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Sortie-01:黒翼の舞う空
第八章:日常と非日常と/04
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まあ、色々と衝撃を受けはしたが。要たちが翔一をこの格納庫に連れて来た理由は、どうやら翔一に≪グレイ・ゴースト≫の生みの親でもある椿姫と顔合わせをさせておきたかったということらしい。どちらかといえば、椿姫本人が翔一との面会を望んでいたそうだが。
とにもかくにも、そんな風なやり取りを経た後。今まさに目の前にある≪グレイ・ゴースト≫……赤い薔薇のパーソナル・エンブレムが施されたアリサ機を傍らに、この機体がどういうものかという話が、まさにこの黒翼の生みの親たる椿姫の口から翔一に語られ始めた。
「YSF‐2/A≪グレイ・ゴースト≫。私がブラックスワン計画の一環として作った、ESP専用の空間戦闘機だよ。まあ大雑把なところは多分翔ちゃんも知ってるだろうから、その辺りは省くねー」
と、傍にある≪グレイ・ゴースト≫の黒く冷たい肌を撫でつけながら、椿姫がそう言って話の口火を切る。
「原型の試作機はXSF‐2。作ったのは確か五年ぐらい前かな? テスト用に二機があったんだけれど、オホーツク事変の時に突貫工事で武装化して出撃しちゃって、一号機は撃墜されちゃったんだ」
「二号機は?」と翔一が首を傾げる。
「生きて帰ってきたよー。今はこのH‐Rアイランドに保管されてるけれどね。一応、今はアリサちゃんの予備機ってことになってるんだ。試作型のXナンバーも、先行量産型のYナンバーも、実を言うと中身はほぼ変わらないからね。勿体ないから使い回しだよ、にゃはは」
初の対レギオン戦を生き抜いた貴重な機体、ゴーストの試作二号機がこの島に保管されていて……しかも、アリサ用の予備機扱いになっている。
その事実は、翔一にとってある意味で意外だった。そういう試作機の類は大抵、研究用に保管されるか、或いは新装備のテストベッドに用いられるか。それとも用済みとみなし解体処分か……。何にせよ、そのまま継続して実戦投入という話はあまり聞かない。それだけに、彼は少し意外そうな顔を浮かべていたのだ。
そんな翔一の表情を見て、椿姫はニッと八重歯を見せて笑い。更に解説を続けて行く。
「で、このゴーストの前にはXSF‐1っていう試作機があったんだ。通称≪ブラック・マンタ≫。八〇年代の終わり頃からずーっと飛んでたらしいけれどね。これが酷いポンコツでさー。その頃のディーンドライヴってすっごく幼稚で非効率な作りだったし、それ以前に機体そのものの設計も酷くて酷くて。まるで小学生の作ったラジコン飛行機みたいな飛び方だったんだよ?」
「俺っちがさっき、椿姫ちゃんのこと救世主とか言ったのはさ、その辺のこともあんだよ。俺もマンタの仕様書は見たことあるけどよ、もうゴミも良いトコよアレ。鉄屑よ鉄屑。とてもとても実戦に耐えうるモンじゃねー。飛び級で大学卒業した椿姫ちゃんが統合軍に引き抜かれて、んでもってブラックスワン計画に関わって……マトモなディーンドライヴと空間戦闘機作ってくんなかったら、マジで五年前の時点で人類滅んでたぜ」
横からやれやれと肩を竦めつつ言う南に、椿姫は「んもー、だから南くんおだてすぎだってばー」と、小さな手で彼の背中をぱんぱんと叩きながら、何やら照れくさそうな素振りを見せる。
…………本人はこんな風だが、南の言うことはきっと正しいのだろう。
南は性格やレーアに対する立ち振る舞いこそあんな風だが、しかしメカニックとしての腕前が超一級なのは翔一も心得ている。
そんな彼をして、ゴミだとか鉄屑だとかボロクソに言わしめるのだから……その≪ブラック・マンタ≫とやらは、さぞお粗末な造りの空間戦闘機だったのだろう。いいや、戦闘機と呼んでいいのかも怪しかったに違いない。
椿姫が関わるまでの機体が、そんな酷い有様だったのだから。それこそ、椿姫が現れなければ本当に人類は……五年前、オホーツク海上空での初交戦の時点で既に滅んでいたのだろう。彼の語気から、その辺りは翔一にも大体察せられた。
