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Sortie-01:黒翼の舞う空
第十五章:迎撃‐インターセプト‐/06
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「――――司令、滑走路に進入する機体があります」
「なんだと!?」
司令室、要隆一郎の長い沈黙を破らせ、苦い面持ちを破らせて。彼の張りのある大声を、やたらと張りのある大声をだだっ広い司令室に木霊させたのは……レーアから無感情な声で告げられた、そんな突拍子もない報告だった。
「どの機体だ!?」
「…………シリアルナンバー、08‐9225。GIS‐12Eの225番機です。……308スコードロン、榎本大尉の予備機ですね」
意味不明な事態に狼狽する要に、レーアが淡々とした調子で報告する。
それと同時に、島の地上にある……管制塔にあるカメラの映像がモニタに映し出されると。確かにそこに映っていたのは、黄色と黒のラインが施された派手な≪ミーティア≫。今まさに滑走路へ無断でタキシングしていく機体は、まさしく榎本の予備機だった。
「レーアくん、当該機のコクピットに回線を繋げ!」
「了解。……当該機コクピット映像、出ます」
レーアがキーボードを軽く叩き、告げると同時に、司令室のモニタに映し出された≪ミーティア≫のコクピット。そこに映っていた正体不明のパイロットは……他でもない、あの桐山翔一だった。
「翔一くん……!?」
とすれば、要は更に狼狽する。この状況で出撃する機体、パイロットも揃っていない状況で、まさかと思っていたが…………。
「翔一くん、止すんだ!」
『……すみません、要さん。お叱りなら後で幾らでも』
「しかし……! 君では、とても!」
要は彼の愚行を止めようと、明らかに無謀な蛮勇としか思えない行為を止めようと、説得を図り必死の形相で叫ぶが。しかし翔一は静かに首を横に振るのみで、彼の言葉に聞く耳を持とうとはしない。
『例え無茶だとしても……それでも、行かなきゃならない。……そんな気がするんです。僕が行かなきゃ、全部駄目になるって。僕が行かなきゃ、もう二度とアリサに逢えなくなってしまうって……そんな気が、するんです』
――――未来予知。
真っ直ぐな、あまりに真っ直ぐすぎる視線をモニタ越しに向けられながら彼に告げられて、要がハッと思い当たったのはそれだった。
「翔一くん。君には確か……限定的だが、未来予知の力があったな」
だから、要は恐る恐る彼に問うてみる。もし、これがそうであるのなら――――例え無茶にも程がある博打だとしても。例え、これが勝算の低すぎる大博打だったとしても。
『それに近い、とだけ』
――――もし、そうであるのならば。
「…………分かった」
だとすれば、賭けるだけの価値がある。仮にこれが、彼の若さ故の暴走だとしても。仮にこれが、彼の若気の至りで……あまりに向こう見ずで無謀な、どうしようもない蛮勇であったとしても。
――――もし、これが現状を打破する切っ掛けになるのであれば、賭ける価値はある。彼という可能性に、桐山翔一という……親友の遺した忘れ形見に、たったひとつの可能性に……賭ける価値は、ある。
だからこそ、彼の出撃を要は許容した。彼の若さ故の無謀さを……許容し、そして賭けよう。この時確かに、要隆一郎は彼の純粋すぎるほどに純粋な、眩しいほどに真っ直ぐな視線に……その面持ちに、嘗ての親友の面影を重ねていたのだから。
「翔一くん。クロウ隊を…………アリサくんを、頼む」
「…………了解です」
通信から聞こえる要の言葉に。キャノピーの片隅に表示された、司令室に詰める彼の真剣な面持ちに、こちらもまた真剣な顔で頷き返し。そして翔一は≪ミーティア≫で、フル装備で身を固めた己が翼で、蓬莱島の長い滑走路に躍り出る。
『アイランド・タワーからスピアー1、離陸を許可する。…………司令命令での特別許可だ。始末書は覚悟しておけ』
「スピアー1よりアイランド・タワー、元より覚悟の上ですから」
翔一の返す言葉に、離陸許可を告げた管制塔の管制官は小さく笑み。そして彼に対しこう告げた。
『アイランド・タワーよりスピアー1、どうか君の空に、最大級の幸運があらんことを』
激励じみた、管制官の放ったその粋な言葉に。翔一は「スピアー1、了解」とだけ頷き返し、そして続けて呟く。
「――――スピアー1、クリアード・フォー・テイクオフ」
スロットルを全開まで開き、エンジン出力を最大まで叩き上げる。幾ら単発で、推力そのものもゴーストより劣るといえ……仮にもプラズマジェットエンジン、オーヴァー・テクノロジーの塊だ。その加速力は、地球上にあるどのジェット戦闘機よりも爆発的で、そして強烈にして優雅なものなのだ。
甲高い爆音を上げ、クロースカップルド・デルタ翼の機体が滑走を開始する。
翔一のESP能力により、機体搭載の重力制御装置・ディーンドライヴはそのリミッターを解除され、全開出力のフルスペック・モードで稼働している。だから、戦力的な意味で……既にこの≪ミーティア≫はただの≪ミーティア≫ではない。アリサの≪グレイ・ゴースト≫と同じ、一騎当千の超兵器……ESP専用機へと変わり果てたのだ。
「さあ……行こうか」
滑走を続けていた機体はやがてふわりと浮き上がり、主脚タイヤが滑走路から離れていく。
ギア・アップ。主脚を胴体に格納し、翔一はグッと操縦桿を引いて機首を引き上げる。その角度は九〇度近い急角度。フルスロットルでの急上昇、ハイレート・クライム――――。
彼女と同じように、翔一は銀翼を広げて大空へと飛び立っていく。夜明けを間近に控えた薄明るい空へ、誰のものでもない――――彼自身の、大きな翼で。
(第十五章『迎撃‐インターセプト‐』了)
「なんだと!?」
司令室、要隆一郎の長い沈黙を破らせ、苦い面持ちを破らせて。彼の張りのある大声を、やたらと張りのある大声をだだっ広い司令室に木霊させたのは……レーアから無感情な声で告げられた、そんな突拍子もない報告だった。
「どの機体だ!?」
「…………シリアルナンバー、08‐9225。GIS‐12Eの225番機です。……308スコードロン、榎本大尉の予備機ですね」
意味不明な事態に狼狽する要に、レーアが淡々とした調子で報告する。
それと同時に、島の地上にある……管制塔にあるカメラの映像がモニタに映し出されると。確かにそこに映っていたのは、黄色と黒のラインが施された派手な≪ミーティア≫。今まさに滑走路へ無断でタキシングしていく機体は、まさしく榎本の予備機だった。
「レーアくん、当該機のコクピットに回線を繋げ!」
「了解。……当該機コクピット映像、出ます」
レーアがキーボードを軽く叩き、告げると同時に、司令室のモニタに映し出された≪ミーティア≫のコクピット。そこに映っていた正体不明のパイロットは……他でもない、あの桐山翔一だった。
「翔一くん……!?」
とすれば、要は更に狼狽する。この状況で出撃する機体、パイロットも揃っていない状況で、まさかと思っていたが…………。
「翔一くん、止すんだ!」
『……すみません、要さん。お叱りなら後で幾らでも』
「しかし……! 君では、とても!」
要は彼の愚行を止めようと、明らかに無謀な蛮勇としか思えない行為を止めようと、説得を図り必死の形相で叫ぶが。しかし翔一は静かに首を横に振るのみで、彼の言葉に聞く耳を持とうとはしない。
『例え無茶だとしても……それでも、行かなきゃならない。……そんな気がするんです。僕が行かなきゃ、全部駄目になるって。僕が行かなきゃ、もう二度とアリサに逢えなくなってしまうって……そんな気が、するんです』
――――未来予知。
真っ直ぐな、あまりに真っ直ぐすぎる視線をモニタ越しに向けられながら彼に告げられて、要がハッと思い当たったのはそれだった。
「翔一くん。君には確か……限定的だが、未来予知の力があったな」
だから、要は恐る恐る彼に問うてみる。もし、これがそうであるのなら――――例え無茶にも程がある博打だとしても。例え、これが勝算の低すぎる大博打だったとしても。
『それに近い、とだけ』
――――もし、そうであるのならば。
「…………分かった」
だとすれば、賭けるだけの価値がある。仮にこれが、彼の若さ故の暴走だとしても。仮にこれが、彼の若気の至りで……あまりに向こう見ずで無謀な、どうしようもない蛮勇であったとしても。
――――もし、これが現状を打破する切っ掛けになるのであれば、賭ける価値はある。彼という可能性に、桐山翔一という……親友の遺した忘れ形見に、たったひとつの可能性に……賭ける価値は、ある。
だからこそ、彼の出撃を要は許容した。彼の若さ故の無謀さを……許容し、そして賭けよう。この時確かに、要隆一郎は彼の純粋すぎるほどに純粋な、眩しいほどに真っ直ぐな視線に……その面持ちに、嘗ての親友の面影を重ねていたのだから。
「翔一くん。クロウ隊を…………アリサくんを、頼む」
「…………了解です」
通信から聞こえる要の言葉に。キャノピーの片隅に表示された、司令室に詰める彼の真剣な面持ちに、こちらもまた真剣な顔で頷き返し。そして翔一は≪ミーティア≫で、フル装備で身を固めた己が翼で、蓬莱島の長い滑走路に躍り出る。
『アイランド・タワーからスピアー1、離陸を許可する。…………司令命令での特別許可だ。始末書は覚悟しておけ』
「スピアー1よりアイランド・タワー、元より覚悟の上ですから」
翔一の返す言葉に、離陸許可を告げた管制塔の管制官は小さく笑み。そして彼に対しこう告げた。
『アイランド・タワーよりスピアー1、どうか君の空に、最大級の幸運があらんことを』
激励じみた、管制官の放ったその粋な言葉に。翔一は「スピアー1、了解」とだけ頷き返し、そして続けて呟く。
「――――スピアー1、クリアード・フォー・テイクオフ」
スロットルを全開まで開き、エンジン出力を最大まで叩き上げる。幾ら単発で、推力そのものもゴーストより劣るといえ……仮にもプラズマジェットエンジン、オーヴァー・テクノロジーの塊だ。その加速力は、地球上にあるどのジェット戦闘機よりも爆発的で、そして強烈にして優雅なものなのだ。
甲高い爆音を上げ、クロースカップルド・デルタ翼の機体が滑走を開始する。
翔一のESP能力により、機体搭載の重力制御装置・ディーンドライヴはそのリミッターを解除され、全開出力のフルスペック・モードで稼働している。だから、戦力的な意味で……既にこの≪ミーティア≫はただの≪ミーティア≫ではない。アリサの≪グレイ・ゴースト≫と同じ、一騎当千の超兵器……ESP専用機へと変わり果てたのだ。
「さあ……行こうか」
滑走を続けていた機体はやがてふわりと浮き上がり、主脚タイヤが滑走路から離れていく。
ギア・アップ。主脚を胴体に格納し、翔一はグッと操縦桿を引いて機首を引き上げる。その角度は九〇度近い急角度。フルスロットルでの急上昇、ハイレート・クライム――――。
彼女と同じように、翔一は銀翼を広げて大空へと飛び立っていく。夜明けを間近に控えた薄明るい空へ、誰のものでもない――――彼自身の、大きな翼で。
(第十五章『迎撃‐インターセプト‐』了)
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なお、原文を解読して漢字仮名交じり文に書き直されたものは、特に「ひふみ神示」または「一二三神示」と呼ばれています。
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