さないんだからぁっ!!」
しかし、ジェーンは飛んで来たM4カービンを軽々と避け。そして背を向けたハリーへと両手のグロック18Cを向けると――――そのまま、背中目掛けて思い切りフルオートで叩き込んだ。
「う、ぐ――――」
衝撃に身を捩り、前のめりに斃れるハリー。バタリ、と力《ちから》なく斃れるが、しかしジェーンは両手のグロックの引鉄を戻さず、弾倉を撃ち尽くすまでハリーの背中を9mmパラベラム弾で殴り続けた。
片側三三発、両手合わせて六六発の9mmパラベラム弾。その八割ほどが背中に命中したハリーが生きているとは、ジェーンは到底思えなかった。
「ハリー――――っ!!」
その光景を、ハリーが斃れる光景を目の当たりにしてしまった和葉が、悲痛な涙声で彼の名を叫ぶ。しかしハリーは起き上がることなく、ただそこに力《ちから》なく横たわっているだけだった。
「ふふっ……」
ほくそ笑みながら、空弾倉を足元に棄てるジェーンが彼の方へと近寄っていく。確かな勝利を確信した笑みだった。
「……俺を敵に回したのは――――」
「っ!?」
だが、ハリーは唐突に仰向けに起き上がると、SPAS-12自動ショットガンを腰溜めに構える。アレだけの弾数で殴られても、しかしハリー・ムラサメは未だ生きていて。そして、不敵な笑みを浮かべながらこう言ってみせた。
「――――デカいミスだぜ、マドモアゼル」
再装填を終えたジェーンがグロックの銃口を向けるが、しかしハリーが不敵な笑みを湛えながらSPAS-12をブッ放す方が圧倒的に速かった。
ズドン、と重苦しい撃発音が響く。自動で吐き出された12ゲージの空薬莢がコロンと地面に転がる頃、既にダブルオー・バックショット散弾はジェーンの身体をズタズタに切り裂いていて。散弾を至近距離で喰らった彼女の左腕が肩口から引きちぎられるように吹き飛べば、グロック18Cを持ったままなその腕がぐちゃっ、と嫌な生々しい音を立てて地面に落下する。
「あ、が、が――――!?」
声にならない悲鳴を上げながら、残った右手の中からグロック18Cを取り落としながら、ジェーンが後ろにたたらを踏む。そんな彼女の呆気ない様を眺めながらハリーが立ち上がると、彼の背中、羽織るスーツジャケットから潰れた弾頭がポロポロと幾つも落下する。
「痛ててて……。今回ばかりは、ミリィに感謝しないとな」
ハリーがアレだけの弾を背中に喰らって生きているのは、ひとえにスーツジャケットの内張りが特殊な防弾仕様だったからだ。ミリィ・レイスの用意したこのスーツがあったからこそ、ハリーは背中を挽き肉にされずに、こうして再び立ち上がることが出来ていた。
故に、ハリーはこの特殊防弾仕様のスーツを用意してくれた彼女に心の底からの感謝をしつつ――――再び、SPAS-12自動ショットガンを腰溜めに構える。
「チェック・メイトだ、ジェーン・ブラント」
既に死に体といった様子のジェーンを前にしても、しかしハリーは一切の容赦をせずにSPAS-12をブッ放した。
二発、三発と続けざまに撃ち放たれる12ゲージの散弾がジェーンの身体を引きちぎり、吹き飛ばす。この短い距離で鹿狩り用のドデカい散弾を喰らった肉体のダメージは悲惨を極め、手足は千切れ顔面は見るも無惨な様相へと変わり果てる。
そして、SPAS-12の弾が切れる頃には。ハリーが弾切れのSPASを投げ捨てる頃には、文字通りの挽き肉と化して地面に横たわるジェーン・ブラントは、見るも無惨な格好で既に事切れていた。
走り出し、先に仕掛けたのはジェーン・ブラントの方だった。横に大きく、ハリーを中心とした円を描くように大回りで動きながらグロック18Cの二挺拳銃を、フルオートで容赦無くブッ放してくる。
「チッ!」
ハリーもまた逆方向に走りながら、M4カービンをセミオートでタンタンタン、とリズム良く撃ち放って応戦する。だがジェーンの動きが恐ろしく俊敏なせいで中々当たらず、上手くいって掠める程度のことしか出来ない。
一方、ハリーの方は苦戦を強いられていた。的確な未来位置の予測を加えた狙いで降り注ぐ9mmパラベラム弾の豪雨に、時に飛び、時に身を屈めて対応するしかない。逃げるのに精一杯で、中々撃っている暇が無いというのが現状だ。
「くっ……!」
肩口の近くを、一発の9mmパラベラム弾が掠めていく。ハリーは歯噛みしつつ一気に後方へと走り抜け、そして一気に後ろへ振り返る。横っ飛びに飛び退きながらM4カービンを構え、一気にブッ放した。
セミオートながらかなりの速度で連射された5.56mm弾が、ジェーンを屠らんと超音速で飛翔する。しかしジェーンの走る速度の方がハリーの未来予測よりも格段に速く、撃ち放たれた弾はジェーンに追いつけぬままで空を切った。
