98 / 108
エピローグ:六つのルール、それが男の信ずる正義。
/3
しおりを挟む
気怠い一日の課程が、今日も漸く幕を下ろし。そうすると和葉はさっさと教室を出て、昇降口で上履きから外履きのローファーへと履き替え。そして、茜色の短い髪を揺らす親友と共に、今日もまた帰り道を校門へと向けて歩き出す。
「いやー、今日も疲れましたなあ和葉さぁーん?」
ニヤニヤと肘で和葉のことを突っつきながらそう言うのは、茜色の髪を揺らす彼女、桐谷朱音だ。
「ホンット、疲れたわよ……。あの新任の数学、若いのは良いんだけどさ。ちょっと熱血過ぎて疲れるったらありゃしないわ」
「にゃははー、和葉みたいな斜めにスレた奴には、やっぱりああいうタイプは天敵かもねー」
「……ちょっと朱音ぇ、それってどういう意味よ」
「べっつにー? 言葉のままの意味ですけど、何かぁ?」
「あー、朱音酷すぎるでしょ今のは。制裁よ制裁、このぉっ!」
「あっ、ちょっ! 和葉ぁ!? ちょ、止めてって……あは、あはははっ! ははは!」
朱音の後ろから掴み掛かるようにして華奢な身体のあちこちをくすぐり始める和葉と、それに耐え切れず盛大に笑い始める朱音。そんな風にしながら校門に向かって歩く二人の周りには、しかし同じく帰り道を急ぐ生徒の数が極端に少なかった。
「……やっぱり、ちょっと寂しいよね」
と、そんなことに気付いてか、ボソリと朱音が俯き気味に呟いた。
「皆……死んじゃったから」
呟く朱音の横顔は、やはり何処か影を落としているように横目で見る和葉の眼には映っていた。学園の襲撃事件で、表向きにはテロ・グループの犯行として処理されたあの一件によって、学園の生徒はかなりの数が教師共々に命を落としている。この異様な生徒数の少なさは、そのせいだった。
「来年には、確か廃校になるんだっけ?」
「……そうね。私たちの卒業に合わせて、この学園も無くなるわ」
「そっかー……」
和葉が答えれば、朱音は何処か寂しそうに空を見上げる。歩きながら、いつも通り脳天気な笑顔で。しかし見上げる朱音の顔色は、何処か涙を堪えているようでもあった。
――――誰も彼もが、未だにあの事件の傷から癒えていない。
こんな朱音の顔を見ていると、和葉も胸にチクリとしたモノを覚えてしまう。あの事件の真相を朱音が知ったら、一体彼女は何て思うのか。そう思うと、和葉は彼女にどんな言葉を掛けて良いものか分からなくなっていた。
「…………」
この学園も、美代学園も、三月の卒業式と終業式を迎えると同時に、廃校を迎えることになる。あれだけの凄惨な事件があったのだから当然といえば当然で、こうして和葉たち三年生が卒業するまでは存続するという決断自体、半ば奇跡的なモノなのだ。
「ま、悔やんだところで仕方ないか」
何て言葉を掛けて良いか分からないままで和葉が頷いていると、にゃはは、なんて脳天気に笑いながら朱音がそう言い、「仕返しだーい!」なんて言いながら今度は和葉の背後を取り、くすぐり始めてくる。
「ちょっ、ちょっ!? やめてよ朱音、やめてって……くくくっ、あは、あははっ!!」
「ほれほれ、良いではないか、良いではないかーっ!」
「やめ……あははは! あはははっ!?!?」
「それそれそれー! 和葉は笑ってるときの方がきゃわいいぞー?」
「こういうので笑わせるのは、違……あ駄目、あはははっ!!」
とまあ、こんな具合の阿呆なやり取りに戻りながら、二人並んで校門の近くまで歩いて来る。
すると、校門の向こう側には和葉にとっても大分見慣れた、黒いWRX-STiが停まっているのが見えて。そしてソイツの黒いボディに寄りかかる格好で、同じく黒を基調としたアルマーニの高級イタリアン・スーツに身を包んだ男が、黙って腕組みをして誰かを待っている姿が二人の視界に飛び込んでくる。