「ああそうそう、マンタで思い出したんだけどさ。翔ちゃんってオカルト系の話って興味ある?」
「……? まあ、無くはないが」
「よくさー、そのテの雑誌とか番組とかで、アメリカ製のUFOとか騒がれてるのあるでしょー? たまに写真とか動画も撮られてる奴。大概がフェイクなんだけれど、でもたまに本物も混ざってるんだ、ああいうのって」
「ええと……つまり、話に出てる≪ブラック・マンタ≫ってのが、そのアメリカ製のUFOだってことか?」
戸惑いながらの翔一に、椿姫は「そうだよー」と、やはり八重歯を見せた可愛らしい笑顔で肯定してみせた。
「私のゴーストもそうなんだけれど、SFナンバーやGISナンバーの機体は、全部ネバダのグルーム・レイク基地……翔ちゃんにも分かる言い方をすれば、エリア51かな? とにかく、あそこで作ったモノなんだ。
そのエリア51内部で付けられたマンタの開発コードが、TR‐3A。あちこちで目撃されちゃってるアメリカ製のUFOって、実は全部これなんだよねー」
椿姫はそんな風に、本当に愛くるしい笑顔で当然のように言ってみせるが……しかし、翔一としてはどうにも頭の痛くなる話だった。
彼女の話が本当だとすれば、まさに『インディペンデンス・デイ』の世界だ。きっとエリア51の地下には秘密の研究施設が……椿姫の口振りを聞く限り、恐らく本当に存在するのだろう。尤も、そこで研究していたのは宇宙人のUFOなどではなく、今まさに目の前にあるような空間戦闘機なのだが。
そこで、八〇年代の末期から死に物狂いでUFOめいた戦闘機……噂の≪ブラック・マンタ≫が作られていた。
でもそれは鉄屑も同然な酷い代物で、とても実際にレギオンと戦えるような代物ではなく。そんな絶望的な状況だったところに椿姫が現れ、低すぎた人類の技術水準を、彼女がたった一人でレギオンと対等に戦えるところまで押し上げた……。
今までの話を総合すれば、そんなところだろう。
確かに南が口走った通り、立神椿姫は本当に人類にとっての救世主そのものだ。同時に、彼女の頭脳が人並み外れた……なんて喩えも失礼になってしまうぐらいの優れたモノであることも、翔一は漸く実感を以て認識する。
尤も……本人の見た目や立ち振る舞いがこんな風だから、やっぱりそうは思えないのだが。
「んでもって、マンタがあーんまりにも酷すぎたから、私が苦心してゴーストとか作ったワケなんだけど。なーんか今はそのマンタ……私のゴーストの技術使って改良したらしいんだよねー。
確か……ああそうだ、思い出した。XSF‐4/TR3B≪ブラック・マンタⅡ≫とかなんとかいう名前だったかな。≪オーロラ≫って別名もあるらしいけれどね。私の記憶が正しければ、今はイカルガ少佐がテストパイロットだったかな?」
そんな風にぶつぶつと呟く椿姫に、要が横から「そうだな」と頷き、今まさに彼女の頭に過ぎっていた疑問を肯定してやる。とすれば椿姫は「だよねー」と笑み、また八重歯を見せてにひひっと可愛らしい表情を浮かべた。
「…………」
椿姫と要がそんなやり取りをしている傍らで、アリサが――今まさに椿姫が放った「イカルガ少佐」という名を聞いた瞬間、少しだけ苦い顔をしたのを翔一は横目に見ていたが。しかし訊くなと暗黙の内に告げるような彼女の苦い表情を見て、翔一は彼女に対し何も言わず。椿姫が続ける言葉に、ただ黙って耳を傾けていた。
「とにもかくにも、そんな風な歴史があるんだよ。私の最高傑作……≪グレイ・ゴースト≫にはね」
「なるほど……」
「んじゃま、後は実際色々見て貰った方が早いかもねー。確か翔ちゃん、まだゴーストに乗ったことは無いんだっけ?」
翔一が「ああ」と頷くと、椿姫はにししっと微笑み。とすれば「だったら、これ使って色々教えてあげよっかな。折角だしねー」と、ラダー(はしご)の掛かったゴーストのコクピットの方に翔一を手招きしてくる。
「アリサちゃん、別に使っちゃっても良いよね?」
そうして彼を手招きしながら、今度はアリサの方に視線を流し。一応この機体のパイロットである彼女に対し、椿姫がそう問いかける。
