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Sortie-01:黒翼の舞う空
第十四章:レッド・アラート/05
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――――高度十数万フィート、成層圏上部。普通のジェット機じゃあとても到達できないような高高度を、編隊を組んで飛ぶ十数機の機影があった。
その殆どは、GIS‐12E≪ミーティア≫だ。いずれも隼を模ったエンブレムを垂直尾翼に刻む、第308空間飛行隊『ファルコンクロウ』所属の空間戦闘機に他ならない。基本的には全て灰色の制空迷彩で機体が塗り固められていたが……先頭の二機だけは、他とは異なる意匠の塗装だった。
まず、先頭を飛ぶ隊長機だ。制空迷彩であることには変わりないが、しかし機体に黄色と黒のツートンカラーの特徴的なラインが走っている。遠目から見ても、この機体が隊長機であることは一目で分かるだろう。それぐらいの目立つ追加塗装が施されていた。
加えて、その斜め後方を飛ぶ……こちらは副隊長機だ。その機体に関しても基本は灰色の制空迷彩で、目立つ隊長機と違い見た目は他の連中とほぼ変わらなかったが。しかし機首の部分にシャークティース――――鮫の眼と口、ギザギザの牙を模った意匠があしらわれていた。いわゆるノーズアートという奴で、凶暴な鮫を模ったそれは……如何にも凶悪そうだ。向かい来る敵を全て喰い殺してしまいそうな、そんな凄みを感じられる。
その隊長機と副隊長機は、いずれもファルコンクロウ隊の二人、榎本朔也大尉と生駒燎大尉の機体だった。その後ろに続くのはソニア・フェリーチェ中尉以下、他のクロウ隊の面々だ。
『――――スクランブル、ご苦労だった。飛びながらで悪いが、状況を説明させて貰う』
高度十数万フィートの超高空を飛ぶ、そんなクロウ隊の面々へと、蓬莱島からの通信が飛んでくる。まず初めに聞こえたのは基地司令・要隆一郎のそんな声だ。
『開いたのは小規模の超空間ゲート、正確な敵の数は不明だが、そこまで大規模というワケでもない。だがゲートの開いた高度が低いせいで、他の基地からのS/Cは間に合わん。実質、君らだけで食い止めて貰うことになる』
『…………司令。ここから先は、私が』
と、次に割り込んでくる声は蓬莱島の戦術オペレータ、レーア・エーデルシュタイン少尉の無機質にして抑揚のない、無感情に聞こえる冷静な声だ。
『既に≪プロメテウス≫も上がっています。コールサインはいつものように『コスモアイ』。今回も例によって、コスモアイの収集したデータを元に、私が皆さんの戦闘行動を支援します』
≪プロメテウス≫――――。
正確に言えば、QES‐767≪プロメテウス≫。巨大なレーダーを積んで空を飛ぶ、いわゆる早期警戒機……AWACSという奴だ。型式番号からも分かる通り、機体そのものは既存のAWACS、ボーイングE‐767を転用している。表世界では空自が所有している四機しか存在しない激レアな機体だが……この≪プロメテウス≫はその生産ラインを流用した機体で、見た目の上ではE‐767とほぼ変わらない。
違う点といえば、これが完全な無人機で。後は二発のエンジンが既存のターボファンから、宇宙空間でも使えるプラズマジェットエンジンへと置き換えられていることぐらいか。当然、空間戦闘機と同じように重力制御装置のディーンドライヴも、大型モデルが二基搭載されている。
とはいえ、見た目の上での相違点はほぼない。違いはコクピットなどの窓が全て塞がれていることと、後は空自のE‐767と異なり、塗装がダークグレーを基調としたものになっているぐらいか。それ以外の見た目……普通の旅客機、ボーイング767が背中に大きな円形のレーダー・レドームを積んでいるという部分は、原型機と全く違いはない。
どうやらレーアは、いつものようにこの≪プロメテウス≫のレーダーや各種センサー類が収集した情報を元に、皆の戦闘を支援してくれるそうだ。機体そのものはクロウ隊の編隊からかなり離れた位置に陣取っているから、彼らは≪プロメテウス≫の機影を目視で確認することは出来ないが。しかしAWACSが上がっているというだけでも、十分にありがたい話だ。それに戦術オペレート担当がレーアなら、余計に安心出来る。彼女は語気こそ塩っ気が激しいというか、無機質だが。しかしオペレータとしては超優秀なのだ。