「きゃぁっ!?」
「むっ……!」
空振ったハリーの弾がリムジンの防弾装甲で跳ねると、その向こう側から和葉の短い悲鳴、そしてヴァレンタインの低く唸る声が聞こえてくる。ジェーン曰くかなり頑丈な装甲らしいから万が一にも貫通する心配はないのだが、それでもハリーは一瞬だけ青ざめてしまう。
「よそ見しないでよぉっ!!」
と、そんなハリーに出来た一瞬の隙を突き、一気にジェーンが距離を詰めて来た。ほんの一瞬だけハリーがリムジンの方に気を取られた隙を突き、弾切れの弾倉を棄てて三三連発の長い弾倉へと交換も終えている。
「ッ!?」
すぐに意識を向け直したハリーが咄嗟にフルオートでM4カービンを撃って迎撃するが、しかしジェーンの動きの方が断然に速い。しかも運が悪いことに、殆ど弾倉に弾を残していなかったM4カービンはすぐに弾を切らしてしまった。
「畜生ッ!!」
破れかぶれに弾切れのM4カービンを向かい来るジェーンに向かって投げつけながら、ハリーは踵を返して走り出しながら背中のSPAS-12自動ショットガンを手繰り寄せようとした。
「逃げるだなんて、許さないんだからぁっ!!」
しかし、ジェーンは飛んで来たM4カービンを軽々と避け。そして背を向けたハリーへと両手のグロック18Cを向けると――――そのまま、背中目掛けて思い切りフルオートで叩き込んだ。
「う、ぐ――――」
衝撃に身を捩り、前のめりに斃れるハリー。バタリ、と力《ちから》なく斃れるが、しかしジェーンは両手のグロックの引鉄を戻さず、弾倉を撃ち尽くすまでハリーの背中を9mmパラベラム弾で殴り続けた。
片側三三発、両手合わせて六六発の9mmパラベラム弾。その八割ほどが背中に命中したハリーが生きているとは、ジェーンは到底思えなかった。
「ハリー――――っ!!」
その光景を、ハリーが斃れる光景を目の当たりにしてしまった和葉が、悲痛な涙声で彼の名を叫ぶ。しかしハリーは起き上がることなく、ただそこに力《ちから》なく横たわっているだけだった。
「ふふっ……」
ほくそ笑みながら、空弾倉を足元に棄てるジェーンが彼の方へと近寄っていく。確かな勝利を確信した笑みだった。
「……俺を敵に回したのは――――」
「っ!?」
だが、ハリーは唐突に仰向けに起き上がると、SPAS-12自動ショットガンを腰溜めに構える。アレだけの弾数で殴られても、しかしハリー・ムラサメは未だ生きていて。そして、不敵な笑みを浮かべながらこう言ってみせた。
「――――デカいミスだぜ、マドモアゼル」
再装填を終えたジェーンがグロックの銃口を向けるが、しかしハリーが不敵な笑みを湛えながらSPAS-12をブッ放す方が圧倒的に速かった。
ズドン、と重苦しい撃発音が響く。自動で吐き出された12ゲージの空薬莢がコロンと地面に転がる頃、既にダブルオー・バックショット散弾はジェーンの身体をズタズタに切り裂いていて。散弾を至近距離で喰らった彼女の左腕が肩口から引きちぎられるように吹き飛べば、グロック18Cを持ったままなその腕がぐちゃっ、と嫌な生々しい音を立てて地面に落下する。
「あ、が、が――――!?」
声にならない悲鳴を上げながら、残った右手の中からグロック18Cを取り落としながら、ジェーンが後ろにたたらを踏む。そんな彼女の呆気ない様を眺めながらハリーが立ち上がると、彼の背中、羽織るスーツジャケットから潰れた弾頭がポロポロと幾つも落下する。
「痛ててて……。今回ばかりは、ミリィに感謝しないとな」
ハリーがアレだけの弾を背中に喰らって生きているのは、ひとえにスーツジャケットの内張りが特殊な防弾仕様だったからだ。ミリィ・レイスの用意したこのスーツがあったからこそ、ハリーは背中を挽き肉にされずに、こうして再び立ち上がることが出来ていた。
故に、ハリーはこの特殊防弾仕様のスーツを用意してくれた彼女に心の底からの感謝をしつつ――――再び、SPAS-12自動ショットガンを腰溜めに構える。
「チェック・メイトだ、ジェーン・ブラント」
既に死に体といった様子のジェーンを前にしても、しかしハリーは一切の容赦をせずにSPAS-12をブッ放した。
二発、三発と続けざまに撃ち放たれる12ゲージの散弾がジェーンの身体を引きちぎり、吹き飛ばす。この短い距離で鹿狩り用のドデカい散弾を喰らった肉体のダメージは悲惨を極め、手足は千切れ顔面は見るも無惨な様相へと変わり果てる。
そして、SPAS-12の弾が切れる頃には。ハリーが弾切れのSPASを投げ捨てる頃には、文字通りの挽き肉と化して地面に横たわるジェーン・ブラントは、見るも無惨な格好で既に事切れていた。
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