「あれ、やっぱり和葉の彼氏さんなの?」
そんな彼の姿を――――五条晴彦、ハリー・ムラサメの姿を見て、思い切って疑問をぶつけるように隣の朱音が囁きかけてきた。
「うーん……」
すると、何故だか和葉は小さく悩む。以前までなら「違う」と刺々しい態度で即座に否定していたのに、今回に限ってはこの反応だ。
「おっ? おっおっ?」
和葉がこんな反応だからか、朱音も興味津々といった具合に和葉の顔の周りを右往左往する。
「……どっちかっていうと、今は相棒かな?」
しかし、和葉の答えはこんなもので。朱音が「なんだそれー!?」とズッ転けている隙に、和葉は校門前で待つハリーの元へそそくさと歩み寄っていってしまう。
「時間通りだな、和葉」目の前にやって来た和葉を軽く見下ろしながら、腕時計をチラリと見てハリーが言う。
「ハリー、貴方の方こそ」そんなハリーを軽く見上げながら、和葉もまたそう言葉を返した。
「当然だ、何せルール第一条――――」
「「時間厳守」」
敢えて和葉が言葉を被せると、二人は見合ったままニッと笑みを交わし合う。
「疲れたろ、乗ってくれ和葉」
「はいはい、ありがとありがと」
助手席側のドアを開けてやり、和葉をそこに乗せてやる。そのドアをバタン、と閉じるとハリーはすぐさま運転席側へと回ろうとしたが、後ろから飛んでくる「あ、あのっ!」という朱音の言葉に引っ張られてしまう。
「……あの、お兄さんって、やっぱりこの間の時に逢った」
すると、朱音はハリーのすぐ傍まで近寄ってきて、耳打ちするぐらいの小さな声音でそんなことを囁いてくる。
「あー……」
そんなことを言われてしまえば、ハリーは頭の後ろを掻きながら困った顔を浮かべるしかなかった。きっと、数ヶ月前の学園襲撃事件で和葉を救出しに学園へ潜り込んだ際、新校舎で出くわした時のことを彼女は言っているのだろう。
「出来れば、内緒にしてて貰えると有り難いんだが」
ダメ元でハリーが言ってみると、しかし朱音の回答は意外にも「分かってますって!」と快活な二つ返事で。にひひーなんて笑いながら、手でピースサインなんか作っている。
「あのことは誰にも、勿論警察にだって言ってませんから。だから、安心してください」
「悪い、助かるよ」
「その代わり、条件がひとつあります」
「条件?」
ハリーがきょとんとして訊き返すと、やはり朱音は太陽のような明るく快活な笑顔を浮かべて、
「和葉ちゃんを、この先もしっかり護ってあげてください」
そんな笑顔でそんなことを言われると、ハリーはフッと笑い返してみせ、
「ルール第二条、仕事は正確に、完璧に遂行せよ。
――――承った。任せろ、俺は自分のルールは守る男だ」
と、親指を立てサムズアップなんかしつつ、敢えてのキメ顔で朱音にそう言ってみせた。
「なら、安心しましたっ!」
そんな言葉と共に向けられた朱音の満面の笑みに見送られながら、今度こそハリーはWRXの運転席に乗り込んでいく。
「何話してたの?」
すると、窓越しに二人が会話する様子を見ていたらしい和葉が、不思議そうな顔で訊いてきた。ハリーが「トップシークレットだ」と冗談っぽく言い返してやれば、和葉はぶーっと膨れながら「えー、なにそれ。内緒話?」なんて風に文句を垂れる。
「ルール第五条、仕事対象に深入りはしない。守秘義務って奴だよ、和葉」
「ぶー、納得いかないなぁ」
そんな会話を交わしつつ、二人は揃ってシートベルトを着ける。カチャッとシート脇のバックルにベルトが差さる音が聞こえると、何だかそれだけで気分が切り替わるような気がする。
「それでハリー、今日の仕事は?」
「特にないが――――」
と、ハリーが言い掛けた途端、彼のスマートフォンが着信で震え出す。
「誰だ……?」