『比較的低高度での出現ということもあり、先に司令が仰られた通りに、他の基地からのスクランブルは間に合いません。また、当基地の他の飛行隊も同様です。アラート待機に当たっていたクロウ隊、及び追って出撃されたメイヤード少尉のみで、全ての敵機を迎撃して頂くことになります。……普段よりも少しばかり困難な状況ではありますが、しかし不可能ではありません』
と言ってから、レーアは一瞬の間を置き。いつも通りに抑揚のない無感情な声で、簡易的なブリーフィングを簡潔に続ける。
『作戦目標は単純明快です。出現が確認されたレギオン集団を迎撃、全機撃破してください。……以上です。幸運が皆さんの空にあらんことを』
最後に、とても本心から言っているとは思えないような言葉を、やはり無感情な声で付け加えて。レーアはそれだけで簡易的なブリーフィングを終えた。
いつも通りだ。レーアが無感情で無機質な振る舞いをすることは、今に始まったことではない。寧ろ蓬莱島……H‐Rアイランドの半ば名物みたいなものだ。だから、そんな風な締め括り方をレーアがしたとしても、誰一人として気にする者は居なかった。
『クロウ・リーダーより各機。お達しの通り、今回はそれなりに低い高度での戦闘になる。……といっても、常識的に考えたら凄まじい高高度には違いないが。どちらにせよ、一匹たりとて撃ち漏らすワケにはいかない。各機、その点に留意して迎撃に当たれ』
そうしたレーアからの状況説明が終わった直後、今度はクロウ隊の隊長……榎本が皆に呼び掛ける。
『クロウ2、りょーかい。隊長閣下の尻は俺が預かるよ』
とすれば、真面目で何処か固い調子な榎本の言葉に対し、生駒がおちゃらけた感じの言葉で返す。堅物そうな榎本に、見るからにチャラ男そうな生駒。二人とも、見た目通りの語気でのやり取りだ。
『茶化すな、燎』
『茶化さなきゃやってらんねーよ、こんな明け方のインターセプトなんてよ』
『……文句なら、帰って要司令に言うことね』
眠い明け方のスクランブル出撃にブツブツと文句を垂れる生駒。そんな彼に、氷のように冷え切った声でボソリと呟くのは……やはり、ソニアだ。
レーアの無機質で無感情な、抑揚のまるでない声とはまた別の……こちらは声だけでヒトを殺せてしまいそうな、それぐらいに冷え切って尖りきった声音だ。初対面の相手なら萎縮してしまいそうなソニアの語気に、しかし同じ飛行隊だけあって完全に慣れている生駒はいつも通りのノリで、茶化した風な言葉を彼女に返す。
『うわー、相変わらずソニアちゃんは手厳しいなあ』
『……クロウ6よりクロウ・リーダーへ。クロウ2の撃墜許可を求むわ』
『おいおいおいおいおい、冗談にしちゃあ洒落になってねえってソニアちゃん』
『背中から撃たれたくなかったら、無駄口は慎むことよ。……燎、貴方はその軽薄さを直した方がいい』
『へいへい……善処しますよ』
『フッ……燎、ソニアに一本取られたな』
流石に洒落になっていないソニアの言葉に、割と真面目に慌てた後。続くソニアからの皮肉めいた言葉に生駒がやれやれと肩を竦めていると、二人のやり取りを聞いていた榎本が少しだけおかしそうに、小さく笑みを浮かべる。
そんなやり取りを交わしていたファルコンクロウ隊の編隊へと、≪ミーティア≫とはまるで違う機影が一機、合流してきた。
スッと滑らかに編隊へと合流し、ソニア機の真横に並ぶかのような位置に付いたその機体は……YSF‐2/A≪グレイ・ゴースト≫。大柄な漆黒の翼は、まさしくアリサの駆る機体だった。
編隊に合流してきたアリサに対し、一番最初に、皮肉げな言葉を投げ掛けたのは……案の定というべきか、ソニアだった。
『クロウ6よりイーグレット1。……精々、私たちの足を引っ張らないように頼むわ』
「イーグレット1、それはこっちの台詞よ。背中を取られないように気を付けることね。どうやら連中には、貴女のお尻がひどく魅力的に見えているようだから」
『例えESPだからって、必ず生き残れるとは限らない。……貴女が驕るのは勝手。でも私たちの足まで引っ張って貰っては困るわ』
「誰も驕ってなんかないわよ。アンタこそ、アタシたちESPをやたらと目の敵にする、その悪い癖。いい加減に直した方が身の為よ?」
『そっくりそのまま、言葉を返させて貰うわ』
『ソニア、それにメイヤード少尉も。その辺にしておけ、もうすぐ敵と接触する』
このままだと永遠に皮肉の応酬を続けそうな二人だったが、榎本に注意されてやっとこさ二人の皮肉交じりな応酬が止まる。アリサもソニアも、互いに不満げな様子だったが……流石に任務に持ち込むようなことはしないだろう。幾ら反目し合っているといっても、その辺りはちゃんと弁えている二人だ。
ふん、と互いに鼻を鳴らし合うそんな二人に、榎本がやれやれと呆れた様子で独り肩を竦めていると。すると、そのタイミングでレーアからの淡々とした報告が飛んでくる。
『各機、接敵までおよそ一二〇秒。……武器の使用を許可します』
『了解。クロウ・リーダーよりクロウ各機、マスターアーム・オン』
「…………イーグレット1、マスターアーム・オン」
レーアの指示に従い、クロウ隊とアリサが一斉に機体兵装の安全装置……マスターアーム・スウィッチを、安全位置の「SAFE」から解除状態の「ARM」へと弾く。
瞬間、皆の心がスッと引き締まる。マスターアームをオンにした瞬間から……もう、戦いは始まっているのだ。このトグル・スウィッチを弾いた先、一瞬たりとも油断は出来ない。隙を見せれば、それは即刻自らの死に直結しかねないのだから。
やがて、AWACSだけではない。実際に交戦するクロウ隊やアリサ機のレーダーも、敵影を捉え始める。
――――レーダー・コンタクト。
『レーダー・コンタクト。……クロウ1、交戦』
『クロウ2、交戦!』
『……クロウ6、交戦』
「イーグレット1、交戦……!!」
そして、アリサたちは剣を交える。異星起源の異形の敵性体、夜明けを前にして唐突に現れたレギオンの群れと。
――――ファルコンクロウ隊、イーグレット1、交戦開始。
夜明け前の空に、熾烈な迎撃戦の火蓋が人知れず切って落とされた。
(第十四章『レッド・アラート』了)
その殆どは、GIS‐12E≪ミーティア≫だ。いずれも隼を模ったエンブレムを垂直尾翼に刻む、第308空間飛行隊『ファルコンクロウ』所属の空間戦闘機に他ならない。基本的には全て灰色の制空迷彩で機体が塗り固められていたが……先頭の二機だけは、他とは異なる意匠の塗装だった。
まず、先頭を飛ぶ隊長機だ。制空迷彩であることには変わりないが、しかし機体に黄色と黒のツートンカラーの特徴的なラインが走っている。遠目から見ても、この機体が隊長機であることは一目で分かるだろう。それぐらいの目立つ追加塗装が施されていた。
加えて、その斜め後方を飛ぶ……こちらは副隊長機だ。その機体に関しても基本は灰色の制空迷彩で、目立つ隊長機と違い見た目は他の連中とほぼ変わらなかったが。しかし機首の部分にシャークティース――――鮫の眼と口、ギザギザの牙を模った意匠があしらわれていた。いわゆるノーズアートという奴で、凶暴な鮫を模ったそれは……如何にも凶悪そうだ。向かい来る敵を全て喰い殺してしまいそうな、そんな凄みを感じられる。
その隊長機と副隊長機は、いずれもファルコンクロウ隊の二人、榎本朔也大尉と生駒燎大尉の機体だった。その後ろに続くのはソニア・フェリーチェ中尉以下、他のクロウ隊の面々だ。
『――――スクランブル、ご苦労だった。飛びながらで悪いが、状況を説明させて貰う』
高度十数万フィートの超高空を飛ぶ、そんなクロウ隊の面々へと、蓬莱島からの通信が飛んでくる。まず初めに聞こえたのは基地司令・要隆一郎のそんな声だ。
『開いたのは小規模の超空間ゲート、正確な敵の数は不明だが、そこまで大規模というワケでもない。だがゲートの開いた高度が低いせいで、他の基地からのS/Cは間に合わん。実質、君らだけで食い止めて貰うことになる』
『…………司令。ここから先は、私が』