するとアリサはそれに「別に構わないわよ。後ろに乗せて飛べって言われてるワケでもなし、それぐらいなら」と椿姫に頷き返した。
「おけおけ。んじゃあ翔ちゃん、こっちこっち」
とにもかくにも、そんな風なやり取りを経た後。今まさに目の前にある≪グレイ・ゴースト≫……赤い薔薇のパーソナル・エンブレムが施されたアリサ機を傍らに、この機体がどういうものかという話が、まさにこの黒翼の生みの親たる椿姫の口から翔一に語られ始めた。
「YSF‐2/A≪グレイ・ゴースト≫。私がブラックスワン計画の一環として作った、ESP専用の空間戦闘機だよ。まあ大雑把なところは多分翔ちゃんも知ってるだろうから、その辺りは省くねー」
と、傍にある≪グレイ・ゴースト≫の黒く冷たい肌を撫でつけながら、椿姫がそう言って話の口火を切る。
「原型の試作機はXSF‐2。作ったのは確か五年ぐらい前かな? テスト用に二機があったんだけれど、オホーツク事変の時に突貫工事で武装化して出撃しちゃって、一号機は撃墜されちゃったんだ」
「二号機は?」と翔一が首を傾げる。
「生きて帰ってきたよー。今はこのH‐Rアイランドに保管されてるけれどね。一応、今はアリサちゃんの予備機ってことになってるんだ。試作型のXナンバーも、先行量産型のYナンバーも、実を言うと中身はほぼ変わらないからね。勿体ないから使い回しだよ、にゃはは」
初の対レギオン戦を生き抜いた貴重な機体、ゴーストの試作二号機がこの島に保管されていて……しかも、アリサ用の予備機扱いになっている。
その事実は、翔一にとってある意味で意外だった。そういう試作機の類は大抵、研究用に保管されるか、或いは新装備のテストベッドに用いられるか。それとも用済みとみなし解体処分か……。何にせよ、そのまま継続して実戦投入という話はあまり聞かない。それだけに、彼は少し意外そうな顔を浮かべていたのだ。
そんな翔一の表情を見て、椿姫はニッと八重歯を見せて笑い。更に解説を続けて行く。
「で、このゴーストの前にはXSF‐1っていう試作機があったんだ。通称≪ブラック・マンタ≫。八〇年代の終わり頃からずーっと飛んでたらしいけれどね。これが酷いポンコツでさー。その頃のディーンドライヴってすっごく幼稚で非効率な作りだったし、それ以前に機体そのものの設計も酷くて酷くて。まるで小学生の作ったラジコン飛行機みたいな飛び方だったんだよ?」
「俺っちがさっき、椿姫ちゃんのこと救世主とか言ったのはさ、その辺のこともあんだよ。俺もマンタの仕様書は見たことあるけどよ、もうゴミも良いトコよアレ。鉄屑よ鉄屑。とてもとても実戦に耐えうるモンじゃねー。飛び級で大学卒業した椿姫ちゃんが統合軍に引き抜かれて、んでもってブラックスワン計画に関わって……マトモなディーンドライヴと空間戦闘機作ってくんなかったら、マジで五年前の時点で人類滅んでたぜ」
横からやれやれと肩を竦めつつ言う南に、椿姫は「んもー、だから南くんおだてすぎだってばー」と、小さな手で彼の背中をぱんぱんと叩きながら、何やら照れくさそうな素振りを見せる。
…………本人はこんな風だが、南の言うことはきっと正しいのだろう。
南は性格やレーアに対する立ち振る舞いこそあんな風だが、しかしメカニックとしての腕前が超一級なのは翔一も心得ている。
そんな彼をして、ゴミだとか鉄屑だとかボロクソに言わしめるのだから……その≪ブラック・マンタ≫とやらは、さぞお粗末な造りの空間戦闘機だったのだろう。いいや、戦闘機と呼んでいいのかも怪しかったに違いない。
椿姫が関わるまでの機体が、そんな酷い有様だったのだから。それこそ、椿姫が現れなければ本当に人類は……五年前、オホーツク海上空での初交戦の時点で既に滅んでいたのだろう。彼の語気から、その辺りは翔一にも大体察せられた。
「ああそうそう、マンタで思い出したんだけどさ。翔ちゃんってオカルト系の話って興味ある?」
「……? まあ、無くはないが」
「よくさー、そのテの雑誌とか番組とかで、アメリカ製のUFOとか騒がれてるのあるでしょー? たまに写真とか動画も撮られてる奴。大概がフェイクなんだけれど、でもたまに本物も混ざってるんだ、ああいうのって」