億劫そうに懐から取り出して見てみると、非通知設定の相手だった。何となく電話の内容が予想できながらも、ハリーはその電話に敢えて応答する。
『……仕事だ。ミズ・タカハシから紹介された』
すると、聞こえてくるのは低い男の声。手短に要件だけを伝えるような簡潔な口調は、間違いなく仕事の依頼とかその類だ。
「話を聞こう」
暫くその男の話を聞いた後、ハリーは「分かった」の一言だけを返して電話を切る。
「もしかして、新しい仕事?」
そんな彼の様子で概ね察しつつも、一応そうやって和葉が訊くと。するとハリーは「ああ」と頷き、
「悪い、今日の予定は変更になった。――――仕事だ、特急で運びの依頼がある」
「分かってるって」
シフトノブに触れる彼の手に自分の手を重ねながら、和葉が小さく微笑む。ルビーのように赤く輝く美しい瞳は、いつの間にか一抹の頼もしさすらも滲ませていた。
「じゃあハリー、行こっか」
「任せろ」
期待に応えるようなニッとした不敵な笑みを浮かべると共に、ギアが一速へと叩き込まれ。そして軽いホイール・スピンなんかカマしながら、強烈なボクサー・サウンドの重低音を奏でる漆黒のWRX-STiが猛然とした勢いで発進する。次なる依頼へと赴く為に、ハリー・ムラサメと園崎和葉の二人を乗せて――――。
「いやー、今日も疲れましたなあ和葉さぁーん?」
ニヤニヤと肘で和葉のことを突っつきながらそう言うのは、茜色の髪を揺らす彼女、桐谷朱音だ。
「ホンット、疲れたわよ……。あの新任の数学、若いのは良いんだけどさ。ちょっと熱血過ぎて疲れるったらありゃしないわ」
「にゃははー、和葉みたいな斜めにスレた奴には、やっぱりああいうタイプは天敵かもねー」
「……ちょっと朱音ぇ、それってどういう意味よ」
「べっつにー? 言葉のままの意味ですけど、何かぁ?」
「あー、朱音酷すぎるでしょ今のは。制裁よ制裁、このぉっ!」
「あっ、ちょっ! 和葉ぁ!? ちょ、止めてって……あは、あはははっ! ははは!」
朱音の後ろから掴み掛かるようにして華奢な身体のあちこちをくすぐり始める和葉と、それに耐え切れず盛大に笑い始める朱音。そんな風にしながら校門に向かって歩く二人の周りには、しかし同じく帰り道を急ぐ生徒の数が極端に少なかった。
「……やっぱり、ちょっと寂しいよね」
と、そんなことに気付いてか、ボソリと朱音が俯き気味に呟いた。
「皆……死んじゃったから」
呟く朱音の横顔は、やはり何処か影を落としているように横目で見る和葉の眼には映っていた。学園の襲撃事件で、表向きにはテロ・グループの犯行として処理されたあの一件によって、学園の生徒はかなりの数が教師共々に命を落としている。この異様な生徒数の少なさは、そのせいだった。
「来年には、確か廃校になるんだっけ?」
「……そうね。私たちの卒業に合わせて、この学園も無くなるわ」
「そっかー……」
和葉が答えれば、朱音は何処か寂しそうに空を見上げる。歩きながら、いつも通り脳天気な笑顔で。しかし見上げる朱音の顔色は、何処か涙を堪えているようでもあった。
――――誰も彼もが、未だにあの事件の傷から癒えていない。
こんな朱音の顔を見ていると、和葉も胸にチクリとしたモノを覚えてしまう。あの事件の真相を朱音が知ったら、一体彼女は何て思うのか。そう思うと、和葉は彼女にどんな言葉を掛けて良いものか分からなくなっていた。
「…………」
この学園も、美代学園も、三月の卒業式と終業式を迎えると同時に、廃校を迎えることになる。あれだけの凄惨な事件があったのだから当然といえば当然で、こうして和葉たち三年生が卒業するまでは存続するという決断自体、半ば奇跡的なモノなのだ。
「ま、悔やんだところで仕方ないか」
何て言葉を掛けて良いか分からないままで和葉が頷いていると、にゃはは、なんて脳天気に笑いながら朱音がそう言い、「仕返しだーい!」なんて言いながら今度は和葉の背後を取り、くすぐり始めてくる。