と、次に割り込んでくる声は蓬莱島の戦術オペレータ、レーア・エーデルシュタイン少尉の無機質にして抑揚のない、無感情に聞こえる冷静な声だ。
『既に≪プロメテウス≫も上がっています。コールサインはいつものように『コスモアイ』。今回も例によって、コスモアイの収集したデータを元に、私が皆さんの戦闘行動を支援します』
≪プロメテウス≫――――。
正確に言えば、QES‐767≪プロメテウス≫。巨大なレーダーを積んで空を飛ぶ、いわゆる早期警戒機……AWACSという奴だ。型式番号からも分かる通り、機体そのものは既存のAWACS、ボーイングE‐767を転用している。表世界では空自が所有している四機しか存在しない激レアな機体だが……この≪プロメテウス≫はその生産ラインを流用した機体で、見た目の上ではE‐767とほぼ変わらない。
違う点といえば、これが完全な無人機で。後は二発のエンジンが既存のターボファンから、宇宙空間でも使えるプラズマジェットエンジンへと置き換えられていることぐらいか。当然、空間戦闘機と同じように重力制御装置のディーンドライヴも、大型モデルが二基搭載されている。
とはいえ、見た目の上での相違点はほぼない。違いはコクピットなどの窓が全て塞がれていることと、後は空自のE‐767と異なり、塗装がダークグレーを基調としたものになっているぐらいか。それ以外の見た目……普通の旅客機、ボーイング767が背中に大きな円形のレーダー・レドームを積んでいるという部分は、原型機と全く違いはない。
どうやらレーアは、いつものようにこの≪プロメテウス≫のレーダーや各種センサー類が収集した情報を元に、皆の戦闘を支援してくれるそうだ。機体そのものはクロウ隊の編隊からかなり離れた位置に陣取っているから、彼らは≪プロメテウス≫の機影を目視で確認することは出来ないが。しかしAWACSが上がっているというだけでも、十分にありがたい話だ。それに戦術オペレート担当がレーアなら、余計に安心出来る。彼女は語気こそ塩っ気が激しいというか、無機質だが。しかしオペレータとしては超優秀なのだ。
『比較的低高度での出現ということもあり、先に司令が仰られた通りに、他の基地からのスクランブルは間に合いません。また、当基地の他の飛行隊も同様です。アラート待機に当たっていたクロウ隊、及び追って出撃されたメイヤード少尉のみで、全ての敵機を迎撃して頂くことになります。……普段よりも少しばかり困難な状況ではありますが、しかし不可能ではありません』
と言ってから、レーアは一瞬の間を置き。いつも通りに抑揚のない無感情な声で、簡易的なブリーフィングを簡潔に続ける。
『作戦目標は単純明快です。出現が確認されたレギオン集団を迎撃、全機撃破してください。……以上です。幸運が皆さんの空にあらんことを』
最後に、とても本心から言っているとは思えないような言葉を、やはり無感情な声で付け加えて。レーアはそれだけで簡易的なブリーフィングを終えた。
いつも通りだ。レーアが無感情で無機質な振る舞いをすることは、今に始まったことではない。寧ろ蓬莱島……H‐Rアイランドの半ば名物みたいなものだ。だから、そんな風な締め括り方をレーアがしたとしても、誰一人として気にする者は居なかった。
『クロウ・リーダーより各機。お達しの通り、今回はそれなりに低い高度での戦闘になる。……といっても、常識的に考えたら凄まじい高高度には違いないが。どちらにせよ、一匹たりとて撃ち漏らすワケにはいかない。各機、その点に留意して迎撃に当たれ』
そうしたレーアからの状況説明が終わった直後、今度はクロウ隊の隊長……榎本が皆に呼び掛ける。
『クロウ2、りょーかい。隊長閣下の尻は俺が預かるよ』
とすれば、真面目で何処か固い調子な榎本の言葉に対し、生駒がおちゃらけた感じの言葉で返す。堅物そうな榎本に、見るからにチャラ男そうな生駒。二人とも、見た目通りの語気でのやり取りだ。
『茶化すな、燎』
『茶化さなきゃやってらんねーよ、こんな明け方のインターセプトなんてよ』
『……文句なら、帰って要司令に言うことね』
眠い明け方のスクランブル出撃にブツブツと文句を垂れる生駒。そんな彼に、氷のように冷え切った声でボソリと呟くのは……やはり、ソニアだ。
レーアの無機質で無感情な、抑揚のまるでない声とはまた別の……こちらは声だけでヒトを殺せてしまいそうな、それぐらいに冷え切って尖りきった声音だ。初対面の相手なら萎縮してしまいそうなソニアの語気に、しかし同じ飛行隊だけあって完全に慣れている生駒はいつも通りのノリで、茶化した風な言葉を彼女に返す。
『うわー、相変わらずソニアちゃんは手厳しいなあ』
『……クロウ6よりクロウ・リーダーへ。クロウ2の撃墜許可を求むわ』
『おいおいおいおいおい、冗談にしちゃあ洒落になってねえってソニアちゃん』
『背中から撃たれたくなかったら、無駄口は慎むことよ。……燎、貴方はその軽薄さを直した方がいい』
『へいへい……善処しますよ』
『フッ……燎、ソニアに一本取られたな』
流石に洒落になっていないソニアの言葉に、割と真面目に慌てた後。続くソニアからの皮肉めいた言葉に生駒がやれやれと肩を竦めていると、二人のやり取りを聞いていた榎本が少しだけおかしそうに、小さく笑みを浮かべる。
そんなやり取りを交わしていたファルコンクロウ隊の編隊へと、≪ミーティア≫とはまるで違う機影が一機、合流してきた。
スッと滑らかに編隊へと合流し、ソニア機の真横に並ぶかのような位置に付いたその機体は……YSF‐2/A≪グレイ・ゴースト≫。大柄な漆黒の翼は、まさしくアリサの駆る機体だった。
編隊に合流してきたアリサに対し、一番最初に、皮肉げな言葉を投げ掛けたのは……案の定というべきか、ソニアだった。
『クロウ6よりイーグレット1。……精々、私たちの足を引っ張らないように頼むわ』
「イーグレット1、それはこっちの台詞よ。背中を取られないように気を付けることね。どうやら連中には、貴女のお尻がひどく魅力的に見えているようだから」
『例えESPだからって、必ず生き残れるとは限らない。……貴女が驕るのは勝手。でも私たちの足まで引っ張って貰っては困るわ』
「誰も驕ってなんかないわよ。アンタこそ、アタシたちESPをやたらと目の敵にする、その悪い癖。いい加減に直した方が身の為よ?」
『そっくりそのまま、言葉を返させて貰うわ』
『ソニア、それにメイヤード少尉も。その辺にしておけ、もうすぐ敵と接触する』
このままだと永遠に皮肉の応酬を続けそうな二人だったが、榎本に注意されてやっとこさ二人の皮肉交じりな応酬が止まる。アリサもソニアも、互いに不満げな様子だったが……流石に任務に持ち込むようなことはしないだろう。幾ら反目し合っているといっても、その辺りはちゃんと弁えている二人だ。
ふん、と互いに鼻を鳴らし合うそんな二人に、榎本がやれやれと呆れた様子で独り肩を竦めていると。すると、そのタイミングでレーアからの淡々とした報告が飛んでくる。
『各機、接敵までおよそ一二〇秒。……武器の使用を許可します』
『了解。クロウ・リーダーよりクロウ各機、マスターアーム・オン』
「…………イーグレット1、マスターアーム・オン」
レーアの指示に従い、クロウ隊とアリサが一斉に機体兵装の安全装置……マスターアーム・スウィッチを、安全位置の「SAFE」から解除状態の「ARM」へと弾く。
瞬間、皆の心がスッと引き締まる。マスターアームをオンにした瞬間から……もう、戦いは始まっているのだ。このトグル・スウィッチを弾いた先、一瞬たりとも油断は出来ない。隙を見せれば、それは即刻自らの死に直結しかねないのだから。
やがて、AWACSだけではない。実際に交戦するクロウ隊やアリサ機のレーダーも、敵影を捉え始める。
――――レーダー・コンタクト。
『レーダー・コンタクト。……クロウ1、交戦』
『クロウ2、交戦!』
『……クロウ6、交戦』
「イーグレット1、交戦……!!」
そして、アリサたちは剣を交える。異星起源の異形の敵性体、夜明けを前にして唐突に現れたレギオンの群れと。
――――ファルコンクロウ隊、イーグレット1、交戦開始。
夜明け前の空に、熾烈な迎撃戦の火蓋が人知れず切って落とされた。
(第十四章『レッド・アラート』了)
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