「ええと……つまり、話に出てる≪ブラック・マンタ≫ってのが、そのアメリカ製のUFOだってことか?」
戸惑いながらの翔一に、椿姫は「そうだよー」と、やはり八重歯を見せた可愛らしい笑顔で肯定してみせた。
「私のゴーストもそうなんだけれど、SFナンバーやGISナンバーの機体は、全部ネバダのグルーム・レイク基地……翔ちゃんにも分かる言い方をすれば、エリア51かな? とにかく、あそこで作ったモノなんだ。
そのエリア51内部で付けられたマンタの開発コードが、TR‐3A。あちこちで目撃されちゃってるアメリカ製のUFOって、実は全部これなんだよねー」
椿姫はそんな風に、本当に愛くるしい笑顔で当然のように言ってみせるが……しかし、翔一としてはどうにも頭の痛くなる話だった。
彼女の話が本当だとすれば、まさに『インディペンデンス・デイ』の世界だ。きっとエリア51の地下には秘密の研究施設が……椿姫の口振りを聞く限り、恐らく本当に存在するのだろう。尤も、そこで研究していたのは宇宙人のUFOなどではなく、今まさに目の前にあるような空間戦闘機なのだが。
そこで、八〇年代の末期から死に物狂いでUFOめいた戦闘機……噂の≪ブラック・マンタ≫が作られていた。
でもそれは鉄屑も同然な酷い代物で、とても実際にレギオンと戦えるような代物ではなく。そんな絶望的な状況だったところに椿姫が現れ、低すぎた人類の技術水準を、彼女がたった一人でレギオンと対等に戦えるところまで押し上げた……。
今までの話を総合すれば、そんなところだろう。
確かに南が口走った通り、立神椿姫は本当に人類にとっての救世主そのものだ。同時に、彼女の頭脳が人並み外れた……なんて喩えも失礼になってしまうぐらいの優れたモノであることも、翔一は漸く実感を以て認識する。
尤も……本人の見た目や立ち振る舞いがこんな風だから、やっぱりそうは思えないのだが。
「んでもって、マンタがあーんまりにも酷すぎたから、私が苦心してゴーストとか作ったワケなんだけど。なーんか今はそのマンタ……私のゴーストの技術使って改良したらしいんだよねー。
確か……ああそうだ、思い出した。XSF‐4/TR3B≪ブラック・マンタⅡ≫とかなんとかいう名前だったかな。≪オーロラ≫って別名もあるらしいけれどね。私の記憶が正しければ、今はイカルガ少佐がテストパイロットだったかな?」
そんな風にぶつぶつと呟く椿姫に、要が横から「そうだな」と頷き、今まさに彼女の頭に過ぎっていた疑問を肯定してやる。とすれば椿姫は「だよねー」と笑み、また八重歯を見せてにひひっと可愛らしい表情を浮かべた。
「…………」
椿姫と要がそんなやり取りをしている傍らで、アリサが――今まさに椿姫が放った「イカルガ少佐」という名を聞いた瞬間、少しだけ苦い顔をしたのを翔一は横目に見ていたが。しかし訊くなと暗黙の内に告げるような彼女の苦い表情を見て、翔一は彼女に対し何も言わず。椿姫が続ける言葉に、ただ黙って耳を傾けていた。
「とにもかくにも、そんな風な歴史があるんだよ。私の最高傑作……≪グレイ・ゴースト≫にはね」
「なるほど……」
「んじゃま、後は実際色々見て貰った方が早いかもねー。確か翔ちゃん、まだゴーストに乗ったことは無いんだっけ?」
翔一が「ああ」と頷くと、椿姫はにししっと微笑み。とすれば「だったら、これ使って色々教えてあげよっかな。折角だしねー」と、ラダー(はしご)の掛かったゴーストのコクピットの方に翔一を手招きしてくる。
「アリサちゃん、別に使っちゃっても良いよね?」
そうして彼を手招きしながら、今度はアリサの方に視線を流し。一応この機体のパイロットである彼女に対し、椿姫がそう問いかける。
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そのために、仮訳という副題を添えての発表もありました。
なお、原文を解読して漢字仮名交じり文に書き直されたものは、特に「ひふみ神示」または「一二三神示」と呼ばれています。
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