「ちょっ、ちょっ!? やめてよ朱音、やめてって……くくくっ、あは、あははっ!!」
「ほれほれ、良いではないか、良いではないかーっ!」
「やめ……あははは! あはははっ!?!?」
「それそれそれー! 和葉は笑ってるときの方がきゃわいいぞー?」
「こういうので笑わせるのは、違……あ駄目、あはははっ!!」
とまあ、こんな具合の阿呆なやり取りに戻りながら、二人並んで校門の近くまで歩いて来る。
すると、校門の向こう側には和葉にとっても大分見慣れた、黒いWRX-STiが停まっているのが見えて。そしてソイツの黒いボディに寄りかかる格好で、同じく黒を基調としたアルマーニの高級イタリアン・スーツに身を包んだ男が、黙って腕組みをして誰かを待っている姿が二人の視界に飛び込んでくる。
「あれ、やっぱり和葉の彼氏さんなの?」
そんな彼の姿を――――五条晴彦、ハリー・ムラサメの姿を見て、思い切って疑問をぶつけるように隣の朱音が囁きかけてきた。
「うーん……」
すると、何故だか和葉は小さく悩む。以前までなら「違う」と刺々しい態度で即座に否定していたのに、今回に限ってはこの反応だ。
「おっ? おっおっ?」
和葉がこんな反応だからか、朱音も興味津々といった具合に和葉の顔の周りを右往左往する。
「……どっちかっていうと、今は相棒かな?」
しかし、和葉の答えはこんなもので。朱音が「なんだそれー!?」とズッ転けている隙に、和葉は校門前で待つハリーの元へそそくさと歩み寄っていってしまう。
「時間通りだな、和葉」目の前にやって来た和葉を軽く見下ろしながら、腕時計をチラリと見てハリーが言う。
「ハリー、貴方の方こそ」そんなハリーを軽く見上げながら、和葉もまたそう言葉を返した。
「当然だ、何せルール第一条――――」
「「時間厳守」」
敢えて和葉が言葉を被せると、二人は見合ったままニッと笑みを交わし合う。
「疲れたろ、乗ってくれ和葉」
「はいはい、ありがとありがと」
助手席側のドアを開けてやり、和葉をそこに乗せてやる。そのドアをバタン、と閉じるとハリーはすぐさま運転席側へと回ろうとしたが、後ろから飛んでくる「あ、あのっ!」という朱音の言葉に引っ張られてしまう。
「……あの、お兄さんって、やっぱりこの間の時に逢った」
すると、朱音はハリーのすぐ傍まで近寄ってきて、耳打ちするぐらいの小さな声音でそんなことを囁いてくる。
「あー……」
そんなことを言われてしまえば、ハリーは頭の後ろを掻きながら困った顔を浮かべるしかなかった。きっと、数ヶ月前の学園襲撃事件で和葉を救出しに学園へ潜り込んだ際、新校舎で出くわした時のことを彼女は言っているのだろう。
「出来れば、内緒にしてて貰えると有り難いんだが」
ダメ元でハリーが言ってみると、しかし朱音の回答は意外にも「分かってますって!」と快活な二つ返事で。にひひーなんて笑いながら、手でピースサインなんか作っている。
「あのことは誰にも、勿論警察にだって言ってませんから。だから、安心してください」
「悪い、助かるよ」
「その代わり、条件がひとつあります」
「条件?」
ハリーがきょとんとして訊き返すと、やはり朱音は太陽のような明るく快活な笑顔を浮かべて、
「和葉ちゃんを、この先もしっかり護ってあげてください」
そんな笑顔でそんなことを言われると、ハリーはフッと笑い返してみせ、
「ルール第二条、仕事は正確に、完璧に遂行せよ。
――――承った。任せろ、俺は自分のルールは守る男だ」
と、親指を立てサムズアップなんかしつつ、敢えてのキメ顔で朱音にそう言ってみせた。
「なら、安心しましたっ!」
そんな言葉と共に向けられた朱音の満面の笑みに見送られながら、今度こそハリーはWRXの運転席に乗り込んでいく。
