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Sortie-02:騎士たちは西欧より来たりて
第十一章:オペレーション・ダイダロス/05
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『――――航空優勢、やっとこさ確保出来たみたいだ。相手の数が数だけに、楽ではなかったね』
「こっからが本番よ、ミレーヌ。油断大敵、気を引き締めていきましょう。もう暫くしたら揚陸艇がお姫様と一緒に来るはずだから」
『まるで魔法の馬車……ふふっ、筋肉ダルマのお姫様が寿司詰めってワケかい。アリサ、君にしては面白い冗談だね』
「うっさい、ンなつもりないわよ。っていうかやめてよねミレーヌ、想像したら吐きそうになっちゃったじゃない…………」
『……奇遇だね、僕もだ』
「ったく……んで翔一、機体の方は問題ないわよね?」
「…………大丈夫、まだミサイルの残弾もある程度余裕がある。やれるさ、僕らなら」
二人の少しばかり気の抜けた会話を聞きながら、≪グレイ・ゴースト≫の後席で計器盤のモニタを指で叩く翔一が呟いて報告する。自分の真後ろから飛んで来た彼の報告に、アリサは「了解」と短く返すと。ひとまず小休止といった具合に、コクピットの中でふぅ、と小さく息をついた。
――――航空優勢、確保。
他の作戦エリアは知らないが、少なくとも彼女らイーグレット隊を始めとした蓬莱島所属の部隊が受け持つこの一帯に関しては、敵モスキート・タイプの大群からの痛烈な出迎えを退け……どうにかこうにか航空優勢を確保することが出来ていた。
現状、この宙域を飛んでいる敵モスキート・タイプの数は、最初の総数から数えて三分の一以下に減っている。残っている食べ残しの連中を、今まさに追い立てて始末している真っ最中だ。
当然だが、こちらも無傷とはいかなかった。イーグレット隊、及びファルコンクロウ隊に関しては、幸運なことに一機たりとて欠けてはいないものの……しかし、それ以外の連中にはそれなりの被害が出てしまっている。駄目になった機体からの脱出に成功した者も多いが、中にはベイルアウトが間に合わぬまま、機と運命を共にしたパイロットも少なくない…………。
これが、戦争なのだ。どちらの側も犠牲無しではいられない。互いに犠牲を払った先に、勝利と敗北という陳腐な結末が待ち構えている。例えそれが人間同士の戦いであっても、外宇宙からやって来た謎の敵性体との戦いであっても……相手が誰であろうと、根っこにあるその部分だけは何も変わらないのだ。
だが、翔一はこんな戦いの最中にあっても、少しだけ安堵の気持ちを胸中に抱いていた。
理由は簡単だ。自分たちイーグレット隊が一人も欠けていないこと。彼が小さな安堵を抱いている理由はそこにある。自分とアリサ、同じ機体で運命を共にする二人は別としても……宗悟にミレーヌ、あの二人もちゃんと五体満足で生きてくれていることが、大規模作戦の戦闘宙域という高ストレスな環境下に於いて彼を、翔一を落ち着かせている何よりもの要因だった。
まあ冷静に考えてみれば、仮にもESP機の部隊であるこのイーグレット隊の面子がそう簡単に墜とされるはずもない。何せこの≪グレイ・ゴースト≫二機、どちらも正真正銘のエースが駆っているのだ。ESPだからって必ず生き残れるワケではない、寧ろ些細なボタンの掛け違いで容易に戦死の結末を辿ることは、ソフィア・ランチェスターの件をアリサの口から聞かされた翔一もちゃんと認識しているが……それでも、客観的に見てこの面子がそう易々と墜とされるワケがないと、今まさに彼女らの戦いぶりを目の当たりにした翔一にはそう思えて仕方がなかった。
実際、この二機の戦いぶりは凄まじいものだった。
アリサに関しては……延々と目の前で見てきたから、今更感もあるし割愛するが。宗悟たちの方も負けず劣らずといった勇猛果敢な戦いぶりだった。
その一番の要因は、やはりあの二人の相性だろう。
流石に空気のない宇宙空間だけあって、前にACM訓練で見せたようなエアロキネシスを使った意味不明な戦闘機動こそ出来ていなかったが……しかし、彼の能力はただ風を操るだけではない。その場に流れる気の流れというか……そう、まさに『空気』を読めるのだ。
喩えるなら、超強力な第六感。文字通り後ろに眼が付いているような感じだ。流れを読んで、敵の動きを先読みする。戦い方としては、未来予知を使う翔一に近いものが無くもない。そこにミレーヌの広域空間把握能力を用いた完璧な索敵の補助が重なり合わされば……その結果どれだけの活躍を見せるかは、敢えて語るまでもないだろう。
そんな彼らが飛ばすもう一機の≪グレイ・ゴースト≫と組むのだから、今の制空戦闘でイーグレット隊が挙げた戦果は目覚ましいものだった。
変な話、この場に集まっていた敵機の半数近くはこの二機で平らげたと言っても過言ではない。後に作戦の第二段階、ガンマ目標の識別名が与えられた敵キャリアー・タイプに攻め入る強襲揚陸艇たちの護衛任務があるから、ミサイルの方は割に節約気味で。主に固定装備のガンや、胴体に吊したレーザーガンポッドを用いた格闘戦が多かったのだが……それにしたって、凄い戦果だった。
今日、この僅かな時間だけで撃墜数が幾つ増えたのか……それは帰還してからちゃんと検証してみないことには分からないが、かなりの数を叩き落としたのは間違いない。
――――これが、ESP機が一騎当千の決戦兵器的な存在と位置づけられている何よりもの理由だ。
たった二機ばかしで、通常機の何十倍もの戦果を挙げてしまえる存在。それがどれだけ重要な存在かは敢えて語るまでもない。強いて欠点を挙げるとすれば、操るESPパイロットそのものがとんでもなく稀少であることなのだが………。
何にしても、それがESP機という存在だ。噂によればイーグレット隊以外にも、別の作戦エリアにも多数のESP機を投入しているという。中には世界最強のスーパー・エースと名高い『マルセイユの女神』も居るという話だ。たった二機のイーグレット隊だけでこれだけの戦果を挙げられたとなれば、参謀本部がこの『オペレーション・ダイダロス』に際し、多数のESP機を一気に投入していることにも頷けるというものだ…………。
「…………まだ、終わったわけじゃない」
何にしても、自分らがやるべきことをやらねばならない。
そう思うと、翔一は改めて自機の兵装状況を確認しておくことにした。別に大したことではない。あくまで残ったミサイルの確認だ。
アリサ機に残っているのは――――短距離射程のAAM‐01が片翼につき二発ずつ、合計四発。四連ランチャーを介して吊していたから、今の戦闘で四発を消費したことになる。
それ以外に、胴体中央へ吊した二五ミリ口径のレーザーガンポッド。これも問題無く動いているし、二〇ミリレールガトリング機関砲の残弾にもまだまだ余裕がある。割と節約を意識してアリサに戦って貰っていたが故に、あらゆる意味でこの≪グレイ・ゴースト≫にはかなりの余裕が残されていた。
宗悟たちの方の残弾具合は知らないが……まあ、こちらと似たようなものだろう。二機ともまだまだ戦える。蓬莱島に戻って弾薬補給をする必要はなさそうだ。
『さて、漸く騎兵隊のお出ましだ』
機体の状況確認を済ませた翔一が小さく息をついていると、ミレーヌからそんな報告が飛んでくる。
その直後――――彼の前にあった計器盤のモニタ、そこに映し出されていたレーダー表示に新たな友軍機の反応が次々と現れる。彼らにとっての護衛対象である強襲揚陸艇。宇宙用パワードスーツに身を包んだ歩兵部隊を満載した、この作戦の要たる存在が群れを成して作戦エリアに侵入してきたことを、目の前のレーダー表示が暗に告げていた。
「こっからが本番よ、ミレーヌ。油断大敵、気を引き締めていきましょう。もう暫くしたら揚陸艇がお姫様と一緒に来るはずだから」
『まるで魔法の馬車……ふふっ、筋肉ダルマのお姫様が寿司詰めってワケかい。アリサ、君にしては面白い冗談だね』
「うっさい、ンなつもりないわよ。っていうかやめてよねミレーヌ、想像したら吐きそうになっちゃったじゃない…………」
『……奇遇だね、僕もだ』
「ったく……んで翔一、機体の方は問題ないわよね?」
「…………大丈夫、まだミサイルの残弾もある程度余裕がある。やれるさ、僕らなら」
二人の少しばかり気の抜けた会話を聞きながら、≪グレイ・ゴースト≫の後席で計器盤のモニタを指で叩く翔一が呟いて報告する。自分の真後ろから飛んで来た彼の報告に、アリサは「了解」と短く返すと。ひとまず小休止といった具合に、コクピットの中でふぅ、と小さく息をついた。
――――航空優勢、確保。
他の作戦エリアは知らないが、少なくとも彼女らイーグレット隊を始めとした蓬莱島所属の部隊が受け持つこの一帯に関しては、敵モスキート・タイプの大群からの痛烈な出迎えを退け……どうにかこうにか航空優勢を確保することが出来ていた。
現状、この宙域を飛んでいる敵モスキート・タイプの数は、最初の総数から数えて三分の一以下に減っている。残っている食べ残しの連中を、今まさに追い立てて始末している真っ最中だ。
当然だが、こちらも無傷とはいかなかった。イーグレット隊、及びファルコンクロウ隊に関しては、幸運なことに一機たりとて欠けてはいないものの……しかし、それ以外の連中にはそれなりの被害が出てしまっている。駄目になった機体からの脱出に成功した者も多いが、中にはベイルアウトが間に合わぬまま、機と運命を共にしたパイロットも少なくない…………。
これが、戦争なのだ。どちらの側も犠牲無しではいられない。互いに犠牲を払った先に、勝利と敗北という陳腐な結末が待ち構えている。例えそれが人間同士の戦いであっても、外宇宙からやって来た謎の敵性体との戦いであっても……相手が誰であろうと、根っこにあるその部分だけは何も変わらないのだ。
だが、翔一はこんな戦いの最中にあっても、少しだけ安堵の気持ちを胸中に抱いていた。
理由は簡単だ。自分たちイーグレット隊が一人も欠けていないこと。彼が小さな安堵を抱いている理由はそこにある。自分とアリサ、同じ機体で運命を共にする二人は別としても……宗悟にミレーヌ、あの二人もちゃんと五体満足で生きてくれていることが、大規模作戦の戦闘宙域という高ストレスな環境下に於いて彼を、翔一を落ち着かせている何よりもの要因だった。
まあ冷静に考えてみれば、仮にもESP機の部隊であるこのイーグレット隊の面子がそう簡単に墜とされるはずもない。何せこの≪グレイ・ゴースト≫二機、どちらも正真正銘のエースが駆っているのだ。ESPだからって必ず生き残れるワケではない、寧ろ些細なボタンの掛け違いで容易に戦死の結末を辿ることは、ソフィア・ランチェスターの件をアリサの口から聞かされた翔一もちゃんと認識しているが……それでも、客観的に見てこの面子がそう易々と墜とされるワケがないと、今まさに彼女らの戦いぶりを目の当たりにした翔一にはそう思えて仕方がなかった。
実際、この二機の戦いぶりは凄まじいものだった。
アリサに関しては……延々と目の前で見てきたから、今更感もあるし割愛するが。宗悟たちの方も負けず劣らずといった勇猛果敢な戦いぶりだった。
その一番の要因は、やはりあの二人の相性だろう。
流石に空気のない宇宙空間だけあって、前にACM訓練で見せたようなエアロキネシスを使った意味不明な戦闘機動こそ出来ていなかったが……しかし、彼の能力はただ風を操るだけではない。その場に流れる気の流れというか……そう、まさに『空気』を読めるのだ。
喩えるなら、超強力な第六感。文字通り後ろに眼が付いているような感じだ。流れを読んで、敵の動きを先読みする。戦い方としては、未来予知を使う翔一に近いものが無くもない。そこにミレーヌの広域空間把握能力を用いた完璧な索敵の補助が重なり合わされば……その結果どれだけの活躍を見せるかは、敢えて語るまでもないだろう。
そんな彼らが飛ばすもう一機の≪グレイ・ゴースト≫と組むのだから、今の制空戦闘でイーグレット隊が挙げた戦果は目覚ましいものだった。
変な話、この場に集まっていた敵機の半数近くはこの二機で平らげたと言っても過言ではない。後に作戦の第二段階、ガンマ目標の識別名が与えられた敵キャリアー・タイプに攻め入る強襲揚陸艇たちの護衛任務があるから、ミサイルの方は割に節約気味で。主に固定装備のガンや、胴体に吊したレーザーガンポッドを用いた格闘戦が多かったのだが……それにしたって、凄い戦果だった。
今日、この僅かな時間だけで撃墜数が幾つ増えたのか……それは帰還してからちゃんと検証してみないことには分からないが、かなりの数を叩き落としたのは間違いない。
――――これが、ESP機が一騎当千の決戦兵器的な存在と位置づけられている何よりもの理由だ。
たった二機ばかしで、通常機の何十倍もの戦果を挙げてしまえる存在。それがどれだけ重要な存在かは敢えて語るまでもない。強いて欠点を挙げるとすれば、操るESPパイロットそのものがとんでもなく稀少であることなのだが………。
何にしても、それがESP機という存在だ。噂によればイーグレット隊以外にも、別の作戦エリアにも多数のESP機を投入しているという。中には世界最強のスーパー・エースと名高い『マルセイユの女神』も居るという話だ。たった二機のイーグレット隊だけでこれだけの戦果を挙げられたとなれば、参謀本部がこの『オペレーション・ダイダロス』に際し、多数のESP機を一気に投入していることにも頷けるというものだ…………。
「…………まだ、終わったわけじゃない」
何にしても、自分らがやるべきことをやらねばならない。
そう思うと、翔一は改めて自機の兵装状況を確認しておくことにした。別に大したことではない。あくまで残ったミサイルの確認だ。
アリサ機に残っているのは――――短距離射程のAAM‐01が片翼につき二発ずつ、合計四発。四連ランチャーを介して吊していたから、今の戦闘で四発を消費したことになる。
それ以外に、胴体中央へ吊した二五ミリ口径のレーザーガンポッド。これも問題無く動いているし、二〇ミリレールガトリング機関砲の残弾にもまだまだ余裕がある。割と節約を意識してアリサに戦って貰っていたが故に、あらゆる意味でこの≪グレイ・ゴースト≫にはかなりの余裕が残されていた。
宗悟たちの方の残弾具合は知らないが……まあ、こちらと似たようなものだろう。二機ともまだまだ戦える。蓬莱島に戻って弾薬補給をする必要はなさそうだ。
『さて、漸く騎兵隊のお出ましだ』
機体の状況確認を済ませた翔一が小さく息をついていると、ミレーヌからそんな報告が飛んでくる。
その直後――――彼の前にあった計器盤のモニタ、そこに映し出されていたレーダー表示に新たな友軍機の反応が次々と現れる。彼らにとっての護衛対象である強襲揚陸艇。宇宙用パワードスーツに身を包んだ歩兵部隊を満載した、この作戦の要たる存在が群れを成して作戦エリアに侵入してきたことを、目の前のレーダー表示が暗に告げていた。
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