SIX RULES

黒陽 光

文字の大きさ
91 / 108
第六条(下):――――己が信ずる信条と正義に従い、確実に遂行せよ。

/7

しおりを挟む
「――――弾着確認、標的の武器を破壊」
 そして、その管制塔の上。空港の広い敷地を一望するように高くそびえ立つタワー状の頭脳であるそこに、スカートスタイルのタイトなスーツを着る、凛とした知的な風貌の女――――鷹橋冴子が一挺の狙撃ライフルと共に伏せっていた。
「とりあえずは、これで一安心かしら」
 吹き込む激しい風にセミ・ロング丈の栗色の髪を靡かせながら、冴子がふぅ、と小さく息をつく。口元に加えるハイライト・メンソールの煙草から靡く副流煙が、吹き付ける風の中に霧散していく。
 下に敷いたスナイパーマットの上に伏せる冴子が二脚を立てて構えるのは、豊和M1500狙撃ライフルだった。ヘヴィーバレルのヴァーミンター(害獣駆除)仕様の太い肉厚な銃身で、強力な.300ウィンチェスター・マグナム弾を使う為に機関部もロング・アクション仕様だ。
「さて、と……」
 煙草を咥えた口でニッと小さく微笑みながら、冴子はM1500のボルトハンドルを引き空薬莢を排出すると、新しい.300ウィンチェスター・マグナム弾を一発だけ薬室に直接手で込める。そして銃床にそっと頬を付け直し、ナイトフォース社製の高精度狙撃スコープ越しに右眼で再びユーリ・ヴァレンタインの姿を見た。
「決着は、私が頂こうかしら」
 ある種妖艶にも見える笑みを浮かべつつ、冴子は伸ばしていた右の人差し指をM1500の引鉄へ再び沿わせた。マットの上へ並べた風向計や湿度計などの各種計測機器、弾のドロップ率を記録した早見表などを使い、頭の中で簡単に弾道計算をしてやる。急なことだったのでレンジカードは用意できなかったが、この程度の距離で必要は無いだろう。
「悪いわね、晴彦」
 呟きながら、冴子はM1500の引鉄を絞る。
「最後に良いトコだけ、私が全部持って行っちゃって」
 夜明け前のまどろむ空に、.300ウィンチェスター・マグナム弾の強烈な銃声が木霊した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...