「何話してたの?」
すると、窓越しに二人が会話する様子を見ていたらしい和葉が、不思議そうな顔で訊いてきた。ハリーが「トップシークレットだ」と冗談っぽく言い返してやれば、和葉はぶーっと膨れながら「えー、なにそれ。内緒話?」なんて風に文句を垂れる。
「ルール第五条、仕事対象に深入りはしない。守秘義務って奴だよ、和葉」
「ぶー、納得いかないなぁ」
そんな会話を交わしつつ、二人は揃ってシートベルトを着ける。カチャッとシート脇のバックルにベルトが差さる音が聞こえると、何だかそれだけで気分が切り替わるような気がする。
「それでハリー、今日の仕事は?」
「特にないが――――」
と、ハリーが言い掛けた途端、彼のスマートフォンが着信で震え出す。
「誰だ……?」
億劫そうに懐から取り出して見てみると、非通知設定の相手だった。何となく電話の内容が予想できながらも、ハリーはその電話に敢えて応答する。
『……仕事だ。ミズ・タカハシから紹介された』
すると、聞こえてくるのは低い男の声。手短に要件だけを伝えるような簡潔な口調は、間違いなく仕事の依頼とかその類だ。
「話を聞こう」
暫くその男の話を聞いた後、ハリーは「分かった」の一言だけを返して電話を切る。
「もしかして、新しい仕事?」
そんな彼の様子で概ね察しつつも、一応そうやって和葉が訊くと。するとハリーは「ああ」と頷き、
「悪い、今日の予定は変更になった。――――仕事だ、特急で運びの依頼がある」
「分かってるって」
シフトノブに触れる彼の手に自分の手を重ねながら、和葉が小さく微笑む。ルビーのように赤く輝く美しい瞳は、いつの間にか一抹の頼もしさすらも滲ませていた。
「じゃあハリー、行こっか」
「任せろ」
期待に応えるようなニッとした不敵な笑みを浮かべると共に、ギアが一速へと叩き込まれ。そして軽いホイール・スピンなんかカマしながら、強烈なボクサー・サウンドの重低音を奏でる漆黒のWRX-STiが猛然とした勢いで発進する。次なる依頼へと赴く為に、ハリー・ムラサメと園崎和葉の二人を乗せて――――。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
明治かんなぎ少女の冥契 五百年の時を超えて、あなたに愛を
花籠しずく
キャラ文芸
――ですが、わたくしは生まれました。あなたに会うために。
月のものが来るようになってから、琥珀は不思議な夢を見る。誰かに探されている夢。きっと大切な人だったことは分かるのに、目が覚めると朧気で何も思い出せない。婚約者である志貴の言いなりの人形になる生活をし、生家とは会うと脅され、心が疲弊していたある日、家からひとり抜け出すと、妖魔のようなものに出会う。呪術師である志貴に、一時祓ってもらいはしたが、不思議と心が痛む。夢に美しい男が現れ、声に導かれるようにして、ある山のふもとの、廃れた神社の中に入ると、そこには苦しそうに蹲るあの妖魔がいた。琥珀はそれが夢に現れた、蘿月という男だと直感する。全身が黒い靄で包まれた彼の、靄を払う方法を、どうしてか琥珀は知っていた。口づけをし、息を吹き込むように、生きて、と願った。
帰ってすぐに志貴に殴られ、月のものがはじまっていたことが志貴にばれる。琥珀を穢そうとする志貴の様子に恐ろしさを覚えて、助けてと叫んだその瞬間、闇を裂くようにして、蘿月が現れた。
「琥珀は、俺が五百年待ち望んだ花嫁だ」
これは、時を超えて紡がれる愛の物語。そして虐げられた少女が、愛を知り、愛のために生きる自由を選ぶ物語。
※R-15っぽいゆるい性描写があります。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる