3 / 3
使命終了
しおりを挟む
「そこ行くご婦人。そうあなたでございます。私はしがない占師をやっておりまして、どうです? あなたは運命に興味なくとも、抱えていらっしゃる娘さんの運命は気になる所でしょう。
気に入らなければお代は結構でございます。
人というものは使命を持って生まれてくるものです。
私が見るに、娘さんは既にその使命を全うされました。そしてあなたもです。
その昔、貂蝉という美しい娘がおりました。あなたはその貂蝉のように、透き通った肌と顔だちをしていらっしゃる。
その貂蝉は美しさゆえに、義父の王允によって逆賊董卓の下へ送り込まれ、董卓の配下呂布との仲を引き裂く道具として扱われました。
無事使命を果たした貂蝉は、義父が自分を我が子と思っていないと嘆き、自害しました。
義父の王允はそのことを悟り嘆き悲しみましたが、その悲しみを忘れるように政務に明け暮れました。
しかし二か月後、結局は王允も亡くなりました。
本来使命というものは全うしても、寿命は残されているものです。
しかしながら稀に、使命を全うした後、直ぐに亡くなる者がおります。
先ほどの王允然り、娘さんもその運命にあるのです。
ご安心くだされ、当然回避する方法がございます。
私がご婦人を呼び止めたのは、その為なのです。
先ほど私はお二人を『使命を全うした』とこう表現致しました。しかしながらそれは間違いでもあるのです。
ご婦人と娘さんのお二人は、親子となるために生まれてきたのでございます。
すなわちそれは『使命を全うした』と言えます。
しかし見方を変えると『使命を全うし続けている』とも言えるのです。
つまりはお二人が、親子であり続ければ何の問題もございません。
しかし一度お二人が長い間離れると、娘さんの命は三年と持たないことでしょう。
嫁に出すのもいけません。息子であればと、お嘆きになられるかもしれませんが、娘として生まれたのは決められた運命ではなく、本人の意思でございます。
親子として生まれることが使命付けられていながら、それに後ろめたさを持っておられるのです。
娘であれば十数年で嫁げるため、あえて娘の姿を取ったのでございます。
もし娘さんのそのような運命を憐れんで頂けるのであれば、どうか生涯手元に置いて差し上げてください。
必ずや親孝行に励むことになるでしょう」
そう言われ、大層美しい婦人は妙な納得感に包まれた。それを読み取った占師は、得意げに話し始めた。
「かくいう私は、幼き頃よりこの能力を身に付けました。各地を旅していた際は、占師をしながらーー」
「軍師殿ー!」
遠くから野太い声が聞こえる。それは将軍のようだった。
「長く話過ぎてしまいました。私は別の所へ参らなければなりません。私の名でしょうか? 『亮』と申します。苗字はございません。占師というものは得てしてそういうものでございます」
先ほどとは別の声が聞こえる。
「どこへおられます軍師殿ー!」
人でも探しているのか、必死さが感じられた。
「それでは約束がございますので、私はこれにて。いずれ再び相見えんことを」
代金も受け取らず、羽扇を持った男はそそくさと追われるようにその場を去った。残された親子は、微笑みを足して、平穏な日常へ戻って行った。
気に入らなければお代は結構でございます。
人というものは使命を持って生まれてくるものです。
私が見るに、娘さんは既にその使命を全うされました。そしてあなたもです。
その昔、貂蝉という美しい娘がおりました。あなたはその貂蝉のように、透き通った肌と顔だちをしていらっしゃる。
その貂蝉は美しさゆえに、義父の王允によって逆賊董卓の下へ送り込まれ、董卓の配下呂布との仲を引き裂く道具として扱われました。
無事使命を果たした貂蝉は、義父が自分を我が子と思っていないと嘆き、自害しました。
義父の王允はそのことを悟り嘆き悲しみましたが、その悲しみを忘れるように政務に明け暮れました。
しかし二か月後、結局は王允も亡くなりました。
本来使命というものは全うしても、寿命は残されているものです。
しかしながら稀に、使命を全うした後、直ぐに亡くなる者がおります。
先ほどの王允然り、娘さんもその運命にあるのです。
ご安心くだされ、当然回避する方法がございます。
私がご婦人を呼び止めたのは、その為なのです。
先ほど私はお二人を『使命を全うした』とこう表現致しました。しかしながらそれは間違いでもあるのです。
ご婦人と娘さんのお二人は、親子となるために生まれてきたのでございます。
すなわちそれは『使命を全うした』と言えます。
しかし見方を変えると『使命を全うし続けている』とも言えるのです。
つまりはお二人が、親子であり続ければ何の問題もございません。
しかし一度お二人が長い間離れると、娘さんの命は三年と持たないことでしょう。
嫁に出すのもいけません。息子であればと、お嘆きになられるかもしれませんが、娘として生まれたのは決められた運命ではなく、本人の意思でございます。
親子として生まれることが使命付けられていながら、それに後ろめたさを持っておられるのです。
娘であれば十数年で嫁げるため、あえて娘の姿を取ったのでございます。
もし娘さんのそのような運命を憐れんで頂けるのであれば、どうか生涯手元に置いて差し上げてください。
必ずや親孝行に励むことになるでしょう」
そう言われ、大層美しい婦人は妙な納得感に包まれた。それを読み取った占師は、得意げに話し始めた。
「かくいう私は、幼き頃よりこの能力を身に付けました。各地を旅していた際は、占師をしながらーー」
「軍師殿ー!」
遠くから野太い声が聞こえる。それは将軍のようだった。
「長く話過ぎてしまいました。私は別の所へ参らなければなりません。私の名でしょうか? 『亮』と申します。苗字はございません。占師というものは得てしてそういうものでございます」
先ほどとは別の声が聞こえる。
「どこへおられます軍師殿ー!」
人でも探しているのか、必死さが感じられた。
「それでは約束がございますので、私はこれにて。いずれ再び相見えんことを」
代金も受け取らず、羽扇を持った男はそそくさと追われるようにその場を去った。残された親子は、微笑みを足して、平穏な日常へ戻って行った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
主人の気持ちにそんな最期を迎える程の思いに心動かされました
その後は嬉しかったでしょう
そこまでの思いは演技では書かれてなかったですが今でも謎です
占い師があの彼というのも面白かったです
三国志は好きなのでその2次創作が思いもよらぬ形なので興味深かったです
とても面白かったです
ありがとうございます😊