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第四章『ファースト・ブラッド/A-311小隊、やがて少年たちは戦火の中へ』
Int.41:村時雨、過ぎ往く雨に藍の少女と白狼は①
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そんなこんなで桂川駅を出た二人が向かったのは、まあお察しの通り京都駅だ。これだけ代わり映えしないといい加減芸が無いな、なんてことを一真は思ってしまうが、とはいえここがこの周辺の根幹なだけに、何処へ行くにもここを経由する必要があるというものなのだ。
だがまあ、瀬那の方はそんなこと大して気にしていないらしく、あちらこちらに目移りさせながら一真の真横を歩いている。顔付きこそ普段通りの凛とした堂々たるそれだが、しかし仕草はまるで子供のようで。そんな瀬那をチラチラと見ていると、一真も自然と表情を綻ばせてしまい。ともすれば、今まで考えていたようなそんな些事が、何だかどうでも良くなってきてしまう。
なんて具合に京都駅の構内を歩き回るだが、しかし別に今日はどこぞを観光しようという意図は毛頭なかった。
強いて言うなれば、散歩の類か。いつも通り完全無計画で、行く先も何ひとつ決めてはいない。誘った当初こそ一真は何処か適当に見繕おうと、白井辺りを無理矢理に協力させて良い具合の場所を適当にピックアップしていたのだが、それを瀬那が「構わぬ」なんて言ってくるものだから、結局こんな形になってしまった。
(ま、ある意味俺には、一番似合いなのかもしれないけどな)
駅の構内をぶらぶらと歩きながら、そんなことを胸の奥でひとりごちれば、一真は自然と表情を綻ばせてしまう。
無計画。こういう時は無計画ぐらいが、自分には丁度良いのかもしれない。風の向くまま、気の向くまま――――。下手に考えるよりも、そうやっている方が、最も自然体で居られるのかもしれない。いつしか一真は、そんなことを何の気無しに思っていた。
「なんだ一真、いやに嬉しそうではないか。何か、良いことでもあったか?」
すると、そんな一真の様子に気付いたのか、瀬那がこちらを向きながら、小さく微笑んでそんな風に呼びかけてくる。
それに一真は「そんなんじゃないさ」と言って、
「大したことじゃない。思い出し笑いみたいなもんさ」
なんて言えば、瀬那はまたフッと小さな笑みを浮かべ、「左様か」と頷いた。
「とはいえ、はてさてこれから何処へ行くべきなのかね……」
そんなことをひとりごちながら、一真はふとした折に立ち止まり。壁に埋め込まれてあった駅構内の案内地図のようなものを見上げた。
「飯にゃまだ早いしなあ。というかまだ昼じゃないし」
ぶつぶつと独り言を呟きつつ、案内板を見上げながら一真はうーん、と唸って深く思案を巡らせる。
「私は何処へ行こうが構わぬ。何処へ行くかは一真、其方に任せた」
そんな一真に、横に立ち同じように案内板の方に腕を組みながら見上げる瀬那が告げれば、一真は「へいへい、任せられました」とぶっきらぼうな言葉を返しつつ、まだ思案を巡らせる。
「うーむ……」
そうして、案内板と睨めっこをすること暫く。やっとこさ何かを決断した一真は「よし」と勝手に独りで頷けば、穴が空くほど見ていた案内板から漸く視線を外す。
「決まったか?」
「ああ」頷く一真。「とりあえず、ここら近辺から攻めるとしよう」
「何だかよく分からぬが、とにかく其方に任せる」
「ご期待に添えられるかは、微妙なところだがね」
「期待しておるぞ? 其方ならば、私一人を楽しませる程度、造作もなかろうて」
フッと軽く笑みを浮かべながら、冗談めかしたことを言う瀬那に、一真は「ははは……」と苦笑いしながら。そうしながら「ま、期待半分ってところだな」と言いつつ、そんな彼女の方に向き直った。
「んじゃま、行くか」
「うむ、エスコートは任せる」
「はいはい、任されて」
だがまあ、瀬那の方はそんなこと大して気にしていないらしく、あちらこちらに目移りさせながら一真の真横を歩いている。顔付きこそ普段通りの凛とした堂々たるそれだが、しかし仕草はまるで子供のようで。そんな瀬那をチラチラと見ていると、一真も自然と表情を綻ばせてしまい。ともすれば、今まで考えていたようなそんな些事が、何だかどうでも良くなってきてしまう。
なんて具合に京都駅の構内を歩き回るだが、しかし別に今日はどこぞを観光しようという意図は毛頭なかった。
強いて言うなれば、散歩の類か。いつも通り完全無計画で、行く先も何ひとつ決めてはいない。誘った当初こそ一真は何処か適当に見繕おうと、白井辺りを無理矢理に協力させて良い具合の場所を適当にピックアップしていたのだが、それを瀬那が「構わぬ」なんて言ってくるものだから、結局こんな形になってしまった。
(ま、ある意味俺には、一番似合いなのかもしれないけどな)
駅の構内をぶらぶらと歩きながら、そんなことを胸の奥でひとりごちれば、一真は自然と表情を綻ばせてしまう。
無計画。こういう時は無計画ぐらいが、自分には丁度良いのかもしれない。風の向くまま、気の向くまま――――。下手に考えるよりも、そうやっている方が、最も自然体で居られるのかもしれない。いつしか一真は、そんなことを何の気無しに思っていた。
「なんだ一真、いやに嬉しそうではないか。何か、良いことでもあったか?」
すると、そんな一真の様子に気付いたのか、瀬那がこちらを向きながら、小さく微笑んでそんな風に呼びかけてくる。
それに一真は「そんなんじゃないさ」と言って、
「大したことじゃない。思い出し笑いみたいなもんさ」
なんて言えば、瀬那はまたフッと小さな笑みを浮かべ、「左様か」と頷いた。
「とはいえ、はてさてこれから何処へ行くべきなのかね……」
そんなことをひとりごちながら、一真はふとした折に立ち止まり。壁に埋め込まれてあった駅構内の案内地図のようなものを見上げた。
「飯にゃまだ早いしなあ。というかまだ昼じゃないし」
ぶつぶつと独り言を呟きつつ、案内板を見上げながら一真はうーん、と唸って深く思案を巡らせる。
「私は何処へ行こうが構わぬ。何処へ行くかは一真、其方に任せた」
そんな一真に、横に立ち同じように案内板の方に腕を組みながら見上げる瀬那が告げれば、一真は「へいへい、任せられました」とぶっきらぼうな言葉を返しつつ、まだ思案を巡らせる。
「うーむ……」
そうして、案内板と睨めっこをすること暫く。やっとこさ何かを決断した一真は「よし」と勝手に独りで頷けば、穴が空くほど見ていた案内板から漸く視線を外す。
「決まったか?」
「ああ」頷く一真。「とりあえず、ここら近辺から攻めるとしよう」
「何だかよく分からぬが、とにかく其方に任せる」
「ご期待に添えられるかは、微妙なところだがね」
「期待しておるぞ? 其方ならば、私一人を楽しませる程度、造作もなかろうて」
フッと軽く笑みを浮かべながら、冗談めかしたことを言う瀬那に、一真は「ははは……」と苦笑いしながら。そうしながら「ま、期待半分ってところだな」と言いつつ、そんな彼女の方に向き直った。
「んじゃま、行くか」
「うむ、エスコートは任せる」
「はいはい、任されて」
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